なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
話はちょっと遡り、さやかちゃんが『キョウスケ』についての話を始めたところから。
「んー、最初はね?『キョウスケ』繋がりで着いてった感じなんだよね。ほら、二次創作とかでよくあるじゃん?」
「あー、上条繋がりでそげぶするやつとかもあったねー。*1……つまりはそういう流れ、ってことでしょ?」
「うんうん。こっちには『恭介』は居なさそうだったしね。……でもまぁ、今こうして思い返してみると、『キョウスケ』繋がりとは言ってもタイプが全然違う感じだったなー」
しみじみと語る彼女は、どうやら
ぶっきらぼうというか言葉少ないというか、ともかく不器用な感じのする彼に、名前繋がりからくる興味と放っておけなさを感じて、彼女は彼に着いていくことにしたらしい。
……この時点で『ん?』って思った私なのだけれど、その違和感は話を聞き進める度に大きくなっていって。
「馬の擬人化だっていうメジロちゃんに、『
「……へ、へー」
さやかちゃんの語る彼の言葉が、なーんか変なルビが振ってあるような気がしつつ、それでもまだ確定じゃないのでそのまま話を続けさせ。
「そうそう、『キョウスケ』って結構勝負事好きだったんだよねー。それと最終的な勝ち負けは置いといて、一つのところに大賭するのも好きだったかな?なんていうか
「…………」
すでに情報として与えられていた前リーダーの名前と、次から次へと出てくるエピソード。
それらを組み合わせる度に、なんとなーくそれが誰なのか、ということに近付いていくわけなんだけど……いやいや、マッキーはなんか愛想は良かったとかなんとか言ってたから。
……それが正解だった時に、『豹変』の意味が
「あとねー、
「はいアウトー!!やっぱりベーオウルフじゃねーか!」
「へ?べ、べーおうるふ?……ってなに?」
彼の代名詞、とっつき……もとい
それから、合わせて添えられた台詞である『どんな装甲だろうと』云々。
……はい、勘違いの可能性もなくキョウスケ・ナンブさんですねー、本当にありがとうございました。*7……クソァ!!
ばたーっ、と机に突っ伏した私に、さやかちゃんは困惑しながら首を傾げていたけれど……。これはあれかな、そもそもさやかちゃんが件の『キョウスケ』の出身作品を知らなかったとか、そういう話かな?
その辺りを彼女に問い掛けてみたところ、返ってきたのは次のような反応だった。
「えー?いやいや流石に知ってるよー?『インパクト』でしょ?本人から聞いたし、実際に見たもん。最後までがスッゴい長いって話も聞いたし*8……あ、あれ?みんななんでそんな沈痛そうな表情に……?」
「あー、うむ。……わかりやすいアニメのキャラも居ない、オリジナルだけの作品には目は向きにくいよな、特にファンでもない人には」
「え?なに?なんの話?!」
モモンガさんが頭痛を堪えるように額に手を当てため息を吐く。
……この様子だと、彼も前リーダーのことを忘れていた、もしくは
ともあれ、この会話の流れで思い出したのは、まず間違いなさそうで。彼は小さく頭を掻いたのち、決定的なその言葉を告げるのだった。
「ああ、間違いない。『新秩序互助会』における前リーダー、それは『キョウスケ・ナンブ』。……豹変し、国どころか世界を滅ぼそうとした人物だ」
「やっぱりベーオウルフじゃないですかやだー!!」
……うん、私が絶叫するのも仕方ないよね?
