なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ヒッポが居てくれたから追い付けたけど……」
あのあと、大量のカバに紛れ、観客達の前から姿を消した私達。
忽然と消えたカバ達の姿に、周囲の人達は驚きながらも大きく湧いていたことだろうが……その姿を私達が視界に納めることはなく。
その代わりとばかりに、
「……えっと、狐憑き……みたいな?」*1
「くっそー!離せよー!」
私達の目の前に居たのは、頭頂部に耳──狐*2のそれとおぼしきモノを生やした、見たところなんの変哲もない少年であった。……ええと、この森での騒ぎの元凶?はこの子、ってことになのかな?
今一断定しきれずに、私達がメンバー内で互いに顔を見合わせているのは。……それは彼が
……つまるところ、現状では本当に
「……うーん、誰かこの子の顔とか見た目とか、なにか見覚えあったりしない?」
「いや、ないかな。これが女の子で狐耳ーとかなら、『けものフレンズ』とかで色々と思い付くのかもしれないけど……」
「ここにいるのは男の子で耳、ですものねぇ。しかも狐耳ですし」
むむむ、と縄で縛った少年の周りで唸っている私達。
狐っ娘、というのであれば幾らでもキャラは思い浮かぶのだが、ことこれが少年……もとい男性キャラでと言うことになると、意外と思い浮かばないモノである。
今パッと脳裏に浮かんだのは
まぁともかく、『狐系の男性キャラ』ならまだしも、『狐耳の男性キャラ』というのは意外と少ないのだ、ということは間違いない。……乙女ゲーとかそっちの方には居ると思うが、詳しくないので割愛。*4
そもそもの話、この少年は……失礼な言い方になるが、
説明が難しいのだが、いわゆる『逆憑依』【顕象】は一目見ただけで『あ、これは二次元から出てきたな』というのがなんとなくわかるのだ。……CG系の作品出身のキャラにも似たような感覚を抱くので、正確には『創作の世界から出てきたんだな』という感想、と言うべきかもしれないが。
ともかく、『逆憑依』やそれに準ずる存在と言うのは、顔を見ればなんとなくわかってしまうものなのである。
そういう意味で、今取っ捕まっている少年には──オーラがない。
ディ○ニーランドでミッ○ーマウスの耳を付けて遊んでいる観光客の如く*5、彼の狐耳には『取って付けた感』が溢れんばかりに漂っている……という風に言い換えても言いかもしれない。
「この人達すっごい失礼なんだけど?!なんで本人の目の前でそんなにザクザクと貶すような言葉が出てくんの?!」
「おっと失礼、少年。思わず口に出てしまっていたようだ。──ところで君は私達の姿を見てしまったので、このままでは処分しなくてはいけないわけなんだが……」*6
「更には物騒!?ってか猫がすっごい物騒!!」
なお、それらの会話は目の前の彼にも聞こえていたようで、彼は身動き取れないなりにじたばたしながら、こちらへ抗議の言葉を投げ掛けてくるのだった。……随分と元気な子である。あと猫が喋ってるのは気にするな。
しかし──結局のところ、この子はなんなのだろうか?
こちらが普通に走って追い付けない速度、という時点でなにかしらのオカルトめいたモノが関わっている……ということはわかるが。
現状では『逆憑依』関連のモノである証拠が見付からず、ともすれば別口の異変なのでは?……と断定してしまいかねない状態である。
そうなるとまぁ、こっちとしてもお手上げというか?
