なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うむむむ、ここがこうなってこれをこうして……」
「……琥珀お姉さーん?そろそろ次の実験始めないと、時間が足りなくなるんじゃないかなー?」
「え、あ、ホントだ。……んんっ、ええと、準備は済んでいますので、お二方は準備をお願いしますね☆」
「はーい」
暫く経っても画面とにらめっこを続けていた琥珀ちゃんは、横顔をかようちゃんに小突かれることで、ようやく予定時間をオーバーしていたことに気付いた様子。
慌てて普段の姿を取り繕った彼女は、そのまま被験者二人に次の実験についての指示を行っていたのだけれど……。
「うーん、意外と気にしてるのかもしれないわねぇ」
「気にしてる、っていうと……」
「やはりサイトさんのこと、なのでしょうか……?」
今のところはなにかが暴走するとかの予兆もなく、若干以上に手持ち無沙汰*1な私達は、世間話をする余裕すら持ち合わせているわけで。
……私のぼやきに耳聡く反応したシャナちゃんに対し、マシュちゃんが答えを述べてくれる。
そもそもの話、今回の実験を半ば無理矢理にでも予定を捩じ込んで彼女が始めたのは、サイト君相手の【継ぎ接ぎ】を利用した『変身式分離術』が失敗してしまったがため。
自身の施術にある程度責任と自負を持っていた琥珀ちゃんは、現在多少なりとも焦ってしまっている……という風に周囲が分析するのは、なんら間違っているとは思えないわけなのである。
その結果、常の余裕はどこか翳りを見せ、なんとなく焦っているような空気を、こちらに見せているのだった……と。
「うーん、
「そうは言いましても、琥珀さんはこのなりきり郷において、唯一にして最高峰の科学者でもありますから……」
「……なるほど、他人に負担を分散できないのね、基本的に」
「一応、最近は新しくクリスちゃんが加わってくれたから、以前よりは労働環境も改善してるみたいだけど……」
「まぁ、立場的には彼女もまだお手伝いさん、みたいなものだしねぇ」
思わずむぅ、と唸ってしまう私と、彼女の焦りも仕方ない……と声を揃える他の子達。
確かに、最近はクリスちゃんという人員が、新たに研究者一同に加わったみたいだけど……それでも、琥珀ちゃんがこの施設における科学部門のトップである、という事実は揺るがない。
なのでまぁ、知らず知らずのうちに色々と責任やら精神的負担やらを、その裡に抱え込んでしまっているのかも……?
まぁ私から言わせて貰うと、
「……?それはどういう……?」
「だってアレ、
「……貴方、なにを知って」
こちらの言葉に、小さく首を傾げるマシュちゃん。
私はそれに「アレは琥珀ちゃんがミスしたわけではない」、と答えを告げる。
確かにサイト君は、その声と
だからといって、それだけの縁で彼が真月君になる……なんて結果には結び付かないのだ。
なればそれは、そうなるように
「ぬわっ!?」
「ぬわー!!?」
「え、ちょっ、なになになんなの!?」
私は突然頭上に降ってきた、コナン君に押し潰されることになるのでした。ぐえー!
「まさか空から小学生探偵が降ってくるとはね、明日は槍でも降る感じ?」*2
「意外と余裕そうね、貴方」
首を捻ったので、患部を冷やしながらううむと呻く私と、そんなこちらにジトっとした視線を向けてくるシャナちゃん。……なんかこう、シャナちゃんの私の扱い、どんどん雑になってないかしら……?
