なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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夏と言えばスーパー映画タイム

「んで、結局のところ俺はどうすればいいんだ?」

「そりゃあもう、盛大にポージングを決めて変身して貰えれば」

「……マジで言ってる?」

「大マジです。うまく行けば万々歳、失敗してもちょっとアフロになるだけ*1って話だから。ほら、気軽に気軽に」

「いや、ホント気軽に言ってくれるなぁ……」

 

 

 そんなこんなで、改めて銀ちゃんと共にサイトに近付いたところ、これからどうすればいいのか?……という至極当たり前の疑問を彼からぶつけられたわけなのですが。

 それに対するこちらからの返答は、『そのブレスレットを作っているのが琥珀さんである以上、素直に変身ポーズを取る以外の選択肢はないよ』というものなのでございましたとさ。

 

 見た目戦隊モノ系の変身ブレスレットなので、なんかこうバババッとポーズを取ってシャキーンと構えれば、良い感じに変身できるはず……という、結構いい加減な助言である。

 まぁ別に、ライダー系の変身ポーズを意識してみたとしても、なんら問題はないとも思うのだけれども。

 あの人、ルビーちゃんが【継ぎ接ぎ】されてるから魔法少女専門の人に見えるけど、実際は特に分け隔てなく全部嗜んでるタイプの人だからね。……一番好きなのは魔法少女、ってのも間違いではないみたいだけど。

 

 ただ一つ問題があるとするのであれば、サイトが持っているそのブレスレットもまた、いわゆる一つの試作品であるということだろうか。

 どういう原理で変身させようとしているのか?……とか、その辺りの詳しいことを私は聞いていないため、やっちゃダメなこととかについての助言はできないと申しますか。

 

 まぁ琥珀さんのことなので、エネルギーの流れる経路についてはしっかり設計しているだろうし、暴走した時の安全装置(フェイルセーフ)*2についてもきっちり設置しているだろうから、仮に爆発しても頭がアフロになるくらいで済むだろう……ということもまた予測できるわけなのだが。

 

 その辺りのお約束(爆発してアフロ)については抜かりがないのもまた琥珀さんの特徴なので、安心してデッドオアアライブ*3して頂きたい。

 ……というような助言を述べたところ、サイトは常のナポレオンっぽい口調を崩してしまうほどに、辟易した姿をこちらに見せたのだった。端的に言うのであれば、実にサイトっぽい普通の少年染みた喋り方というか?

 

 ともあれ、今回のあれこれに関しては、頑張るのはあくまでもサイト自身。

 私は精々マスコットくらいにしかなれやしないので、精一杯応援させて貰うことで彼の無聊(ぶりょう)を慰めるとしよう。

 

 

「サイト、今すぐそのハッピーブレスレットで変身だっピ!」

「なんだか猛烈に変身したくなくなってきたんだが!?──とりあえずキーア、説明書とか出して!」

「わ、わかんないっピ……」*4

「……やべぇ、爆発オチしか見えなくなってきた……!!」

 

 

 おおっと、間違えたかな?(棒)

 近頃のマスコットキャラは、どいつもこいつもやんちゃで困る。*5

 

 ……とかなんとかごまかしつつ、改めてサイトを促す私。

 彼はこちらの言葉に露骨に嫌な顔をしていたが……やがて諦めたようにため息を一つ吐くと、カチャリと音を立てながら変身待機ポーズに移るのだった。

 

 

「……ええと、初代で良いと思うか?」

「ベルトじゃないしなぁ……豪快(ゴーカイ)に行くとかどう?」

「俺は海賊じゃないんだがなぁ……まぁいいか。ゴーカイチェンジ!」

 

 

 ……まぁ、変身待機したあとにまた一悶着あったんですけどね!

