なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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夏なら水撒き水を浴び

「……単純に辛ぇんだけど!!?」

「ミラルーツって、結構大きいタイプのドラゴンだもんねぇ」

 

 

 ガシガシと鱗を磨きながら、銀ちゃんがうがーっ、と声をあげる。

 

 お昼のあとから始めたこのドラゴン磨きであるが、みんな頑張ってはいるものの、中々終わる気配は見えてこない。

 それもそのはず、あさひさんの本体である龍体とは、すなわちミラルーツ。……西洋の竜としての恵体(けいたい)を持つ彼女は、普通に考えて巨大すぎるのである。

 

 背中に乗ったり翼を磨いたりするのは相応の重労働、細かいところの手入れも更なる重労働。

 幾らユニバースな能力持ちで飛び回れるXちゃんが居るとはいえ、単純に考えて手数がまったく足りていないのであった。

 

 

「いや寧ろこれ、どうやって終わらせる気だったわけぇ!?どう考えても他の仕事する余裕ないよねぇ!?」

「おっ?その言葉が出てくるということは、つまり銀ちゃんは他の仕事もちゃんとやろうとしているってことでいいのかな?かな?」

「ぬぉわっ!?こえぇよ止めろよ、そのノリでゆらゆら近付いてくんの!?」

「えー?RFI(レナフラッシュインパクト)も使ってないんだから、まだまだぜんぜん怖くないよー?」

「初手から『れなぱん』ですらねぇ!?」*1

 

 

 なのでまぁ、銀ちゃんから弱音が飛び出すのは想定内。

 だってどう考えても、他の仕事に対して手が回らないからね!

 

 無論人材をざかざかと贅沢に投入しまくれば、一先ずここでの仕事は終わるだろうけども。今回に関しては、そもそも()()()()複数の仕事を終わらせようとしていた、ということを念頭に置く必要性がある。

 ……要するに、周囲の人々にこちらを手伝うような手隙があるか、と問われればノーとしか言い様がない状態というわけで。

 

 そうなってくると、どうやってこの大量の仕事達を片付ける気だったのか?……なんて疑問が浮かんでくるわけだけれど。

 そんなもの、私が居るんだからやることは決まっている……という風に返すのが礼儀、ってもんなわけでもあるのです。

 

 ヌルフフフ*2と笑みを浮かべる私の姿を見て、銀ちゃんは冷や汗を一筋流しながら、ザリ……と後退りをしている。

 その後退の理由は一体なんなのかと言うと──さっきの擬音からわかる通り、彼から見た私の笑みが()()()()()()()()()()()()()()ということに他ならないだろう。

 

 ゆえに銀ちゃんは、助けを求めるように周囲を見渡すわけなのだけれど。

 ここに集合している彼以外のよろず屋メンバーは、露骨に彼から目を逸らしており、決して彼と視線を合わせようとはしない。

 ──助けに入れば最後、自分もまた魔王の愉悦の毒牙にかかってしまうことが、目に見えきっているからだ。

 

 そして、そうやって彼が助けを請おうと手間取っている間に、私は『かなかな』言いながら銀ちゃんに近付いているのかな?かな?……もとい、じりじりと近付いているわけで。

 

 

「み、みぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……

 

 

 銀ちゃんの絹を裂くような悲鳴が青空に響くまで、そう長くは掛からなかったのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふふっ、に、似合ってますよ、銀時くn()ふふっ」

「か、可愛くなり、ましたね銀さん……ふふっ」

「……てめぇら、どうせ笑うんならもっと大笑いしやがれってんだちくしょう……」

 

 

 わなわなと震える銀ちゃんと、そんな彼の姿を見てぷるぷると笑いを堪える、残りのよろず屋メンバーの二人。

 

 私は一仕事を終えて満足……もとい、これから一仕事が始まるわけなので張り切っている最中。

 仕掛けは上々、とくと我が策ご(ろう)じろ……とまぁ、ライネスっぽい言葉*3も飛び出すほどの上機嫌というやつである。

 

 はてさて、現在の私達がどうなっているのか、と言うと。

 

 

「それにしても……確かに、変身機能が既にアンロックされているのであれば、魔法少女らしく分身するのは理に(かな)っていると言えますね」

「魔法少女は分身するもの、っていう感覚はよくわからないけど……でもうん、最初から()()()()()()()()()()()()っていうのは、言われてみれば確かにって感じだよね」

 

 

 寧ろそれ以外で間に合わないよね、なんてことを言い合う二人の姿に、うんうんと頷く私。

 

 そう、彼女達が言っている通り、私()は現在複数人に増えているのである。

 これが、今回の多すぎる仕事を片付けるための策その一、『影分身』!

