なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ええと、予定ではそろそろ見えてくるはずなのですが……」
相手がチートを使ってくるのなら、こっちだってチート使ったるわい!……ということなのかどうなのかはわからないけれど。
ともあれ、当たり判定を消して突き進む……という、掟破りの横紙破りな方法を以て、罠という罠を無意味にしてきた私達である。*1
そうして、結構な距離を進んできたわけなのだけれど……フィールドの書き換えにより、各所の距離やら面積やらまでもが改変されてしまっているとは言え、そろそろ目的地が見えてきてもおかしくないのでは?……というような趣旨の言葉をマシュちゃんが溢したわけでして。
そうなると、地図もないのに何故目的地までの距離とかがわかるのか?……みたいな疑問を抱く人がいるだろうことは間違いなく。
なのでここに関しての説明を入れておくと──まぁ要するに、それも私の手伝った結果の一つ……というわけなのでございまして。
さっきのゲームでは、四人目の対戦を始めるまでもなく決着が付いてしまったわけなのだけれど。
それではなんというか、この『頑張ろー』的な気持ちの収まりが付かない……みたいなことを言い出したかようちゃんの声を受け、これまた別のゲームで勝敗を競うこととなったわけなのです。
で、そのゲームと言うのが……、
「……キリアお姉さん、じゃんけんも弱いんだね……」
「そりゃあもう、百戦百敗が私のモットー*2ですので」
「捨てなさいよ、そんなモットー」
まぁ、特になんの捻りもなくじゃんけん*3だった、というわけなのです。……うんまぁ、そんなのやったら負けるよね!
そんな十把一絡げの勝負の結果、かようちゃんが勝ち取った権利と言うのが、俯瞰*4系技能による全体マップ把握……だったわけなのでございます。
「……でもそれを、私に付与するのはどうかと思うんだキリアお姉さん……」
「いやまぁ、
「どこぞの次元の魔女さんみたいなこと言いよるな、あんさん……」
ただ、私がマップを視て私が行き先を案内する……というのは、ちょっとばかり手伝いすぎている感じなので、あくまでも『
そんな感じで彼女に貸し出したのは【
……え?伏せ字になってない?気にしない気にしない。*5
「いや、幾らなんでも大雑把に説明しすぎでしょ。……ほぼほぼ千里眼じゃないの、話を聞いてると」
「まぁ、建物透過とか個人を対象にしての範囲指定とか、ちょっとした追加機能はあるけれど、基本的にはそういう俯瞰視の一種でしかないからねぇ。変に高尚な能力ー、みたいな言い方をする方がアレ……みたいな?」
「……いや、そんなこと言われても、こっちには違いなんてわかんないわよ」
まぁ、ちょっと名称を言い直すだけでファンタジー感溢れる技能になる辺り、かがくのちからってすげー!……的な気分にならなくもないわけなのだけれど。
ともあれ、単純に技能を貸し出しただけなこともあり、かようちゃんは視覚から得られる情報の爆発でオーバーヒート気味に。……必要な情報の絞り方とかわからなかったようだから、さもありなん。
というわけで、迂闊に悪魔とかそういう魔的なモノと契約を結んじゃダメよ……という教訓を与えつつ、外から能力の出力調整をしてあげることになったりもしたのでしたとさ。
「お姉さんの意地悪ぅ……」
「そりゃまぁ魔王ですし。負けたから素直に言うことを聞く、って思う方が間違いってやつよね」
「……本音は?」
「こうやって露悪的なところを見せることで、しっかりと倒すべき悪であることを認識させて、そのうちどこかで私を倒す勇士として覚醒をして欲しいな……って、なにを言わせるのよ!」
「なんやこの人、なんもかんも勝手に自爆するんやけど」
なお、そうして原液に近い能力を与えたのは、私が魔王なのだと主張することにより、いつか私を倒すことを望むようになるように……という、ある意味光源氏*6的な計画だったことがバレたため、みんなからは呆れたような視線を向けられることとなるのでした。……あれー?
