なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
警察署内から戻ってきて早々、こちらが不安になるような言葉を口にするはるかさん。
どうにも茶化せる*1ような空気でもないため、思わず息を呑む私達に対し、彼女は重々しい口調でその『悪いニュース』とやらを告げてくるのであった。
「……ええと、子供の捜索願なんですが、今は出ていないそうです」
「あ、はい」
……そんな重苦しい口調で告げることかな、それ?!
余りにも空気が重かったため、なにかもっと恐ろしいことでも告げられるのかと思っていたのだが……返ってきた内容は、単にさっきまでの話を確信させる程度のもの。
殊更深刻そうに言うべきモノでもないと思われたため、思わず拍子抜けして調子を崩すことになる私達なのであった。……いやまぁ、実際には重要な内容なんだけどね?
さっきまでの考察で出た問題が、そのまま確定した形となる彼女の報告。
要するに、現状では現・ナルト君な元・少年の素性は不明だ、と確定してしまったということ。
この状態で、彼を郷に保護してしまうのはどうかと思わなくもないのだが……。
「うーん、これから新しく捜索願が出される可能性もあるし、とりあえず連れて帰る?」
「未成年略取ってことになりそうなのがなぁ……」*2
「それに関してはわりと今さらなんじゃないかなぁ」
現状で私達にはそれ以外の対処が取れない、というのも確かな話。
とりあえず、ゆかりんにはここいら近辺の情報を、引き続き集めて貰えるようにお願いしておくとして。ナルト君に関しては、そのまま郷に連れ帰ることになるのだった。
なお、その決定に対して榊君はいいのかなぁ、と溢していたが……姿形が変わってしまっていること・国の協力があることを背景に、既に結構な数の元・少年少女達が郷に居ることを示せば、彼は確かに……と、微妙そうな表情を浮かべるのでしたとさ。
「……え、なんでみんな私の方を見てくるの?」
「だって、ねぇ……?」
そもそもの話、故意にではないとはいえ略取されたと言っても過言ではない人が一人、目の前に居るわけですし。
……と、みんなからじいっと見詰められてココアちゃんは困惑し、はるかさんは複雑そうな表情で曖昧な笑みを浮かべていたのだった。
「姉ちゃん達のとこに行くの?俺は構わないってばよ!」
「軽っ」
「こういうのあるから、本人確認ってある程度年齢を重ねてないとあてにならないんだよね……」*3
次の行動が決まったため、ナルト君にその確認を取ったところ、彼から返ってきたのはそんな感じの軽ーい言葉。……子供の了承ほど軽いものはない、と改めて感じさせるような挨拶だが、だからといって確認が必要ないわけでもないので、一応は聞いておかなければならないジレンマというか。
ともあれ、このまま問題がなければゆかりんに確認を取って、スキマでさくさくと郷に送り出すことになるはず……なのだけれど。
「……出ないわね、ゆかりん」
私がスマホで連絡を試みたところ、電話先のゆかりんが応答する様子はないのであった。……この時間帯なら、向こうで寝ているということもないはずだが……?
留守番電話サービスになるわけでもなく、ずーっと呼び出し音が鳴り続けている辺り、どうにも向こうは電話に出れない状況……ということになるようではあるけれども。
「ふぅむ、スキマ便が使えないとなると……普通に連れ帰る、ってことになるのかな?」
「ですが今日はそろそろ、泊まるところを探すことに切り替えた方が宜しいのでは?」
「む?……ああ確かに、そろそろ夕方かぁ……」
こうなってくると、ナルト君を連れて郷に戻るのが確実、ということになるのだが……。
あれこれと確認やら会話やらを続けている内に、時刻は既に午後の四時を回ってしまっていた。
ここから郷に戻って……となると到着は夜になることが確実。
向こうに戻れば手続きやらなにやらで、そこから暫く拘束されるのもまた確実だから──今から帰るのはわりに合わない、というはるかさんの主張も一理ある話だと言える。
そもそもただでさえこのナルト君、元は少年である。
その辺りの説明や調整・それから彼に書いて貰わなければならない書類の存在を思えば、彼への負担を考慮して一日置いておく……というのは至極真っ当な選択肢だとしか言えまい。
今からスキマで直帰できるというのであれば、その辺りの書類記入も現実的な時間で終われるだろうが、という面も少なくないが。
結論、今日はもう寝ようぜ、だ。*4……いやまだ寝ないけど。
「なるほどなぁ……ってことは部屋は二部屋か?」
「うん?……ええと、猫組はそれぞれ分ければいいとして……うん、女二人に男三人だから、必要な部屋は二部屋かな?」
そうと決まればてきぱきと行動する、である。
サイトが顎を撫でながら発言したため、改めて人数を確認する私。
今回外に出てきているのは、猫になっている私とズァーク君を除けば榊君・サイト・はるかさん・ココアちゃんの四人。
そこにナルト君が加わるわけだが……人数的にはさして多いわけでもないため、普通に男女で一部屋ずつ、計二部屋取っておけば特に問題はないだろう。
