なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ええと、こいつは一体……?」
「火星猫、ってやつですね。漫画『ARIA』などに登場する猫的な生物の一種で、一応猫に区分されるけれども、普通の猫みたいににゃあとはほとんど言わないというか」
「か、火星?ってことはここ、火星なのかい?!」
私達を取り囲む双眸、その内の一組がこちらへと進み出でてくるのだが。
それを見たヘスティア様の反応は困惑。……さっきの鳴き声と合わせて、おおよそこの状況で現れるはずの存在──言ってしまえば普通の
とはいえ、それは
彼等は火星猫。文字通り火星に住まう猫であり、人語を解すると明言されている通り、普通の猫よりも頭がいい……いいのか?
……まぁともかく、多種多様な──それこそ小さな
さっきの鳴き声を聞けばわかる通り、普通の猫みたいに『にゃあ』となく個体は(少なくとも作中においては)少なかったわけだけども。*1
ともあれ、こちらの説明を聞いたヘスティア様が、真っ先に食い付いたのは彼等の生態……ではなく、名前に冠されている『火星』の文字。
彼等の種族名が生息地から来ているのであれば、確かに現在地は火星、ということになってしまうだろう。
が、しかしだ。よーく考えて頂きたい。
確かに彼等は火星猫、本来であれば火星に住まうのが筋、というものである。
だが私達の世界──現実において、火星に住まうなど夢のまた夢、まだテラフォーミングすら開始しておらず、火星には水の都どころか、魔法世界もなければテラフォーマーだって居ないのである。*2
で、あるのならば。
「……ボク達がいる場所が火星であるという推測は、そもそも彼等の種族名からのもの。ゆえに、ここが火星であるとする理由としては弱い、ということだね?」
「まぁ、もし仮にここが火星だとするのなら、現実の火星じゃなく異世界の火星、って思う方が自然だろうね」
「ん、んん?……いや、結局ここは火星なのかい?そうじゃないのかい?」
「どちらとも言える、まだまだ心眼が足りん」
「だから、なんで君までサム8語使ってるんだよ……」
普通に考えるのなら、火星猫達が生息しているけど実際は地球上だとか、仮に火星だとしても現実のモノではないとか、そういう答えになるだろう。
なりきり、ひいては『逆憑依』に纏わるあれこれというのは、結構オカルトな事態を引き起こすものではあるが──流石に、遠く離れた火星にまで影響を及ぼすようなモノだとは思えない。
いやまぁ、例えばセーラー服な美少女戦士がいるだとか、キリトちゃんがリアルで能力を使えるようになって、
今のところ月に代わってお仕置きされるような気配はないし、キリトちゃんが星の王の位を冠しそうな気配もない。
その辺りは心配するにはまだ早い、というのは確かだろう。
まぁ、そこまで言っておいてなんなのだけれど。
わざわざサム8語で答えたように、ここが火星であるかどうか、というのは見方次第なところがある……というのも確かなわけでして。
「……どういうことだい?」
そんなこちらの言葉を耳聡く聞き付けたCP君が、こちらに尋ね返して来る。横のヘスティア様も怪訝そうな顔をしているので、答えないわけにもいかないだろう。
……まぁ、
なので私は、素直にここがどこかなのを口にするのだった。
「ここはね、
「「……は?」」
返ってきたのは、綺麗なまでの異口同音だった。
「ええと、ちょっと待ってくれ?確かそれって、君が最近魂だけになって行ってたとかなんとかっていう、あの?」
「そうそうあれです。──そこまで聞いたのなら、私がなんで大きくなれたのか、とかもわかるんじゃないです?」
混乱するヘスティア様を横目にしつつ、私は足元にすり寄ってきた一匹の火星猫──白くてもちもちした姿の、さっき真っ先に鳴いていた一匹──をそっと抱き上げる。
先日と変わらず『ぷいにゅー』と鳴くその姿に、こちらへの確かな信頼を感じつつ。私は彼に「先日ぶりですね、アリア社長」と挨拶を返す。
人語を解す猫である彼は、そんなこちらの言葉に『ぷいっ!』と右手をあげながら返してくれるのだった。
……うむ。
「あーもぅアリア社長はかわいいですねぇ~!」
「ぷいぷいっ」
「え、気分がいいからなでなでしていい?よっ、社長!商売上手!うりうりうりうり~」
「ぷっぷぃ~」
「……なぁ、キャタピー何某。あの崩れに崩れまくったキーアの姿、ほっといていいと思う?」