 ……いやまぁ、例によっていつもの如く、魔法少女としての変身機能に分身機構を混ぜ込んだ形になっているから、正確には幻影とかミラージュとか、そんな感じのファンタジックな呼び方にするのが正解だとは思うけども。

 

 ともあれ、分身技能が使えるのなら仕事の効率は倍。……どころか、きちんと的確に人員を分配できるのであれば、その効率は何十倍以上にも跳ね上がっていくわけで。

 まさに人海戦術、まさに数の利、まさに多数決の暴力!……最後は違うか。

 

 まぁともかく、『戦争は数だよ兄貴』*4は古今東西あらゆる場所で言われている真理。

 仕事についてもそれは同じこと。手数が足りないのなら増やしてやればいい、人員が足りないのであれば増えればいい、という脳筋的な解決法が、今回私達が選んだ答えなのでありました。

 

 ……ただまぁ、そんな素敵な理論にも、穴はあるというもの。

 具体的には現状の私は『自分自身を増やせない』ため、それをクリアするには一手間二手間必要だったわけで。

 キリアがいる環境下でキーアを増やすのは自殺行為。ゆえにこそ、シルファとしてここにあることで、あれやこれやと色々裏道とか使いまくって影分身……みたいなことを画策していたわけなのですが。

 ……お察しの通り、シルファ状態でいるのは暫く止めといた方がよい、という結論に至ったわけで。

 

 一応、キリアが居ないところでシルファに戻る……という手段もなくはないのだけれど、これには一度ハルケギニアパワー(正確には向こうのマナ)を集め、そこから変身……という手順を踏む必要がある。

 ……ぶっちゃけると咄嗟には変身できないし、現在ハルケギニアとのゲート(世界扉)が私の部屋のクローゼットに設置されている関係上、どうしても変身後に彼女(キリア)の目を盗んで外に出る必要がある……という、ここに来るまでの行程に踏破不可能な難題が一つ、横たわったままという問題が浮上するわけで。

 

 ……わざわざ妖精サイズに戻ったのは、それ(シルファの姿)が彼女を母として起動させてしまうがゆえ。

 要するに、外に出たいのならシルファの姿ではダメなのに、外ではシルファの姿を求められている……というロジックエラーが起きてしまうことになっている、ということになり。

 結果、シルファの姿でなければできない『影分身』も、自動的に『現状では選べない選択肢』と化してしまったわけなのでございました。

 

 ……え?じゃあ今はどうしているのか、って?

 よくぞ聞いてくださいました、この問題の解決には、『シルファ』自体も『変身の産物』という事実が、ふかーく関わってくるわけなのでございます。

 ……話が長い?いいから結論を話せ?まったくお客様方はせっかちで困る。いいですか、こうして話を長くながーく引き伸ばすことにより、とある人物の羞恥心を多量に煽ることができるわけでですね?

 

 

「喧しいわっ!!いいからさっさと進めろこのバカ妖精!!」

「おおっとこれは失礼しました銀ちゃん……もとい()さん!いやー、銀髪プラス魔法少女がこうなるとは。あれですかね、既に似たような属性のチノちゃんがロリライネスで埋まってるから、変な風に世界が配慮してくれたとかですかね?」

「喧しいんだよ、いいからさっさと進めろぉっ!!なんか知らねぇけど、この姿だと俺が俺じゃなくなっていく気がして怖ぇんだよぉっ!!?」

「ほうほう、女体化特有の精神の変化と言うやつですね?……いやでも銀ちゃんって、本編でもわりとぽんぽんTSしてませんでした?ほらショートカットのあれとか。……あ、こっちは半ば【継ぎ接ぎ】が混じってるから、その辺りも普通のとは違うんですかねぇ?……TS先輩のキリトちゃん、呼びます?それともウォッカ飲みます?」

「うぜぇぇぇぇえっ!!!なんでこいつこんなテンションアゲ()アゲ()なんだよ、最早気持ち悪いわっ!!?」

「おや言ってませんでしたっけ?私ってばTSジャンルでは『徐々に女性メンタルに染まっていく男性萌え』なのですが」

「誰もテメェの性癖の開示なんぞ求めてねぇぇぇぇっ!!!」

 

 

 私達のやりとりに、ついには大爆笑して腹を押さえ始める女性陣二人。

 

 それもそのはず、私が今肩に乗っている相手は、『艦これ』の駆逐艦・暁型の二番艦である『響』そっくりの少女だったのだから。

 無論、これは別にどこからか響を呼んできた、というわけではなく。画風の変化などからわかる通り、これの中身は銀ちゃんなのである。

 