ぐだぐだと話をしているうちに、ようやく目的地にたどり着いた私達。
こちらの目の前に現れたのは、大きな木々とは不釣り合いな、大きな四角く白い箱のような建物であった。……人工物感マシマシで、違和感バリバリって感じというか。
付近になにかしらの護衛が立っている様子もなく、周囲は至って静かなものである。
出発前は予想されていた妨害も、今のところその類いのモノとも合っていない……あいや、一応罠とかはあったけどもそういう話ではなく。
「大きな虫とか、大きな鳥とか。……色々飛んでたけど、確かにこっちには向かってこなかったねー」
「この大きさやし、巨人とか恐竜とか出てくるやろかと思ってたんやけど、そーいうのもあらへんかったなー」
仲良し二人組が『
……この場所の静か過ぎる状況といい、なんとなく嫌な予感を覚えるのも仕方ないというか。
「ええと、この建物はあくまでも地下に繋がる表層部分であり、私達が目指さなければいけないのは、その道の奥の奥……というようなことが、あり得るのかもしれない……ということでよろしいでしょうか?」
「そうねぇ。普通ならあり得ない、って切って捨てるんだけど……そもそもここ、空間の広さに関しては既に広がりすぎてるくらいだからねぇ」
マシュちゃんの言葉に、むぅと唸る私である。
なにぶん、この森自体が本来の研究室の容積を大幅にオーバーしている以上、それが上と横方向にだけ発揮されている……という考えは、あまりにも現実が見えていないとしか言い様がなく。
であるならば、この四角い建物が単なる地下への入り口で、さらに奥へと進む必要があるかも……なんて考えは、決して考えすぎとは言い辛いことなっているわけで。
いやまぁ、本来ならこの階よりも下の階がある以上、この場所に
そういうわけで、目的地にたどり着いたはずが、実はまだまだ道のりは長かった……みたいな気持ちを味わってしまった私達は、暫しの間放心していた……というわけなのでした。
まぁ、いつまでも固まっていても仕方ない、とシャナちゃんが声をあげたため、ノロノロと再起動を始めたのですが。
ともあれ、これらの心配は杞憂となる可能性もある。
今現在私達が居るのは建物の手前、中まで確認したわけではないので、ここから意外と単純な手順でことを終えられる、という可能性はなくもない。……なくもない、とか言ってる時点で信じてないだろうって?ごもっとも。
「ええい、ここでうじうじしてても仕方あらへん!ウチは行くでぇ!こうなったら一番乗りやー!」
「あ、タマモちゃん先走っちゃダメ……」
ぬ お わ ぁ あ │ │ │ │ │ っ ! ! ! ? 」
「……ああ、遅かったか」
そんな停滞感を打ち破るように、タマモちゃんが我先にと駆け出して行ったのだけれど……まぁうん、動物の妨害は無いけど、罠が仕掛けられているのはここも同じなわけで。
その辺りのことを忘れていたタマモちゃんは、うっかり私達の手を離して駆け出してしまったため、足を一歩踏み出した時点で落とし穴にボッシュート。
……どうにも底無し落とし穴だったようで、穴の中腹で「たぁすけぇてぇ~~」とか細い声をあげる彼女を救助するのに、ちょっとだけ時間を浪費することになるのでしたとさ。
「……いやほんま、これ攻略させる気ないやろホンマ……」
「咄嗟に壁に両手両足を打ち付けて止まれる辺りは、流石の反射神経よね、貴方」
「そないなとこで褒められても嬉しゅーないわ……」
突然のことに宙を蹴る、ということもできなかったタマモちゃんは、咄嗟の判断で壁に四肢を打ち込むことで落下を止めたわけなのですが。……まぁうん、そりゃ止まりはするけども自力で戻ってくるのは不可能に近い、というわけでですね?
結果、空を飛べるシャナちゃんに両脇から抱えられて地上に出てきた彼女は、とてもションボリとした様子でしくしくと涙を流していたのでした。……尻尾も濡れたし、みたいな?*7
「と、ともかく。ここからも慎重に、かつ迅速に行動することにしましょう!」
「そうね。そんなに時間は経っていないでしょうけど、悠長にしていてもいいって訳でもないでしょうし」
気を取り直すように声をあげたマシュちゃん。
その声に合わせ、改めて手を繋ぎ直した私達は、周囲を警戒しつつ建物の中に侵入したのですが。……ですが……?
「……なにこれ」
思わず、とばかりに漏れた言葉はシャナちゃんのもの。
しかして、その言葉はここにいるみんなが言いたいものだっただろう。その理由は……、
「ピカチュッ、ピカチュッ、ピカチュッ」
「ピー、ピカピカァ?」
「ピカッ、ピカチュピッ!」
私達の目の前にあるのは、円形の発電機の上でせっせっと走り続ける黄色い生き物──すなわちピカチュウ達の群れと。
その中心部、円筒型の機械の中心で光を放つ、白いカード……『スターダスト・ドラゴン』の姿。
そう、モーメントとピカチュウ達を利用した発電機。それが、部屋の中心部に鎮座している、という意☆味☆不☆明の光景だったのだ。*8
「……いやなにこれ!?」
「ぴかー?」