あくまでも私達は単なるなりきり勢、本気のオカルトには手も足もでな……いかどうかはともかくとして、管轄外であることは確かな話。
それどころか『逆憑依』絡みだと思っていた案件が……狐憑きだから妖怪?幽霊?……まぁともかく、五条さんと鬼太郎君に任せるのが無難な案件だったとなれば、各地で調査を行っている他の面々を呼び戻す必要も出てくるというか。
──確かにちょっとくらいは対抗できるかもしれないが、それでも私達はその道のエキスパートではない。
生兵法は大怪我の
まぁそうなるとこの案件、片付くまでとても長引く……ということになってしまうわけなのだが。最初の方の『二人だけに任せる』っていうのが最適解、ってことになってしまうわけだし。
そんな感じの話を、あーでもないこーでもないと続ける私達。
縛られた少年はといえば、半ば放置された形になっていたため、ぶつぶつと文句を唱え始めていたのだった。
「なんなんだよ一体……突然変な半透明の狐が中に入ってきたかと思えば、『お前には堪え忍ぶ者であることを望む』……とかなんとか、どこからか変な声が聞こえてくるし。かと思えば、なんか知らないけど体が軽くなって、足が速くなって、耳がもう一つ生えてきて。……みんなの目が怖くて、ずっと森の中にいる羽目になってたと思ったら、なんか変な奴らに捕まって。……俺、なにか悪いことしたのかなぁ……単に肝試しに行っただけなのになぁ」
涙目でそうぼやく声を聞いた私は、ふむと呟いたのち、思考の海に潜る。
──どうやら、この森での幽霊騒ぎが彼の仕業、というのは半分正解で半分間違い、ということになるらしい。
肝試しに行った、というのはこの森であることはほぼ間違いない。で、あるならば、彼がその噂を引き継ぐ前まで、周辺住民に幽霊として騒がれていたのは彼に憑依した狐、ということになるのだろう。
そして、彼が狐憑きになったことにより、彼はその姿や力が変化し、周囲から畏れられるようになった。
その畏怖の視線から逃れるように森に逃げ込み……その結果として私達に捕まった、と。
……ふむ、
それと、謎の声とやら。『堪え忍ぶ者』というのは、恐らくそのまま『
そうなると、ここにいる彼は──、
「……
思わずぽつりと呟く私。
体内に狐の化け物を宿し、それゆえに周囲から不気味がられていた忍者・うずまきナルト。*8
狐耳、という時点で候補からは外していたが……少年で狐、という意味では確かに当てはまっていると言えなくもない。……境遇もほんのり寄せている感じになっているし。
「ナルト、ナルトかぁ……、…………っ!?」
「ん、どうしたの榊君?鳩が大砲受けたような顔になってるわよ?」
「どんな顔だよそれは……ええとなになに?ガキを見ろ、だぁ?」
そんな私の呟きに反応した榊君が、思案するように視線を上に向けたあと、そのまま下に下ろして……どこぞの
いきなりなにさ、みたいな私の言葉に、反対側のサイトが榊君の指差す方に視線を向けて。
「……?いきなりなんだっ
「な、な、」
「「ナルトだぁ!!??」」
「えっ、へっ?どーいうこと????」
先の少年が、いつの間にかナルトになっていることに気が付いたのだった。
「えーっとつまり、今のは【兆し】が『逆憑依』になる瞬間を目撃した、ってこと?」
「ええと、当てはめられる現象としては、そのようになるのではないかと……」
「よくわかんねーんだけど……俺ってば、なにかやっちゃった感じ?」
「どうなんだろう……個人的には私が
突然の事態に動揺しつつ、とりあえず詳しい話を聞こうと喫茶店に取って返した私達。
捕縛状態から解放された少年……暫定ナルト君には詫び代わりになんでも食べていいよ、と言い置いておき、改めて今回のあれこれについて考察する私達である。
……まぁ、暫くろくなもの食べてなかった、というナルト君が、なんでもという言葉を額面通りに受け取った結果、店のモノを食い尽くす勢いであれこれ頼み始めたため、そう長くは留まれないだろうが。
「コスプレです、ってごまかすのにも限度があるからねぇ。……聞いてる?榊君」
「あ、あははは……いやまぁ、俺のは大丈夫だって確信してたから……ダメ?」
「ダメです。反省文お願いします」
「はーい……」
ナルト君もまぁ、多少は大食いの気があるため、すぐにすぐは騒ぎにはならないだろうが……それでもまぁ、キャパ的な問題でいつまでも大丈夫、ということにはならない。
これはさっき大活躍していた榊君にも言えること。
確かにマジシャンには、ある程度オカルトを許容する空気があるが……それも無尽蔵、というわけではない。ましてや視界を埋め尽くすカバ、興奮しているとはいえ、あとから思い出せば『やっぱりおかしいな?』となるのは必定だと言えるだろう。
──つまり、あれは『ごまかしバッジ』の姿をごまかす機能あってのもの、だったということ。
完全にごまかせずとも、効果がなくなるわけではないからこその応用法、とでも言うべきか。……要するに、『マジシャンだからなにをしてもおかしくない』だけではごまかしきれない違和感を、件のバッジが補助してくれていたわけである。
なので、バッジなしに同じ事をすれば大騒ぎ間違いなし。……というか、最大効率にするためにバッジの効力ぎりぎりだったため、あともう一つカードを発動したりしていれば、そのまま『これはコスプレじゃない』と気付かれていただろう。
さっきは褒めたものの、改めて考えてみると始末書ものの蛮勇だったことは間違いなく。ゆえに彼には私から、厳重注意と反省文の提出についての通達を行うことになったのだった。
……ゆかりんが聞いたら泡を吹くような案件だった、と理解して貰いたいところである。
まぁ無論、褒めたことについても間違いではないのだが。……あのままだと地道にずっと探すという手段しか取れなかっただろうし。
その辺りは始末書が反省文になっている辺りで察して貰うとして。
私達は、ナルト君についての話を、改めて進めていくことになるのだった……。