なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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夏に懐いな夏の空

 それから、幾つかの仕事を順当にこなしていった私達。

 山あり谷あり、正に語るに難き難業を踏破していった私達は。

 

 

「……なんでわざわざ、ここに集まってだらけてるのよ!?」

「仕事終わりの報告会といえば、ゆかりんルームが定位置でしょー?」

「そーだそーだ、かてぇこと言うなよゆかもん。……あっ、ジェレミーも食いもんとかあんがとなー」

「ジェレミー……?」(宇宙猫)

「ゆかもん……?」(宇宙猫)

「……同じ顔をして、なにを呼ぶ気なんですか二人とも」*1

 

 

 ──仕事終わりの報告に(かこ)つけて、ゆかりんルームで飲めや歌えやの大騒ぎをしていたのだった。

 

 いやまぁね?一応時間帯はまだ夕方だから、飲んでるのはジュースとかのノンアルコールだし、食べているものもジェレミアさんお手製のお菓子とかの、至ってオシャンティー*2なものばかりなわけだけど。

 ……それにしても、新作のアプリでは大活躍だそうだし、流石という他ないジェレミアさんである。*3

 

 

「はっはっはっ。……持て囃された結果やることが、グラスゴーに乗って出撃を繰り返す……というのは、いかがなものなのでしょうな」*4

「『真銀斬しろ』とか『十万石くれ』とか、そういうこと言われない辺りはマシなんじゃねーの?」*5

「ジェレミアさんの場合は、命令されたらやれそうなのが怖いんだよなぁ……」

「はっはっはっ」

「笑ってごまかしてやがる……」

 

 

 なお、その辺りのことを彼に聞いても、こんな感じの反応が返ってくるだけだったりする。……マシュの例を見ればわかる通り、なにかしら公式で動きがあると『知識の更新』が起きる……というのは、『逆憑依』では周知の事実なわけだが。

 かといって、アプリでの扱いについての見解とかを求められても困る……というのも確かな話のようで。

 ほぼほぼ出し得テンニンカ系キャラになったことには、なんとも言えない気分を抱いているらしい。そんなジェレミアさんなのでありましたとさ。

 

 まぁ、よもやコードギアスの新作アプリが、アークナイツに代表されるようなタワーディフェンス系のゲームになる……とは思ってなかっただろうし。

 その中で自分が即時コスト獲得系キャラになることも、更には所属とか軍属とかすらも無視して、あらゆるキャラクター達が戦場を乱舞することになるとも、更には『黒の騎士団』なのに純血派とかブリタニア軍のキャラばかりが立ち並ぶ、半ば内輪揉めみたいな状況になるとも思っていなかっただろうから、仕方のない話ではあるのだけれども。

 

 ……でも今の状況で、ジェレミアさんに銀ちゃん達みたく性転換変身を適用したならば、恐らくテンニンカになるのだろうな……ということはよーくわかるぞぅ。

 その場合は中の人が中の人(ジェレミアさん)なので、本気で真銀斬したり十万石持ってくるテンニンカになったりしそうだ、ということもわかるぞぅ。*6

 

 

「……まるでピクニックだな」*7

「は?ピクニック?」

「……いんや、なんでもない」

 

 

 実際に撃てても大して役には立たないだろう、なんて言われる『真銀斬テンニンカ』だが、中身がジェレミアさんだとなんとかしそうなのが恐ろしい。

 そんな思いが思わず口に出てしまったわけだが……まぁ、大して意味があるわけでもないので流して頂きたい。

 例の隊長の中の人は、まだアークナイツにはいないなー、とかも関係はない。

 

 

「なるほど、つまりはあれだな。オレが! ここに! いるぜ!

「流せっつってるでしょうが!!」

 

 

 なお、頼りになる云々の話を耳聡く聞き付けたサイトが、以前の召喚時のようにアピールしていたが……こっちはしっかり後頭部をしばいておいた。空気読め!

 

 

 

 

 

 

「頼りになるといえばこの俺、ナポレオンだと思ったんだが……」

「貴方はナポレオンである前に、平賀才人の方が主体でしょうが……」

「む。……それもそうだ」

 

 

 後頭部を掻きながらぼやくサイトに、思わずツッコミを入れる私。

 その言葉を聞いた彼は暫し呆けたあと、確かにと呟いてソファーに背を預けた。

 

 さて、場所は変わらずゆかりんルームなわけだが、サイトが何故ここにいるのか、という疑問を抱いている人も少なくないだろう。

 以前、私の部屋のクローゼットがハルケギニアへの扉となった、ということは説明したと思う。更には、ハルケギニア組の身体検査なども行った方がいい、というようなこともあわせて述べていたはずである。……え?その時はアカリちゃんのことが重点的だった?