「写真に納めようとかしなければ大丈夫だと思うよ」
「……なんだいその、微妙に実感の籠った言葉は?」
「似たような状況下で写真取ろうとしたら、カメラぶっ壊されたことがあるんだよね……」
「まさかの体験談だった」
そんな感じでアリア社長との交流を楽しんでいる内に、二人の困惑は解消されたらしい。
抱き上げていたアリア社長を地面に下ろし、そのまま彼の先導に沿って歩き始める私達である。
さて、さっきの質問の答えだが。
それはとても単純な話。【
……この場合の『彼女の居ない場所』というのは、
それ以外の場所であれば、
……え?わかり辛い?じゃあ簡潔に。
キリアが居なくて、かつ魔力が空気中に芳醇に溢れているハルケギニア。ここでは私も変身用の魔力を空気中の魔力……いわゆるマナから補填することで、元の姿に限りなく近い状態に変化できる、ってこと。
あくまで『近い』なのは、普通にキーアに戻るとこっちにいる『キーア・ビジュー』の方との存在被りを起こすため。
なので、今ここに居る私はキーアでもなければキリアでもない。
こっちでの役割を新たに設定し直した、キーア・ビジューの専属騎士──シルファ・リスティなのである!……なおこの名前も昔の設定ノートから引っ張ってきたモノの捩りである。お前そればっかだな、というツッコミは甘んじて受けたい所存だ。
「……ええと、とりあえず今の君は安定している、ってことでいいのかい?」
「まぁ、そうなりますね。キーアでもキリアでもないので、どっちの状態にも左右されないですし。……まぁ代わりに出来ることがちょっと減ってますが」
「はぁ、よくわからないけど大丈夫そうならいいよ。……それで?僕達は一体どこに向かっているんだい?」
「ええと、以前私達がハルケギニアに行った時の話って、どれくらい聞いたことがあります?」
「んん?」
そんな事を道中話しながら歩いていたわけなのだが、ヘスティア様はわかったようなわからなかったような、微妙な表情を浮かべていた。
……まぁ、ポンポン新しいキャラを付け加えているようなものなので然もありなん。
とはいえ中身は変わっていないので、『シャア・アズナブル』と『クワトロ・バジーナ』と『キャスバル・レム・ダイクン』との違い、くらいに思って貰うのが一番わかりやすいだろう。……え?余計にわからん?*3
ともあれ、こっちでは色々なしがらみから解放されて、わりと自由に動けるというのは事実。
特に用事もなくこっちに来たくなる、なんて気持ちも少なくはないが……今回のあれこれは、別に私が望んで起こしたこと、というわけではない。
さっきまでの行動を思い返して貰えればわかると思うが、私達はあくまでも街の中をあてもなく散策していた、というのが正解。
ここに辿り着く為にあるものを探していた、というのは確かだが、それを狙って起こしたわけではないというのは留意して頂きたい。
それを念頭に置いて貰った上で、改めてヘスティア様に質問を飛ばす。
それは、私達──キーアとマシュが、あの草原からハルケギニアへと飛ばされ、そこからアンリエッタと妖精マーリンを連れ帰った時の話。
私達は異世界であるハルケギニアにおいて、色々な出会いと別れを経験する、大スペクタクル巨編?を送ったわけなのだが。
その中の一つ、王都トリスタニアは元々の『ゼロの使い魔』に対して、明確に変わっている点が存在していた。
それを知っているのであれば、現状がどうなっているのかというのはすぐにわかるわけなのだが……生憎とヘスティア様は、その辺りの子細は聞いていないらしい。
こてん、と首を傾げるその姿は可愛らしいが、話を進める上では面倒な状態、であることは間違いなく。
小さくため息を吐いた私は、いつの間にか路地裏を抜けようとしていたことに気付き、見て貰った方が早いと一人頷く。
「まぁ、ややこしいことは抜きにして──ようこそヘスティア様、水の都・王都トリスタニアへ。ARIAカンパニー一同、貴方様のご来訪を、心より歓迎いたしますよ。……ね、アリア社長?」
「ぷいにゅっ!」
「へ、あ、えええええーっ!!?」
路地裏から抜けたそこは、まさに別世界。
白い壁と張り巡らされた水路が美しい、異世界の王都・トリスタニア。
その一画に居を構える、
原作と同じように、水辺に面したその場所でこちらに手を振る面々達にこちらも手を振り返しながら、私は驚くヘスティア様の手を引いて、彼女達の元へと歩き始めるのだった。