なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「おはよーマシュ」
「あ、はいせんぱい。おはようございます。今日はお早いのですね?……それから、その格好は一体……?」
あれこれと長かった喧騒も、遠い
台所で朝食の用意をしていたマシュは、珍しく一人で──というと語弊があるが、ともあれ周囲に苦手だと公言している朝なのにも関わらず、眠気を感じさせないスッキリとした顔を見せながら起きてきたキーアの姿に、小さく驚きの表情を見せていたのだった。
無論、ちゃんと起きられたんだね?……的な、小さい子に対するような驚きだけではなく、当のキーアが纏っていた服装に対しても、同じように驚きを覚えていたわけなのだが。
というのも現在の彼女の格好、何故か『魔法少女リリカルなのは』シリーズのキャラクターの一人、リインフォース
いやまぁ、現在の彼女の小ささも相まって、割りと似合っているのは確かなのだが。……何故いきなり、それも早朝からコスプレを?とマシュが思うのも仕方がないと言えるわけで。
そんな風に彼女が困惑している間に、
彼女は室内で困惑した様子を見せているマシュを確認したのち、暫くは首を捻っていたのだが。ふよふよと宙に浮いているキーア……そして彼女の服装を見た途端、何かに気付いたように目を輝かせ。
その様子に不穏なものを感じたマシュが止める間もなく、キリアにキーアと目配せをしたあと、彼女と同じ大きさに変化(!)して、
「!?」
謎の躍りと共に指を突き合わせた二人は、突然爆発!
いきなりの爆風(演出用、破壊力はない)に目を白黒させるマシュの前では、二人の姿を隠すように煙が視界を奪っていて。──その煙の中から、二人の声が重なって聞こえてくる。
「ぶふぅっ!!?」
煙が晴れた結果現れたのは、白目を剥いてどこか迫力のある表情をした、キーアでもキリアでもない謎の少女。
……
……他の面々が起きてくるまで彼女が咳き込み続けていたことは、言うまでもないことだろう。
「生憎と私には
「……ぜっったいに使わないで下さいねその魔法っ?!」
人生長く生きていれば、色んなことがある……というわけで、ここぞとばかりに再現ネタに走った私である。
なお、件の魔法については別にフュージョンしなくても使える。この辺りはチートキャラの面目躍如、というやつじゃな()
「……まぁでも、一時期
「でしょでしょー?ナデボとかチャーハンメテオとか、意味もなく小説の中で使いたくなったものよ……」*4
「やられる方はとんだ迷惑だと思うけどね、あれ」
クリスの言葉に相槌を打ちながら、しみじみと頷く私である。
あの時期は二次創作にオリ主が氾濫した時代だったが、それに対して色々と違う感じのキャラクター性をしていたあのキャラは、意外と色んなところで流行ったモノであった。*5
……まぁ安易な物真似は上手くいかないのが世の常というやつで、数々のエタり作品を生み出してきたのも確かなわけなのだが。
確かに端から見れば、単なる迷惑感溢れる行動も多かった彼だけど、一応相手の本気で嫌がりそうなことはしない、というのも彼の基本であったため、その辺りのトレースの難しさも他の三次創作達が長続きしなかった理由であったりしたのかもしれない、なんて風にも思ったり。
……なんで私は、他所様の二次創作の話を、朝っぱらから真面目な顔でしているんだろうね?
