なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ほうほう、それはそれは。クリスおねいさんもなかなか大変ですな~」
「肩でも揉むー?お姉さんにはこれからお世話になるみたいだから」
「あー……うん、そういうのはいいわ。別に上下関係を築きたいってわけでもないし。……いやまぁ、単なる学術的な興味の一つとして、その手で肩揉みされるとどんな感じなのか……とかが気にならないってわけではないわけだが」
「……一応言っとくけど、普通の子供の手と変わんないわよ」
「それはそれでおかしくないか?」
いつの間にやら近くに寄ってきていた、複数の子供達と和気藹々としつつ。クリスとあれやこれやと会話を行う私。
その中で、さっきの私達の話を聞いていたらしいエーくんが、クリスと友好的な関係を築くために声を掛けたりしていたが……そういうのは子供が気にすることではないと一蹴する彼女は、なんだかんだ言ってお姉さん……年長者としての風格とでも呼ぶべきモノを醸し出していたのだった。
まぁそのあとすぐに、自身の興味を優先した言葉も告げていたわけなのだが。……頼りになるのかならないのか、どっちかにして欲しいものである。
そんな感じのやり取りをぐだぐだと行いつつ、彼女達が何故こんなところにいるのか、ということを聞いてみたところ。
それに対して返ってきたのは、午前の検査が終わったので外で昼食を摂ろうと思って……という、至極普通の理由なのだった。
……さっきも言っていた通り、琥珀さんは(『月姫』での彼女は料理担当の使用人であるので)*1料理の腕こそ中々のモノなのだが、本来は純粋な『逆憑依』ではないことも手伝ってなのか、中の人……すなわち元々の『研究者としての彼女』が持つズボラ*2というか変な几帳面さというか、ともかくその辺りの性格的なものが関係して『使う食器に頓着しない』という、変な化学反応を起こしているようで。
物珍しさ(それと、ちゃんと料理用の
結果、こうして時間的な余裕のある時には、外に出て昼食を摂ることが半ば習慣のようになってしまったのだという。
……まぁ郷の内部にある飲食店は、基本的に
「そういう感傷からは程遠い人だと思うけど……まぁ、基本的には外に食べに行くのはお昼だけで夜は普通に付き合ってるし、問題はないんじゃないかしら?」
「まぁわざわざこれ見よがしに、近くにウォーターサーバー置きながら『今日はハンバーグですよー☆』……ってしたりするのはどうかと思うけどねー」
「いや趣味悪っ」
それ人によってはトラウマモノじゃないですかねぇ?!*3
荷葉ちゃんの言葉から判明した琥珀さんの行動に、実は結構怒ってるんじゃないか、と思わないでもない私。……いやまぁ、別の世界での部下だったというクリスとの関わり方に苦慮した結果、というやつなのかもしれないけども。
……それにしたって露悪的*4過ぎる気がするので、やっぱり不機嫌なんじゃないかなとも思うわけだが。
それとなんで荷葉ちゃんはアマゾンズネタ知ってるんです……?
見たの?あのライダーの中でもスプラッタかつ陰鬱な、あの作品を?
「見てないよー。れんげと私は二人で一つだから、私も『兆し』の恩恵を受けてるってだけ」
「あーなるほど、基本知識の一つとしてってことね。……小学生にそんな知識与えんなって、神様にキレて殴りかかっとけばいい?」
「貴方が言うと冗談に聞こえないんだが……」
「キーアおねいさんは、いつでも本気だもんね~」
「わぁ、流石はキーア。いつもパワフルだなぁ」
「……これ、褒められてるの……?」
「さぁ、どうでしょうね」
やはり神は害悪、討ち滅ぼさねばならぬ……。
純粋無垢な子供にトラウマになりそうな知識与えてんじゃねーですよ、とばかりに打倒神を誓う私に対し、皆からの反応は大体似たようなもの。……君ら幾らなんでも慣れすぎとちゃう?
ともあれ彼女達が昼食を食べに行く、というのであれば付き合うのもやぶさかではない。
そんなことを伝えた私は、クリス達のあとを追い掛けるようにベンチから立ち上がるのであった。
「久しぶりの顔ばかりのようだけど、息災そうならなにより……ってやつだよ」
そんな感じのライネスの言葉に、該当者達が各々挨拶を返しながら、そのまま席に着く。
……うんすまない、なんの捻りもなくまたラットハウスなんだ。*5
「だが、君達もここに来た時、なんとも言えない『懐かしさ』とでも言うものを感じてくれたと思う。……では、注文を聞こうか」
「……いや、ウッドロウさんのノリが、思った以上に良すぎなんだが?」
「なに、気にすることはない」
「サービス精神旺盛過ぎなんだが!?」
そんなこちらの言葉に反応して、ウッドロウさんがネタに乗ってくれたわけなのだが……無駄にいい声で言われるものだから、なんというかネタ感が薄いような気も?
