なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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帰ってくれウル○ラマン

「も、戻ってきたと思ったら、に、人形サイズになってるとか……っひーっ!ひーっ!笑い死ぬーっ!」

「うるせー!笑うんじゃねぇこのーっ!このーっ!」

いひゃいいひゃい(痛い痛い)やめへっへはひひは(やめてってばキリア)

「君がッ泣くまで、口を引っ張るのを止めないッ!!」*1

「あ、あわわわ、どどどどうすればよいのでしょう!?」

「落ち着きなさいよマシュ……それにしても、小さくなったとはねぇ」

 

 

 一応は当初の目的を達成した為、現地解散した者達を除いた、数名の人々。

 彼らは変わらずラットハウスに居て、目の前で起きている事態に頭痛を堪えるような姿を見せていた。

 

 問題となっているのは二名。

 涙まで流して腹を抱えながら大笑いしているキリアと、その口をぐにぐにと引っ張り続ける──人形サイズとなってしまったキーア。「せんぱいがスケールフィギュアになってしまわれました!?」*2などと頓珍漢な事をマシュが述べていたのも、まだ記憶に新しい。

 

 ともあれ、世界から霧散していた彼女が、辛うじて体を取り戻した結果がこれ、ということはなんとなくわかるわけだが……。

 

 

「ぐぬぬぬ、黒歴史まで開帳されるし体は小さくなるし、踏んだり蹴ったりじゃんこんなの……っ!」

「まぁ、私が居る状況下じゃあ、簡単に元には戻れないわよねぇ」

「……?ええと、キリアさんが居てはダメ、なのですか?」

 

 

 悔しげに顔を歪めるキーアと、その頬をツンツンと突っつきながらニヤニヤと笑うキリア。……そうして突っつき過ぎたが故に、キリアはキーアに指をがぶりと噛まれていたが。痛がってはいるものの、実際には然程堪えている様子はなく。

 効果がないことをその目で確かめることとなったキーアは、小さく悪態を吐きながら彼女の指から離れるのだった。

 

 ……端から見ている分には、単にじゃれあっているようにしか見えないそのやり取りだが、実際には色々とややこしいところがあるらしい。

 

 

「根本的に、キーアは私の上位互換(アップグレード)……そっちの感覚で言うと下位互換(ダウングレード)だから、基本的に優先度の高い方にあれこれと引っ張られちゃうのよねー」*3

「…………??????」

「あー、マシュ?……私達みたいなのは、雑に言うと『弱い方が凄い』のよ」

「なる、ほど?」

 

 

 彼女達が話すのは、今までの話からの発展系。

 

 彼女達は『星の欠片(スター・ダスト)』という能力──正確には能力ではないらしいが、便宜的に能力と記す──を持つ者なのだが、その能力の持つ法則というのは、基本的には今ある物理法則と相反するものである。

 

 普通の技能達が、積み重ねる事──能力を高めることに重きを置くものであるならば、彼女達のそれは能力を細分化し、卑小化して行くことにこそ価値を置くもの。

 つまり、ポケモンで言うところの常時トリックルーム(遅い方が速い)とか常時さかさバトル(弱点と耐性が入れ替わる)を極めようとするもの、というのが感覚的には近いわけである。

 

 正確には、もっとややこしい性質なのだが……それを語るには長くなる為割愛。

 ともあれ、少なくとも彼女達の間にある相性という意味では、原案──より小さい(土台となる)モノであるキリアの方が、影響力が強いということになるのだった。

 

 

「だから、キリアがこうして顕現してる間は、本来私は現実世界には出てこられないのよ。……無理した結果こんなことになった、ってことでもあるってわけ」

「……あれ?ということは、今までキリアさんが煽っていらっしゃったのは……?」

「別に意地悪してたわけじゃないわよ?私がこっちに居るまま、彼女がどこかに行ったまま。……その状態が続くってことは、その内私がこっちに定着してしまう理由にもなるし。そうなったらもう二度と、キーアはこっちには戻ってこられなかった。──無理矢理にでも呼び戻すべきだった理由としては、とてもわかりやすいでしょ?」

「な、なるほど……」

 

 

 それを聞いたマシュは、先にキリアを元いた場所に追い返さなければ、そもそもキーアを元に戻すことはできないのでは?