 

 

「あーっと、ごめんなさいねアカリちゃん。うちってば大体こんな感じで騒がしいモノだから……」

「は、はひ……その、お気使いなく……」

「……スッゴいガチガチに緊張してるわね」

「そりゃそうだろう。彼女は水無灯里を元にして生まれた存在だが、本人そのものとはまた言い辛い。ハルケギニアの法則に従って生まれた人物である以上、貴族みたいなもんには少しばかり緊張が先行する……ってのもわからん話でもないさ」

「貴族相手に緊張してるって言うより、綺麗な人に緊張してるってだけだと思うんだけど……」

「……まぁ、それはそれってやつだ、うん」

 

 

 ──ご覧の通り、アカリちゃんもそこにいますがなにか?

 

 思い出して頂きたい。今回の銀ちゃん達に向けた仕事には、なにが付随していたのかを。……そう、健康診断である。

 つまり、今回のあれこれの裏では、彼女達の健康診断も同時進行していたのだ!

 

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、アカリさん!」

「あ、あああアンリエッタ様!?あば、あばばばばっ?!」

「……あ、あれ?逆効果だったりします?」

 

 

 なお、ハルケギニアの住民であるということもあって、アルトリアもこの場には同行しているわけなのだが。……リリィモードで話しかけることで、できうる限り親しみやすくしてはいるものの。だからといって一国の姫とそこいらの平民、両者が歩み寄れるのかと言えば別の話というわけで。

 

 

「きゅう~……」

「ぬわっ、アカリが気絶したっ!?」

衛生兵(メディーック)衛生兵(メディーック)!」

「いや、まず囲ってあげるのやめなさいよ……」

 

 

 畏れ多くも王姫の前に居ることに、灯里力より平民力が勝ってしまったのか、そのまま目を回してしまうアカリちゃんなのであった。

 ……いやまぁ、そこまでは想像できたから、そんなに驚くようなことではないのだけれども。そのあと当の気絶理由(アルトリア)が率先して、彼女を助け起こしに行くとは思わなかったよ……。

 止めたげなさいよ、気絶から起きたと思ったらまた気絶する羽目になるわよそれ?

 

 とまぁ、そんなやり取りもあり、一足先にダウンしたアカリちゃんを、ジェレミアさんが別室へと運び。

 残った面々で、再びお話もとい茶会の続き……というわけである。

 

 

「え、これお茶会だったの?」

「まぁねぇ。サイトに試してみてほしいこともあったし、単なる宴会ではないわね。酒も入ってないし」

「……言っときますけど、私まだ仕事中ですからね!?」

「仕事ぉ?なにそれ、今定時☆」

「……なんとなくだが、それは俺の台詞というやつじゃないか?」

「おおっと、そっち方面は洒落にならないから止めるんDA☆」

 

 

 ぐだぐだと会話を続けながら、話は本題──サイトの健康診断、そのついでの確認の部分に移っていく。

 

 

「……ん?俺か?ルイズではなく?」

「今ここに居ない相手のことを話しても、仕方ないでしょうに……とりあえず今回は、貴方の話よ貴方の話」

「ふむ……?」

 

 

 こちらの言葉に、小さく首を傾げるサイト。

 まぁ確かに、普通に考えて『ハルケギニアからの来訪者』という属性から注目を浴びるのは、さっきのアカリちゃんかルイズかのどちらか、ということがほとんどだろう。

 が、このサイトに関しては、特に注目すべきことが一つある。

 

 

()()()()()()()()でしょう?それも【複合憑依(トライアド)】じゃなくて、【継ぎ接ぎ(パッチワーク)】型の」

「あ、あー……?」

 

 

 その特異性というのは、彼が【継ぎ接ぎ】によって大きく変化している存在である、ということにある。

 

 確かに【継ぎ接ぎ】は発生の緩さや変化の方向性から、様々な例が存在するタイプのモノだが……。とはいえ、彼のように()()()()という緩さでここまで大きな変化を受けているのは、かなり特殊な例だと言えるだろう。

 

 これが【複合憑依】であるのならば、これほどの大きな変化になるというのも納得できるのだが……彼のそれはあくまでも【継ぎ接ぎ】によるもの。【継ぎ接ぎ】としては最大級の例であるハクさんやアルトリアでさえ、あくまでも自身の属性や身体的な特長、それらが重なる相手を継ぎ接ぎしている……という共通点がある。

 

 それを元に考えるのであれば、サイトとナポレオンの繋がりというのは、その声が同じということしか存在しないのだ。

 キャラクターとしてのあり方にしても、サイトはいわゆる勇者タイプ。ナポレオンの方は英雄タイプで、似ているようで微妙に違う相手だろう。

 なので、今までの常識からすれば、サイトとナポレオンを一つに纏めるのであれば、もう一人誰かを巻き込んで【複合憑依】として成立させる……というのが普通の考え方になるのである。

