なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「酷い目にあった……」
「まぁ、フードファイターもかくや、って感じの食べっぷりだったしねぇ」
「オグリさんや悟空さん用のマニュアルが、とても役に立ちましたね……」
「うち、一応軽食系のはずなんだがねぇ……」
「なに、気にすることはない」
「君はもう少し気にしろ!……ったく」
怒涛の如きエーくんの食事が終わり、裏から店員達がぞろぞろと出てくる。
……無論ガーデンオブぞろぞろしているわけではなく、単に彼等も昼休憩になったというだけなのだが、それにしたってライネスの醸し出す疲労感は中々のものだった。
まぁそもそもの体躯が小さいので、動き回れば相応に疲れもする……というだけの話なのだが。
「小さい云々は君だってそうだろうに。……ああ全く、せめて今日ココアが休みじゃなければなぁ」
「あれ、そういや顔を見ないと思ったけど、ココアちゃんってば今日お休みだったんだ?」
そんな中ライネスの言葉によって、こういう状況でなら『(0言0́*)<ヴェアアアアアアアア』*1とか言ってそうなココアちゃんの姿が見えないことに気が付く私。
いつもの遅刻云々とかではなく、単純に休みだとのことだが……?
「ああ、彼女ならはるか君と一緒に墓参りだそうだよ。……決心が付いたとかなんとか、言ってたみたいだが」
「墓参り?……そういえば、不自然なくらいに両親の話を聞いた覚えがないけれど……」
「まぁ、そういうことだね。……姉一人で妹の面倒を見ていたというのなら、あの溺愛っぷりも納得と言うものだ」
「ココアお姉ちゃん、意外とたいへんだったんなー」
そうして首を捻る私にウッドロウさんから告げられたのは、彼女が姉であるはるかさんと一緒に、地元へ墓参りに向かったというもの。
……護衛役として五条さんが付いていったらしいが、それにしたってなんというか、ココアちゃんの中の人の背景が、嫌に重いというか……。
いやまぁ、そこで「たいへんだったんなー」とか言ってるれんげちゃん&荷葉ちゃんコンビも、大概重たい背景持ちなわけだが。……お辛い案件多すぎじゃない?
「なに、今が幸せであるのなら問題はないだろう」
「そんなもんですかいねぇ……」
ウッドロウさんの言葉に、なんとも言えない気分になってしまう私。
そんな、雰囲気が暗くなってしまったラットハウスを後にした私達は、気分を入れ換えるためにちょっと遊びに行くことにしたのだった。
「で、一応なにがしたいかとか聞いとこうと思うんだけど……」
「はい、かくれんぼがしたいん!」
「なんとなーくだけど変なフラグが立ちそうだから却下」
「乗馬体験とか……?」
「それ遊びか?ってツッコミもなくはないけど、なんとなくそれもそれであれだから却下」
「も~、さっきからキーアおねいさん、却下としか言ってないゾ!」
「おおっと、ごめんごめん。……ただその、提案される遊びが健全すぎるのも問題だと思うわけよ」
「……お?」
……が、なにをして遊ぶのか、という部分でまた議論が紛糾。
いやまぁ、しんちゃんの言う通り、却下しているのは私なわけなのだが……。
森からも遠い建物のど真ん中、そこで出される提案が全部自然の中での遊び……というのは、なんというかこう『自分達のいる場所思い出せよ』って気分にならざるをえないわけでですね?
こちらの言葉に首を傾げるしんちゃんだが、代わりにクリスがなにかに気付いたような顔をしながら、こちらに声を掛けてくるのだった。
「つまりこう言いたいわけね?……たまにはゲーセンにでも行かないか、って」
「そういうことー」
と、言うわけで。
クリス以外全て子供にしか見えない私達がやって来たのは、もし仮に今が夜であるのなら入っちゃダメ*2、とか言われそうなゲームセンター。……いわゆるラ○ンド○ン的なお店である。*3
「……バラン・ドバン?」
「鉄球とかは置いてないわよ」*4
ボウリングの玉はあるでしょうけど。
とまぁ、道中変な聞き間違いもされたが……それは置いといて。
先ほど料理店では料金が無料になる、みたいな話をしていたが、その『無料になる』という制度が適用されるのは、あくまでも生活必需品に連なるモノや、それらを販売している場所のみ。
娯楽系の施設に関しては普通にお金が掛かることもあり、彼等が遊び場として提案しなかったのは、そういう面もあるのかもしれない。
「まぁ、今回に関しちゃ私の奢りだから、気にせず遊んで欲しいわけだが」
「なんと?」
「先日のあれこれで結構なお給料を貰ってね……」
とはいえ、こうしてゲーセンで遊ぼうと提案したのは私。であるのならば、その辺りの費用を受け持つのもまぁ、やぶさかではない。
そんな感じのことを呟けば、財布の中を確認していたクリスがこちらを驚いたように見詰めてくる。
……琥珀さんのところ、給料が少ないとかみたいな話を聞いた覚えはないし、クリス自体が浪費家な面がある……ということなのだろうか?
