なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
──次の日の朝。
昨日の電話により、郷の方がなにやらトラブルに見舞われていることを察知した私はと言うと。
「……はぁ、ナルト君はこちらに同行させる、と?」
「うん、向こうの厄介事がどんなものかはわからないけど、少なくとも新人の受け入れなんてやっている暇じゃ無さそう……ってのは間違いないからね」
それらの情報をみんなに共有した上で、とりあえずナルト君に関しては暫く同行させる……という方向で進めることを提案したのだった。
現在は使えないから皮算用だが、向こうが問題を解決した暁にはそのまま
まぁ、もう一つ理由があるとすれば……。
「……ん?姉ちゃん達、どうしたんだってばよ?」
「いや、まぁ、うん、ははは……」
「?変な姉ちゃん達」
このナルト君が思いのほか問題児だったから、ということになるだろうか。
まぁ、暴れん坊だとか聞かん坊だとか*1、そういう意味での問題児ではないのだが。……じゃあなにが問題なのか、と言うと。
「ほらナルト、人にぶつかるぞ」
「んん?あ、榊兄ちゃんありがとだってばよ」
「へいへい。いいから前見て歩けってのお前は」
「サイト兄ちゃん口悪いー」
……うん、見て貰えばわかるかと思うが、なんというかぽやっとしているのである、このナルト君。
人格が内部エラーでも起こしているのか、と思いたくなるほどののほほん……ぼけー……ふんわり……まぁともかく、行動が一テンポ遅れるこの感覚。
とてもじゃないが、一人で行動させられたものではない……というこちらの心配はわかって貰えるはずだ。
ナルト君のパーソナリティーとしても、あの時の少年の様子から想定される人間性からしても、微妙に違和感を抱く彼の状態。
これが、特殊な状況で『逆憑依』を起こしたからこその、彼だけの異変なのか。それとも、私達がその部分を覚えていない──幼少期の記憶のようなものであって、皆が皆体験していたモノなのか。*2
生憎とよくわからないが、後者に関してはなんとなくだが『違う』と感じる以上、これが彼特有のモノであるのは確かだろう。
はたしてそれは、これからもずっと続くモノなのか。はたまた、なにかしらの切っ掛けでズレが直るものなのか。
それを見極めるための時間が欲しい……というのが、彼の同行を願い出たもう一つの理由、ということになる。
端的に言えば、こんなぽやぽやショタを
「えー……キーアちゃんってなんで、最後にこっちがあれ?ってなるようなこと付け加えるの……?」
「定期的にふざけないと爆発するから」
「?!」
なお、もう一つの理由の、最後の総括。
その部分に引っ掛かりを覚えた人間が多かったのか、周囲からの視線が刺さって痛かったと述べることで、この話の締めとしたいと思う。
……あと、真面目な話をし続けると爆発する、というのは本当である。体じゃなく頭が、だが。*3
「まぁ、冗談めかして言いはしたけど……正直あのまんま放り込むのはナルト君も周囲も負担が掛かるだろうなぁ、ってのは本当だよ?」
「……まぁ、子供だからと甘く見て貰えるわけでもないですしね。しんちゃんとかも居ますし」
駅への道をぞろぞろと歩きながら、先ほどの話の補足をしていく私。
彼は中身も含めて子供である存在だが……見た目で言うのであればしんちゃんも子供だし、そもそも中身も外見も子供である荷葉ちゃんという子もいる。
その中で、今のナルト君の状態は……周囲もカバーはしてくれるだろうが、『逆憑依』における子供達という視点において、言い方は悪いが劣っていると述べても間違いではないわけで。
普通『逆憑依』とは、創作のキャラクターを憑依させられるもの。最低でも
まぁ、荷葉ちゃんとかは本人が大人びていた例なので、ここであげるのは少し微妙かも知れないが……ともかく、それらの人々と比べると今のナルト君は危なっかしくすらある、ということは間違いなく。
せめて中身の少年の記憶を思い出すくらいには、その齟齬を無くしてあげたいと思う私なのです。
……あと、迂闊にマシュの周りにショタを増やすの、とっても良くないと思うの(小声)
「……そっちが本音なんじゃねーのか?」
「ははは。……いやまぁ、純粋無垢さの溢れる今のナルト君に、なりきり郷の混沌っぷりは目の毒だと思ってるのも確かデスヨ?」
「なんで片言……でもまぁそういうことなら、先にちょっとこの辺りを見て回る?もし実家とか見つけられたら、なにか思い出すかもだし」
なお、そんな私の小声は聞こえていたようで、みんなが微妙な顔をしていたが……まぁ、なりきり郷そのものが毒みたいなもの、というのも確かな話。
毒に染まりきった私達には大したことないが、このぽやっとしたナルト君に、あの空気をいきなり浴びせかけるのは、余りにもかわいそうというのも間違いではないので、こうして私達と触れ合うことである程度慣れて貰おう、という面もなくはなかったりする。
……え?一口に毒っていうけど、その毒が一番濃縮されてるのはお前らだろうがって?知らなーい。
ともあれ、こちらの言い分に納得したらしい榊君から提案が。
実質的な散策の提案だが、確かに悪くはない話ではある。そもそもの話、この辺りの怪談というか噂というかは、まだ残っているわけなのだし。
「……え、残ってるのに別のところ行こうとしたの?」
「いやいや、別に職務怠慢とかそういうことじゃなくてね?もう一つの噂の方は、正直偽物だろうなー感が強すぎるから、別に放っておいてもいいかなーってね?」
「偽物、ですか?」
そんなこちらの『噂が残っている』という発言に、榊君が露骨に反応を示してくる。
このままでは私の信用が地の底に落ちる、と判断した私はすぐさま弁解を開始。……おい誰だ、お前の信用とか端から地の底だろう、とか言った奴。
まぁともかく、残っている噂が余りにも荒唐無稽*4であるため、確認するにしても後でいいだろうと判断したことを伝えると、今度ははるかさんから声があがる。
恐らくは確かめもせずに偽物と判断したのは何故か、ということなのだろうが……逆に言えば、これに関しては
そういう風に伝えたところ、みんなからの反応は困惑の混じったもの。本物だと困るという評と、確かめなくても偽物だとわかるという言葉が、微妙に噛み合わない……と言ったところだろうか?
