なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……え、このお店PCがやってる店なの?」
「そうそう。俺もシェフの一人ってわけでな?」
休憩時間になったらしいサンジ君が、私達の席と相席になるように椅子を持ってきて座った。
……MMOには生産系の追加要素というか、別の遊び方が用意されていたりするものだけど、この『tri-qualia』でもそういうものがあるらしい。
そのうちの一つが、料理を作るというものなのだそうだ。
「モンスターによっては料理素材を落とすんだが、それを使っていい料理を作るには高位のスキルが必須でな。より上質な素材を使って腕を磨くってのは、俺達みたいなシェフにとって息をするよりも自然な事なんだよ」
「へー……」
MMOの楽しみ方の一つである生産職。
その枠組みの一つである料理だけでやってけるようになったんだな、なんて変な感慨を覚えつつ、先の彼の発言について問い掛ける。
「ああ、ジャンボパフェにはフルーツやミルクが必要なんだがな?素材が切れたからちょっと一狩り行こうか、みたいな感じになっててな」
「……あーなるほど。採ってくるから待っててね、みたいな感じだったわけね」
彼の言葉に、売り切れた理由を理解する。
……完全に単なるデータだったら、売り切れなんて起きるわけ無いけれど、実際はちゃんとした製作アイテムだった、というわけだ。
「で、キーアさん達はいろいろ調べてるんだろ?なら大当たりだ。ここを経営してるPCは、いわゆるなりきり組だからな」
「!なんと、初手で当たりを引いてたか私ら」
「すごいねキーア!」
ついでサンジ君から飛び出した言葉に、一同びっくり。
……あれ?でもここってコラボロビーなんだよね?って思っていたら、その辺りも説明してくれた。
要するに現実のコラボカフェと一緒で、大本のお店に『この作品とコラボするので内装とかメニューとか合わせて下さいねー』って感じに運営本部から依頼が来て、それに合わせるように内装を切り替えたりしているだけ……のようだ。
……いや、最初から思ってたけどなんだろうね、この変な拘り。
「変繋がりで悪いんだけど、そういえばなんでサンジ君、フルダイブっぽい挙動なの?」
怪しむついでに、目の前のサンジ君の挙動があまりにも自然な事にも引っ掛かりを覚えた。
元がネットゲーム世界を描いたキャラクター達ならいざ知らず、そうじゃないサンジ君がフルダイブ式でゲームを遊んでいるのなら、何か裏でもあるのかとちょっと疑問に思った……のだけど。
……あれ?なんで私、「この人何言ってんの?」みたいな目で見られてるんです?
「いや、俺らは
……なんですと?
「えーと、つまり。最初に出会ったハセヲ君のせいでちょっと勘違いしてたけど、そもそもなりきり組はフルダイブ標準装備だってこと?」
「そう聞いたんだがな。……いやまぁ、最初にハセヲに会ったってんなら、勘違いするのもわからんでもないが」
サンジ君の話を聞いて、ちょっと脳内で情報を整理する。
……フルダイブ化はあくまでもなりきり組なら標準装備。
で、そこになりきりしてるキャラが元々ネット関係のキャラだと、再現度に追加ボーナスが貰える、みたいな?
「碑文まで使えるかは知らんが、それでもジョブに関しては元のままなんだろハセヲ?」
「あ、ああ。一応確認したけど、俺のジョブは
「仕様外ジョブだな。……ってなわけで、その辺りの『原作由来の何か』が上乗せ部分だって言われてるわけだ」
「なるほど。……えっと、最初ほど警戒の必要はないってことだったり?」
ネットゲームのデスゲーム系の多さから警戒を強めてたけど、案外そうでもないのかな?
なんて事をサンジ君に聞いてみたのだが、彼は難しい顔。
「どうだろなぁ。俺も生憎ハセヲみたいな『元のゲームの仕様ではなく、PC由来での致死攻撃』持ちの奴には会ったことが無いからなぁ」
「……言われてみれば、デスゲーム系ってそもそもゲームの仕様の時点でデスゲームになるようになってるから、ハセヲ君達みたいに『仕様外攻撃で相手の精神ごとダメージ』って、案外他の具体例思い付かないね」
『Infinite Dendrogram』、『NewWorld Online』、『ソードアート・オンライン』……などなど。
作品内ゲームにも幾つかあるけれど、そもそもがデスゲームじゃなければ、途中からデスゲーム要素が追加されるような事は基本的にあり得ない。
……いやまぁ、当たり前と言えば当たり前なのだけれど。
だってそれ、作品的には無謀なてこ入れ以外の何物でもないし。
「最初っからデスゲームじゃないなら、ゲームでの死をリアルでの死に結びつける機能なんざ、普通は付けねーからな」
「うーん、まさかスケィス*1呼んで貰って試してみる訳にもいかないからなぁ」
「いや、止めろよ?そもそも呼べるかどうかもわかんねーからあれだけど」
「……なんか、いまいち煮え切らない台詞だね」
ハセヲ君の奥歯に物が挟まったような物言いに、思わず聞き返してしまう私。
対して彼は「繋がりはある気がする、けど呼ぶなって言われてるような気もする」という言葉を返してきた。
……ふむ?スケィス側が呼んで欲しくないって言ってるから呼べないってこと?
