なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「デュエルディスクは持った?デッキの準備はオッケー?よぅし、じゃあ早速出掛けよう!……あっ、外は日差しが強いから、帽子とかは忘れずにね?えっと、日焼け止めいる?」
「こ、ココアちゃんが、頼れる姉オーラを発している……!?」
「こうして外に出ること自体、わりと珍しい方ですから。……いつもよりも多めに張り切っている、のかもしれませんね」
なりきり郷のロビーにて、再び集合した私達。
全員が必要なものを用意して、こうして集まり直したわけなのだが……なんだかこう、ココアちゃんが張り切っているような?
はるかさんの言う通り、ココアちゃんが郷の外に出るということ自体がわりと珍しいことであるうえ、今回の彼女は更に珍しい『頼られる側のポジション』でもある。
その結果が、この溢れ出る『姉オーラ』*1ということになるようだった。……張り切りすぎて、途中でエンスト*2とかしなければいいのだが。
なお、今回の私の格好についてだが、郷の外に出るのだから大きくなっても構わないのでは?……などと思っていたのだが、キリアからは
……凄まじく業腹だが、仕方ないので妖精サイズのままなのであった。無論、それだと目立つどころの話ではないので……。
「猫の着ぐるみ……いやこれは着ぐるみか?ホントに?そも我が入れる猫ってなんぞ?」*4
「剥製みたいに精巧な出来だよねぇ。まぁ、中に入って動いても変に思われないように……って話だったし、できうる限り生き物としての再現度を高めた結果、ってやつなんだろうけど」*5
榊君の肩の上でなおなお鳴いているのは、ふてぶてしい表情をした三毛猫。
対し私はと言えば、ココアちゃんの肩の上でみゃおみゃお鳴いている白い猫の姿。
……そう、今回の私達は猫のぬいぐるみ……着ぐるみ?を着用した上で、この外出に臨んでいるのである。
これぞ、琥珀さん謹製猫スーツ!……着ぐるみなのかぬいぐるみなのかスーツなのか、どれなのかはっきりして欲しいという声が聞こえる気がするがスルーさせて頂く。
まぁともかく、ズァーク君と私は要するにペット枠。
肩の上で大人しくし続けることで、周囲に余計な騒ぎを広めないようにするための処置、ということになるか。
個人的には、かなり遠回しとはいえ自身の成仏のための行動である、今回の外出にズァーク君が同行を申し出たことに、些か疑問を感じないわけでもないのだけれど。
当の本人からは「ああもう、うん、なんでもよいわ」と凄まじく投げやりな言葉が返ってきたため、その辺りの追求をするのは止めたのだった。……これ、多分なんか見落としてますね……。
まぁ、榊君がある程度精神を持ち直した、というところに意味があるとも言えるので、まったくの無駄足になることはないだろう。
無論、最終的な結果として榊君の顔が曇る可能性はあるが……その時はその時、その時点での私がなんとかしてくれることでしょう。
……
ともあれ、集まり直した私達は、そのまま郷の外に出ようと玄関の扉を開けて……。
「……あっつ!!?」
外気のあまりの違いに、思わず撤退する羽目になるのだった。
「え、なにこのクソ暑さ?確かまだ一応六月だよね?普通なら梅雨でじめじめが恒例行事だよね???」
「外は暑いとは聞いてたけど……まさかこんなに暑いとは……」
扉を開けた途端に建物内に入り込んできた熱気に、たまらず退散した私達。
ロビーに備えられたソファーに崩れ落ちるように座りながら、スマホで情報収拾をしていたのだが……。
そこで指し示された周辺区域の現在の気温は、なんと三十六度。郷の中との温度差は驚異の十度、ロビー内の気温とならば実に十四度差である。……バカかな?