まぁ、ある意味では持ちネタ扱いになりそうな
「よくわかんないけど……とりあえず、このおすすめランチをお願いしまーす」
「うちもかようと同じのがいいん、ふわとろは正義なん」
「あっ、ウッちゃんウッちゃん!オラのオムライスには~、旗をしっかり立ててねぇ~ん」
「ああ、承った」
「旗……お子さまランチ……絶対の意志……うっ、頭が」*6
「不穏なフラグ立てんなっ」
まぁ、子供達はこっちの話など知ったことか、といった感じに好き勝手料理を頼んでいたのだが。
……おすすめランチのオムライスばっかり頼まれる状況と言うのは、はたして料理人的にはどうなのだろう?
それとしんちゃん、旗集めは止めようね?イヤーな予感しかしないから。
「まぁなんでもいいや。私はマーボーカレーお願いしまーす」
「うーん……今日はパスタの気分かしら……」
そんな感じで会話をしつつ、同じものばかり頼むのもなぁ……と思った私はもう一つのおすすめ・マーボーカレーの方を頼むことに決める。
対面のクリスはといえば、メニュー一面に並ぶ多種多様なパスタの中から、どれを食べようかと悩んでいて。
そんな中、彼女の隣に座っていたエーくんは、所在なさげに左右を見渡していたのだった。
「……?あら、エーくんご飯食べられるのよね?だったら好きなモノを頼んでいいのよ?」
「え、いいのかい?」
「お?エーちゃんってば、ご飯食べられるタイプだったんだ」
「ふーん、私達と同じって言ってたけど……ホントに同じなんだねぇ」
「……えっと、どうやって食べるん?」
「口元に持っていくとこう……ひゅっ、って感じ?」
「いや摩訶不思議過ぎるでしょそれ……」
話題の中心になったエーくんは、恥ずかしそうに頬を染めている。
姿形こそSDなガンダムであるエーくんだが、その属している種族は人間──敢えて述べるのならガンダム族とでも言うべきものであり、食事も睡眠も普通に必要とするタイプの存在でもある。
食べるものに関しても、二次創作などでボーキサイトや重油などを飲み食いする艦娘などとは違い*7、普通の食事が基本……というか、普通の食べ物以外は寧ろ食べられなかったりするようで。
食べ方は特徴的なれど、美味しい美味しいと喜んでくれるエーくんの姿に、マシュがちょっと張り切っていたりもしたっけな……なんてことを思い出しながら、エーくんが料理を頼み始めるのを横目で見る私。
……いや、ホントに。
「外食にお金掛かんなくて良かった(ボソッ)」
「……なんか今、凄まじく不穏なこと口走らなかった?」
「ははは。……見てりゃわかるよ」
「え?……って、ウワーッ!?」*8
思わずぽつりと呟いた私の言葉に、クリスが耳聡く食い付いてくるが……特に私が話すまでもなく、エーくんの姿を見ていればわかることなので、特に説明することはしない。
そんな私の様子に、彼女は一瞬怪訝そうな視線を向けてきたが……その視線をエーくんの方へと向けた途端、得心したように驚愕の声を漏らすのだった。
「えっと、このメニューのここからここまでと、それからこのページのここからここまでと……」
「……マシュー!?マシュー!!君、同居人なんだからこれ知ってただろう!?なんで先に言わないんだ君はー!?」
「すみませんすみません!でもエーくんさんが幸せそうならOKだと思われます!」*9
「そういう問題じゃないだろー!?」
「なに、気にすることはない」
「寧ろ気にしろ君は!?作るの君だぞ!?」
「ふむ、腕が鳴る……というやつだな」
「なんでちょっと楽しそうなんだ君は!?」
厨房の奥の方から、ライネスの悲鳴が聞こえてくるが……まぁうん、この注文の量では他の客に構っている暇がなくなるだろうから、そりゃ悲鳴もあげるわなというか。……え?他の客なんてほとんど居ないだろうって?今日はたまたま居ないだけなんだよなぁ。
ともあれ、現在エーくんが行っているのは、まさかのメニュー全制覇。
先ほど区分的には人間である、と述べたが。
……どこぞのサイヤ人とかウマ娘とか、そういう人種達と同じで、ガンダム族というのはどうやら食事量が多いものであるらしく。
……いやまぁ、他のガンダム族なるものには出会ったこともないし、もしかしたらエーくんが特別食べる方なだけなのかも知れないけれど。
ともあれ、彼の食事量がオグリとか悟空とかとタメを張るものである、という事実に間違いはなく。
先ほどの所在なさげな態度には、若干ながら食事量への遠慮も含まれていた……というわけなのであった。
なお、マシュはその洗礼を先に受けていたため、この状況については予測できたはずなのだが……、声的な意味での中の人の趣味が滲んで来ているのか、美味しそうにご飯を食べるエーくんに対して甘々の甘な態度を取ってしまうため、実は一切役に立たない存在になりさがっていたり。
……まぁうん、頭を撫でたくなる可愛さなのは確かだし、気持ちはわかるから私も怒ったりはしないけど。
そんな感じで、ラットハウスは俄に騒がしさを増していくことになるのだった。