なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
突如私達の目の前に現れた、意☆味☆不☆明の発電機。
その異様について正確に述べるのであれば、円筒型の機械の中心に特別なカードを納めたモノ──モーメントの周りを、ピカチュウ達が練り歩いている……いやまぁ歩いているっていうか、ルームランナーみたいに走り続けている……って感じなのだけれど。
ともあれ、一つ言いたいことがある。
「……過剰電力では!?」*1
「ツッコむところそこかいっ!?いやウチも一瞬思うたけども!」
モーメントにしろピカチュウ発電機にしろ、一つの施設の電力を賄う、というのであればどちらか一つで十分では?……という疑問は、タマモちゃんがどこからか取り出したハリセンに
「え、ええと。状況の意味不明さに一瞬我を忘れてしまいましたが……この発電機を止めればいい、ということなのですよね?」
「この発電機を……」
「止める……?」
「う゛……」
一瞬変な空気になってしまった一同だったが、気を取り直してマシュちゃんが声をあげ、軌道修正を図ろうとする。……のだけど。
それはそれで、この異様な物体を機能停止させなければならない、ということを思い出させてしまうため、再び変な空気が戻ってくることに。
なにせ、私達の目の前にあるのはまず第一に
……いやその、止められますか、これ?
そう疑問の籠った目で見返せば、マシュちゃんは胸を押さえて呻いていた。……まぁうん、単純にこれを止めるとなると殴って止めるってことになる*2から、そりゃ良心が咎めるよね……。
っていうか、そもそもピカチュウ達を止めたところで、残っているモーメントの方はどうするの、というか。
このモーメント、エネルギーの発生源が『スターダスト・ドラゴン』になっている時点で、どうにも元のそれとは違うように思えるけれども……だからといって、それがこの機械を
もし仮に、これが間違いなくモーメントであるとするのならば……エネルギーの発生源であると同時に制御装置である、ということになる『スターダスト・ドラゴン』を安易に外していいものなのか?……という疑問が生まれるというか。
というのも、このモーメントという動力。……制御装置がないと普通に暴走する可能性のあるモノなのである。いやまぁ、世の中の発電設備のほとんどは、制御装置がないと酷いことになるモノばっかりだぞ、というツッコミは置いとくとして。
ともあれ、このモーメントと呼ばれる発電設備、その初出は『遊☆戯☆王5D's』となっている。
主人公である不動遊星の父、不動博士が発見したとされる遊星粒子*3、それをエネルギー源とする設備であり、創作において頻出する『新しいエネルギー』の中では無公害かつ半永久的に活動する、ととてもクリーンなモノに見えるエネルギー源である。*4
……無論、創作界隈における『新エネルギー』の例に漏れず、この遊星粒子、ひいてはそれを使ったエネルギー機関であるモーメントにも、相応の問題が隠れていたのだが。
子細については該当作を見て貰うなり調べて貰うなりするとして……このエネルギーの問題とは、エネルギーそのものが人の意思に呼応する、というところにある。
すなわち、良き心に触れれば良い方向に、悪しき心に触れれば悪い方向に作用するエネルギーなのだ、遊星粒子とは。
原作の開始前では、この性質によって逆回転──マイナス方向にエネルギーを加速させたモーメントは、周辺区域を道連れにして爆発。作中で『ゼロ・リバース』と呼ばれる大災害を引き起こしたのである。
……まぁ、裏では色々な組織などの思惑やらなにやらがあったそうだが、それは置いといて。
ともかく、容易にマイナス方向に突き進む可能性のあるモーメントという発電設備、そんなものが素直に止まってくれるだろうか?
