なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「え、えーと……?」
「実際に貴様達の……ああいや、あの珍妙な姿の者達にどう見えているのかは知らぬが。我の目は誤魔化せぬ、あれは精霊共だ」
こちらの困惑を余所に、ズァーク君は間違いないとばかりに声をあげ続ける。
その内容は、私達が追い掛けている相手は精霊──カードの精霊達と呼ばれるモノ達が実体化した存在である、というもの。*1
とはいえ単に実体化したという訳でもなく、その見た目や状態には、様々な偽装が施されている……とも述べていたわけなのだが。
「我の管轄外の技術が使われているようであるから、正確な出所などについてはわからんが……あれらの核となっているのは、間違いなく精霊。その外装部分にあれこれとなにかを張り付け、
「え、えーと……じゃあなんであれ、ゴンさん達には見えてるの……?」
「知らぬ。大方使われている技術がそちら方面の──念だか仙術だかに絡むような技術である、というだけのことではないか?」
「む、むぅ……」
とはいえ、あくまでも彼にわかるのは
それ以外のこと──どんな技術で隠蔽されているのかとか、本来はどんな見た目の精霊なのか……ということに関しては、全てわからぬとばかりに一蹴されてしまうのだった。
……まぁでも確かに?
この一連の事件と、ズァーク君の降臨。その両方が同一犯によって起こされたものであるとするのならば、その裏で糸を引いている人物が精霊に関わる者──いわゆるデュエリストである、と考えるのは自然な流れである。*2
そもそもの話、サイトが真月になったことが私達の出張の発端になったのだから、余計のこと……というやつだろう。
そうすると、このままゴンさん達を追って行った先には、誰かはわからないもののデュエリストが居る可能性が高い、ということになるわけなのだが……。
「……どう思う?」
「どうって……なにを?」
「いや、この先にいる相手。想像付く?私はなんとなくこの人だろうな、って目星はついてるけど」
そうなってくると、この事態を引き起こしたのが
全国各地に霊的な騒動を起こしている、件の人物。
それほどまでに影響力が強い相手、となればそうそう数は多くないと言える。
さらに条件を付け加えると、既にこの現実世界に『逆憑依』しているキャラクターが、再度別の人物に『逆憑依』して現れる……という事態については、今のところ発見されていない。
それらのことを念頭に入れれば、郷や互助会に既に在籍しているデュエリスト達は、この件の容疑からは外れるということになる。
……となれば、ここで該当するのはほぼ一人。
広く影響力を持つデュエリストで、今回の事件を引き起こせそうな人物。そんな人物は、デュエルモンスターズの産みの親──ペガサス・J・クロフォード氏以外に存在しない。*3
……が、そうしてペガサス氏が犯人だと半ば確定したとしても、それでも解き明かされていない謎というものは、幾つか残ってしまっているのである。
まず第一に、何故幽霊騒動なのか。
ペガサス氏は
ゆえに、彼個人で
が、実際に現実で跋扈しているのは幽霊達。
それも、別にカートゥーンめいた姿をしたモノに限られているわけでもなく、さらにこの電気屋に現れるUFO達に関して言えば、そもそも本来の姿が周囲に見えていない。
……わりと目立ちたがり屋のような面もあるペガサス氏が、このような(端的に言えば)つまらないモンスターを作るだろうか?
第二に、能力の効果が及ぶ範囲が広すぎる。
私達『逆憑依』は、再現度などの様々な要因によって、本来の本人達よりも遥かにレベルを下げられた状態で、現世に存在している。
現行の物理法則を押し退けて、自身の世界の法則を顕現させられている時点でわりと大概なのだが……それでも、再現の限度とでもいうものは存在しているわけで。
その点からこの騒動について考察してみると……日本各地で起きている幽霊騒動が全て彼のせいであるとするのならば、
いわゆる
無論、リアルソリッドビジョンシステムが優秀だからどこにでも派遣できる、という理屈も付けられなくはないが……『逆憑依において、ロボットは基本持ち込めない』という話があったように、日本全土にソリッドビジョンを発生させられる装置……なんてものはまず持ち込めないのが普通である。
……となれば、なにか別の方法で彼らを実体化させている、と考える方が普通だと言えるだろう。例え精霊と言えど、なんの依り代もなしに現世に顕現し続けるのは不可能なのだから、核となるなにかがあるのは間違いない……ということである。
そして第三、これは第二の疑問にも関わってくるものだが……そうして精霊達を実体化させている力の源について、となる。
第二の疑問の結論として、これらはリアルソリッドビジョンではないのではないか?……という答えが得られたが、仮にそうでなかったとしても、どちらにせよ必要なエネルギーをどうやって賄っているのか、という点で疑念が生じるのである。
