なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ええとつまり、他の三体は黒に紫に白……って感じに、色で統一されているのにも関わらず、何故か一体だけ色でもなんでもない『烈』が混じっていることに憤慨している……ってこと?」
「然り!そもそも『黒』『白』とするのであれば、あとは『赤』『青』とするのが筋であろう……みたいな気分も無いではないがな!」
「……『紫』は赤と青の混合色だから、それで間に合ってたりとかは……」
「それはそれで『烈』が気に食わぬ!……というか、その主張が通るのであれば『黒』はまだしも他二色がおかしくなるではないか!『白』は『桃』、『紫』は『赤紫』とでも呼ぶつもりか?」*1
「ぬぅ、正論のような屁理屈のような……」
彼の言葉を聞きながら、鼻白んだ表情を晒す私達。
凄まじく端的に言えば、彼ことズァークは派生系である『覇王竜』が(色んな意味で)中途半端であることに憤慨している、ということになるらしい。
確かに、黒と白を含む四つの存在……と前置かれているのであれば、残り二つの枠に
……まぁ、その感覚の元となる四象関連の話というのも、これまた擦られ過ぎている類いのモチーフであることも確かなので、スタッフ側がちょっと外した……とかが正解なのかもしれないが。
それはそれとして、『烈』以外は全て色で統一されているということも確かな事実。それゆえにちょっと気になってしまう……というのも仕方のない話だと言えてしまうわけだ。
……え?白と紫は後付けの可能性もある?ついでに言うなら後から増えた『
ともあれ、『烈』が黒と同じ素体からの派生・ないし発展系だとするのであれば、それは『覇王竜』というカテゴリとしては別枠のもの……と言い張ることも不可能ではないだろう。*4
ゆえに『烈』のことは一旦脇に置いて、『青』──即ち
……つまるところオリカ*6作成の依頼、ということである。
「人聞きの悪いことを言うでないわ!我に扱われるに足る、光栄なるカードを生み出す権利を貴様らにくれてやる、と言っておるのだ!」
「そのために化けて出た、って辺りがワケわかんないんだよねー……」*7
まぁ、当のズァーク本人はこちらのそんな発言を聞いて、地団駄を踏みながら訂正を入れていたわけなのだが。……正直、地縛霊になって化けて出ている辺り、真っ当に相手をするべきかどうか悩んでいる私達である。
──そう、化けて出ている。
ここにいるズァークは、先ほどギャラクティック・ノヴァばりに爆発した
……どうにもこのズァーク、なにかしらの切っ掛けで生まれた
正直、説明しているこちらもよく事情を把握しきれていないのだが……、ズァークも元々は観客達の声に応えるもの──いわゆる
それにより、いつもの雑極まりない【継ぎ接ぎ】の連鎖が発生。
聖杯的な力の塊がズァークになり、そのズァークが意思を持って動き出す前に『
で、そんな彼が
そのことを知った時の榊君の顔は、なんとも言えない絶望にまみれていたのでした。
こう、仮に彼が魔法少女なら、瞬時にソウルジェムが濁って魔女化しかねないレベル、というか。……虚ろな目で
……後日、試しに五条さんに聞いてみたら「ああ、デュエリストはパース。あれ下手すると『無限にも限界があったのさ』とかなんとか言いながら、あっさり無下限越えてくる人が居たりするからねぇ」とすげなく断られてしまったので、もし仮に連絡できたとしても、彼の絶望を更に深める結果にしかならなかったかもしれない……と言っておく。
まぁ、デュエルモンスターズってわりと意味不スペックだからねぇ……。*8
ともあれ、今ここにいるズァークが怨霊の類いであり、榊君そのものではないけれどそれに近しいモノに取り憑いている、ということは事実。
なので彼に穏便に・かつ拙速に成仏願うのが今の私達の総意、ということになるわけなのだけれど……。
「……憑依して貰って『シャイニング・ドロー』とか『リ・コントラクト・ユニバース』とか『ストーム・アクセス』とかした方が早いんじゃ……」*9
「キーアさんそれ本末転倒ってやつですからね?!」
正味なところ、デュエリストらしく
いやだって、ねぇ?
