なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・そして本格的な夏に……まだ真夏じゃなかったのか!?

 苦しくも厳しいトレーニング、それを乗り越えどこかへとたどり着こうとする二人。

 そんな二人を時に献身的に、時に厳しく焚き付けてきた私達。

 

 そうして迎えた今日は、彼らの訓練最後の一日である。

 ……え?経過が全てキンクリされた?そりゃまぁ、地道な修行描写とか今時ウケないというかですね?*1

 

 

「いや、そんなところまでなろうっぽくしなくてもいいッスから。……確かに事細かに子細を書かれても困るッスけども」

「そうそう。まさか『~ッス』という語尾繋がりで、クモコさんを投げると爆発するようになるとは、こちらも想像していませんでしたからねぇ……」

「そうッスね、まさか私もそういう意味での危険物になるとは思って……って違うッス!クモコさんはペンギンじゃなくって蜘蛛ッスからね!?」*2

「え?リヴァイアサン(ペンギン)?」*3

「メイルシュトロームもリヴァイアサン・メルトパージも使えないッスからね?!」*4

 

 

 よもや口調繋がりで、プリニーみたいな性質を獲得することになるとは思わないじゃないですか。

 みたいなことを言えば、軽快にツッコミ返してくれるクモコさんである。……このノリの高さ、もはやジナコさん的な感じでもないような?……一応注釈を入れておくと、別にクモコさんを投げても爆発したりはしません。

 

 まぁともかく、彼女がバリバリ成長して行ったのは確かな話。

 戦闘方面よりかは技術方面の成長著しい感じなのは、主にそちらの育成をこちらが優先したからだが……。

 それが結果として、彼女の性格的な取っつきやすさを成長させたというのであれば、こちらの指導の甲斐があったというものであろう。

 

 

「……代わりに俺が、なんか変なことになってるんだが?」

「いやー、まさかスライムに仙人の修行をさせるとこんなことになるとは、思ってもおらぬでのぅ……」

 

 

 そんなこちらとは対称的に、微妙な顔を浮かべているのはリムルさんの方。……疑問符がついていないのは、それが確りと目で見て確認できるようになってしまったがゆえ。

 

 そう、なんとリムルさん。仙術系の修行をしていくうちに、何故か()()が生え始めたのである。こう、もじゃもじゃと。

 それと前後して明確な()まで出来上がり、その日のリムルさんは「なんじゃこりゃぁああっ!?」と大騒ぎしていたりもしたわけだが……。

 

 ともあれ、その姿がなんなのか、ということについてはなんとなく予測は付いている。……()()()()()()()()()()()という違いはあれど、彼の今の姿は『スライムジェネラル』のそれなのである。

 スライムジェネラルとは、ドラクエシリーズに存在するスライム系モンスターの一種であり、いわゆる『スライムナイト』系のモンスターの頂点、とでも呼ぶべき存在だ。『スライム』系で一番強いのは?……と聞かれると困るが、『スライムナイト』系で一番強いのは?ということであるのならば、この種族の色違いが該当するだろう、というのは想像に難くない。*5

 

 その『スライムジェネラル』の、スライム部分。上に乗っている騎士ではない方のビジュアルというのは、大きなひげを貯えたスライム、と言った感じのモノになっている。この『ひげを貯えた』という部分が、世間一般的な仙人のイメージである『長く白いひげを生やした老人』というものに合致し、遠回しな【継ぎ接ぎ】を引き起こしたのだろう……というのが、トレーナー側の予測である。

 

 単にひげ、と言うのならば『グランスライム』でも良いのではないか、上になにも乗っていないそちらの方が自然なのではないか?

 ……と言ったことが一瞬頭に過ったものの、そちらに見た目的な『仙人感』というものは見られない……というか、どっちかと言えば海の戦士であるところのヴァイキングに近い空気感のため、恐らくは変化候補から外れたのだと思われる。……公式からの扱いも悪いしね。*6

 

 まぁともかく、白いひげの青いスライムジェネラル(スライムのみ)みたいな見た目となったリムルさんはというと、なんとも微妙そうな表情でそこに立っているのだった。

 さもありなん、リムルさんと言えばスライムではあるものの、後半はほぼ人の姿で過ごしていたタイプの存在。

 唐突にこんな進化パターンが生えてくるとは、思っても見なかったことだろう。それから……。

 

 

「ところで、のぅ?人化の法とか、覚える気にはなったかのぅ?スライムとしてはそれなりに励んでおるようじゃが、やっぱり元人間としては、人型の方があれこれと逸るのではないかのぅ?」

「……ああうん、確かに。ある程度動けるようになったけど、やっぱり人の体は恋しいって思うこともなくはないかな」

「そうじゃろうそうじゃろう!ではでは、いい感じに人化をじゃな……」

「でも今はやだ」

「何故じゃあ!?」

 

 

 ちょっと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、リムルさんの周囲をごますりしながら徘徊する変態……もとい、ミラちゃんが一人。

 彼女はリムルさんに人への変化の術を覚えさせようと、ちょっと前から心血を注いで指導に当たっているのだが……結果はご覧の通り、毎度毎度すげなく断られている始末。

 ……いやまぁ、理由はすぐにわかったわけなのだが。

 

 ミラちゃんが好きなもの、と聞いてみんなはなにを思い浮かべるだろうか?甘いもの?旅行?未知の技術?

