なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「つーいーたー!!」
「森の中なら涼しいかと思ったけど……いや、普通に暑いね、ここ」
電車に乗りバスに乗り、更には暫く徒歩で移動して……。
そんな道程を経たのちに、ようやく目的地にたどり着いた私達。
そこは、木々が
木々が日光を覆い隠すため、真っ昼間でもうっすらと暗い……そんなロケーションの場所であった。そしてそれゆえに、昼間にも関わらず幽霊の目撃情報が出た場所でもあったのである。
……まぁ、ここなら日が照っていないから涼しいのでは?という予想の方は、見事に裏切られたのだけれど。普通にあっつい!
「うーん、如何にもと言った風情!出ますかねぇ、出てきますかねぇ?」
「さてねぇ。噂と
「しらみ潰し*2に探すのは流石に無理がありますから、なにか手掛かりでも見付かればいいですね」
そんな暗がりを覗き込むように見ながら、サイトが興奮したようなテンションで捲し立てる。……実際は言動が真月っぽい動きに変換されているだけであって、本人的には普通に話しているのだろうが……なんともまぁ、胡散臭い動きである。
そんな彼に一つに言葉を返せば、隣でははるかさんが疲れたように息を吐いていた。……まぁ、今回の面々の中では彼女だけが一般人なのでさもありなん。
ともあれ、調査は今日だけではなく、これから暫く続いていくもの。
はるかさんの言う通り、今日一日だけに注力するのは悪手も悪手なので、熱中症にならないように注意しながら捜索するとしよう……と、みんなに確認を取る。
「……それがなんで、腕クーラー使っちゃダメって話になるの~!?」
「幽霊が居たら背筋がゾクッとするのが普通だけど、腕クーラーを使ってると普通に見逃しちゃうからね、仕方ないね」
「それとゾクッとしたら凍るかも、って話だっけ。あれも結局、本当に気温が下がってる訳じゃないから、腕クーラーの原理と変に噛み合っちゃうかもしれないんだって」
「なにそれ~!?」
なお、こんなにも蒸し暑いのにも関わらず、腕クーラーは使用禁止……と言われて、ココアちゃんが不満を漏らしていたりもした。
理由については今語った通り、体が冷えている状態では目視以外での幽霊の確認が難しいこと、および『
一応、日が隠れている分直射日光に晒されないのはいいことだと思うが、代わりに森林の内部なので湿気が多め、というところでプラスマイナスゼロになっている、という感じだろうか?
なのでまぁ、不平不満がみんなから漏れるのは、ある意味仕方のない話でもあるのだった。
「うー、こうなったら……えーい!ドロー!」
「えっちょっ、ココアってばいきなりなにを?」
とはいえ、その不平不満が
業を煮やしたというか、はたまた不満が頂点に達したというか。ともかく、ココアちゃんが痺れを切らしてデッキに手を掛けるまで、そう長い時間は掛からなかったのでした。
なお、その様子を隣で見ていたはるかさんは、この状況でデッキに手を伸ばすことの意味がわからなかったようで、頻りに困惑していた。
また、他の面々は『その手があったか!』みたいな顔で、彼女に続いてデッキトップに手を掛けていたのであったとさ。……これだからデュエリストは……(白目)
「さいきょーデュエリストのデュエルは、全て必然!*3だからドローだってこの通り!──そんなわけで、私は手札から『ゴーストリックの雪女』を召喚!」*4
「むぅ、なるほど。リアルソリッドビジョンシステムにより、
「それができるんなら、最初っから腕クーラーいらなかったんじゃ……みたいなツッコミはしちゃダメな感じ?」
こちらのジトッとした視線も意に介さず、ココアちゃんがデッキトップからドローし、そのまま叩き付けるように召喚したのは『ゴーストリックの雪女』。……以前の彼女が使っていたのは『メルフィー』デッキだったような気がするが、もしかして今回の仕事内容に合わせてデッキを調整したのだろうか?
まぁ、これから幽霊を探しに行くというのに、幽霊もとい妖怪を連れてきてるのはなにかのギャグか?……と思わなくもないのだけど。*5
そんなこちらの文句をよそに、カードから飛び出した『ゴーストリックの雪女』は、ココアちゃんの右肩付近でふよふよと浮いていたのだった。
ついでに、彼女の出現と同時に、周辺気温が明らかに下がったような気もする。……やっぱりデュエリストっておかしいな?