まぁともかく、実験中に突然現れたコナン君には、琥珀ちゃんもさっきまでの焦りをどこかにやって素直に驚いていたわけで。
……そりゃそうだ。見間違いでないのであれば、このコナン君ってばここに
とまれ、気になることは多々あれど、今は別の実験中なので後回しである。
「いや、ホント悪ぃ……」
「あー、気にしないでちょうだい。生傷絶えないのも私達の特徴、みたいなものだから」
「それ自慢するようなことではないことない?」
「生傷……ということはせんぱいも、私が
「おーいマシュちゃん、お願いだから戻ってきて~……」
幾分か申し訳なさそうに、こちらに謝罪を述べてくるコナン君だが……私としては怪我とか傷とか、結構
だから、それが私達の普通なのだから大丈夫、と付け加えたところ、マシュちゃんがなんか変な想像を始めてしまったりもしたけれど……はい、私はなにも知らないでーす。
まぁそんなこんなあって、一度施設のチェックのために休憩となった被験者二人も加え、楽しい楽しいお茶会タイムである。
「……そういえば今さらなのだけれど、この【継ぎ接ぎ】の効果を一時的に打ち消す、って一体どういう原理なの……?」
「これはですねぇ、特定の波長の電波を発生させることにより、周囲との繋がり──縁的なものを、一時的に揺るがさせることでですね……」
「あ、ごめんなさい私が悪かったわあとでレポートでお願い、レポートで!」
「むぅ、これから主要技術についての解説の予定だったのですが……」
紫ちゃんと琥珀ちゃんは、主に先ほどのアスレチックでの設備──【継ぎ接ぎ】効果の一時的な無効化装置についての話をしていた。
なんでも、【継ぎ接ぎ】とは究極的には『上に乗っかっているモノ』なので、特殊な振動波を発生させることにより、一時的にその繋がりを剥離させられる方法が見付かったとかなんとか。
……まぁ、あくまでも一時的な剥離であるうえに、装置の方が小型化の目処が一切立たないため、こうして特殊な施設での実験用途にくらいしか使えない……とも言っていたのだけれど。
なおこれは、彼女が目指しているのがある意味で【継ぎ接ぎ】を着脱可能なスキルのようなものにすることに近いため、その研究の成果の一つということになるようである。……やっぱりわりと意味不明な科学力してるわよね、この子。
「コナンさんは、何故ここに?」
「いや、ちょっとあるものを追っかけてたら、なんでかここに落ちてきたというか……」
「ふぅん?なにを追っていたのかは知らないけど……多分、ちょっと前に噂になっていた『ゲート』とか言うのが、まだ残ってたのね」
「……あとで蘭に連絡いれなきゃなぁ」
「ああ……ここは電波が届きませんからね……」*4
反対側では、突然現れたコナン君を交えて、シャナちゃんとマシュちゃん達があれこれと話している。
今の会話内容は、コナン君がここに来る直前までなにをしていたのか、について。……流し聞くに、どうにも誰か・ないしなにかを追っていたら、いつの間にか足元に開いていたゲートに転がり込んでしまった……ということになるようだ。
まるでおむすびころりんみたい*5ねぇ、なんて内心で考えつつ、そのまま次の集まりに視線を移す。
「雑巾がけ、って意外と腰に来るなぁ……」
「こう、ウマソウルから上手い四足歩行のやり方、とか出てこないの?」
「出てこーへんよんなもん。……そこら辺わかるんやったら、わざわざ『馬』なんて漢字できへんわ」*6
「それもそっかー」
そちらでは被験者二人──かようちゃんとタマモちゃんが、先ほどの実験の内容について会話を続けている。
元々キーアちゃん達がやっていた仕事を原案としているからか、その内容は実験と言いつつもどこか普通の仕事、みたいな感じのものが多いようで。
床の雑巾がけに始まり、【継ぎ接ぎ】ありではそれが
はたまた単なる反復横飛びが、実際に残像が見えるような速度まで加速を続けていったり。
……というような感じで、傍目にはギャグかなにかにすら思えるような実験が、ここまで数十度繰り返されているわけなのである。
ここまでやってようやく半分、というのだから先が長いというか、必要なデータが多すぎるというか。
ともあれ、そんな感じでみんなは和やかに、あれこれと会話を続けていたのでしたとさ。
「ようし休憩は終わりです!ここからはビシバシやっていきますよー!」
「え?ビシバシチャンプ?」*7
「お二方は現在競ってらっしゃいますので、ある意味では間違いでもないですねー」
束の間の休息も終わり、再び実験のお時間である。
被験者二人は競争する、という方式にすることで実験の早期終了を目指しているようだけど、それが原因でなにか問題が起きたりしないか、目を皿のようにして観察するのが私達の仕事なので……。
「……まるで運動会の応援のようですね」
「まぁ、ある意味間違ってはいないわね……」
特に危なげもない現状、私達の態度もどこか緩いものになってしまうのは仕方の無いこと、というわけで。
まるで小学生の子供の応援に来た家族のようなテンションになりつつ、私達は二人のことを眺めていたのでした。……もはや日曜日である(?)
「……しかしまぁ、よくあんなとこ走れるよなぁ」
「そうねぇ、昆虫達の上を跳んでるんだもんねぇ」
そんな中、コナン君がどこか遠い目をしながら、ぽつりとぼやく。
私達はその言葉に合わせて、二人の走っている場所を改めて確認し……。
「巨大昆虫の森とか、苦手な人やったら死ぬほど怖いんとちゃうんかこれー!?」
「わー!?カブトムシが突っ込んできたー!?」
「なにおー!!今や、インド人を右に!」
「逆だよタマモお姉さーん!!?」
「ほぎゃーっ!?」
「……なんでこんなことになったのかしらねー(白目)」
いつの間にか舞台がおかしくなっていたことに、皆で途方に暮れるのだった。……いやホントになんで?