なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「つまりこの噂、ちゃんと確認しないとダメってことじゃん!あぶねー!!責任問題になってたところだった!」
「……キーアさんって、時々意味不明なポカをやらかしますよね……」
懇切丁寧に説明した内容が、そもそも自分達の出自によってひっくり返されるこの状況。
まさに悪夢、まさに阿鼻叫喚*1……とまではいかないものの、ともあれ変な見落としをしそうになっていたことは確かなため、思わずあぶねーと叫ぶ羽目になる私である。
榊君には感謝感激雨あられ*2、あとで飴ちゃん*3を買ってやろう……などというよくわからない思考を脳内で飛ばしつつ、慌てて回れ右。
適当にナルト君の生家を探しつつ目的地に向かおうとしていたのを、そのまま現場に直行する形に軌道修正したのだった。
「……んで?ここがその現場ってかぁ?」
「うむ、ここが噂の現場──UFOの目撃情報が頻発しているっていう、街の電気屋さんだね」
で、そうしてたどり着いたのはとあるビルの手前。
建物内の全てのフロアが一つの電気屋で埋まっているという、わりと珍しいタイプの電気屋さんである。
なんでも土地の余裕がなく、結果としてこのような縦長の建物になったのだとか。
「まぁ珍しいと言いつつ、探せば意外とどこにでもあったりするかもだけど。……で、目撃情報があるのはここの屋上だね」
「はぁ、屋上。……なーんか既視感がするような?」
なお、都心部なら普通に見付かるかもしれない、ということは一応言い置いておく。スペースが横に確保できないのなら上に伸ばす、というのは普通の対処法であることも確かだからだ。
まぁ一応、下に伸ばすという手段も無くはないだろうが……そっちは限度がわりと近いため、そこまで期待できる対処法でもないというのも確かだったりする。
その辺の話は置いとくとして、UFOの目撃情報があったというのは、現在私達がいる一階部分ではなく屋上の方。
こちらは最近では本当に珍しい、屋上が一般客に対して開放されているタイプの遊戯コーナーであり、そこで休んでいた人達がなにかを見て……という形での噂が広がっているようだ。
なので、現場確認の意味も込めて私達も屋上に向かおうと述べたところ、みんながとても微妙な顔をしていたのだった。……ふむ、既視感とな?
電気屋で屋上に既視感?と首を捻りながら、そのままエレベーターに乗って待つこと暫し。
そうしてたどり着いた屋上は、昭和の空気感を現代に残したままの場所であった。
「ぱ、パンダの乗り物……だと……?」
「み、ミニ観覧車がありますよ!?」
「わー、アンパンマンだー」
私達の目の前に広がっていたのは、人工芝の上に置かれた数々の遊具達で、キャラクターを象ったものも幾つか散見される。
──それは、いわゆる『屋上遊園地』と呼ばれるもの。*4
昭和から平成、それから令和に向かうにつれて、段々と消えていった高度経済成長期の遺産の一つ、とでも呼べるもの達なのであった。
……とはいえ、これらは昭和の時代からこの場所にあり続けるモノ、というわけではないらしい。
「え、そうなの?」
「そもそもこういうのが設置されてたのって、いわゆるデパートの屋上だからねー。……で、ここってなんのお店だっけ?」
「……あ、電気屋だ」
「そういうこと。だからまぁ、ここにあるのは……
榊君の驚いたような声に、私はそういう風に答えを返す。
屋上遊園地というのは、本来
それゆえに、家族みんなで来ることが予想されるデパート……百貨店と呼ばれるような、比較的大きな商業施設の屋上にあるのが普通だったものだ。
昨今においては、屋外遊具の保守点検に掛かる諸費用や負担の面・それから消防法の観点などから、徐々に姿を消すこととなっていったわけだが……元々の
──つまり、これらの遊具は比較的最近、デパートなどに設置されたそれらとは別の思惑によって持ち込まれたモノ、ということになる。
「なんでもここのオーナーさんが、近くの商業施設の屋上に設置されていた、撤去予定のこれらの遊具を買い取ってここに置いたんだって。……勿体ないとか、懐かしいとか、色々思うところがあったんだろうね」
「なるほどねぇ……でもよぉ、消防法云々の話すんのなら、ここに置くのとか更に無理なんじゃねぇか?」
私の説明に、サイトが周囲を見渡しながら言う。
確かに、百貨店のような大きな建物の上にあるのなら、スペース的な問題や消防法的な問題からしても、まだ現役で動かせるかもしれないが。
この電気屋の屋上では、それらの制限から満足に稼働させることもできないだろう……という彼の指摘に間違いはない。
なにせこれらの遊具、基本的には
「あん?」
「基本的にこの子達は
「……ホントですね、よく見たら観覧車も、動かないようにしっかり固定されています」
こちらの言葉に首を傾げるサイトだが、こちらが指で指し示した方を向いた結果、納得と困惑の混じった表情を見せてくる。
さもありなん、この屋上にある遊戯コーナーとは、正確には屋上の隅の方に設置されたテントの下。
自販機の前に広がる、これまた昭和っぽいゲーム筐体達のことを指していたのだから。……十円入れて遊ぶゲーム*5とか、今の若い子にわかるのだろうか?
