なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
……300話……?(宇宙猫)
「はぁ、なるほど?我も大概アレな方だとは思うておるが、それに輪をかけてわけのわからぬモノが出てくるとは……世も末*1、というやつか?」
「へーい、アレなやつでーす。宜しくね☆」
「……もうこの一瞬で付いていける気が失せたのだが、我はどうすればよい?」
「あれー?」
顔合わせの済んでいなかった、前日別所に泊まり込んでいた一人──ハクさんとキリアの初対面は、こんな感じで始まった。
一応性質的には似ていなくもない両者だが、キリアの方が意味わからん度が高いのでさもありなん。……いやまぁ、白面+妲妃なハクさんの方も、意味不明感は結構なものではあるのだけれども。
(・ヮ・)「まおうちがいというやつですなー」
「……ビワのその顔も、なんかスッゴい久しぶりな気分がするよ……」
(・ヮ・)「わちゃわちゃせかいのへいがいゆえー」
変なテンションのキリアにたじたじとなるハクさんを見ながら、ビワの頭を撫でる私。
膝の上にはエーくんもいるため、ここだけ癒し空間というわけである。
癒されなきゃやってられないとも言う。
「……あ、あれ?せんぱいの大きさが元にお戻りに?」
『あ、違うんですよマシュさん。それ、電子世界から容量引っ張ってきて無理やりごまかしてるだけですから、実際のせんぱいに戻るには全然足りてないんです』
「……ええと、色々とツッコミ所しかないのですが……もう一度説明お願いできますか、BBさん?」
『え?あ、はい。ええと、せんぱいの本質が微粒子──限りなく小さいものである、というのはご存じですよね?』
「ええまぁ、はい。以前キリアさんからもお伺いしましたし……」
そうしていつの間にか大きくなっていた私に、マシュが困惑の声をあげる。
そりゃそうだ、小さくなっちゃった!……と慌てていたはずなのに、しれっと元のサイズに戻っているのだから、彼女の困惑は当たり前のモノだと言えるだろう。
なので、これはあくまでも体裁を整えたものでしかない。
『お二方が持つ技能は、基本的には『小さくなるほど優れているとされるモノ』です。そういう風にせんぱいが定めたからそうなのか、はたまた極小の世界の果てには、本当にそんな感じの世界が待ち受けているのか……今の私達の科学では到底わからない話ではありますが、せんぱいの定めた設定というものが、彼らを読み解くのに有意義なモノである……というのは覆しようのない明確な事実であることは確かです』
「……そうですね。卵が先か、鶏が先か。観測者と創作者が表裏一体である時、その筆が描き出すモノは、神の描く
「げふっ!」
「……?キーアは一体どうしちゃったんだい?」
(・-・)「ゆるされよ ゆるされよ かこのじぶんをゆるされよ」
「……よくわからないけど『じごうじとく』ってやつなのかな?」
『……外野がわちゃこちゃうるさいのは、放っておくと致しまして。まぁ要するに設定ノートをちゃんと読み込む、というのが現状を打開する鍵になりうるというのは確かな話。──そこで私は、見付けてしまったのです!』
「い、一体何を見付けてしまわれたのですか……?!」
なんで私の姿が大きくなっているのか。
その理由を説明するBBちゃんと、それを大真面目な顔で聞いているマシュなわけだが。……その内容が『自身の書き綴った設定集について』というのが、なんとも私の胃を攻撃してくるわけでして。
膝の上のエーくんに心配されたり、何故か黒歴史的な感覚を理解してくれるビワ達に囲まれながら、私は素直にそこに座っているのだった。……どっかに行く気力がなくなったとも言う。
『それはですねー……』
「ああ、
「わっ、キリアさん!?……って、『あの方』?」
そんな二人の会話に割り込んでいくのは、話をしていたハクさんをまんまと宇宙猫状態に追い込んだキリア。……注意してなかったからなんとも言えないが、一体何を吹き込んだのだろうかこの人……?