姉妹水入らず*5のところにお邪魔する形になる私だけ、ちょっと気まずい気もするが……。
「お姉ちゃんお姉ちゃん、今日は私のデッキ調整に付き合ってね♡」
(助けを求める眼差し)
「あー、うん。……ココアちゃん、はるかさんには報告書をお願いするつもりだから、代わりに私が手伝うよ」
「えー?……でもそっかぁ、キーアちゃんもその手じゃパソコンとか、ちゃんと使えないもんね。じゃあー、お願いしまーす」
「お願いされまーす」
(感謝しますキーアさん、の眼差し)
……うん、デュエリストに若干の苦手意識が生まれてしまっている今のはるかさんには、ココアちゃんの相手は荷が重いところがあるだろう……というこちらの予想は、さほど間違っていなかったみたいだ。
必死に助けを求めるはるかさんの姿に、思わずコナン君みたいな乾いた笑みを浮かべつつ。私は彼女の代わりに、ココアちゃんのデッキ調整に付き合うことを約束するのであった。
……まぁ、先の『雪女』ちゃんみたいに、デュエリストのデッキとは、その対処手段の豊富さの源泉みたいなもの。
しっかり調整してこれからの行動を万全にしたい、というココアちゃんのそれは、言うなれば彼女が張り切っていることの証拠でもある。
ならば付き合わない、という選択肢は存在しないわけで、私がモルモット……人柱……もとい手伝いをすることには否はない、ということになるわけでして。
代わりにはるかさんが報告書を作ってくれるというのであれば、私は喜んでこの身を炎に投げ出そう……的なアイコンタクトを行った結果が、この状況の理由というわけである。
「……キーアちゃん、私のことなんだと思ってるの?」
「え?デュエリストが変なのは間違いじゃないんでは?」
「おぃィ?俺達まで軽率に巻き込むのはどうかと思うんだが?」
なお、ただの手伝いが非道な人体実験みたいな扱いをされていることに、ほんのりココアちゃんがむくれていたが……デュエリストって大概意味不明でしょう?と返せば、微妙に返答に困ったような顔をしていたのだった。……リアルソリッドビジョンシステムの時点でおかしいからね、仕方ないね。
「ペット可のところを探すのに、こんなに手こずるとは思わなかった」
「よもやよもやだ、ってやつだよ~……」
疲れたー、と言わんばかりの声をあげ、ベッドへと倒れ込むココアちゃんと、その頭の上でだれている私。
そんな私達の姿をくすくすと笑いながら見ているはるかさん……というのが、今この部屋の中にいる人達の全てである。
さて、今私が述べていた通り、部屋探しは意外なほどに難航していた。……それはもう、部屋探しだけで一時間消費させられたと言うほどで、このままちょっとだらけていたら、すぐさま夕食が始まるくらいの時間の浪費である。
で、何故そうなったのかという理由が、ペット同伴可な宿泊施設が見付からなかった、ということになるわけで。……こうなってくると、私も別のごまかし方を考慮しなければならないかなー、と唸ってしまうのだった。
「まぁ、行く先々で『ペットはちょっと……』とされていましたからね」
「うーむ、飲食系以外でもお断りされるのはなんなのか……」
苦笑いを続けているはるかさんの言葉に相槌を打ちつつ、改めて今日の行動を思い返す私。
描写こそしていなかったが、結構な数の店や施設で『ペットお断り』されたわけで……こうなってくると地域的にペットの同伴を断る理由がある、と見た方が良いのではないかと思ってしまう。
「地域的に、ですか?」
「うん。例えばほら、北の方とか」
「あー……エキノコックス?」
「そうそう」
思い付くのはエキノコックスのような、人獣共通感染症*6が流行している地域であるということ。
その場合はキャリーバッグにも入れられていない猫、なんて恐ろし過ぎるのは間違いなく。そりゃまぁ、断られても仕方ないとしか言いようがないだろう。……エキノコックスでなくとも、自然界の生き物を捕食する可能性の高い猫との接触は、わりと危険が付き纏うものなわけだし。*7
これならウサギとかの方がいいのかも、と思わなくもないが……肩とか頭に乗って大人しいウサギって居るのだろうか、という疑問も湧かなくもな……ティッピー……?
「アンゴラウサギは、本来頭に乗せるモノではないと思いますよ……?ココアにぴったり、というのは否定しませんが……」
「あー、うん。ぴったりすぎて『ごまかしバッジ』貫通しそうだし、ウサギは無しだね……」
「ええー!ティッピーかわいいよー?!」
そういえば常時頭に乗っているウサギ、普通に知ってるじゃん!……と思った私だが、そもそもあれ自体が
……そもそもはるかさんの言う通り、ココアちゃんの頭上にウサギというのは色んな意味でマッチし過ぎなため、下手すると『ごまかしバッジ』のごまかし範囲外となりかねない。
流石にチノちゃんの頭の上に置くよりはマシだろうが……渡らなくても良い危ない橋ならば、渡らない方がいいというのも確かな話。
なのでええー!と愚痴るココアちゃんには悪いのだが、ウサギに変装案は見送ることにさせて貰う私なのであった。……代わりに、話は振り出しに戻ってしまうのだけれどね。