 即ち、今までの行動は彼女の手の上で操られていただけなのでは?……という疑問を得てしまったのだが。

 それだと私を追い返す前に彼女消えてたわよ?……と言われれば、決して悪意を以てこちらを煽動していたわけではない、と押し黙る他なく。

 

 とはいえ、彼女の浮かべる笑みから察するに。

 決してそういう(愉悦的な)感情を抱かずに、こちらの行動をコントロールしていたわけではないだろう……という、何とも言えない確信を得ることにもなったのだが。

 

 

「あらやだ心外。私ってば皆のことをちゃーんと愛してるのに、ねぇ?」

「……その愛ってのは、善も悪も老いも若いも男も女も関係なしに、ただ人であるのならばその全てが()い、とかそういう類いのものでしょうに」

「おやおや流石は作者様、私の事をよーくご存知で」

「……うがーっ!!もーやだこいつぅ……っ!!」

 

 

 なお、マシュの呆れたような反応に彼女が返すのは、私ほど博愛精神に溢れた者も居ないのに、という言葉。……直ぐ様横の作者(キーア)に苦言を呈されていたが、それすら軽く笑って流す彼女に、キーアは頭を掻きむしりながら転げ回るのだった。

 

 

「……なんかこう、オーバーリアクションじゃない?今日のキーアちゃん」

「ああそれはね?(キリア)っていうのは、確かに世界の何処かに実在したモノが、現実に呼び出されたモノではあるけど。それはそれとして、彼女の認識に被るような、『自分が作ったキャラクター』を思い起こさせるようなモノでもあるから。……こっちがそれを認識し、かつからかってくることになるわけだから、そっちの感覚で言うのなら『黒歴史が実体を持って目の前で動いているようなもの』になるのよ」

「うわぁ」

「ひ、ひどい……(むご)すぎる……」

 

 

 そんな彼女の様子が、今までよりも余裕がないモノに見えた紫が、小さく疑問の声をあげる。

 それを耳聡く聞き付けたキリアは、キーアにとって自分が(その実在の可否は別として)生きた黒歴史のようなものなのだ、と笑顔で告げた。……聞いた方の紫は小さく呻く他ない。他の面々の反応も似たようなものである。

 

 創作物を書いた時に、『く~疲れましたw』とか後書きに書いてしまったようなものだ。*4

 目の前で動くのは、自身が昔書いたことのある小説のキャラクター。しかしてそれは、自身が被造物であることを知りながらも、それを元にメタ発言をかまし続けるのだ。

 

 それがどれほどの精神負担をもたらすのか。……それはまぁ、目の前でごろごろと頭を抱えながら転げ回る彼女(キーア)が示しているわけで。

 質が悪いことに、この二人は『負けることに意味を見出だした』存在である。……即ち、悪し様に罵られようが、全く堪えないのだ。

 そういう意味では、彼女(キリア)を源流にして、周囲に馴染みやすいようにキャラを作り替えたとはいえ、持ち合わせる性質的にはダメージ耐性の高いはずのキーアなのだが。

 それはあくまでも肉体的なスーパーアーマーであり、精神面の防御が高いわけではない。

 

 ……結果、こうして実在している以上は、殊更に作者面をするわけにもいかず。

 かといって目を逸らし続けるには、自身の羞恥心を刺激して止まない……という、真実彼女(キーア)特攻となってしまっているキリアとの対面というのは、顔を合わせるだけでその精神を削り続けるモノと言えてしまうわけで。

 ──外野としては、最早御愁傷様としか言い様がない。

 

 

「……というか、話だけを聞いていると彼女、いわゆる人類悪めいてすらいないか……?」

「善人悪人その他諸々、個々人が持ち合わせているモノに関わらず、人の為す事であるならば祝福し応援する……それは言葉だけを聞けばとても良いものにも思えるが、その実態は戦争だろうが貿易だろうが恋愛だろうが殺人だろうが、人が行う活動であれば()()()()()()を支持する、というものなのだろう?──正気の沙汰ではない、というのは確かだな」

「おおっと、もしかしてやぶ蛇だったかなー?」

 

 

 そんな中、恐る恐ると言った風にアインズが口を開く。

 先ほど彼女が軽く触れたそれ──正負を問わず、人の行う活動であるのならばその全てを支持する、という彼女の主張。

 それは、全てを肯定するが故に全ての滅びを──自業自得のそれまでを言祝(ことほ)ぐ、という事と同じであり。

 