というかよくよく考えてみると、このクリスは元々こっち側の世界の人間ではなく、あの時の特殊な場によって、他の世界からやって来た
今の彼女の姿が牧瀬紅莉栖である、ということは確かな話ではあるが、同時に大元の彼女のパーソナル……ともすれば彼女が本当に『逆憑依』なのか、というのもよくわからないというのが実情だったりするわけで。
「……ああ、言われてみれば、その辺りを詳しく説明したことはないかも」
「うむ。なのであれだ、普通の『逆憑依』なのか
「いやどういう意味だそれは?あれか、私が琥珀さんと同じだったら、無責任な浪費家が元だったとでも認定するつもりか?」
「お、落ち着いてクリス。誰もそこまで言ってない……」
「遠回しに言ってるようなもんでしょうが!いやまぁ、使いすぎるのは元の私の癖なわけだが」
「おいィ?」
……やっぱり自前じゃねーか!
ぼそりと呟かれた彼女の言葉に、ここにいるクリスは琥珀さんパターンの人なのだと確信する私。……部下だったとかなんとかの話から、彼女の立場が本来の世界だと入れ替わってるのかも知れないな。……というかモルモット?
……なんて感想を抱きつつ、一応なにに使っているのかを聞いてみる私。
「いやその、……ここでは言えないようなものなので何卒……」
「腐ってやがる、早すぎたんだ」
「くくく腐ってねーし!ちょっと知的好奇心を満たしてるだけだし!」
……それ、語るに落ちるってやつでは?
とは言わず、生暖かい笑みを返す私に、クリスは暫く『違うんだってばぁっ!!?』と弁明を繰り返していたのだった。
なんでもいいけど、子供達をミミちゃんにしないようにね……?*5
そんな感じのやり取りを終えた私達は、そのまま意気揚々と店内へと進んだわけなのだけれど。
「……うん、エーくんは出禁かもしれんね」
「もしかして僕、やり過ぎちゃったかな……?」
「いやまぁうん、その辺りの確認の意味もなくはなかったから、特にエーくんが落ち込んだりする必要はないよ」
「……そうかい?」
「そもそもエーくんのことを置いといても、大概ハイスペックばっかだからね、この集団」
クレーンゲームなどで景品をゲットしまくるエーくんの姿に、最初は物珍しいモノを見る目だった店員さんの顔が次第に青くなっていくさまは、申し訳ないがちょっと面白……もとい気の毒な気分になりもしたが。
これに関してはエーくんが機械類に強いのではないか?……という疑問を解消するためのモノでもあるため、そこまで問題ではない。……あとでちょっと散財すればいいわけだし、主に対戦系のゲームとかで。
問題なのは他の面々。
区分的にはおまけ組、本来の目的からは外れた……悪い言い方をすれば『ついで』扱いのメンバー達である。
「これもちょっとしたそすんすの応用?なん!」
「ねぇれんげー?これ音聞いてタッチするタイプのゲームであって、光ったところを高速で撃ち抜くゲームじゃないからねー?」
「成功すれば全部おなじなん!」
「違うからね!?」
まず始めにれんげちゃんと荷葉ちゃんのペア。
彼女達は音ゲーの一種である筐体に、踏み台を利用して向かい合っていたのだが……なんか変な覚醒をしたれんげちゃんが、明らかに間違った遊び方を始めていた。
……それそういうゲームじゃねーから!?
なにがあれって、点数そのものは高いから周囲の人が『ナニソレ』みたいな目で見てるのがね……。
ともあれ、やり方が若干間違ってるだけで、根本的には普通に遊んでいる以上、彼女達はそこまで問題というわけではない。
問題なのはもう一組の方……いつの間にか一行に加わっていたしんちゃんの方である。
「ほっほ~い♪それそれそれ~♪」
「マジかよあの坊主、またベストレコード更新しやがったぜ?!」
「寧ろどうやって撃ってんだあれ……」
そう、しんちゃんと言えば一種の天才としても有名である。
そんな彼にゲーセンでゲームをさせるとどうなるのか。……答えは簡単、完全にゲーセン荒らしと化す、である。
今現在の彼は、ガンシューティング系の筐体の前に立ち、ケツに挟んだガンコンで的を撃ち抜きまくっている最中。
……流石にのび太君ほどではないと思うが、それにしたって子供が出せるような点数ではないスコアを叩き出し、ギャラリーを沸かせている。
暫くすると飽きて別のゲームに移るのだが、そこでも基本的には同じ。
アクロバティック過ぎる動きでエクセレントな点数を稼ぎつつ、オーディエンスを沸かせ続けるその姿は、まさしくゲーセンの王とでも呼ぶべき存在で。
……それと同じくらい、衆目にケツを晒し続ける幼稚園児となっているのである。
「……しんちゃんならいつものこと、なんだけど。……一応公衆の面前なんだし、止めるべきだよね……?」
「基本的には素直ないい子なんだけど……舞い上がる状況でどうなるか、ってのは確かに検証したことなかったわね……」
クリスと顔を見合わせ、ため息を吐く私。
これが本当にしんちゃんなら問題はない……いやあるけどないわけだが、ここにいる彼はあくまでも『逆憑依』。
今は浮かれているからいいけど、正気に戻った時に羞恥で死にそうな思いをするのは彼なのである。
基本的に下ネタ的なモノを披露しない彼が、なんの間違いかケツを出して動き回っている……。
そんな行動をあとから思い出す羽目になるとか、黒歴史間違いなしである。
……うん、止めよう。
後々のしんちゃんの精神的平穏を守るため、私達は固い誓いを立てるのだった……。