 ブレスレット型なんだから、ポージングも腕回りを意識したモノの方が見映えが良い、ってのは少し考えればわかりそうなもんだけどなぁ……。っていうか初代(1号)って。マニアックですねとでも言えばいいのか……?*6

 

 ともあれ変身である。

 実際にはヒーロー的な意味での変身ではなく、一時的にナポレオン分を別の状態で上書きする──広義の方(姿を変える)の意味での変身、という形なのだが。

 合わせて、今回の対処法が()()()()()()()()()()()()()()()()()モノであるということもまた、改めて明記して置かなければならない事実だろう。

 

 ゼロの使い魔の二次創作が、今日における『なろう系』の原型になったという話はどこかでしたと思う。……してなくてもその前提で聞いて貰いたい。*7

 

 それらの二次創作とは、本当に様々なバリエーションの存在するモノであった。

 基本的にはサイトの代わりに誰か他の版権キャラが召喚されるだとか*8、もしくはルイズ側になにかしらの変化がある*9という作風が多かったが──それらには及ばずとも、バリエーションの豊富なパターンが存在していた。

 それが、『サイトの背景が特殊なパターン』である。*10

 

 それは言わば、彼自身も可能性の光*11──様々な起こり得る可能性というものを、内包する存在であることの証左であり。

 ある意味では、声以外での『ナポレオンと彼との共通点』ということにもなるわけだが……ともかく、彼が二次創作において自由な描かれ方をしていた人物である、ということに違いはなく。

 

 そしてそれが、ある意味ではのちに続く『異世界もの(なろう系)』の礎になったという見方もできる以上──、

 

 

「お、おおお?!なんだこれは!?」

「お前が神の左手(ガンダールヴ)*12だというのなら──世界を救って見せろ、ナポレオォォン(ユニコォォン)!!」*13

「いやかなり混ざってないかその台詞!?」

 

 

 変身ポーズを決めた彼が、緑色の輝きに包まれていくのは半ば必然、というわけでして。

 ──可能性に殺されないように、頑張れサイト!*14

 

 

「……ええぃ、よくわからんが、こう言うしかあるまい!オレが! ここに! いるぜぇぇぇ!

 

 

 そんなこちらの応援を受けた彼が、声を張り上げた時。

 ──世界は、目映い光の中に呑まれていったのだった。

 

 

 

 

 

 

「目が、目がぁ~!?」

「また典型的な台詞だね、銀ちゃん」*15

 

 

 実は光るだろうなと予測していたため、しっかりサングラスを装備していた私と、そんなこと聞いてなかったため、あの極光をもろに浴びて網膜を焼かれた銀ちゃん。

 可能性の光とかなんだとか言ってたのだから、予測はできたはずなのにまだまだ甘いな……なんてことを宣えば、銀ちゃんは「ふざけんな、可能性に殺されるぞ!」なんて風に怒っていたのだった。それ わたしが もう言った。

 

 

「くそぅ天丼だと?!」

「ギャグって繰り返してこそ、ってところあるよね」

 

 

 基本的にはギャグキャラである銀ちゃん。

 ボケは先手を打ちたい、というところもあるのかもしれないな、なんて適当なことをぼやいていた私達は。

 

 

「……おいおい、どういうことだこいつは?」

 

 

 光と一緒に発生した煙の向こうから響く、サイトの言葉を聞いて眉を顰めることになるのだった。

 ……んん?台詞的には、なにか問題があった感じかな?

 個人的には、彼の声が高いことが気になるんですがね(震え声)

 

 そうして煙の晴れた先。そこにいたのは……。

 

 

「平賀才人ぉ?誰それ、俺ベクター☆……なんてやってた罰、ってわけかよこりゃ」

「し、真月だぁーっ!!?」

 

 

 遊戯王視聴者の悉くを地獄に叩き落としたという、魔の少年──真月零となったサイトの姿が、そこにあったのだった。

 ……変身ブレスレットがデュエルディスクになっている、というおまけ付きで。

 

 

*1
爆発によって髪がアフロになる、という表現の元祖はドリフターズのコントだと言われている。爆発がギャグ表現になる、というのもよくよく考えると意味がわからない話だが。なお、爆発オチに対して返されるコメント『爆発オチなんてサイテー!』は、fate/stay_nightのバッドエンド救済コーナー『タイガー道場』でのロリブルマ(ブルマなイリヤ)の台詞が元ネタとされている