もし仮に、なんらかの手段で全国に届くリアルソリッドビジョンシステムを構築できたのだとしても──それを維持する電力というものは、考えるのも恐ろしいような桁のモノとなるだろう。
原理的には遠隔投射になるため、例え投射したあとは精霊達に維持を移管するのだとしても、それらを遠方に送り届ける手段というものについても考えねばならないだろうし。
そしてこれらが、リアルソリッドビジョンシステムによるものではなかったとしても──それが別の方法なら別の方法で、それぞれに対応したエネルギーの補給……という点での問題が持ち上がってくる。
さらにはそもそもの話として、その場合にはペガサス氏一人でこの騒動を実行するのは無理がある、という話も出てくる。
なにせ、確かに『千年アイテム』はオカルト系のアイテムに属しているが──彼の持っていた
……要するにこの事態を引き起こすのには、なんの助けにもならないアイテムだということになる。──他に協力者が居る、と考えた方が余程自然だと言えるだろう。
最後に第四。精霊達に偽装を施しているという、別の力について。
こちらも第三の最後の方の話と関係するが、ペガサス氏が持っているオカルト的な技能というのは、千年眼による読心術のみ。
ゆえに、彼は実体化した精霊達の姿をごまかすような術を、そしてそれらを施すための手段を持ち合わせていない。
ここでも他の協力者の影というものが見え隠れするわけなのだが……ペガサス氏に協力する人物、というのが中々思い付かないのだ。
これは『逆憑依』関連の話なので、私達の想像の斜め上を行くような答えが待ち受けているのだろうが……それでも、全く想像せずに事態に立ち向かうのと、ある程度想定してから立ち向かうのとでは、心の余裕に違いが出てくる。
ゆえに、私達はこの事件の首謀者に対して、その実態を想像することを止めてはいけないのだ。
……というような話を長々と説明したところ、榊君はとても微妙な顔をしていたのだった。
「いや、だってさ。……ペガサスさんが有名、ってのは
「……あー、なるほど。
そんな彼の微妙な表情の理由とは、ペガサス氏のことを聞かれても
……単純だが、だからこそ「あー……」となる答えであった。
相手がなにを考えているのか、ということを想像するには、その人の人となりと言うものを予め知っている必要がある。
ペガサス氏は遊戯王の中でも有名どころの人物であるため、その人物像についてはうっすらとでも知っている、という人の方が多数だろうが……それでも、又聞きの印象と実際に会った時の印象、というものは結構違うものである。
特に、アニメや漫画・小説などの創造物というものは、基本的に作中の時間をピックアップして見せるもの。……必然的に、
例をあげるのなら……鈍感系の主人公だろうか?
このタイプの主人公は、その鈍感さゆえにヒロイン達から物理的な折檻が飛んでくることがあるわけだが……その印象ゆえに、ヒロイン側を『暴力系ヒロイン』として認識することが普通である。
が、よく考えてみて頂きたい。
私達は、作品の内部に展開されている世界というものを、
それは言うなれば──一種の偏向報道、という風に捉えることもできる。
もし仮に、鈍感主人公の鈍感っぷりが、数十年来のモノであり。
もし仮に、ヒロイン達の告白などは(特にそれが幼馴染みであるのならば)両手で数えきれないほど聞き流されており。
その度にどうにかして──暴力以外の手段で気持ちを伝えようとしたが、全く効果がなかった……みたいな事情が、
それを読者達が知ったら、本当にヒロイン側を糾弾できるだろうか?
……いやまぁ、結局暴力は暴力なのだから、やっぱりダメだという人も居るとは思う。……が、暴力以外の全てがダメだったのであれば、暴力に頼ってしまうことを野蛮と言うのは、ちょっと違うのではないか?……とも思ってしまうのである。
まぁ、結局のところ語られていない部分でなにがあったとして、読者にはそれは伝わらないのだから、『だからどうした』という話でもあるのだが。
ともあれ、重要なのはそこではない。
語られなかった部分を知ることで、その人に対する印象が変わることは大いにあり得る、ということがここでは重要なのである。
……要するに、ペガサス氏に関しても、特にアニメ版は生存していることもあって、『語られていない部分』というものが極端に増えてしまっている、ということ。
榊君の出身作である『ARC-V』はほぼ確実に今までの作品とは地続きではないものの、それでも『もし仮にペガサス氏が居たのなら』という可能性は、私達に見えない部分で確実に存在している。
なので、榊君はそれらも含めて『わからない』と言ったのだ。
もし仮に、件のペガサス氏が『ARC-V』世界の出身だったりするのであれば。
彼の知識は、全くの無意味なモノと化すがゆえに。
……なお、そんな感じに私達がちょっとシリアスしている横で、ズァーク君はなんとも微妙そうな顔でこちらを見つめていたのであった。……言いたいことがあるのなら言ってくれません?