なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
……思いの外リムルさんに対する考察が長くなってしまったが、気を取り直してお次は蜘蛛子さんについての考察である。
とは言っても、これに関しては前述していた通り
蜘蛛子さんの見た目と言うものは、子供よりも大きいサイズの蜘蛛*1……という、かなりインパクト溢れるモノとなっている。
外骨格タイプの生き物が人間サイズになると、自重で潰れるのがオチ……みたいな話がある中で、現実でも実際に原作と同じ姿をしている辺り、それだけでわりと凄いことのはずなのだけれど……言ってしまえばそれだけ。
雑に見繕うと多分……子供でも倒せてしまえると思われるのが、現在の蜘蛛子さんの実力なのである。
と、言うのも。
模擬戦を何度か繰り返して貰う内にわかったのだが、なんと攻撃力皆無・防御力皆無なのであるこの人。……いや流石に零ではないけども。
それでも、生まれたての小鹿*2でもこんなに軟弱ではないぞ……と思ってしまうほどのその脆弱さは、寧ろなんで普通に立っていられるんだろう?と首を捻ってしまうレベルであることは確かなのであった。
話を巻き戻す*3ようで悪いのだが……外骨格タイプの生き物というのは、内部に骨を持たない存在である。
なにを当たり前のことを……と思うかも知れないが、これがとても重要なことなのだ。
フィギュアを作る動画などにおいて、針金に粘土やパテを盛っていく……という姿を見たことはないだろうか?
アレは成形のしやすさの面から使われている手法であり、極論今の粘土やパテならば、中に芯が無くてもフィギュアは作れるらしいのだが……昔の粘土は強度が足りておらず、
わかりにくいのなら、子供の時の図画工作の時間に、粘土でなにかを作った時のことを思い出して貰いたい。
一生懸命にかわいいウサギだったり、カッコいい恐竜だったりを作ったのにも関わらず、暫く時間が経つと重さに負けて手が折れたり、ずるずると背丈が縮んで行ったり……と言った経験をした人というのは、決して少なくないはずである。
あれは粘土が、それらの形を保つための強度を持ち合わせていないがために起こる現象だが──外骨格の生き物が大きくなった時に起こることというのも、それによく似ているのだ。
外骨格に対して肉が張り付いていないわけではないので、それらが内部構造を支えているというのは確かな話。
だがしかし。徐々に体を大きくしていくと仮定して──中心部分の構造を支えるための力が、自重に負けないでいられるのはどれくらいの大きさになるのだろうか?
極論を言えば先の粘土の例のように、特定の大きさになった時点で内部の肉が中で垂れていく……という、なんとも言えない状態に陥るのが関の山だと思われる。
その状態で跳び跳ねでもしたら、内臓がどうなることか気が気ではないことだろう。
まぁ実際には大昔、今とは比較にならない巨大なトンボが飛んでいた、とも言うし。
外骨格が自重による制限を受けるのは、もっと大きくなってからの話であり。
虫達が大きくならないのは、寧ろその体内の呼吸器官にこそ理由がある……などの話もあるが、今は関係ないので割愛。*4
ともあれ、本来であれば蜘蛛子さんサイズの虫、というのは居たとしても古代・少なくとも現代において成立するようなモノではない……というのは確かな話。
ゆえに、それらを可能にするだけのスペックを持ち合わせている、という風に考えるのが自然なわけなのである。
具体的には、魔力による補強などを行っており、自重なんかには負けやしない……とかね?