見た目的には『スターダスト・ドラゴン』からエネルギーを発しているように見えるこのモーメント、
「……その、これの解体を手伝って貰ったりは……」
「別にいいけど、その場合
「あー……三度目、っちゅーことか」
そうして対処に困ったマシュちゃんが、こちらを見つめてくるけれど……間違ってはいけないのは、この発電設備はあくまでも
それから、私は基本
そういった趣旨の言葉を述べたところ、彼女達はむむむ、と唸り始めてしまったのでした。
「……なんというか、色々大変ねぇ?」
「ぴーか?」
これは時間が掛かるなー、と
突然近付いてきた人間に対し、ピカチュウ達は少し警戒していたのだけれど……特に危険がないことに気が付いたのか、すぐさまこちらに声を掛けてきたのでありました。
で、その会話の内容を紐解いていくと……。
「ふむふむ。『僕らは突然呼ばれてやってきた、さすらいの発電野郎Pチーム』……ふむぅ?」*5
「えーとなになに、『僕はリーダー、ジャン=リュック。極大火力と可愛さが持ち味。僕くらいの凄腕じゃなきゃ、みんなのリーダーは務まらないのさ!』」
「『俺はマッスル、鋼の男。アイアンテールの鋭さにゃ、どいつもこいつもいちころさ!ハッタリかませば、エレキネットだってトランポリンだぜ!』」
「『私は伝令役のリリー。天使のキッスはお手のもの、紅一点だから目指すは峰不二子ね』」
「『おまたせー!俺が噂のイエローテイル!機械修理はお手のもの!静電気?ほっぺすりすり?だからなに?』」
「『鼠なのにコングってどうなんだろうね?あ、力仕事は任せてね。でも、カビゴンだけは勘弁な』」
……とまぁ、お前らどこの特攻野郎だよ、みたいな挨拶を返された私は、思わず渋面を作ってしまう始末。
これ、迂闊に殴っていいものか、余計にわかんなくなったことない?
これは流石に教えてあげるべきか、なんてことを思いながら振り返れば、何故かマシュちゃん達が私の方を見つめている。……なによその驚愕の表情。
「……動物会話は必須スキルよね?」
「手伝ってくれないのではなかったのですか!?」
なにをそんなに驚いているのだろう、そう思って考えてみたところ、ピカチュウ達と平気で会話していたことが引っ掛かったのかなー、と思った私は、頭を掻きながら
笑いの一つでも取れるかと思ったのだけれど、ツッコまれたのは全然別の部分で、思わずこっ恥ずかしくなってしまう私なのでした。
……え?手伝いは三度まで?これは私が興味本意で話を聞いて、その結果を娘達に伝えようとしているだけなのでノーカン、ノーカンです。
「……なるほど、こっちが頼んでもいないのに勝手にやってる分に関しては、手伝いのうちには入らないんだ……」
そんなかようちゃんのぼやきをBGMに、ピカチュウ達との交渉を進めていく私。
彼らはどうやら区分的には、最近噂のハルケギニアから来た
なのでまぁ、最悪向こうに送り返せば問題ない、とみんなに伝えれば、あとでキーアちゃんにでも頼もう……みたいな結論が可決していたのだった。……そこで私に頼まないのは成長したとみるべきか、はたまた頼られなくなって悲しいと思うべきか。
「どっちだと思う?」
「ぴーか、ぴかぴーか」
「んー、そっかー。親の元をいつかは離れるのが子供……そりゃそうだよねぇ」
「……あのお二人?は、先ほどからなにを話していらっしゃるのでしょうか……?」
「今キリアが抱えてるピカチュウ、子供とかがいるメスらしいわよ」
「……ああなるほど、母親会議だったのですね……」
……まぁ、そうやってうだうだしていても事態は好転しない、というのも確かな話。
なのでいい加減仕事をしましょうか、とばかりに抱いていたピカチュウを下ろし、みんなのもとに戻る私なのでありました。……なんか変な目で見られてるけど気にしない気にしない。
「とは言うものの、キリアお姉さんは手伝ってはくれないんでしょ?」
「そりゃまぁ、そういうお約束ですし。……でもお膳立てはしてあげたから、頑張って倒してね☆」
「は?お膳立て?一体なにをゆーて……」
「──なるほど、つまりはそういうことか」
「……!?」
まぁ戻ったら戻ったで、かようちゃんにツッコミを入れられることとなったのですが。……確かに、手伝う気もないのに戻ってきてどうするのか、と言われればぐうの音もでないわけだけど。
自発的に手伝わないだけであって、
そんな私の言葉にタマモちゃんが困惑する最中、周囲に響く一人の男性の声。
その人物は、こつこつと足音を鳴らしながら暗がりを進み出て、そのままモーメントに設置されていたカード──『スターダスト・ドラゴン』を掴み取り、己のデッキに差し込んでいく。
驚愕するみんなの前で、デュエルディスクを構え、立ちはだかったのは──、
「これが俺が呼ばれた理由だと言うのなら、喜んで相手をしよう。──さぁ、デュエルだ!」
「ゆうせぃぃぃいっ!!?」
蟹みたいな頭が特徴の青年──不動遊星であったのだ!!