なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なんでこう、このゲームはところどころに心臓に悪い描写をぶち込んで来るんですかね……」
「ある意味的確なタイミングだからな、狙ってるんだと思うぞ」
「わかった、もし顔を見ることがあるなら、制作者は一回ぶん殴ってやる……」
「せ、せんぱい落ち着いてください!せんぱいが全力を出したら確実に肉塊になってしまいます!!」
あれこれと騒ぎながらフィールドに移動した私達。
……見たところ、普通の草原のような?
「とりあえず、どんくらい動けるかの確認だっけ」
「パラメーターの暴力でゴリ押し!……みたいな事ができれば一番楽なんですけど、そういうのを制作者が嫌ったのか、基本的にはダークでソウルな感じになってるみたいです。……いえ、流石にあれよりは難易度低いみたいですけど」
「ブラッドでボーンな感じ?……ってことは基本的に相手をちゃんと見よう、みたいな感じなのかな」*1
死に覚えゲー*2、というほどではないのかも知れないが、まぁある程度リズムと言うか、敵の行動の隙を見極める方向のMMO、と言うことらしい。
……レベル無しのRPGは幾つか知ってるけど、レベル無しのMMOというのは未知の領域だ。いや、探せばあるらしいけど触ったことはないと言うか。
なので、ある程度慎重に進めようと思って。
「あ、敵シンボルですね。あれに触れるとエンカウントしますよ」
「シンボル型なのね。んじゃま、とりあえず」*3
BBちゃんが指差した全体的に黒っぽい不定形のモンスターに触れると、視界がぐにゃあ、と曲がってエンカウントした!って感じの音が鳴り響いた。
……RPGお決まりの戦闘フィールド移動時のエフェクトだけど、VRだと地味に酔いそうになるなこれ。
なんて思っていたら、エンカウント音のあとに鳴り始めた戦闘BGMに「ん?」ってなり、目の前に現れた敵にさらに「んん?」となった。
……んー待て待て。一つ一つ解決していこうか。
まず鳴り響いてるこのBGM。
特徴的な入りと、死の先に逝きそうな感じのこれは……。
「未確認神闘シンドローム*4ですね。聞いてるとなんというか、アガって来ますよね!」
「いや確かに好きだけど、なんで通常戦闘BGMこれなのさ……」
ボス戦では我と共に生きるは冷厳なる勇者、みたいなBGMが出でよするんだろうか?*5
なんて感じに思いつつ、まぁ?これを戦闘BGMにしたいと言う?その気持ちは買わなくはないけども?
みたいな感じで、エンカウントした敵キャラの姿をよーく見てみる。
……帽子と服が卵の殻になっている、カメのようなモンスター。
ちょっとデフォルメされている、その姿を見て思い浮かぶものはただ一つ。
「なんでこのBGMでコワッパとエンカウントしてるの?バカなの?」*6
コワッパです
じげんのかべをこえて
ここまできたみたいですよ?
さいだいHPは『40』で
こうげき力は『6』ぼうぎょ力は『1』
さいごのたたかいのあと なので
けっこう つよいみたいですよ?
でもまあ せんぱいなら
すぐ やっつけられますよね?
「BBちゃんはBBちゃんでなんで『ものしり』してんの?!」*7
「……てへ♪」
「いやてへじゃなくてさぁ!?」
まさかのコワッパである。
……強いのか弱いのかわからないんだけどぉ!?
い、いや落ち着け私。こんな草むらに出てくるんだ、大したことない単なる雑魚モンスターって可能性も……。
「あ、レアエンカウントモンスターなので気を付けてくださいねせ・ん・ぱ・い♡」
「クソァッ!!」
知ってた!キーアん知ってた!
だってこの子、普通にそこらのボスよりも強かったもんね!!
『三爪痕』が許されるんだから、そりゃコワッパもそれなりのスペックだよねクソァッ!!
