なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
目の前で綺麗な土下座を披露されつつ、そこから命乞いまで上乗せされてしまったのならば、こちらとしても取れる対応というものはそう多くはなく。
仕方がないので、他の面々がここにやって来るまで待機することを口頭で伝えると、彼女はこちらをチラチラ確認しながら露骨にびくびくしつつ、部屋の中に備え付けられていた椅子にちょこん……と座るのだった。
一連の事件の首謀者の、あまりにも呆気ない最後になんとも釈然としないものを感じつつも、一人で取り調べを始めるわけにもいかないので、大人しく他のみんなが追い付いて来るのを待つこと数分。
やって来た面々がゴンさん達ではないことに、ほっとしたような表情をしていた彼女の様子に、さらに調子を乱されつつ……改めて、事情聴取のお時間となったわけでございます。
……予定だと、もっと色々推理とかして、相手を追い詰める過程が必要だったはずなんですけどねぇ……?なぁんで省略されてるんですかねぇ、不思議ですねぇ……?
「……お主、自分でそのやり方はホラー以外の何物でもない、と述べておったではないか」
「今は夏なのだから、ホラー感を演出して納涼を……というのは、あながちおかしな選択というわけでもないだろう?」
「モノは言いようだなぁ」
なお、そんなこちらの主張は、呆れた顔をしたミラちゃん達に横からツッコミを入れられ、無事霧消するのでしたとさ。かなしみ。
「……ええと、自己紹介からした方がいいのか?」
「ああそうだね、お願いするよ」
集まった面々のその多彩さに、改めて目を白黒させている少女。
恐らくは地球とハルケギニアが繋がったことを知らないか、はたまた
……どちらかはわからないが、ともあれ他の版権系の人物が今この場に居るということに、遅蒔きながら自身の分の悪さ……とでもいうものに気付いたような感じの表情を浮かべている少女である。
まぁ、先ほど私がパリンパリン
そんな感じの謎マウントを脳内で取りつつ、彼女の名前を聞いている私である。……とはいえ、流石にその姿に付随する名前、くらいはすぐにわかるわけだが……。
「私の名前は、フレイム=ヒータ・Y・クロフォード、だ」
「いやちょっと待った」
そうして彼女が告げた名前に、思わず『待った』をしてしまう私なのであった。みんながいきなりなに?……みたいな顔をこちらに向けてくるが……冗談ではない!*1
「いや、ヒトカゲ成分は?!名前に影も形もないんだけど!?」
「あーっと、確か【複合憑依】は名前が混ざる……んだっけ?」
彼女の名前には、自身が『
いや別に日本語でも当てはまっていないわけだが……とにかく、これはおかしい。
西博士が『誰が主体かで名前が変わっていた』ように、【複合憑依】とは元々が掛け合い形式のなりきりであるからか、自身を示す時に必ず構成要素の名前を、それぞれ一文字でも含めるように定められているらしいのだ。
実際、あとから聞いた話ではあるが、あのCP君の方も本名には他二人──浸父とキュゥべえを想起させるモノが付随しているわけで。
名前とはすなわち、その人を示すラベルである。
ゆえに、複数の存在が混じりあうわけでもなく、統合されて成立する【複合憑依】達は……それを示す名前に、自身に含まれているそれぞれの存在を記さねばならないのだろう……とは、いつもの琥珀さんの考察である。
ともあれ、その法則に間違いがないのだとすれば、彼女の名前にヒトカゲを示すもの──英語名の『C』すらも含まれていない、というのはなんともおかしなことになるわけなのだ。
……え?『フレイム』?それはキュルケのペットとしての名前だから、彼女自身を示す名前としてはおかしいカナー。わざわざ『=』でくっ付けてる辺り、本名とはまた別口ってことなんだろうし。
そんなこちらの困惑を受けた彼女は、頭をぽりぽりと掻きながら衝撃の事実をこちらに明かすのだった。
「……いやそもそもの話、
「……はい?」
…………いや、どういうこと?
