なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・チャレンジャーはどこにでも

「以前キーアさん達にもご協力を頂いたのですが、今回はそれのアップグレード版ということになりますねー」

 

 

 淡々と説明をしていく琥珀ちゃん。

 その話を要約すると、以前キーアちゃんがしていた仕事……もとい検査を改良・改定したものを二人にやって貰いたい、という内容なのであった。

 無論、キーアちゃん達用のままだと──特にかようちゃんにとっては重労働も重労働でしかないので、ある程度負荷を下げたモノになったりはしているようなのだけれど。

 

 

「別に気にしなくてもいいのに。今の私、結構力持ちだし素早いんだよー?」

「荷葉さんがよくても、こっちの体裁的にアレなんですよー!こんな場面を公権力にでも見付かったりしたら、児童虐待とかなんとか言われてしょっぴかれるに決まってますー!」

「……いや、なんの心配してるのよ、貴方」

 

 

 なお、当人からの反応はこんな感じ。……『逆憑依』としてはかなり特殊な成り立ち方をしているかようちゃんは、姿形こそ幼子のモノではあるけれど、その身体能力は並の大人を凌駕している、というのは間違いないわけで。

 ……まぁだからといって、目の前で重いもの持ったり・とにかく走ったりしている幼子を、単に見ている・見ていなければいけない琥珀ちゃんの精神的負担とかがどれくらいのものか、というのは本人でもなければ正確にはわからない、というのも確かな話。

 

 結果、シャナちゃんからの変わらぬツッコミを受けながら、彼女は心を鬼にして実験を開始することになるのでした。……まぁなにを言おうとも、実験そのものを()めることはできないものね。必要なことだし。

 

 

「それにしても……これ、具体的にはどういう実験なの?」

「はい?……えーとそうですね、【継ぎ接ぎ】による能力上昇分の子細や、どこを起点として【継ぎ接ぎ】が起きているのかなど、多角的な視野からお二方を観察しようとしているわけでですね?」

「……これが?」

「はい、これがですけど……なにか問題でも?」

 

 

 そんな言葉を交わしながら、皆が()()()()先では。かようちゃんとタマモちゃんが、崖を登ったり・浮き石を飛んで渡ったりなど、様々な運動を繰り返している姿が見える。

 

 ……見上げた云々というのは、正確には先ほどまでの二人が天井に張り巡らされた、網のようなものを掴んで向こう岸まで渡る……という、雲梯(うんてい)を使った運動のようなものを行っていたからなのだが。*1

 その渡りきったところから、更に崖を登ったり浮き石を飛んでたりしたわけでね?

 

 

「いやあの、これはもしかして『SA○UKE』というやつなのでは……?」*2

「現状、あのお二方には【継ぎ接ぎ】成分を抑える環境設定で、あの運動を行っていただいております。……まぁ先ほどの私の危惧も、言うなればこのような運動を行うことを見越した上でのこと、というわけでして。……まぁ、荷葉さんに関しては体重が軽いこともあって、今のところさほど苦にはされていないようですが……」

「琥珀さん!?こちらの疑問をスルーしないでください琥珀さん!!」

「ええい、うるさいですよマシュさん!このアスレチック施設は、実在の団体・人物・施設などとはまっったくもって関係ないったらないんですー!!」*3

「それはもはや、答えを言ってしまっているようなものなのでは!?」

 

 

 なお、そのなんとなーくどこかで見たことのあるような施設の内容に、思わずといった風にツッコミを入れてしまうマシュちゃんである。

 無論それを認めてしまうと、色々とややこしいことになるとわかっている琥珀ちゃんは、それを頑なに否定。……被験者二人をそっちのけで、二人の盛大な言い争いが始まってしまうのでした。

 

 

「なにこれ」

「なんなのかしらね……」

 

 

 そんなやり取りを遠目に見ながら頭が痛い、とばかりに額を抑える紫ちゃんと、唖然とした表情で施設を見回すシャナちゃん。

 唯一蚊帳の外の私は、これは長くなりそうだとお茶の準備を始めるのでした。

 

 

 

 

 

 

「凄く落ち着きました☆」

「右に同じく、です……」

 

 

 よくよく考えたら、ここで言い争いをしていても仕方がないことに気が付いたマシュちゃんが引くことにより、どうにか終わりを見せた言論バトル。

 

 外野がそんなことをしている内に、被験者二人は一度目の施設踏破を終え、二度目の挑戦を始めていたのだった。

 ……いやまぁ、正確には踏破できずに途中で失敗したから、そのまま舞台の設定を変えて【継ぎ接ぎ】としての身体能力を発揮できる状態での二回目に移った……というだけなのだけれど。

 

 ……え?タマモちゃんも失敗したのか、ですって?