 それらも間違いではないが、もう一つ彼女にとってとても重要なモノがあることを思い出して欲しい。そう、それこそがリムルさんが彼女の指導を断り続けている理由。

 ──即ち、おじさん趣味だ!(誤解を招く発言)

 

 

「人聞きが悪いぞキリア!わしはのう、リムルが今のまま人化の法を覚えれば、それはそれはかっちょいい老齢の賢者になることは確実と思うわけでじゃな!?」

「なるほど、リムルさんおじいちゃんモードですか。……ご自身が老人に戻れないことに対する代償行為、というやつでは?」

「ちゃちゃちゃちゃうわい!見た目美少女だった原作リムルからロマンスグレー化するのは、なにやら上手く行きそうな気がするとか思っておらぬわい!」

「全部喋っちゃってるじゃないですか」

「これがホントの口は災いの元……もとい口が滑る、ってやつッスかね?」

「ぬぉわっ!?ちちち違うぞリムル!わしはお主のためを思ってじゃな!?」

「もう慣れたから気にしないよ」

「す、すっかりこなれておるじゃと……?!」

 

 

 まぁ要するに、凄まじく端的に言うのであれば、再び彼女の理想とする老人を生み出そうとしている、というだけのことであった。……この前ハルケギニアからこっちに観光しに来ていた、ダンブルドア校長と顔を合わせてしまったことにより、完全に限界オタク*7と化していた彼女は、どうにもその時に色んな枷とかがぶっ飛んでしまったらしい。

 あの時は『ビリビリに会わせる』という、かねてからの約束を果たしにやってきた、黒子ちゃんの執り成しでなんとか収まったのだが……その野望の篝火とでも言うものは、胸の裡で燻り続けていたようだ。

 反対に黒子ちゃんが暴走した時には素面っぽかったので、治ったのかと思っていたのだが……げに恐ろしきは好きなモノへの執念、ということか。

 

 

「まぁ、そんな執念が足りすぎている人のことは、一先ずおいておくと致しまして。これからお二人には卒業試験としてとあるお方と戦って頂くことになるわけなのですが、宜しいですか?」

「はいはーい、クモコさんは万事オッケーッス。できることはやって来たし、あんまりキリアさんにおんぶにだっこでも宜しくないッスからね」

「こっちも問題はない。……なんか使えるものがドラクエの呪文に偏り切ってる気がしないでもないけど、やれることはやったのは確かだからな」

 

 

 まぁ、そうして「あんまりじゃぁあああ!」と泣いているミラちゃんは放っておくとして。

 これから行うのは、彼ら二人の卒業試験。短くも濃いモノであった彼らへの訓練も二週間ほど、いい加減他の仕事も貯まってきたため、一度キリのいいところで成果を確かめておこう、ということになったために用意された、最後の障害である。

 

 

「無論、これに合格したからと言ってゴール、というわけではありません。人生とは常に学びの連続、貴方達はそのスタート地点に立とうとしているというだけのこと。ですので、心して掛かるように」

「「了解!」」

 

 

 無論、これに合格したからといって一人前、というわけではない。寧ろこれは彼らが最低限の自衛手段を得た、という証明に近い。

 彼らがこの先どのような道を選ぶのかはわからないが──その道を選ぶ手助けになる、その程度のモノでしかない。ゆえに、合格しても驕らず・自身を高めることを止めないように、と言い含めたところ。

 彼らはわかっているという様に小さく頷いて、遠くから近付いてくる最後の試験・それを執り行う相手の到来を待ち続けていたのだった。

 

 ……これならば、心配はいらないかもしれない。

 となれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼らの今の全力を量るため、小細工なしの相手を用意するのがトレーナーとしての役目となるだろう。

 

 

「……なんか、そこはかとなく嫌な予感がするんッスけど、これから試験の相手が変わったりとか……?」

「?いいえ、試験の相手は変わりませんよ。ただ、無用な手加減は不要、と伝えただけです」

「ははあ……なるほど、さてはキリアさんってバカッスね?」

「バカとはなんですかバカとは。どうでもいいですが、お相手が来ましたよ」

 

 

 ……なんで突然バカにされたし?