 話せば長くなるのだが……短く説明しろ、と言われた気がするので簡略化して説明すると、私の『シルファへの変身技能』の基幹にもなっているとある技能──『魔法少女への変身技能』を、ちょちょいっと範囲と方向性を弄って、銀ちゃんもその範囲に含めたのが、この事態の理由。

 

 すなわち、ここにいるのは『魔法艦載少女・銀時』!……響の顔で汚いツッコミすんな、とかなんとか言われそうだが、その内ウォッカ引っ掛けながらスパシーバとか言い始めるので問題はないはず。*5……『響だよ』?『こいつは3getロボ』?……うっ、頭が……!*6

 

 まぁ冗談はさておき。

 手数が足りないので増える必要がある、というのは先述の通り。

 とはいえ私は増えることはできないので、どうしたものか……という問題を解決するために今回行ったのが、私が魔法少女のマスコット役にスライドして、他の誰かを変身させてしまう……という方法である。

 この方法は今の私にも行える──やることは周囲のマナを使って相手を変身させるだけ──ということもあり、次善の策としてはかなり有効な手であったため、今回こうして採用された次第である。

 

 

「おかしくねぇぇぇぇっ!?別に俺が変身する必要性なくねぇぇぇぇっ!!?」

「なにを言いますやら銀時さん。私は別に琥珀さんじゃないので、誰でも彼でも変身させられるわけじゃないんですよ?」

「別にあの人も、誰彼構わず変身はさせられなかったよね?!……いや待てなんで目を逸らした!?」

「えーと、私の手による他者の変身は、言うなれば上から服を投影しているってのが近いわけよ」

「聞けよっ!?」

「うっさい銀ちゃん」

「ほげぇっ!?」

「あっ」

「ぎ、銀時くーん?!」

「ぎ、銀さんしっかりしてください!?」

 

 

 なお、人が折角説明してあげようとしているのにも関わらず、こちらの話を遮り続ける銀ちゃんにちょっとお灸を据えたのだけれど……。

 ちょっとやり過ぎたらしく、銀ちゃんはそのまま地面に沈んでしまうのであった。

 

 

「……私は放置っすか?」

 

 

 倒れてしまった銀ちゃんの周りで慌てふためく私達を見ながら、あさひさんはぽつりとそう呟くのでしたとさ。

 

 

*1
『かな?かな?』と繰り返す語尾、『RFI』に『れなぱん』……。これらは全て『ひぐらしのなく頃に』竜宮レナに纏わるワード。なお、『かなかな』は『ひぐらし』の鳴き声の擬音。他、沙都子の『にーにー』は『ニイニイゼミ』、魅音の『くっくっくっ』は『ツクツクボウシ』、梨花の『みぃー』は『アブラゼミ』の鳴き声をモチーフにしている、という話がある

*2
松井優征氏の作品『暗殺教室』のキャラクター、殺せんせーの笑い方。なおこの笑い方の時の殺せんせーが浮かべる笑みは、相手を舐めきった感じのものである

*3
fgoにおける司馬懿としての宝具台詞から。正確には『渾沌に七穴(しちけつ)、英傑に毒婦。落ちぬ日はなく、月もなし。とくと我が策御覧(ごろう)じろ、【混元一陣(かたらずのじん)】!』

*4
『機動戦士ガンダム』ドズル・ザビの台詞。劇場版である『めぐりあい宇宙』から追加された言葉で、たった一機のモビルアーマーしか自身に寄越さなかった、兄であるギレンに対して彼が憤りと共に述べた台詞である。なお、最初は一機だけしかないことに腹を立てていたドズルだが、そのモビルアーマーがビグ・ザムだったこと、およびその機体性能を目にしたことにより、一転して喝采したりもしている。ともあれ、戦いにおいて数が重要、というのは自明の理。昨今においても名台詞として、様々な場所で使われている……

*5
響のもう一つの顔、ヴェールヌイはロシアに賠償艦として引き渡された駆逐艦・響が、そちらで名前を付けられた結果としてできあがった姿。ロシアみ溢れるキャラと化している為、二次創作などではよくウォッカを飲んでいる

*6
『フリーダム響』および『3getロボ』から。『響だよ』そのものは、彼女の自己紹介文である『響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ』の手前部分でしかないのだが、後に『響だよ』と言いながら無茶苦茶し始めたり、はたまた『○○だよ』などとモノの解説をするフリーダムな響が現れ始めたのだった。『3getロボ』は自動で掲示板の『>>3』をゲットしてくれるすごいやつ。添えられている文章が『3ゲットロボだよ 自動で3ゲットしてくれるすごいやつだよ』と響の口調によく似ている為、どこかで混ざったりしたのかもしれない……

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