「決めたぞマシュ、このゲームの制作者にであったら絶対にぶん殴るぞ私は!」
「お、落ち着いてくださいせんぱい!何度も言いますがせんぱいが本気で殴ってしまってはいろいろとお見せできない事になってしまいます!」
「それでも私は!それを目標に進んでやらぁっ!!」
(……いろいろと大丈夫なのかこいつ)
ハセヲ君からの視線がどんどん可哀想な人を見るものに変わってる気がするけど、私は自分を曲げないよ!*8
「いやマジで強かったんだけど、なんなのあれ……」
「その代わり、レアアイテムをドロップしたみたいですよせんぱい?」
「……『コワッパのかんむり』って、何に使うのこれ……?」
あんまりにもあんまりな激闘を越えて、バトルフィールドから普通の草むらに戻ってきた私達。
……まさかアグモンのベビーフレイム*9が効かないとは思わなんだ。あの卵の殻、生意気にも耐火性抜群でやんの。
まぁ、その代わりというか、モーションとか技はわりと見切りやすいものばかりだったんだけどね。
これで動きまでお排泄物(できうる限り婉曲な表現)*10だったら投げてたよ、小さくて攻撃当て辛いし、じり貧になるかと思った。
「最終的に氷系の魔法で動きを止められる、って気付いたからどうにかなったがな」
「魔法使いジョブでよかったとしみじみ思います。……防御力1なのに堅すぎだってあれ」
「あ、すみません。あれ気分でそう言っただけで、ホントは結構防御力高いみたいですよ?」
「BーBーちゃーん?」
「ひえっ、ごめんなさいせんぱいつい出来心で!」
まさかの『ものしらない』だったBBちゃんにちょっとおしおきしつつ、しばらくマップを徘徊。
……クリボーだのスライムだのが居たかと思えば、
はたまた
その台詞がキーになったのか、筋肉モリモリマッチョマンの変態が、ロケラン担いで追ってきたので必死で逃げたり。*13
そんな感じに、正直意☆味☆不☆明*14な状況に西に東に振り回されながら、私達は息も絶え絶えにポータルまで戻ってきていたのだった。
「いや、おかしい、どう考えてもおかしい!こんな最初のマップっぽいところでエンカウントしちゃいけないモノばっかりに出会ってる気がする!」
「あのままフィールド探索してたら、ハムスターに出会ってた気がします……」*15
「聞きたくねーんだが、それってセラゲの奴か?」*16
「セラゲの奴です、大量に突っ込んできて物理的に星にされる奴です」
「ぼ、ボクこの姿のままでやってける気がしないんだけど……」
い、意味わからねー……。
レベル差による安全マージン*17すら取れないのに、レアエンカとはいえラスダンに出てくるようなモンスターがうろうろしてるとか、どう考えてもお排泄物ゲーやないけ……。
……いやだからか、なんか鳥頭の男が居たような気がしたのは……。
「あの人、一般PCでしたよ?」
「リアル狂人が湧いてるとか、どう考えても初心者向けのマップじゃないじゃん!!やめやめ、一旦帰ろ真面目に!」
「さんせー、ボクもうお腹ペコペコだよぉー」
「……ああ、俺もちょっと、休憩したいなこれは……」
彼がなりきり板の民じゃないという、逆に恐ろしい話を聞いて、やってられるかとアークス・ロビーに帰ってきた私達。
そのままカフェにとんぼ返りして、みんなで好き勝手飲み物や食べ物を頼む。
もうやけじゃい、やけ食いじゃい。
甘いもの食べてストレス発散じゃい。みたいな感じで、さっきアグモンが頼んでいたジャンボパフェを頼む私。
「申し訳ございません、ジャンボパフェは売り切れになっておりまして……」
「ゲームの世界で売り切れ?妙だな……」*18
「はいせんぱい、小さな死神召喚呪文は禁術ですよー」
「マジか。……いやまぁ、確かに下手に呼ぶとヤバイのは確かだもんねぇ」
そしたら、ジャンボパフェは売り切れている、と店員さんに言われてしまった。……ゲームの世界で売り切れとはこれいかに?
みたいな感じに妙だなと思っていたら、その言い方はコナン君の疑い方なのでよくないとBBちゃんに釘を刺されてしまった。
……うーむ。電脳世界であっても彼の死神体質は効力を発揮するのか、ちょっと気にならないでもないけど。
ある意味彼の存在はパンデミックを引き起こすようなものでもあるので、そういうのを気にせずに居られるなりきり郷内に居て貰うのが一番安心かなぁ。
……いやまぁ、本人は再現度低いからそうそう事件に巻き込まれることはないって言ってたけども。
「うーむしかし、この溢れるパフェの気分をどうしたものか」
「パフェの気分?……よくわかんねーけど、他のもんじゃダメなのか?」
「こういう時の食べたいものって、
他のものじゃダメなのか、と聞かれて他のじゃダメなんだよ、と返す私。
こういうのはそれを食べようって気分で店に来てるから、それが解消されないのはそれはそれでストレスなわけ。
……まぁ、無いですって言われた以上、私にできることがないのも確かなわけなんだけど。
「なるほど、じゃあ俺がなんとかしましょうか、素敵なレディ」
「……はい?えっと、私?」
なんて風にちょっとむっとしていたら、後ろから声を掛けられた。……いや、レディて。私中身的には男なんですけど、みたいな感じに後ろに振り返って。
「……あー!!サンジ君!?」
「よっ、こんなところで会うとは奇遇だなキーアさん?」
そこに居た人物と、その話し方に知り合いの姿が重なって。
……祭で話をしたことのあるキャラの一人、ワンピースのサンジ君じゃん!
「いや、なんでここにいるの貴方?」
「ちょっと野暮用でね。それと、そちらのお嬢さんと連れについて紹介して貰える?」
「え、ああ。えっと、BBちゃんとハセヲ君、それとアグモンだね」
「あ、はい。私はBB、上級AIのBBちゃんです」
「ハセヲだ、よろしく」
「ボクアグモン!よろしくね!」
「はいよ、BBちゃんにハセヲ、それからアグモンね。こっちこそよろしく、それと」
みんなに紹介をして、みんなが自己紹介を返して。
一連の流れを終えて、サンジ君が淀みの無い動きでBBちゃんにかしずいて、彼女に料理を差し出した。
「こちら、ご注文のフォンダンショコラです」
「え、あ、はい、ありがとう、ございます?」
……相変わらず本家のサンジ君より芝居掛かった動きである。
というか、その台詞的に君ここで働いてるの?
なんて私の疑問が伝わったのか、彼はこちらにニッ、と笑みを向けてきて。
「詳しい話、聞く気はあるかい?」
なんてことを私達に問い掛けてくるのだった。