 

 

「だから、そういうの無しで()()()()()()()()サイトの姿ってのは、結構珍しいわけなのよ」

「はぁ、なるほど。つまりはキメラみたいなもんだから注目されている、ってわけか」

「……そうだけど言い方ぁ」

 

 

 それからもう一つ。幾ら【継ぎ接ぎ】とは言えど、サイトのように首から上と首から下が別人、みたいなパターンは他に存在していない。

 

 両者の性質が加算されるという形か、そもそも判別がつかないほど混ざり合うことがほとんどである【継ぎ接ぎ】。

 その一般例からしてみても、一目見ただけで混ざっているものが見分けられるほどに別れている……というのはおかしすぎるわけで。

 

 言い方は悪いが、彼の言う通りにキメラと呼ぶ方が正しいのが、今の彼の状態なのであり。

 それを詳しく検分する、というのは【継ぎ接ぎ】というものを理解する上で、とても重要なことだと言えるだろう。

 

 結果、彼には普通の健康診断以外に、別途追加で検証をお願いしたい……という話になるわけなのである。

 

 

「まぁ、構わんが。で、俺は一体なにをすればいいんだ?」

「とりあえずは、()()()()()()()()()()かなって」

「なるほど、俺に戻ると。……ん?」

 

 

 それらの話を聞いたサイトは、快く話を受けてくれたわけなのだが……その内容を聞いて、小さく首を傾げていたのだった。

 

 

*1
同じ顔が二人、来るぞ蘭!……無論『遊☆戯☆王ZEXAL』のアストラルのエクシーズモンスター警戒の台詞

*2
お洒落な人・モノのことを示す言葉。『おしゃれ+ティー』という造語。流行ったのは2011年付近なので、ほぼ死語である

*3
『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』のこと。主人公が狂犬すぎて有名

*4
上記のゲームに登場する星3突撃タイプのキャラクター、『ジェレミア(忠義厚き純血派)』は、フィールドに配置した時にコストを回復する効果、及び再配置を短縮する効果を持つ。タワーディフェンス系のゲームにおいて、コスト管理は死活問題。それを出てくるだけで回復するという彼の効果は、寧ろ使わない理由がないほどのぶっ壊れキャラとして、彼の立ち位置を確定させたのだった。なお『グラスゴー』云々はKFMの名前であり、この場合は特に星4のカレン入手時に一緒に貰える『グラスゴー(カレン機)』のことを指す。何故これなのかというと、このグラスゴーを強化するとコストが0になる、というところに理由がある。『ロススト』は他のタワーディフェンス系のゲームと違い、パイロットとKFMの合計コストがキャラクターのコストになること、及び配置しているキャラクターを撤退させてもコストの一部返還がない、という特長がある。……要するに、ジェレミアのコストをできうる限り少なくして、獲得できるコストを最大限利用する為の処置、ということ

*5
『アークナイツ』のキャラクター、星4先鋒テンニンカに纏わるネットミームのこと。テンニンカはレアリティが低め(アークナイツにおいて最大レアは星6)でありながら、コスト回収や先鋒としての防御役、更には回復も行えるという便利キャラである。その為、アプリ内での高難易度イベント『危機契約』において必須級の扱いをされるキャラとなった。……その結果、高火力広範囲の必殺技『真銀斬』を扱えるキャラクター、シルバーアッシュと一緒に使われることが多くなり、リアルストラテジーであることから出撃タイミングやらなにやらで口惜しい思いをするドクター(プレイヤー)が増え……結果、無茶振りをされるようになったらしい

*6
テンニンカへの無茶振りの数々。『真銀斬』云々は上記で語った通り、色々できるんだから攻撃役もやってよ、みたいなドクターからの無茶振りである。他にも色んな技を使ってくれといわれるが、彼女はあくまでも先鋒なので、例え使えても戦局をひっくり返すのは難しいだろう。『十万石』云々は、その無茶振りがグラブルでのとあるイベントと混ざった結果のもの。別にグラブル側に悪意を持って生まれたネタではないが、『石10万』が当時のソシャゲ界にどれほどの衝撃をもたらしたのか、というのは考慮に値するだろう。なお、『石10万』は多いように見えるが、当のグラブルだと天井一回分。集める武器の多さなどを考えると、実際はわりと焼け石に水だったりする(複数本並べる必要があることがほとんどの為。天井以外では確実に入手できず、複数本並べる場合は限界突破アイテムだけでは賄いきれない)

*7
『GOD EATER 2』より、ジュリウス・ヴィスコンティの台詞。ミッションを余裕を持ってクリアした時の台詞がこれ。その為『ピクニック隊長』なるあだ名を持つ。なお、声優である浪川大輔氏は2022年6月現在、アークナイツにはまだ担当キャラが居ない


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