なお、突然の妹の奇行に困惑していたはるかさんは、そこから更に、単なるカードのはずの『ゴーストリックの雪女』が飛び出してきたうえ、あまつさえ周囲を涼しくしている現状に、思わず宇宙猫顔を晒していたのだった。
……元々
なお、そんなことをしているうちに、みんなが好き勝手氷系のモンスターを召喚し、結果として凍り付きそうなほどに寒くなったので、召喚は代表一人だけにしなさい……と怒る羽目になったこともここに記しておく。*6
「やっぱりデュエリストって、ロストロギア*7とかその辺りの、封印措置が必要なモノなんじゃないかなって」
「それを我に聞かせて、どういう反応を求めているのかは知らんが……とりあえず答えておこう。禁止制限改訂まで待て、しかして希望せよ」*8
「……巌窟王!?」
「ん、なになに?新しい零児のモンスター?」
「……
「「!?」」*9
皆が皆好き勝手したために、危うく森林で遭難し掛けた私達。
今はジャンケンに勝ったココアちゃんが『雪女』を侍らせ……もとい一番涼しい位置にいるわけだが、その頭の上に居る私はと言うと、隣の榊君の肩でごろごろしているズァーク君と、他愛のない世間話をしていたのだった。……『ddd大王』はペンギンとして扱う効果がありそう()
なお、幽霊探しの方は難航中。
こちらに『雪女』が居るのでつられて出てくるかと思ったのだが……この様子だと寧ろ警戒されている、というわけなのかもしれない。
「むぅ、こうなったら榊君のデュエルディスクに隠された機能・相手のカード化を乱用して、周囲の森林を丸裸にするしか……」
「いや付いてないからね!?っていうかそんなの付いてたら黒咲に腹パンされるってば!」*10
「ですよねー」
なので、いっそのこと森を丸裸にするのが早いのでは?……みたいな冗談を述べたところ、榊君からは食い気味に否定されることになるのだった。まぁ、作中の敵キャラの所業なのでさもありなん。……あれってカード化したあとディスクにセットしたら、その人が召喚できたりするんだろうか?
そんな風に話しつつ、森の中を歩いていく私達。
森の中は来た時と変わらず、薄暗く鬱蒼としており、暑さゆえなのか生き物の気配もない。気温的にはセミがうるさいほどに鳴いていてもおかしくないのだが、それすらもない。
……まぁ、そっちに関しては梅雨が短すぎたせいらしいが……それでも、この気温の中で虫の声一つない……というのは、薄気味悪くすら思えるというか。
「……はっ!まさかこれこそが幽霊出現の予兆……?」
「そんなバカな……って言いたいところだけど、確かにこの静かさと薄暗さ、些細なモノを見間違えるのには、絶好のロケーション……という風に見れなくもないかもね」
「と、言うことは……ここはハズレ、ということでしょうか?」
つまりその薄気味悪さが、枯れ木なんかを幽霊と見間違える雰囲気作りの一助となっていたんだよ!……と暑さにやられたような答えを述べたところ、これが案外みんなに好評。やベーなみんな暑さでヤバくなってる?(失礼)
熱で意識が朦朧とすることを、昔の日本では『発狂する』なんて言っていたこともある*11し、いい加減休憩とかしろということなのかもしれない。……え?『ゴーストリックの雪女』の効果で涼しいはずじゃ、だって?
まぁ暑さ云々は置いておくとしても、歩き詰めで皆が疲労感を覚え始めているのは確かであろう。
ここは一度森を出て、近くの喫茶店にでも涼みに行くべきなのかもしれな……喫茶店だと
むぅ、二人だけ服もとい着ぐるみに空調付いてる弊害というわけか……などと呻く私に、榊君が不思議そうな表情を向けてくるが、にゃおと鳴いてごまかす。
ともかく、ちょっとした休憩の時間が必要だということに、間違いはないだろう。
なので、その提案をしようと口を開き掛けた私は。
「……!あの木の後ろ、なにか走っていかなかった?」
「え、どこどこ!?」
「あっちあっち。……いや反対、ココアちゃん反対だって」
「ええー!?どこなのキーアちゃん!?」
「いや右!……いや行き過ぎ!……そう、そこ!」
「……いや、なに遊んでんの君ら」
少し離れた木々の後ろを、カサカサと音を立てながら駆けていく影を見付け、慌ててその姿を追い掛けることになるのだった。