 よくわからないが、ジトーッ((ーωー))とした視線を向けてくるクモコさん達に指で示しつつ、前を向かせる私である。

 二人は渋々、と言った風に前を向いたのち──そのまま固まった。

 

 

「──なるほど、己の境遇に抗い、違う道を歩もうとする者達。であるならば、私がするべきことはその道程を言祝ぐこと……というわけなのですね」

 

 

 前方から歩いてきたその人物は、最初からフル武装であった。

 見た目こそ純白の──白百合を思わせる鎧姿に身を包んでいるものの、その総身から立ち昇る威圧感はその愛らしい姿には不釣り合いであり。

 されど彼女の浮かべる笑みは、正しく王者の気風を周囲に感じさせるもので。

 ──そのちぐはぐさこそが、【顕象】なのだと二人に教えているかのよう。

 

 現れた人物──アンリエッタ・ド・トリステイン、通称アルトリア。

 聖剣と聖槍の主である彼女は、その両方を携え。

 威風堂々と、二人にその覚悟を問うのであった。

 

 

「──問おう。貴方達が私の、鍛えるべき相手か」

「「違いますっ!!」」

「む?」

 

 

 なおその後、敵前逃亡しようとする二人のケツを蹴りあげ、無理矢理戦闘に入らせる少女が一人居たとのことだが、詳細は不明である。

 

 ただ、暫く時間が経ち。

 彼らが部屋に戻る度に目にする写真立て──そこに写るボロボロの二人と、彼らを祝うように囲む者達の笑顔が、その訓練は幻ではなかったと二人の背を押している、というのは間違いないようなのであった。

 

 

*1
前者は『ジョジョの奇妙な冒険』第五部(Part05)『黄金の風』におけるとある人物のスタンド『キング・クリムゾン』の名前、及びその能力から『過程を省略する』ことを意味する言葉。後者については、『創作における修行編は、面白くすることが難しい』という一種のジンクス、およびなろう系作品における成長の仕方についての揶揄。なろう系作品においてはステータスなどの数値面の上昇、という形でキャラクターの成長を示すことが多いが、それは『目で見てわかりやすい』という利点も含む。先述した通り、修行などの『強くなるための努力』というものは説得力を生み出すことが難しく、かつ絵面的に地味になりやすい(新必殺技を作る、という展開になることもあるが、その場合は必殺技そのものは御披露目まで秘匿される為、期待を惹くことはできるかもしれないが、逆に言えば修行の絵面の地味さを補正するモノではない、とも言える)。文章や演出を重ねたからといって面白くなるわけでもないうえ、描写の仕方によっては作者のイメージの押し付けになることもある。なので、いつの間にか『書かない』ということが多くなったのであった

*2
『魔界戦記ディスガイア』シリーズより、プリニーのこと。見た目はペンギンみたいな感じだが、実際は着ぐるみ。中身は罪人の魂が封じられており、そのせいなのか投げ付けるとその衝撃で爆発する。語尾はジナコと同じく『~ッス』

*3
リヴァイアサン、ないしレヴィアタンは、旧約聖書における海中に住まう聖獣、ないし悪魔。本来は雌雄があったが雄は殺されている説、ベヒモスと対である為雌である説などを持つ。海を象徴するとされ、その縁から『fate』シリーズにおけるメルトリリスの構成要素の一つになっている。なお、その性質が強く出ている時の彼女の眷属は、何故かペンギン

*4
『メイルシュトローム』はノルウェー語の『malstrøm』の読み方の一つ。『Moskenstraumen(モスケンの渦潮)』の別名を持つ通り、本来はモスケネス島周辺に起こる渦潮のみを示す言葉だったが、現代では大渦潮全般を示す言葉として使われている。一部の『FINAL FANTASY』シリーズにおいて、リヴァイアサンが使う技として知られている。『リヴァイアサン・メルトパージ(大海嘯七罪悲歌)』は謎のアルターエゴ・Λの宝具の一つ。そのネーミングの性質上、彼女にはもう一度別霊基があるかもしれないと言われている

*5
ちなみに、現状スライム系として一番強いと思われているモンスターは、見た目はどう足掻いても戦隊もののヒーローにしか見えない『スライダーヒーロー』系だったりする(一応、『空の神ホアカリ』などのモンスターもいる)

*6
『グランスライム』は、スライム系のモンスターとして一番上の存在だとされてい()モンスター。登場後扱いがドンドン悪くなっていき、今となっては普通のモンスターくらいの扱いとなっている

*7
元々は自分の現状に(気持ち悪さなどから)限界を感じる、という意味で使われていた言葉。現在は感情が限界を突破してしまった、一種の発狂状態みたいなものを指す言葉として使われている。どちらにしろ『周囲から見たらヤバい』ことに違いはなかったり


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