ともあれ、流石にあのままフュージョンを続けるのはめんど……もとい疲れるので解除した私達は、今は普通に席に着いている。
思えば唐突に始まったビースト戦からこっち、わりとドタバタし続けていたこともあり。こうして落ち着いて過ごせる朝というのは、意外と久しぶりのような気がしないでもない私なのだった。
と、言うのも……。
「はぁ、こちらから居なくなっている間に、貴方は再びハルケギニアの地を踏んでいた……と?」
「そうそう。なんか久しぶりにルイズとかサイトとかにも出会ったりしてさー。二人とも元気そうだったよー」
「それはなによりですね。……ところで、私について何か言っていたりだとかはしましたか……?」
「んー、『姫さま頑張ってー』とか、そういうことなら聞いたかな」
「なるほど……彼女達の信に応えられるよう、より精進せねばなりませんね」
こっちに居なかった暫くの間、私の魂?的なものは、こことは違う別世界・ハルケギニアへと飛ばされていたのである。
私の感覚的には、ビースト相手に自爆特攻しようと思ったら、いつの間にか向こうの遥か上空に飛ばされていた……ということになるわけで。
困惑しながら落下する私を、いち早く見付けたタバサ&シルフィに助けられ、そのまま魔法学院に向かった私は。
そこで初めて、私に憑依されていない素の状態のキーアちゃんと、顔を合わせることになったりしたのだった。……こいつここ最近、自分と同じ顔とばかり出会ってんな?
まぁそんな感じで向こうに出現した私は、そのまま向こうで起きた細々とした面倒事を解決していたわけなのである。
……なのでまぁ、死にかけてたみたいな扱いのわりに、結構忙しくしていたりもしたのだった。
「……爆発に転移……もしかしてハルケギニアって、バイストン・ウェルと同じ扱いだったり……?」*6
「なるほど、だから私も妖精みたいに小さく……って喧しいわっ」*7
「耳元で怒鳴るな?」*8
「耳元でドナルド?」
「「らんらんるー♪」」*9
「……ええと、収拾が付かないので、とりあえず食べませんか……?」
「「はーい」」
そんな私の体験談を聞いたクリスは、自爆特攻で別の世界に転移、というところに既視感を覚えたらしい。……具体的にはスパロボUX。
まぁ確かに?聖戦士ショウ=コハ=ザマとか、生存ルートだと原作通りに自爆特攻して?それから異世界転移で凄腕戦士になったとかいう、ある意味でなろうみたいなことしてたわけだけどさ?*10
だからって私までそういうことになってる、ってわけでもなかろうよ。……みたいなツッコミは、一応させて頂きたいというか。
今の私のサイズが妖精めいている、というのは間違いではないけども。こんなところでも
まぁそんなことを呟きながら、唐突に謎の躍りを舞い始めた私とキリアを、困ったような笑顔で注意するマシュの言葉に頷きを返しつつ、私達は朝食を食べ進めていた……わけなのだけど。
「……こう、この歳にもなってお人形遊びめいたことをすることになるとは、思ってもいなかったといいますか……」
「Y○UTUBE探すと、ミニチュアサイズの料理作っている人とか意外といるから、それを参考にすることになったんだっけ?」
「そうですね。……まさかの活用法ですけど」
私が食べているご飯は、私のサイズに合わせたモノになっている。……バレンタインがやって来るごとに料理技能が上がっていることの証左とでも言うのか、これらはマシュが動画サイトを参考にしながら拵えたモノである。
その出来映えは、他の面々の食事をそのまま縮小したかのような、とても見事なもので。……『うちの後輩の料理スキルの上がり幅が天井知らずな件について』とかなんとかスレ立てしたくなるほどの衝撃であった。
ただまぁ、それだけならば「うちの後輩すごーい!」くらいで終わる話だったのだが。……今までとは違い、ここには一人招かれざる存在がいるわけで。
「いやいや、愛されてるねぇ~」
「……
「なんの
「わっ!?どどどどうされましたかお二人とも?!」
「止めるなマシュ、こいつはここで息の根を止めなきゃいけないんだーッ!!」
「ふははは笑わせる!お前も所詮は私なんだよーッ!!」
「……ええと、木原マサキごっこ?」*11
にやにや笑いながら、こちらに耳打ちをするキリア。
……キーアは激怒した、必ず、かの
ある意味では同一人物でもある以上、クリスのツッコミもそう間違いではないと脳裏で相槌を打ちながら、今度エミヤさんに対自分の極意的なモノを教わろうと決心する私なのであった……。