で、反対側のよく目立つミニ観覧車とかアンパンマンの遊具に関しては、よーく見るとボルトなどで固定され、動かないようになっていることが確認できる。
要するに、これらは単なる置物である、ということ。
そもそもの話、設置場所もできる限り隅の方に寄せられている辺り、消防法にちゃんと準拠しようという努力のあとはしっかりと見受けられるわけだし。
「でもまぁ、パンダは動くんだけどね」
「動くんだ!?わっ、ホントだ!?」
なお、パンダだけは移動型の遊具だからなのか、普通に動かせるようである。
なので、というわけではないだろうが。
……はるかさん、写真を撮りたくてうずうずしているのはわかりますが、先に仕事を済ませましょうね?
と、ココアちゃんの頭の上から彼女の肩の上に移動した私が注意したところ、はるかさんが面白いくらいに挙動不審になったりしたが……まぁ、些細なことだろう。
「……まぁ、この屋上の景観とか設備とかに驚いている場合じゃない、ってのも確かだよね」
そんな榊君の言葉により、ここに来た目的を思い出した面々。
そういうわけで私達は、ここで噂されているというUFOの目撃情報について、詳しい調査を始めたわけなのですが……。
「……てんでバラバラ、ってやつだな」
「ふむ、こうして確かめに来たわけですが……やはりハズレ、だったということなのでしょうか?」
屋上広場にやって来る人、店内で仕事をしている店員達、近くに住んでいるという街の人々……。
それらの人物達に聞き込みをしてみたところ、なんとまぁ、ものの見事に話が噛み合わないのである。
ある人がオーソドックスなUFOの姿を見たと言えば、またある人は飛行機のような形のモノを見たと言い。
ある人がそれを見たのは夜だと言えば、またある人はそれを見たのは真っ昼間だったと言う。
高速で飛行していたと聞けば、蚊の止まるほどの低速だったと聞き、全体が銀色に光っていたと言う人がいれば、いいや金色だったと言う人がいる。
──まさに支離滅裂。*6
こうなってしまっては『実際は別の話なのではないか?』というような疑問が持ち上がってくる始末である。
「別の話、って言うと?」
「例えば、本当はUFO以外の別のものの目撃情報なんだけど、
つまりは、BBちゃんの記憶操作みたいなもの、ということ。
仮称UFOを見た相手に記憶の置換を施し、この場所で起きた本当の出来事を隠蔽しているのではないか、という説である。
なお、これが仮に正しいとする場合、随分と
「……なるほど、ここまで証言がバラバラであれば、聞き込みを続ければ必ず違和感に突き当たる。ともすれば、誰かに気付かれることを前提としているかのように……ということですね?」
「そういうことですね。各人の話す内容がバラバラである以上、それらを集めて行けば必ずこの違和感にたどり着いてしまう。であるならば、相手は杜撰なやり方をしたのか、はたまた端から気付かせるためにやったのか。……正解がどちらであるのか、それ如何によっては危険度も跳ね上がる、ということです」
「ねぇねぇキーアちゃん?」
「おおっとココアちゃん?なにか質問でも?」
記憶の置換によって、このバラバラな証言が生じたのだとすれば、その理由は二つに一つ。よっぽど杜撰なやり方をしたのか、はたまたこの違和感を集める誰かが居ることを想定してか、である。
もし仮に、これが後者の手によるモノであるのならば……もしかしたら私達が思っている以上の厄介事、ということになるのかもしれない。
思わず緊張感の走る私達であったが、そんな空気を破ったのはココアちゃん。
流石にパンダ一辺倒では飽きてしまったのか、若干つまらなさげなナルト君を連れた彼女は、私達の会話に割り込んでくるとこう告げるのだった。
「みんなの言ってることが、
「いやココア、そりゃねぇだ「あ゛ー、その可能性もあるのかー!」……ってキーア?」
それを聞いたサイトが否定の言葉を吐くが……この状況においては否定しきれないモノであることも確かだったため、思わず唸る私である。
これが単なるUFOの目撃情報ならば、証言が全てバラバラだと言うのは見間違いの可能性を補強するだけだが。こと『逆憑依』関連の事件として見るのであれば、それは別の意味となる。
──すなわち、この場所が