で、もしそれらの補強があるのであれば、『人間サイズの昆虫は恐ろしい力を発揮する』という説があるように、彼女も普通の人には早々負けないだけのスペックを、天然で持ち合わせていてもおかしくないわけなのですが。
……うん、さっきから何度も口に出しているように、そんなことは一切ない、というわけでございまして。
「見るがいい、この私のパゥワー!」
「……握力五キロ……!?」
「やらせといてなんですけど、それ握力でいいんです?」
(握力計を上から爪で押してる、ってことでいいのかしら、これ)
「この蜘蛛子さんの、華麗なる神速の動きを見るがいいッスー!」
「……二十秒……」
「小学生より遅いんですがそれは」
(五十メートル走でその記録は、中々出ないんじゃないかしら……)
「反復横飛びって、一体なんのためにあるんッスかね……」
「お、終わらない……っ」
「計測不能、っと。もう小学生以下、ってことでよいのでは?」
(うーん、キーアちゃんが匙を投げ始めちゃったわ……)
ご覧の通り、計測記録の悉くが小学生の平均未満、という『なんやこのよわよわっぷり、
……うん、自然界じゃ絶対生きていけないですね、これは。
「なんだよぅなんだよぅ、みんなして蜘蛛子さんを寄って集って苛めて!訴えてやるぅ、厚生労働省とか内閣総理大臣とかに訴えてやるぅ!」
「ええと、蜘蛛子さんの意味不明な発言は、一先ず置いておくと致しまして……」
「まさかの堂々スルー宣言!?この人聖女かと思ったけど、凄女の方なんスかもしかして!?」
「……いいですか蜘蛛子さん。ちょっと黙っててください、じゃないと
「ヒエッ」
みんなから(悪気はないとは言え)雑魚雑魚言われ続けたことに、拗ねたようにツーンとそっぽを向く蜘蛛子さん。
……なのだが、彼女が
まともに取り合っていると話が進まないので、次の議題に進もうとしたのですが……。
……うん、なんとなく効くかなー、と思った
「お二方の訓練を観察させて頂いたことにより、それぞれの課題も大まかに見えてきました。これからはそれに合わせたトレーニングを行う、という形に移って行きますが……なにか質問などはありますでしょうか?」
「じゃあ、はい」
「はいリムルさん。なんでしょう?」
「トレーニングって言うけど、具体的にはなにをしていくつもりなんだ?」
「そうですね……とりあえずリムルさんには『集気法』を覚えて貰うことから始めようかと」
「ほうほうなるほどなるほど、『集気法』を……って、ん?『集気法』?」
まずはリムルさんについて。
彼に関してはとりあえず『集気法』を覚えて貰うことから始めようと思う。……と告げると、彼は訝しげな顔……顔?でこちらを見つめていたのだった。
「どうされましたか、リムルさん?」
「ええと、『集気法』って、あの『集気法』?」
「はい、『ロマンシング・サガ』シリーズや『テイルズオブ』シリーズに登場する技。──大本を辿れば、中国における
「……あー、もしかしてミラか?」
「察しがいいですね、その通りです。私一人でお二人を相手する、というのはどうにも難しいことが今の訓練でわかりましたので、ミラさんにもお手伝い頂こうかと思うのです」
集気法とは、読んで字の如く『気を集める』法のこと。
ここでは先に示した二作におけるそれ──周囲の気を集め、それによって体力を回復する技術のことを指す。
で、この『周囲から気を集め自身のモノとする』という技術、元を辿れば仙術──その前段階である内丹術に端を発する技術なのである。
……いやまぁ、正確には技の発想の元として仙人の扱う
少し前に『形而上』『形而下』の話をした時に、『道』という単語が登場したと思う。この『道』は『みち』とは読まず『タオ』と読み、道術などに繋がる概念のことを指す。
そして、内丹術とは万物の構成要素である『気』を養うことで、心身を変容させ『
ともあれ、仙人も神も共に形而上の存在であることに代わりはなく。それでいて仙人側は、世俗の全てから解放されているとされる存在である。*6
──即ち、『他者を害する可能性』という世俗での悩みに捕らわれている今のリムルさんにとって、最終的な到達点が『神』であるリムルさんにとって、『仙人になるための修行』というのはとても都合のよいものなのである。
……まぁ、実際に仙人になれるかどうかは別の話なので、ここでは心身を鍛えるという面に着目するべきではあるが。
で、生憎と聖女キリアちゃんは仙術の心得はないので、そこをカバーして貰うのにミラちゃんを呼ぼう、ということになるのであった。
……気を扱えるようになるということは、『捕食』のあり方を変えることにも繋がるわけなので、そこら辺も考えた人選なのです。
「な、なるほど……仙人、仙人かぁ……」
「中国系の作品が広く日本に入ってくるようになって、仙術も随分と身近になりましたからね。学ぼうと思えば意外と門戸は開かれていると思いますよ」
「なろう系とは実はそれなりに相性もいいしね」
「……ん、なにか言ったかキリア?」
「いいえなにも?リムルさんに関してはそのような感じなので、これからは別れての指導となりますが、大丈夫ですか?」
「ああうん、多分石の上に何年……みたいな鍛練から始めることなるんだろう?ちょっと気が重いけど、変に戦うよりかは気が楽だからまぁいいさ」
「そうですか。ではミラさんへの連絡は済ませてありますので、迎えに行って貰っても構いませんか?」
「え、いつの間に?……ってああ、念話とかそういうのか。……成長したら、そういうのも使えるんだなぁ」
トレーニングが仙術関係のもの、と聞かされたリムルさんは、ふむりと考え込むような動きを見せる。……まぁ、仙人ってなんとなく凄い感じがする、というのはわからないでもない。
ただまぁ、本場中国だとわりと扱いは雑……というか、下手するとこっちのなろう系みたいなもの……ということをキリアがボソッと呟いていたため、ごまかす羽目になったのは苦笑ポイントだろうか。*7
ともあれ、ミラちゃんの出迎えと、そのまま次のトレーニングに移る形となったリムルさんを見送りつつ。
「──さて」
「ひえっ、見つかったッス!?」
そろりそろりと、ここから逃げ出そうとしていた蜘蛛子さんに影縫いを仕掛けつつ、私は