なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……?……?????」
「ええと、マシュが完全にフリーズしてしまっているので、代わりに私が尋ねますが……その、間違いないのですか?現れたのが……ええと、
「……まぁうん、そういう反応になるのは仕方ないよね。……でも出てきたのがその人だったっていうのは本当。格好がふざけているわりに、わけのわかんない強さだったのも本当だよ」
「そうなのよねぇ、ぐだぐだ組ってギャグでごまかしてるけど、大概エグいのよねぇ……」*2
飛び出してきた人物の名前に、マシュは機能不全を起こし。代わりに尋ね返したアルトリアもまた、神妙な表情で考え込んでしまい。
話した方の荷葉も困惑するのを、紫が仕方がないと息を吐きながら手を叩く。
「とはいえ、話はまだ続くのでしょう?」
「ああうん。……って言っても、ここから先はキーアお姉さんが拐われちゃうって話になるんだけど……」
「は?」「は??」「はぁぁああっ!??」「ひっ」
「ハァハァ三兄弟じゃないんだから、怖がらせるのは止めなさいよお前達……」*3
「あ、すみません。……ってそうではなく!さささ拐われた!?せんぱいが!?」
「そ、そうなるんだけど……」
が、その次に荷葉の口から飛び出した言葉に、三人は揃って驚愕の声をあげることになるのだった。
なにせ、キーアが拐われたというその言葉は、彼女達にとってみればあり得ないとしか言い様のないものだったのだから。
今そこにキーアが居る以上は、最終的には戻ってきたということなのだろうが……ともあれ、三人に少なくない驚きをもたらしたことは間違いない。
そんな微妙な空気の中、彼女の話は再開されるのであった……。
……絵面の温度差が激しすぎるんですが、これはどうしたらいいんですかねぇ!?
少女達の前で鮮血を晒しながらくるくると吹っ飛んでいったパイセンの右足は、下手なスプラッタよりもエグいものだったし。
かといって目の前の二人……特にジェット装着状態の沖田さんなんかは、最早存在そのものがギャグみたいなものだし。
え、目の前の彼女は第二だからシリアス分マシマシだろうって?……お前ジェットパック装備で・黒いダンダラ羽織を纏って・真面目な顔してるビキニな沖田さんが真面目だって本当に思ってるの……?(困惑)
ユニバース分も混じってるんだからこんなもん胡乱100%、思わずSAN値チェックがいるラインだっつーの!
……まぁ、今の私はそんなツッコミを入れられるような体調じゃないし、足を吹っ飛ばされた方のパイセンもそんな余裕は無さそうなわけだが。……例の腕輪の制限時間がまだ終わってないのが、ここに来て仇になったというか。
「えっ、その、足……っ」
「気にするんじゃないわよ、そのうち生えるわ」
「生えるの!?」
「なんだったら爆散したら元通りよ。……ちっ、予定じゃ当に終わってるはずなのに、なんだってこんな時に……」
心配する荷葉ちゃんに、パイセンは苦笑いを浮かべながら声を返す。
……何故か腕輪の解除時間が伸びていることに触れつつ、彼女は相手を睨み付けたが……。
「聞いていますかまどか、手を抜くなと言ったはずですが?」
「ウェヒヒヒwwだってそんなの可哀想じゃないwww」
「……はぁ。まぁいいです」
向こうも向こうで会話をしていたらしく、沖田さんに責められるまどかちゃん、という不思議な光景が展開されていた。
……しかしこの二人、どういう繋がりなのだろうか?
