なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
前回までの三つのあらすじ。
一つ、デュエル・チャンプである不動遊星とのデュエルが決まった。
二つ、相手に選ばれたのは円卓の騎士の末席である少女、マシュ・キリエライト。
三つ、今回のデュエルは馬とバイクによる、変則式のライディングデュエルだ。
「……以上、プレメ君の真似おしまーい!」*1
「なるほど、突然なにを言い始めたのかと思えば、確認のための台詞だったのか」
「……すごい真面目に受け取られたのだけれど、私はどうすれば……」
「キリアがおろおろしてる……」
「なるほど、遊星お兄さんはボケ殺しなんだねー」
「……?」
よもや遊星君にボケ殺しされるとは思わなんだ、もはや自爆するしかねぇ(挨拶)*2
……ともあれ、いよいよデュエル開始直前である。
バイクのないマシュちゃんに対し、タマモちゃんが冗談めかして「ウチが背負おうか?」と言ったことによって発生した今回の事象。
言うなれば自業自得的な面もなくもないそれは、タマモちゃんの見た目がウマ娘のそれからリアル馬になった、というとてもシュールな状態を前提としたものである。ネズミは付きませ……はっ、このためのピカチュウ……!?*3
一応、マシュちゃん自身が馬にも乗れたので、なんとか形になっているけれど……そうでなければ馬に変身損になるところだったね、よかったよかった。
なおこの変身は一過性のモノであり、この先ずっと馬の姿のままである、なんてことはないと保証いたしますん。*4
「どっちやー!!ウチは元に戻れるんか!?戻れへんのか?!ただでさえユニヴァース案件も背負うとるのに、更にリアル馬までとか背負いきれへんのやけどー!?」
「おおっと気性が荒い。これは騎手も大変ですねー」
「誰のせいやー!!」
「ぴか、ぴーか」
「ぬぐぅ、正論を……」
(……なんか、ナチュラルに会話してるわね……)
タマモちゃんはどうしてこんなに、なにかを背負う姿が似合うのか。それは恐らく、彼女がツッコミ気質だからなのだろう。……あれこれ無茶振りされるのが似合っている、ともいう。
なんでやねん、とノリツッコミをする彼女の姿を横目に納めつつ、遊星君は最後の確認と言うように、デュエルディスクの調子を確かめている。……もうDホイールからは降りられないので、簡易的なモノだけではあるが。
そんな感じに、各々が心の準備を終え。
「──さぁ、突然のエクストラデュエル!相対するのはライディング・デュエルのチャンピオン!
「……あのおっさんMCやったんかい」
スタートの合図を待つだけとなったそのタイミングで、さっき現れたMCさんが声をあげる。……誰が呼んだのかはわからないけど、どうやらこのデュエルを実況してくれるようだ。
その姿に馬のタマモちゃんがひひん、と呆れたような声をあげ。それを聞き流しながら、彼は選手二名の紹介を進めていく。
「対するチャレンジャーは、以前王者ジャック・アトラスにも挑んで見せた新星、円卓の騎士マシュ・キリエライトォ────!!!さぁてぇ、勝利の女神が微笑むのはどちらになるのかぁ!!」
その実況の間に、どこからか現れた信号がカウントを進めていく。赤、赤……。
「さぁお待ちかね!!世紀のデュエルの、スタートだぁーっ!!!!」
「「ライディング・デュエル、アクセラレーションッッ!!!」」
──そうして灯火が緑に変わった瞬間、我先にと前へ飛び出していく両者。それを追いかけるドローンからの映像を見ながら、私達はスタート地点で待機するのであった。
「──先行は貰う!俺の、ターン!!」
多分今、アニメ本編なら両者の顔とカードの枚数とかの情報が表示されたんだろうな……みたいな宣言と共に、先んじた遊星君が自身の先行を宣言しながら、一枚のカードを手に取って、デュエルディスクにセットする。
「俺は、手札から魔法カード『調律』を発動!デッキから『シンクロン』チューナー1体を手札に加え、デッキをシャッフルしたのちデッキトップを墓地に送る!」
「……あ、あれ!?使われるのはスピードスペルではないのですか?!」*5
「──ふ、最初に『スピード・ワールド』、発動しなかっただろう?」
「あ、そそそそういえば!?」
「ウチルールわからへんのやけどー!?」
「タマモさんはとりあえず走ってください!デュエルに関しては、お任せを!!」
「……よーわからんけどりょーかいー!!」
最初に使われたのは『調律』。出た、遊星さんのマジックコンボだ!!*6
……冗談はさておき、ライディングデュエルなのに普通の魔法を使ってもいいのか、というマシュちゃんからの疑問には、確かに形式こそバイクや馬に乗ったものであるが、実際には『スピード・ワールド』も『スピードスペル』も現物がないので、本当のライディングデュエルのようにはいかない……という、至極もっともな答えが返ってくる。
……そりゃそうだ。『スピード・ワールド』回りはカウンターの管理とか『スピードスペル』の処理とか、色々と独自のシステムが多いのだから普通に遊ぶ分には再現は投げるもの、というのはある意味
え?だったら『ARC-V』の方の『スピード・ワールド-ネオ』*8とかでも発動しておけばよかったんじゃないか、ですって?……『ARC-V』時空に遊星君が居るかどうかわかんないから仕方ないね!!