「……いやそれよりも。居るには居るんだな、スケィス」
「うーん、結局警戒は今まで通りの方がいいか。少なくとも、デジモンがやって来る可能性がある以上は、警戒し過ぎって事もないだろうし」
「え、ボク?」
「ああ、究極体の中にはわけわからん攻撃してくる奴も居るしな……」
触れたらそのままおしまいな攻撃*2とか、時止めオラオララッシュみたいな攻撃*3してくるしなぁ、なんて風に苦笑いする私達なのだった。
「とーこーろーでー」
私の言葉にぎくっ、という感じで動きを止めるBBちゃん。
……うふふ。逃がさへんぞ貴様ー!
「知ってることをハケッ!ハクンダッ!」*4
「し、知りません!知ってても黙秘しま……ってひえっ!?せんぱい目怖っ!」*5
「なりきり組だったら基本的にフルダイブになる……しかし私はなっていなかった、そしてそれを知っていたと思われるBBちゃんには、黙秘権なんてものは存在しないのです。
「し、知りません!せんぱいがフルダイブじゃないのは知ってましたけど、その由来がオリジナルのなりきりだからって事くらいしかBBちゃんは知りません!」
「結構知っとるやないかい」
「あ痛ぁっ!?」
知らないと言いつつ案外知ってたBBちゃんに
「調査対象だって言ってたのに、フルダイブになるとかについては知らなかったの?」
「私ゲームとか苦手ですもの。話に聞いたってだけで、どうなっているのかとかは全て管轄外ですわ」
「……なんでこういう時に限って、胡散臭い管理者ゆかりんなのか」
「せんぱい!落ち着いてくださいせんぱい!」
どいつもこいつもあれこれ隠しながら暗躍しおってからに……。
いやまぁ、ゆかりんがゲームあんまりしないのは聞いてたけど。
東方についても二次から入った組って言ってたし、ルナシューター*6とか夢のまた夢みたいなこと言ってたのも知ってたけど。
それなら従者組に頼むとか……みたいな事を考えて、ジェレミアさんと蘭ちゃんにできるのか、という疑問が浮かぶ。
「……んー、推定無罪!閉廷!」
「ちょっとせんぱい!?横暴すぎではないですかぁ!?」
「私がルールだ」
「そんなキメ顔で言われてどうしろって言うんですかぁっ!?」
って言われてもなぁ。
最近忘れられてる気がするけど、私基本的に魔王やで?
「は?!……そ、そうでした!せんぱいってば普通に
「よーし、キーアんバイキルト*7目一杯かけちゃうぞー」
「バイキルトって言いながら界王拳*8掛けてませんかそれ!?」
ははは、別に
とりあえず滾る苛立ちを解消したいだけやさかいにな。
「なんなんですかそのエセ関西弁はぁっ!?あ、ちょっ、やめ、消しと、痛ったああぁあっ!!?」
「痛いで済むのか今の……」
エグい威力になったデコピンを額に受けて
「うー、世界一美少女なBBちゃんの、卵のような額が割れるかと思いました……」
「これを機に口は災いの元って覚えといた方が良いと思うよ」
「確かに、さっきのは言い過ぎましたけど……だからって本気でデコピンは酷くありませんかぁ?」
「……?え、めっちゃ加減したけど?」
「いやその、せんぱいのスペック的な意味での加減は、全然加減になってませんからね?」
話を終えて、再びフィールドにやって来た私達。
今度はさっきの草原と違い、牧場のある地域らしい。
サンジ君が放し飼いにされている牛からミルクを採ってくるのを、しばらく立ち話をしながら待って。
戻ってきた彼とパーティを組んで、そのまま牧場から離れて森の方へ。
「じゃあ、もう一度説明するぞ。──命令は3つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ、不意を突いてぶっ殺せ!……あ、これじゃ4つか」*11
「おいィ?それ同じ声の別の人でしょうが」
「ははは、ちょっと言ってみたかったんでな。……まぁ、改めて。こっから先のモンスターは、倒した時にドロップ品として各種フルーツを落とすことがある。なんで、積極的にぶっ倒していってくれ」
「はーい。……データ上の相手だから、絶滅するとか気にしなくて良いのは楽でいいわね」
まぁ、一番の目的は店のオーナーが戻ってくるまでの時間潰しなんだけど。
現状オーナーさんが一番情報を持ってるらしいから、彼?彼女?がログインするのを待つのが、一番話が早いらしいし。
「そーいうわけで、行くぞ皆のしゅー!!」
「「「「おー!」」」」
そうして、森の中へ全員で突撃!
バナナワニの頭からバナナをもぎ取ったり、メロングマが
オーレンジーナなるちょっと危なそうな名前の、人型のモンスターを皆でタコ殴りにしたり。
かと思えばフルーツ系モンスターに混じってスピアー*13が居て、ちょっと周囲にモンスターボール*14がないか探してみたり。
そんな感じに、なんかトリコとかに出てきそうな奴も交えたモンスター達との交戦を続け、時刻は次第に夕方へと向かっていくのでした。