 あーうん、彼女の方は、わりと最後の方まで行っていたのだけれどね?

 

 

「いやおかしいやろ、横から槍とか丸太とか飛んできたんやけど!?」

「そこはかとなく殺意が見え隠れしていたわね……」

 

 

 と彼女が言う通り、最後の方の難易度がどう見てもおかしかったため、あえなく*4失敗したという形なのであった。

 ……まぁ、彼女は素の身体能力がウマ娘のそれなので、指定されたコースが最初から難易度高めのモノだった……ということも理由の一つにはなるのだろうけども。

 

 

「でも、後半は私もタマモお姉さんと同じところに行くよ!」

「ほほう、それはまた大きく出たなぁ。せやったら、ウチと競争するか?」

「望むところ、だね!」

 

 

 なお、後半はこんな感じで、【継ぎ接ぎ】パワー全開の二人はゴールまでの時間を競えるくらい、余裕綽々になってしまったのだけれど。

 いやまぁ、リアルに空中で飛び跳ねられるような人達に、普通の人向けのアスレチックなんてやらせても物の数でもない、といいますか……。

 

 

「そういうと思いまして、エクストラステージをご用意していますともー!!」

「なにこれ」

「これ作る資金、どこから捻出したのよ貴方!?」

「~♪」

「口笛吹いてもごまかせないわよ!?」

 

 

 なお、そのあまりにも余裕過ぎる二人の様子に、なにか対抗心を燃やしたらしい琥珀ちゃんが、どこからか取り出したスイッチをポチッとな☆

 ……したところ、アスレチック施設は轟音をあげながら変形展開し、どう考えても人が踏破することを考えていないような、空中ダッシュ前提な感じの超難易度施設へと変貌を遂げたのだった。……いつの間にロックマンになったのかしらね、この子達。*5

 

 

「舐められたもんやなぁ、こんなん余裕やで!!」

「おー、さすがタマモお姉さん。私も負けてられない、かなっ!」

「なんですとー!?」

 

 

 まぁ、素で疾空刀勢みたいなことをできるこの二人には、それでも難易度足りてはいなかったのだけれど。……いや、タマモちゃんはわかるけど、かようちゃんがなにかおかしなことになってない、これ?

 ……という私の疑問は、「練習したからー!」という彼女からの言葉によって氷解するのでした。……そっかー、頑張ったんなら仕方ないわねー。

 

 

「……頑張る?頑張るってなんなの……?」

「しっかりしなさい紫、ここで負けてちゃ先が思いやられるわよ」

「もうゴールしてもいいんじゃないかしら……」

「私一人にツッコミの負担を置いて逃げるのは、許さないからね……!?」

「ちょっ、冗談だから!その刀しまって!!怖いから止めて!(やいば)が返してあっても怖いものは怖いのよそれ?!」*6

 

 

 そんな感じに私が納得する横で、諦めの表情で空笑いを浮かべる紫ちゃんと、そうして逃げるのは許さない……と気炎をあげるシャナちゃんの静かなバトルが繰り広げられていたけれど……まぁうん、私はなんにも見てない知らなーい。

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ、なるほどなるほど……」

「琥珀お姉さん、すっかり自分の世界に入っちゃったねー」

「まぁ、データの解析にはそれなりに時間が掛かる、とも言ってたしねぇ」

 

 

 ある程度のデータ収集を終えた琥珀ちゃんは、それ以降ずっと画面とにらめっこをしている。

 

 生憎とそのデータがどういう意味があるのかとか、詳しいことは一切わからない私達としては、モニターの前で一喜一憂しているヤバい人、くらいにしか思えないわけなのだけれど……ともあれ、その作業がすぐにすぐ終わるようなモノではない、というのは流石にわかるわけで。

 

 

「解散もできないのが辛いところだねー」

「ねー」

 

 

 かようちゃんと二人、「ねー」と声を合わせる私。

 長くなりそうな琥珀ちゃんのデータ整理だが、それでも長くなりすぎる予定というわけでもないらしく。それゆえにこのあとの予定、というのも詰まっているのだそうで。

 結果、彼女達は暇なこの時間を、特になにもないこの場所で過ごすことを強要されている……というわけなのでした。

 

 タマモちゃんなんかは、さっきのアスレチック施設を使わせて貰えないか、みたいなことを暇すぎて申し出ていたけれど……。

 