「気を取り直して、行くぞ!手札から、『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
「……これは、もしや!」
「え、なになになんなん?!なにを超速理解したんやマシュ?!」
そうこうしているうちに、遊星君が手札からモンスターを召喚。
フィールドに飛び出して来たのは、オレンジ色の小さなモンスター。『ジャンク・シンクロン』と呼ばれるそのモンスターは、遊星君のフェイバリットモンスターの一体として、とても有名なカードである。
そこゆえに、彼が次になにをするつもりなのか、ということに気が付いてしまったマシュちゃんは驚愕し。対してルールとか
「『ジャンク・シンクロン』の効果!墓地に存在するレベル2以下のモンスターを1体、効果を無効にして俺のフィールドに特殊召喚する!来い、『スピード・ウォリアー』!!」
「やはり……っ!!」
「なんなん?!うちに説明せんまま話を進めるん止めへん!?」
「レベル2『スピード・ウォリアー』に、レベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!」
「せやから、チューニングとかなんやねんマジでー!!」
……タマモちゃん、少し黙らない?
やることなすことにツッコミを入れてしまうのは、今の彼女の余裕の無さの現れなのか。
ともあれ、実況のMCさんが声をあげる暇もないくらい、矢継ぎ早にツッコミを入れているタマモちゃんは、なんというかちょっと落ち着きなさいという感想が思い浮かぶ有り様というか。
ともあれ、今起きていることは
遊星君と言えばこれ、みたいなやり取りであるがゆえに、マシュちゃんは思わずとばかりに固唾を飲み、ここからの怒涛の展開を警戒していたわけで。
「集いし絆が、新たな地平の扉を開く。光差す道となれ!シンクロ召喚!!抜き去れ、『ジャンク・スピーダー』!!」
「……あっ」
「ん?……あ゛」
そうして現れたのは、マフラーを棚引かせる白い機械の兵士。……壊れ効果で有名なカード、『ジャンク・スピーダー』なのであった。*10
わぁ、容赦なーい(白目)
なんとも言えない微妙な空気に包まれる私達と、遊戯王をよく知らない組との温度差を感じつつ。……その淀んだ
「『ジャンク・スピーダー』のモンスター効果!
「……なんや、一人であれこれやっとるで」
「静かにして下さいタマモさん、この流れはまだまだ続きますよ」
「……集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ!
シンクロ召喚!!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!!」
わぁ、手札が減ってないのにフィールドが埋まったりしている。怖いねー(他人事)*11
まぁともかく、今回の主役である『スターダスト・ドラゴン』、早速のお出ましである。
無論、これで展開が終わりというわけではないが……どことなく誇らしげに見えるのは、やはり遊星君に使って貰うのが嬉しいから、とかなのだろうか?
「手札から『スターダスト・イルミネイト』*12を発動!デッキから『スターダスト・ヴルム』を墓地に送る代わりに特殊召喚する!レベル1『スターダスト・ヴルム』に、レベル4『スターダスト・シンクロン』をチューニング!集いし願いが、更なる速度の地平を開く!光差す道となれ!シンクロ召喚!希望の力・シンクロチューナー、『アクセル・シンクロン』!!」
「……これ、いつまで続くんや?」
「これが不動性ソリティア理論ですよ、タマモさん」
「暗に終わらへんって言うとるやないかい!!」
なお、この展開は最終的に1ターン目から『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』が並ぶところまで続きましたとさ。*13……本気出しすぎじゃないですかねぇ!?