「さっきからずっと言ってるけど、ベーオウルフってなに?……あ、待って思い出した!BGMの名前だよね!なんだっけ、鋼鉄……だっけ?」
「──『鋼鉄の
「あ、やった!大当たり!……でも、戦闘BGMになんの関係が?」
一応彼の登場作品を知っていたさやかちゃんが、『ベーオウルフ』が彼のBGMであることを思い出していたが……、まぁうん、
「えっとね、さやかちゃん。……ベーオウルフってね、平行世界でのキョウスケさんの異名なの」
「へ?平行世界?……なんかすっごい嫌な予感がするんだけど、その平行世界のベーオウルフ、さん?って、どういう人なのかなー……?」
「……現行生命は失敗作。自らが新たなる種となることを画策する破綻者……って感じかな?」
「……ボスじゃん!それも単なるボスじゃなくてラスボスとかの類いじゃん!」
周囲の人達から説明され、思わず悲鳴をあげるさやかちゃん。
……ベーオウルフとは、アスナさんの言う通り『平行世界のキョウスケ・ナンブ』に与えられた異名である。
スーパーロボット大戦シリーズに登場するオリジナルの主人公達、それらを集めて展開される『OriginalGeneration』シリーズ。
そこに彼が出演することになった時、新たに加えられた設定の一つであるそれは、当時の人気キャラの一人である『アクセル・アルマー』の設定にも関わるものであり、それなりに賛否を呼んだモノでもあったが*9……まぁ、その辺りは置いておいて。
このベーオウルフ、端的に言うと同『OG』シリーズの二作目におけるラスボス枠と区分的には同一となる存在で、実際にアニメだとラスボスとして登場したりもした人物である。
そんな彼は、現在の霊長は失敗作であり、自身が新たなる霊長を作る・もしくは霊長となる的なことを主張しながら、全てを破壊し尽くすヤバい奴である。
それもそのはず、彼が同格となっている存在は、原作においては『創造主』の一画と言っても遜色ない存在。それが永き時と人の愚かな行為を見て狂った存在だというのだから、そりゃもう厄ネタも厄ネタな存在なのだ。
豹変した、という評がもし
「……この世界、呪われてるのでは……?」
「否定はできんな。次から次へと問題が沸いてくるさまは、正直『日刊地球の危機』と揶揄されても仕方がないだろう」
モモンガさんは、小さくため息を吐いている。
……こうして言葉を交わすまでは、彼の存在もまた『地球の危機』の一端と思われていた、というのも頭の痛いポイントだろうか。
いやまぁ、あれこれ話すうちにこのモモンガさんはちょっと違うなー、と思うことになったわけなのだが。
「そりゃあ、まぁ。私はアインズよりも鈴木悟としての自意識が強い存在だ。……恐らくはだが、原作の私よりも人としての部分が多いから、なのだろうな」
「あー、『
彼が異形種としての精神に傾いていないのは、『
素体となる人の体と、そもそも持っている人としての魂。
原作では異形の体と人の魂──すなわち一対一で比重が決まっていたがために、より存在の重い異形としての価値観が人としてのそれを侵していったが、ここにいる彼の場合は一対二……どちらが重いかと言われればまだ異形としてのそれの方だろうが、ここにいる彼は原作での精神汚染のようなモノについては知識がある。
結果として、異形として振る舞うことにブレーキが掛かり、総じて人間味のある人物として成立しているのではないか?……と言うのが、彼の主張なのであった。
それが正解なのかはわからないが、ここにいる彼が自身の古巣にさほど執着していないというのは確かな話。
山じいとかが彼をリーダーに推すのもわかるくらい、立派な人物としてそこにあるのだった。……ただ……。
「今回、こうして前リーダーのことを思い出すに当たって……どうにも不安点とでも言うべきものが、出てきてしまったような気はするな」
「……原作にある変化なら、後から付け加えやすい……みたいな?」
「同一人物同士の【継ぎ接ぎ】は馴染みやすい、ってのは僕が実例みたいなもんだしね。まぁ、注意するのは間違いじゃないと思うよ?」
彼等の言う通り、原作で『変わった』ことが描写されている人物には、異様なまでに【継ぎ接ぎ】が馴染みやすいらしい、というのも事実っぽいわけで。
……ゲームから異世界への転移の際、異形の心に囚われたモモンガさん。
それが、今なお起こり得る事態である……とでも示唆するかのような、前リーダー・キョウスケ氏の突然の変貌。
話を聞いている限り、元からアインスケ*10だったというわけではないだろう。
ならば、どこかのタイミングでアインストと接触してしまい、それに侵食されてしまったと見るのが正しいように思われる。
本来【継ぎ接ぎ】というのは、本人から遠く離れたモノには変化しないはずなのだが、彼等のようなタイプはそもそもに原作で
それがもし仮に本当であるのならば……。
「……琥珀さんに【継ぎ接ぎ】防止装置でも作って貰う、とか?」
「いや、幾らなんでもそれはあの人を過大評価し過ぎじゃない?」
「すでに【継ぎ接ぎ】を応用しての変身アイテムっぽいの作ってるのに?」
「……俺がいない間になにがあったし」
もしかしたら、あのマッドサイエンティスト・琥珀さんこそが希望の星なのかもしれない。
そんな世迷い言を口走りながら、話し合いは続いていくのだった。
──そういえば、と彼女は振り返る。
彼に「ここに居るように」と願われ、その言葉に従ってそこに居続けた彼女は。
いつの間にか絶望……もしくは魔力切れを起こし、魔女に変貌した。
そこで自我を得て、「このまま外に出たら不味いことになるよなー」となんとなーく思い浮かべ。
微妙な空腹感を気のせい気のせいとごまかしながら、部屋の中で縮こまっていた日々。
そこでは音はなく、光はなく、あるのは自身の脳内に映し出される想像の世界だけだったが──、
(──あの声。
そんな世界に突如紛れ込んで来た、可愛らしい小動物の声。
子猫でも迷い込んだのかと思った彼女が、実に四年越しに部屋の外へと赴き。
そこで、争う人の姿を見付け、その仲裁をしようとした結果、自分は今ここにいるわけだが。
──あの小動物は、はたして無事に逃げおおせたのだろうか?
「あれ、どうかした?さやかちゃん」
「んー?いやなんでもないよ」
十三章はこれにて終わりなので、お次はいつものです。