「……実はメスのヒトカゲで、今の姿はそのヒトカゲが人に変身した姿ぁ!?」*3
「そ、そうだけど……」
騎士としての口調を取り繕うことを止めた、私の剣幕にまたまたびくびくしている少女……ヒータちゃんでいっか。
とまれ、ヒータちゃんはおっかなびっくり、自身のことを語ってくれたわけなのであるが。……その内容は、こちらの度肝を抜くものであった。
なにせ彼女、その主張に間違いがないのであれば──ヒトカゲにヒータを【継ぎ接ぎ】したもの、という方が近い存在だったのだから。
いやまぁ、正確に言うのであれば『変身を覚えているヒトカゲ(♀)』が
……出てくるモノによっては、わりと綱渡り的な成功体験だったということになりかねないため、結構焦り気味の私である。
成功したんだからいいだろうと思われるかもしれないが、迂闊なことをやっていたと知れたのたら、あとでゆかりん達になにを言われるかわかったもんじゃないのだから必死なのだ。
そんな、こっちからの勝手な期待?圧力?を受けたヒータちゃんは、若干涙目になりながら自身のことをポツポツと語り始めるのだった。
それによれば、彼女の構成要素である三人は。
「一人目が『ヒータに変身できるヒトカゲ』。ただしこれは最初からそうだったわけではなく、スレの流れの中で人に変身する必要が出てきたため、必要に迫られて追加された設定だと?」
「そ、そうだよ!悪いかよ!」
「いや悪くはないけど……」
一人目は、先ほどから言っているようにヒトカゲ。
ただし、覚えている技に『へんしん』などが含まれており、彼女の姿は好きなキャラクターを写し取ったもの、ということになるようだ。……ボクっ子じゃなかったのも、そもそも本人そのものでもなかったから、ということが理由になるらしい。
「まぁ、公式で既に存在しているキャラ付けがあるんだから、なりきりである以上は普通従うもんね」
「端っから従ってなかったんだから、普通のヒータじゃないってことには、いの一番に気付くべきだったってわけだなぁ?」
「むぅ、そもそも【複合憑依】に【継ぎ接ぎ】めいたモノが含まれていていい、ってのが不可思議すぎる話だよ……」
周囲からなるほどなぁ、という声があがる度に『それがありならなんでもありやんけ』という気持ちが高まってくる私である。……そもそもの話、最初からわりとなんでもありだっただろうって?それはそう。
よく考えれば【継ぎ接ぎ】も大概なのだから、【複合憑依】だって大概だわな、と勝手に納得して、改めて続きを促す私なのであった。……なお、その一連の流れにより、ちょっとヒータちゃんからの恐怖心が消えたような気がした、とも付け加えて置きます。……代わりに変なものを見るような目線になった?……いや、いつものことじゃね?
ともあれ、一人目はそんな感じ。続く二人目は……。
「ハーイ、榊ボーイ。噂はかねがね……私はペガサス・
発光と共にヒータちゃんと入れ代わったのは、こちらの予想通りの人物・ペガサス氏。
ミドルネーム部分が増えているため、ここが他の面子の名前が加算された場所、ということになるのだろう。……『H』がヒータのことなのはわかるのだが、『Y』とは誰のことなのだろうか……?
……まぁ、その辺りは話を聞いていればその内わかることなので、特にこちらから問い質すようなこともないのだが。
あと、一応同じ『遊☆戯☆王』キャラだからか、真っ先に反応したのが榊君だったのも、そうおかしな話ではないだろう。
そのあとすぐに、「はい!私もっ、私もデュエリストです!」と目を輝かせて主張するココアちゃんの姿に目を白黒させたあと「オー!ファンタジスタガール!イッツクール!!」とかなんとか言いながら握手したりもしていたのだが。……
まぁ、ペガサス氏に関しては、見た感じそこまでおかしなところはない。何故だかトゥーンになっているヒータのカードとか、同じくトゥーンになっているヒトカゲのカードなどを所持しているが……概ね、普通のペガサス氏なのであった。
「……むぅ?」
「あれ、ミラちゃんどうしたの?ペガサスさんの左目の辺りを見てるけど」
と、こちらが結論付けるその横で、ミラちゃんが困惑の声をあげる。なんでも、彼の左目から不可思議な気の流れを感じ取ったのだとか。
……ふむ、左目?
確か彼の左目は義眼──『千年眼』が納められていたはず。ゆえにその気配なのでは、と思ったのだが。
「こやつは原作後じゃろう?
「う、うん?」
えーと……?
……『火霊使いヒータ』の初登場は、二千五年発売の『THE LOST MILLENNIUM』。その当時放映されていたのは『遊☆戯☆王GX』なので、OCGに存在しない『トゥーン・ヒータ』はそれよりも後に作られたもの、という扱いになるはず。*6
……原作と違って生き残った、GX以降のペガサス氏は左目の『千年眼』を失ったあと、その代わりの義眼を装着したりはしていないらしい。
闇の力に溺れたことを深く悔いた彼は、自身と同じように道を踏み外しそうになっている人間に、その空虚な
「オー!ユーはとても
「……さ、さぎゃ?」
「深い知性とか、聡明とかって意味の英語だね。……それで?ペガサスさんは、その前髪の下になにを隠しているのかな?」
「
そんな彼女の分析に、大仰に笑って見せるペガサス氏。
続けて問いかける榊君の言葉に、観念したように肩を竦めた彼は、その前髪をかきあげて──、
「──はい?」
「えっと、なんだっけ……あー!