「正直舐めてたなぁ……暑いって言っても特定の場所だけだろ、って思ってたというか」
「なんか今年は高気圧が梅雨前線をどっかにやった、みたいなことになってるみたいだね、ニュースを見る限りだと」
「はぁ?……赤道直下より暑いだぁ?なんだよそのクソみてぇな天候は!あぁ、イラッとくるぜ!!」*7
「サイトも安定しないなぁ……」
この気温差には、流石の面々もグロッキー。
話に聞くのと実際に体感するのでは大きな差がある、ということでもあるが、それにしたって違いすぎである。……この辺りはまぁ、郷の内部が
「あうう~……ダメだぁ、これじゃあ私、溶けちゃうよぅ……」
「ああっ、大丈夫ココア?!お姉ちゃんアイス買ってくるから、ちょっと待っててね!」
「……こっちはこっちで溶けてるし。なんとかなりませんかキーアさん?」
「あー、うん。まぁこれは仕方ないし……テッテレー!『腕クーラー』!」*8
「……さっきから何故、ドラえもん力を高めておるのだ貴様?」
この暑さには、姉オーラを纏っていたココアちゃんも流石にダウン。そうなれば実の姉であるはるかさんが慌てふためくのもまた道理というわけで。
これでは外でなにかをする、という話以前の問題である……と、榊君からなんとかならないか、と嘆願を向けられることになった私。
……本当は使う気は無かったのだが、仕方ない。
彼の言葉にそうため息を返しつつ、ついと腕を振って虚空から呼び出したるは、腕時計みたいな形のアイテム。……ズァーク君が随分とフレンドリーになってきていることに、密かに面食らいつつ。
人数分のアイテムを取り出した私は、それをみんなに配っていく。そうして全員に行き渡ったのを見届けたのち、改めて口を開いた。
「これは『腕クーラー』と言って、腕に付けるだけで涼しくなれる道具なんだ」
「だから何故、さっきから貴様はドラえもんっぽくしておるのだ?!」
「細かいこと気にしてちゃ強くはなれないんだぜ?」
「答えになっておらんわ!」
取り出したアイテムの名前は『腕クーラー』。
さっきからズァーク君がツッコミを入れている通り、ドラえもんのひみつ道具の一つであり、その名前の通り『腕に付けるクーラー』である。
それだけなら、何故使うことを渋っていたのか?という疑問が湧いてくるかもしれないが……よくよく考えて頂きたい。これはひみつ道具なのである。*9
「まぁ、正確には琥珀さんが作ったモノなんだけど……これも『逆憑依』関連の技術の賜物、逆を言えば
まず以て、クーラーを腕時計サイズに縮小する……ということ自体が、現行の科学では難しいことである。*10
無論、単にひんやりするというくらいなら、今の技術力でも出来なくもないかもしれないだろうが……これは文字通りのクーラー、周辺気温を明確に冷やしている。
つまり、生半可なモノではその名前を名乗るに相応しくない、ということであり。それは裏を返せば、その名前を与えられている以上は、それをそれであると認定できるだけの性能がある、ということでもある。
……まぁ要するに、このひみつ道具もまた『再現度』に縛られている、ということ。
実際に『腕クーラー』を名乗れている以上、そのスペックはほとんど再現されているということだ。
「ええと……?」
「雑に言えば非生物の『
「い、一気に俗な感じの呼び方に……」
首を傾げる榊君に、雑に説明する私である。
なお、変身アイテム系統も『逆憑依』された人が直接持ち込んだモノ──例えばアスナさんのナーヴギアみたいなモノを除けば、全てこの『なりきりアイテム』の類いである。
この場では……元々デュエリストではない、ココアちゃんのデュエルディスクも含まれるか。
ここまで説明すればなんとなくわかるかと思うが、ココアちゃんが普通に他のデュエリスト達とデュエルできているように、これらの『なりきりアイテム』は本物?となんら遜色のない性能を持っている。……いやまぁ、彼女のデュエルディスクを作ったのは、決して琥珀さんではないけれども。
ともあれ、『なりきりアイテム』の扱いはエミヤさんの投影品のようなもの。
即ち、単に使う分には本物とさして変わらないわけで。……それはつまり、
「例えばデュエルディスクなら、闇のゲームとかみたいなリアルダメージ系のルールにも対応している……みたいに、再現しなくてもいいようなものまで再現しているってわけでね?」
これは、『なりきりアイテム』達もまた『逆憑依』カテゴリーに含まれるものだからこその問題点。
例えば投影品なら、改造したりすることで使いやすくすることができる。それが本物だったとしても、改良するなどして欠点を改善することは可能だろう。
が、『なりきりアイテム』の場合は違う。
これは
つまり、
結果、これらの道具はそれらの致命的な欠点ごと、再現せざるを得ない状態となっており……、
「『腕クーラー』の場合だけど、ネジを回すことで涼しくできるんだけど……クーラーだけに暑くするのは無理でね?だから、変に回しすぎると凍ります」
「……一応聞いておくけど、なにが?」
「
「実に極端ですねぇ……」
今回の腕クーラーの場合、常に凍り付けになる危険と隣り合わせ、という問題があるのだった。
いつもの琥珀さんの開発物と違い、再現を主眼に置いたアイテムなのでリミッターもない。
つまり、使用方法を間違えると……まぁ、ね?
無論、ここにいる面々が間違えることはないと思うのだが、外は異常なまでの暑さ。
原作でネジを巻きすぎる描写がある辺り、この『腕クーラー』の温度調整というのは、かなり細かいものなのだろう。
……なにが言いたいのかと言うと、早く気温を下げようとして多めに回しすぎる可能性がある、ということで。
凍り付けにまでは行かずとも、寒さで震えることになる可能性は多いにある。ゆえに、脅かしすぎなほどに注意を促している……というわけなのであった。
まぁあとは、意外とこの『腕クーラー』が高いため、ミスって温度を下げすぎた時に最悪壊すしかない、というのが嫌すぎるってのもあるんですけどね。
「俗だねぇ」
「無駄に浪費するよりはいいでしょ。……まぁそんなわけだから、くれぐれもネジを回しすぎないでね」
ポツリとぼやくサイトに苦笑を返しつつ、私は他の面々にちゃんとした使い方をレクチャーし始めるのであった。