このズァーク君が言ってることは、噛み砕いて言えば『実際のデュエルで使えるカードを作りたい』であり、単なるオリカ作成とはわけが違う。
正規でそれを行おうとすれば、彼を引き連れてコ◯ミに向かい、ロビー辺りで『我とデュエルしろぉっ!!』もとい、お願いをしに行かなければならないということになるわけで。……いや、んなことできるかいってんですよ。
その点、デュエリスト特有のカード創造系技能を使えば、デュエルディスクにも認識して貰えるカード作り放題……いや別に作り放題ってわけではないか。
まぁともかく、ちゃんとデュエルで使えるカードを作るのであれば、今からコナミに頼みに行くよりもオカルトパワーで精製する方が早い、というのは事実。
であるならば、その新カードを望んでいる本人に作らせるのが、一番手っ取り早いというのもまた事実。……なのだが、今のズァーク君は霊体のようなもの、そのままではカードを作るどころかカードに触ることすらできないのである。
なので、榊君に
まぁうん。嫌がるよね、拒否するよねっていうか?
そんなわけでこの提案は否決、他のやり方を模索することになったのでしたとさ。
そうして、他のやり方──必要そうなモノを集めて釜にぶち込み、カードを錬成する方法(なにをどう間違えたのかサファイアができた。『覇王青竜』だからと言って青いモノを中心に集めたのがよくなかったらしい)とか、はたまた地中から石板を掘り出す(そもそも存在しないカードなので、精々オベリスクが見付かったくらいだった)とか、様々な方法を試してみたのだけれど……、どれも失敗。
正確には、別なものは出来上がるけれどカードはできない……というなんとも不可思議な事態に陥ったのだった。
「ってわけなんだけど、なにか対処法とかやり方とか知らない?」
「……突然店にやって来てなにを言うのかと思えば、君は私のことを、なんでも屋かなにかと勘違いしているんじゃないかい?」
微妙な手詰まり感を感じた私達が、向かったのはラットハウス。そこでこちらを出迎えてくれたライネスに子細を聞かせたところ、返ってきたのはため息混じりのそんな言葉だった。……なお、この時点でズァーク君が怨霊化してからは一週間ほど経過している、ということを付け加えておく。
「ははぁ、一週間もこんなことを?……いや、なにかしら作れている辺りは、流石だって言っておきたいところだけど。……もっと早くに無駄な行動だ、って気付いたりはしなかったのかい?」
「いやー、◯ナミに頼みに行くのが無理な以上、もう手当たり次第に試してみるくらいしか思い付かなくてさー……」
「ああなるほど、一番手堅い選択肢が初期も初期に潰れていたから、当てずっぽう以外手がなかった、というわけか……」
こちらの成果を纏めた資料を流し読みしながら、呆れたような視線を向けてくるライネス。
まぁ確かに?作中において『デュエルモンスターズの起源は錬金術にある』みたいなことを言っていた気がしたから、そっち方面のことを色々と試していたのは事実。
……ただそれは、『コナ◯本社にズァークを連れていく』という一番確実で一番手堅い選択肢が、実際には一番選択してはいけない・選択できたモノではないやり方だったからこそ。
そうでなければ、私もこんな成功確率一パーセント切ってそうなやり方なんて選んでないのである。
そもそも作ろうとしているのは、新たなる『覇王竜』。……オカルト方面からのアプローチでは、常に暴走の危険が付き纏うのだから。
「……ああなるほど、だからこそ『適当にプロキシ*11でオリカを作ってそれにパワーを込める』みたいな方法を選ばなかった、ということか」
「ぜっったい『偽物だから呪いまーす』とかされるって目に見えてたしね……」
そんなこちらの言葉に、納得の表情で一つ頷くライネス。
……作中でコピーした『ラーの翼神竜』を使ったら天罰が下った、みたいなことがあったが、今回のこれも同じ。*12
幾らズァーク本人からの依頼とは言え、オカルト的なやり方ではどこに地雷が埋もれているのかわかったものではない。
なので、やり方としてはかなり穏当な部類になる、錬金だの発掘だのの方法を試していた、というわけなのであった。
……まぁ、おかげさまでそもそも『覇王青竜』以外も成功の判定に引っ掛かってたんですが。……さっきのサファイアにしても、実際の宝石に混じって『サファイアドラゴン』とか混じってるしね、カードの。
そんな感じで、時折カードも出来上がるけれどお目当てのモノじゃない、みたいなことを繰り返した結果、疲弊しきってしまったのが、店内で椅子に座って死んだように項垂れている他の人々、ということになるわけでございまして。
ココアちゃんに大丈夫ー?と声を掛けられ、呻き声をあげる他の面々を見ながら、私はライネスと顔を見合せ苦笑するのだった。