強いて言えば
沖田さんの方は単なる水着の方かと思っていたのだが、よく見たら背中のジェットの造形が違うみたいだし。
そんな束の間の考察タイムは、彼女が自身の得物を構え直す音によって打ち切られる。
……こっちは
ただ、相手が増えてしまった以上、先ほどのように凌ぐのは難しいだろう。特にパイセンはすぐには動けないだろうし、彼女を狙われるのはまず間違いない。
今の弱体化状態のパイセンが、仮に死亡するレベルの傷を受けた時にどうなるかもわからない以上、それは避けたい状況だと言えるだろう。……彼女の口調的には問題無さそうな気もするが、それでもである。
……となると。
「……お前、大丈夫なのか?」
「あははー、全然。……でもまぁ、相手に隙を作るくらいはできるから、それでどうにかしますよ」
「……待って、なにするつもりなのキーアお姉さん?」
「そ、そういうのよくないん!」
無理矢理体に力を込めて、立ち上がる。
……予想通りというかなんというか、こちらの言うことの半分も聞いてくれない自身の体に苦笑しつつ、改めて腹を括る。
──なるべくしてそうなったのだ、最早わがままは言うまい。
自身の体調不良がなにを意味するのか、このあとなにが起こるのか。
全てを薄々察しつつ、私は構えを作る。
「今から貴方達の退避の時間を稼ぐけど──」
「別に、アレを倒してしまっても、構わないんでしょう?」*4
「……アンタ、最後まで締まらないわね。──肩貸しなさい荷葉。逃げるわよ」
「で、でも……っ」
「残念だけど、今の私達は足手まといよ。……
「はは……善処します」
こちらの言葉に根負けしたようにため息を吐いたパイセンは、一つ指を鳴らす。
それは離れた位置にあった彼女の右足を爆散させ、それに反応した二人へ向けて私は突撃する。
背後の三人が移動を始めたのを背中越しに感じながら、いつものように虚空から取り出した
「……その覚悟に免じて、他は見逃しましょう」
「オキタちゃんも大概独断で動き過ぎじゃない?www」
いつものキレがない私の攻撃はあっさりと防がれ、首元の鋭い痛みと共に私の意識は遠退いて行くのだった──。
「そ、その続きはどうなったのですか?!」
「……わかんない」
「ええ?!」
彼女を囮に逃げ出した、というところで終わってしまった話に、マシュは当然のようにその続きを促したのだが……返ってきたのは、申し訳なさそうな荷葉の声。
思わず困惑の声を漏らせば、続いて返ってきたのは「そうして撤退したあと、増援を祖母の家で待つ内にふらりと
要するに、彼女達は救出行動などは行えていない、というものだった。
「色々とツッコミどころが多いけど……とりあえず虞美人、貴方足は問題ないの?」
話の中では、彼女達は両組織からの救援を待つ為に祖母の家に向かっていた。
ならば、その連絡の時に傷だとか状況だとかについては、よくよく知らされているはずなのである。
にも関わらず、紫は彼女が怪我一つない無事な姿であることを確認し、安堵の吐息を漏らした。
……これが意味することとはただ一つ。
「……せ、せんぱいは体調不良だったにも関わらず、相手を殲滅して戻ってきたということなのですか?!」
「いや、そもそも相手がビーストだった、という話はどこに行ったのです?それと記憶喪失云々も」
「それは……」
だがそうなると、先のビースト云々の話がよくわからなくなる。
彼女達はそれと遭遇していない以上、その情報源がどこなのか、という話になってくるわけだが……。
「あー、ちょっといい?」
「え?」
俄に騒がしくなり始めたその会話に、おずおずと口を挟む声が一つ。
思わず若干間の抜けた感じのする声を漏らした、マシュの視線の先に居たのは。
「ビースト云々の話をしたのは私で、それを倒したのも私。……って言えば、わかって貰えるかしら?」
「……せん、ぱい?」
「……ふむ、つまりビースト云々の話をしたのは、荷葉ちゃんの祖母の家にやってきた貴方だった、と?」
「まぁ、そうなるわね。そこで起きたことを簡単に説明したのも私だし」
改めて各々座り直した彼女達は、件の彼女──キルフィッシュ・アーティレイヤーの姿をした
なんでも彼女の言うところによれば、噂の元凶であったビーストⅢi/L──『声』と『蜂の集団』という【継ぎ接ぎ】を施されていた機械仕掛けの少女、『陽蜂』を打ち倒したのち、こうして荷葉達に連れだってこちらにやって来たのだとか。
既に意味がわからないが、順に話していこう。
「マシュ、陽蜂というのは?」
「……株式会社ケイブのシューティングゲーム、『怒首領蜂最大往生』における
「まぁ、ビーストⅢ/L──カーマと同じような感じって言えばわかるかしら?『陽蜂』という存在はそもそも人のために人を滅ぼす【人類悪】の要項を満たす存在だったけど、所詮は一個体。他者愛はあれどそれが無限、だなんてことはなかった。──それを補うために、彼女には
「……聞きたくないけど、続きを言って貰ってもいい?」
「まぁ、気分のいい話ではないかな。……拐われていた人は、『
「うへぇ……」
現れた
人を助ける為に生み出された彼女は、原作ではとある存在の入れ知恵によって『人を人でなくする』という形での救済を目指すものとなっていた。
故に、その行為そのものが【人類悪】に類されるものであるのは明白なのだが。
それが『他者愛』から生まれたものであれど、その出力が足りないのであれば『獣』足りえず。*5
──それを埋める
結果、後天的ながら無限の自分──雑に言えば声の同じキャラクター達という可能性を得た彼女は、己の望むままに人類を救う為の行動を開始した、ということになるようだ。
それが『全てを私にする』などという破綻したモノであったが故に、彼女は
そして、それを打ち倒したのが……。
「改めて名乗らせて貰うわね。私はキリア、ただのキリア。
いつか