 それは人()滅ぼす悪である『ビースト()』の愛と、然程変わらないものではないのか?……そんな疑問を持ってしまうのは半ば必然であり。

 いきなり風向きが変わったことに、キリアは小さく動揺したような顔を浮かべている。

 

 

「……なぁにが、やぶ蛇じゃーっ!!『気付かないかなー?いつ気付くかなー?』なんて内心うきうきしてた癖にー!!」

「ははは。やっぱり作者様が居ると、話が早くていいわねぇ」

「あ゛ー!!もうやだホントにやだーっ!!!」

「せ、せんぱいが駄々っ子に!?」

 

 

 ……無論、それすらいわゆる『誘い受け』でしかないことは、その性格を作った(正確には観測した)者であるキーアにはお見通し、というわけで。

 根本的には自身を倒されるべきもの(魔王)として定義し、それを打ち倒す勇者を愛いと笑いながら待ち続ける者である彼女は、なんなら『今からここにいる人全員で襲い掛かって来てくれてもいいのよ?』……とかなんとか(たわ)けたことを思っている、と言うことをキーアは理解している。

 

 ……理解しているからこそ、彼女はずっとこんな感じで私の精神を削り続けるのだろう、ということもわかってしまうわけで。

 つまりは何をしても彼女の掌の上。ビーストⅢはもう間に合ってるよ!……なんて冗談すら言い出せず、頭を掻きむしる羽目になるのだった。

 

 

「えー?でも内心貴方も思ってるでしょ?源流は同じなんだから、『私に乱暴するつもりでしょう?エロ同人みたいに!』とかなんとか、言ってみたくなったりとかさ?」*5

「わ゛ーーーーーーー!!!!!!止めろめろめろキリアめろ!!!」*6

「せんぱいが今まで見たことないほどの荒ぶりをっ!?」

 

 

 ……そうして耳元で自身の性癖(ソフトM)的なモノを暴露されれば、最早爆発する他なく。

 暫くの間、ラットハウスは喧騒に包まれ続けることになるのだった……。

 

 

*1
『ジョジョの奇妙な冒険』第一部(Part01)『ファントムブラッド』に登場する主人公、ジョナサン・ジョースターがディオ・ブランドーを文字通り泣くまで殴った時に言った台詞。温厚な人ほど怒らせてはいけない、というある意味での見本

*2
元となるキャラクターに実際に設定されているデータを元に、縮小した形で作られているフィギュアのこと。対義語は『ノンスケールフィギュア』で、こちらはねんどろいどのようなデフォルメ体型のようなものも含む。いわゆる『何分の一』のような表記のあるフィギュアのことであり、設定に忠実な分クオリティが高めになる傾向がある

*3
ソフトウェアの用語。等級(グレード)上げる(アップ)、ないし下げる(ダウン)こと。ソフトウェア的には、オペレーションシステムを更新する、または前の物に戻すことを指す

*4
とあるSSスレに投下された怪文書。……と書くとあれだが、要は後書きのこと。作中の人物が後書きに出てくる・作者が作中の人物と会話するなど、いわゆる地雷要素の典型例としてもあげられる。──昔のライトノベルの後書きでは、わりと頻発していたらしいことは内緒。言ってしまえば時代の流れで消えていったもの、とも呼べるかもしれない

*5
機動戦士ガンダム00の同人誌『私立トレミー学園 炎のKAINYU転校生 セカンドシーズン』におけるマリナ・イスマイールの台詞を、『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』のコマに当てはめたコラ画像が元ネタ。なお正確には『やめて!私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに エロ同人みたいに』という台詞。勘の良い読者ならわかるかもしれないが、正真正銘全年齢作品が元ネタである

*6
『NARUTO』のネット上でのコラ『ナルトス』シリーズより。いわゆるうちはラップ。なお、『ナルトス』とは『ナルトスレ』の短縮形。ネタの元となったコラを排出していた掲示板の仕様上、一覧では五文字目以降が省略されてしまう為、結果として残った四文字(ナルトス)がこれらのコラを示す言葉となって行ったとかなんとか




小さくなったキーアは果たして元に戻れるのか!
……次章へ続きます()
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