ともあれ、これに関しては聞けば『確かに』となるだろうことは間違いないわけで、ゆえに私は特に勿体ぶることもせず、その噂の内容を口にするのだった。
「──宇宙人だぁ?」*5
「そうそう、宇宙人の目撃情報ってやつ」
告げられた噂の内容に、サイトが
そう、この街にもう一つ流れていた噂というのは、宇宙人──正確には宇宙船の目撃情報があった、というものなのであった。
昔は夏と言えば怪談か宇宙人か、というくらいにテレビで特集の組まれていたこの二者だが*7……今となっては技術が進み、かつて妖怪や幽霊と呼ばれたものは単なる現象に堕ち、宇宙人──この場合はUFOも、単なる勘違いか作り物か……と言った風に、その正体をほぼ看破されてしまっている。
そもそもの話、宇宙において『生き物の生息できる環境』というのは──ありえなくはないが、コンタクトを取るのはまず不可能、と思われているものである。
その理由は、太陽系内に生き物の住んでいる星が一つしかないため。……より正確に言えば、
生命が住むためには、太陽やその代わりとなる恒星との距離、住もうとする惑星の大きさが主に重要となってくる。
前者は惑星表面の温度に深く関わるわけだが、距離が近過ぎれば地表は灼熱と化して空気も水も蒸発するし、反対に遠すぎれば今度は地表が温められず極寒と化す。
地表の温度に関しては、正確には惑星の大きさなども関わってくるが……ともあれ、適切な距離とでも呼ぶべきモノがある、ということは間違いではないだろう。
後者に関しては引力などを決める重要な要素となるわけだが……基本的に地球型の惑星──いわゆる岩石惑星は一定量以上大きくなれないのではないか、という説が存在する。
これはある程度の質量を持った時点で、水素やヘリウムなどの軽い気体元素を重力圏に捕まえてしまうためで、こうなるとガス惑星になってしまい人が住めるような星ではなくなる、みたいな話があるが……正直ややこしいので各人で調べて欲しい。
ともあれ、小さすぎれば水や大気を地表に留めておけず、反対に大きすぎれば重力が強すぎて人が住めたモノではなくなる、というわけだ。
こうした様々な問題を考慮するに辺り、太陽系内には人の住める星というものはほとんどない、とされている。無理をすれば住めなくもない、という星もなくはないが……その星では住んでいくのが手一杯、というような状況下において、星の外へと飛び立つための研究が進むだろうか?
結局のところ、目先のこと以外に目を向けるには必ず
それゆえ、太陽系内の『住めそうな星』には知的生命体は居ないか、もしくは居たとしても星の外に飛び出すような技術力は持ち合わせていない、ということになるのである。
では、太陽系を飛び出して、他の天体の星々ならどうだろうか?……こちらはこちらで、
この現実の世界において、光よりも速いものというのは存在しない。……正確には
それを踏まえた上で、この宇宙に存在する『地球から一番近い位置にある、生命が住めるような惑星』までの距離はと言うと。──有名な『ロス128b』までのそれは、およそ十一光年。
光速度は秒速三十万キロメートル、時速に直せば十億八千万である。その速度で一年掛かるというのだから、それがどれほど気の遠くなるような距離なのかは言うまでもないだろう。
スペースシャトルの速度が時速三万から四万キロくらいだと言うのだから、単純計算で二万七千倍・すなわちスペースシャトルで三十万年ほど掛かる位置、ということになる。
無論、創作などでよく使われている『ワープ航行』などを実現化していれば、その分掛かる時間は短くなるだろうが……そこまでして地球にやって来るだろうか?そして、そこまでの技術力を持っていて、明らかに技術力の劣る地球人に見付かるという愚を犯すだろうか?
……冷静に考えればノー、だろう。
ゆえに検討するまでもなく、最初から『あり得ない』という評が『宇宙人』というものには付き纏うわけなのであった。
「……いやその、キーアさん?一つツッコミしていい?」
「ん?なにかある?別におかしなことは言ってない気がするんだけど」
なお、そこまで懇切丁寧に説明したにも関わらず、榊君からは疑問の声が。……そこまで言うのであれば、納得の行く論拠を示して貰おうか、と思っていた私は。
「……いや、『逆憑依』絡みなら、普通に超科学とか出てくると思うんだけど……」
「…………ホントだ!?」
「ええ……」
次の彼の言葉に、確かにと唸る羽目になったのでしたとさ。……そういえばそうだね!?(完全に素)