 

「施設の入れ換え、なぁ」

「どこから雇ってるのかしら、あの人達……」

 

 

 モルモット君もといお手伝い君達という謎の人員達が、施設の入れ換え作業を行っているため、現在使用不可とのお達しを受け、タマモちゃんはぶすっとした表情で、肘を付いてブーたれているのでした。

 ……もう仕方ないので、さっきからトランプとかウノとかやり始める始末だったり。

 

 

「いや、わざわざ()()の止めなさいよ……」

「流石にいつでもトランプとか持ってるわけじゃないし、それでも創れるのはホントだし。……それでよくない?」

「目の前でチェレンコフ光みたいなものを、直に見せられる方の気持ちを考えて貰える?」*7

「……?いや、核融合だから間違いでもないよ?ちゃんとみんなに影響無いようにはしてたけど」*8

「マジで止めてくれない!?」

 

 

 なお、そのトランプとかに関しては、核融合による原子配列変換*9を利用して作ったモノだったり……と宣ったところ、みんなからはしこたま怒られる羽目になったのでした。……ちゃんとみんなに被害とか出ないように対処してたのに、解せぬ。

 

 

*1
『雲梯』とは、梯子(はしご)状の遊具のこと。水平、もしくは山なりに設置されており、それを懸垂──腕の力のみで自身を持ち上げながら、向こう側へと渡れるかどうかを競ったりするもの。子供向けのモノであれば、地面とはそれほど離れていないモノが普通だが、こと大人用──なにかの競技などで使用される場合は、下がプールなどになっていることも。元々は攻城用の梯子のことであり、『()に届くほどの長さの()子』からその名前が付いたとされる

*2
元々はTBS系列で放送されていたスポーツバラエティ『筋肉番付』のスペシャル企画だったもの。正式名称は『究極のサバイバルアタックSASUKE』で、様々な運動能力を必要とする、まさに究極のアスレチック。名前の由来は伝説の忍者『猿飛佐助』だとされる

*3
『実物の~』というのは、フィクション作品などで表示される注意書き。作品があくまでも架空のモノである、と予め表記しておくことで、様々なクレームなどを回避する為のモノ、という認識でほぼ間違いない。なお場合によっては、責任逃れの台詞みたいに使われることも(今の琥珀の使い方とか)

*4
『敢え無い』の活用形。期待外れ・如何ともし難い、などの意味の言葉

*5
二段ジャンプ・空中ジャンプの起源は、1985年にナムコが発売したアーケード向けアクションゲーム、『ドラゴンバスター』にあるとされている。普通の人間はまず空中で再度ジャンプなんてできないが、ゲームにおいてはごく当たり前に使うモノも多い

*6
対異端特化な贄殿遮那は、妖怪とかからしても怖い武器だ……の意味。なお『刃を返す』は、この場合峰側を向けていることを意味している。間違っても『返す刃』ではない(こちらは続けざまに攻撃すること、という意味の言葉。『刃を返す』モノも同じ意味として使われることがある)

*7
大雑把に言うと、『光よりも速い光』。正確には、特定の環境下において光の速度が落ちている時に、その速度を荷電粒子が越えている時に発生させる光のこと。以前解説したように、光の速度というのは環境によっては減速することがある(特に水中では通常の七割程度にまで減速する)。それでも通常時の光の最高速度を越えることはできないのだが、逆を言えば水中でその速度を出せるようなモノは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()状況を作り出せるわけで。その結果がチェレンコフ放射、ないしチェレンコフ効果と呼ばれるモノである。原子炉の青い光はこの現象によるもので、これを直に見られるような場所に居るのは望ましくない、ということで恐れられている(≒放射線に晒される場所、ということなので)。なおチェレンコフ光そのものは放射線でもなんでもないので、場合によっては安全なモノもあるとかなんとか(要はどうにかして光よりも速い粒子を発生させればよい、というだけの現象である為。光はわりと減速するので、光が減速する環境で減速しない粒子が、その時の光の速さよりも速くなれば、安全にチェレンコフ光を見ることができる)

*8
こちらも以前述べた通り、『核融合』とは地上に太陽を発生させるようなもの。そんな気軽にやることではない

*9
『VALKYRIE PROFILE』シリーズより、いわゆる錬金術的なもの。原子の配列を操作することで、物質を別のモノに変じさせる技術。ゲーム中では、基本的に双方向に変化させられるモノがほとんど(AをBに変換できるのなら、その反対にBをAに変換することもできる、というモノがほとんど)

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