こちらの怪訝そうな視線に気付いた風もなく──もしくは気付きつつも意図的に無視しながら、彼女はBBちゃんが設定集から見付けたとある
「私達『
「は、はぁ。……アルファからオメガまで、というと……?」
「例の宗教がインスピレーションに含まれていた、ってのは間違いないでしょうね。……まぁ難しく考えずに『最初から最後まで』って受け取り方でいいと思うわよ?……まぁ、彼女のそれは
今語られているのは、私が昔作った設定の内の一つ──
凄いもの、というととてもあやふやだが……これは『強い』という表記を嫌った結果のモノであり、本質的にはずっと口にしている『弱いモノ』──それも彼女の場合は『
……この時点で私が常々口にしていた『最弱』云々の話は嘘になってしまうわけだが、そもそも『星の欠片』の強弱は語る意味が薄い*4ため問題はない()
……まぁともかく。
私の作った設定の中で、一番凄いもの──それより小さいものが存在しない相手、というのが件の彼女。いわゆる『名前を言ってはいけないあの人』*5なのである。……畏れ多いから名前を呼べないというだけではなく、不用意に呼べば彼女の目覚めの条件を満たしかねないから、というところもなくはない。
で、その彼女がどういうものなのか、というのが……。
「電子の世界の零と一……?」
『いわゆる二進数*6ですね。件の彼女とやらは、物質世界を零と一で構成・分解できてしまう存在なのだそうですよ?』
「それよりも小さいものがない、という点から電子世界を構築する二進数を現実にも当てはめる、って案を思い付いたんだってさ。
「こっちに話を振るんじゃないってのっ!!」
「おー、怖い怖い」
こちらに振り返りながらウインクをしてくるキリアに、がるるると唸りながら答える私。
……自身の元となっている人物だから、根本的には相性は良いはずなのだけれど。こっちの遠慮とかを見越してからかってくるため、結局苦手なタイプの相手になっているわけで。
なんというか、こういうキャラだっけこの人?というか、実在してるんだから、そういうこともあるだろう……というか。
なんにせよ調子を崩される相手である、ということに間違いはないだろう。
そんな私達のやり取りを見ていたマシュが、おずおずと手をあげている。
「ええと、もしかしてなのですが。……同じ存在である以上、両立させるのには相応の手間がいる。──それ故に、片方をより低いもので代用しようとしている、ということなのでしょうか……?」
「そうそう、大正解。私は設定的には結構な下位存在だから、そこから自分の分を持ってくる……ってのは結構無理があるのよ。だから、性質的には同一となるモノ──現実の零と一ではなく、電子の世界の零と一で体を補ってみている……ってわけ」
「微粒子としてのあり方が、件の作品の『素詞』に近いものだからこその荒業だけどね。……実際、こうして大きくなれてはいるけど四肢の感覚が微妙だし、時間制限もあるしで散々だし。……まぁ、そこの魔王を撃破するつもりがないなら、こっち方面から進めないとなんにもならないってのも確かなんだけど」
「ん?挑戦ならいつでも受け付けてるけど?」
「喧しいわよ!千日手ならまだしも、下手したら消え失せるでしょうが私がっ」
彼女が発言したのは、私の現在の体を補填している容量が、電子の世界からもたらされているということの理由についてのもの。
性質が似通っているのなら、代替できるかもと試すのはよくある話。……今回の場合は、私よりも確実に小さい構成要素である『零と一』──『零弌概念』に近いモノである電子の世界、その容量を私の体の構築に使うという荒業を行った結果がこれ、ということである。
これを応用できるのなら、本当の意味でのフルダイブ形式のゲームも作れるかもしれないが……わりと真面目に霊子ダイブとかの方に発展することになってしまうため、特にどこかに研究させるようなつもりはない。
そういう方面で使うのなら、ネットワーク世界にヤバい案件が起こった時くらいになるだろう。
……なんか変なフラグが立った気がする?気にするないつものことです(白目)
まぁともかく、今の私が『私』という核に電子の鎧を纏っているようなもの、というのは確かな話。
それが短時間のモノとはいえ、今の私は明確に
「……っ!だ、だだだダメですせんぱい!そのやり方は承服しかねましゅ!!」
『おやおやマシュさん?そうなると長期間せんぱいは小さいまま、ということになりますが~?』
「問題ありません!私が面倒を見ますので!!」
『!?』
……こうして後輩達が争い始めるのも、ある意味予定調和なのだった。
…………だからこっちを面白そうに見つめるんじゃねぇってんですよキリア!