*2
『fail safe』。失敗時に安全な方に、の言葉通り、故障した時に周囲の人間を危険に晒さないようにする、という思想の安全設計のこと。何かしらの要因で操作ができなくなった時、安全な状態で静止するというパターンも含む。代表的なものでは、地震発生時に自動鎮火する電気ストーブ、故障・電源供給のない状態では自重で下に降り、線路内に人を入れないようにする遮断機などがある

*3
元々は賞金首に対して『生死を問わず』捕まえたらこの金額を渡す、というような意思表示をする為の言葉であったが、時代が下る内に『生きるか死ぬか』という意味も加わった言葉。本来であれば『死んでも良い』『寧ろ殺せ』くらいのおっかないニュアンスの言葉である

*4
『タコピーの原罪』より、タコピー。ハッピー星からやってきた、ハッピーを伝える為に旅をしている宇宙人。見た目はピンク色の小さなタコ型といった感じで、語尾には『~っピ』と付ける。ハッピー道具でみんなを幸せにしようとしている。なお、『◯◯出して』『わ、わかんないっピ……』は作中のやり取りの一つ

*5
それぞれ『北斗の拳』のトキの偽物(ということにされた)アミバの台詞『ん!?まちがったかな……』、格闘ゲーム『カイザーナックル』の隠しボス、ジェネラルの台詞『女性の身で戦いとは、感心しませんな。近頃の女性はやんちゃで困る』より

*6
それぞれ初代『仮面ライダー』および『海賊戦隊ゴーカイジャー』から。初代ライダーを変身ポーズと言われて思い出す辺りがサイトの中の人の年齢を物語っているのかも……え?最近はどのライダーも映画ででずっぱりだから、どこから入ったのかなんてわかりゃしないだろうって?……なお、ゴーカイジャーもそういうの(昔懐かし系)の元凶だったりする。戦隊モノの変身ポーズは、何かしら手に持ったモノを使うことが多い……というネタでもある

*7
一応72話の注釈で触れている

*8
『あの作品のキャラがルイズに召喚されました』という括りで纏めているサイトなどが存在する。なお以前語った通り、大体の二次創作がギーシュ戦・もしくはアルビオン行きでエタることがほとんどであった

*9
召喚したものが能力や武器(例:ペルソナや聖剣(『聖剣伝説』のものなど、多数))であるが為に、ルイズがそれらの影響を受けたパターンや、そもそもに何かしらの要因でルイズの性格が違う(こちらは使い魔はサイトのままのことが多い)パターンなどが存在する

*10
ルイズが色々あるのだから、サイトだって色々あっても良いだろう、みたいなパターン。サイト側が成年になっていたりだとか、何かしらの戦闘技術を納めているだとかのパターンがある

*11
fgoにおいてナポレオンが所持しているスキル。『星の開拓者』や『無辜の怪物』などと類似するスキルであり、実際にはやったことのないことであっても、それを信じる者達によって『成し遂げた』と背負う、人間の可能性を示すかのようなスキル。彼は人の願いの結晶であり、願う誰かがいる限りその輝きに翳りが起きることはない

*12
※ガンダールヴと素直に読まず、『ガンダールヴ()』みたいな感じで読もう

*13
『機動戦士ガンダム00』の刹那・F・セイエイ、『∀ガンダム』のロラン・セアック、『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』のバナージ・リンクスをイメージした台詞。それぞれ『刹那のガンダム至上主義』『ロランの台詞である「人の英知が生み出したものなら、人を救ってみせろ!」』『バナージの叫び』が混ざっている

*14
緑色の光も『可能性に殺される』云々も、どちらも『機動戦士ガンダムUC』からの台詞

*15
『天空の城ラピュタ』より、ムスカがとある状態に陥った時の台詞。目が見えなくなった時に使う


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