なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

375 / 1003
幕間・とりあえず過労死で(スピード・ウォリアー)

 前回までの三つのあらすじ。

 一つ、デュエル・チャンプである不動遊星とのデュエルが決まった。

 二つ、相手に選ばれたのは円卓の騎士の末席である少女、マシュ・キリエライト。

 三つ、今回のデュエルは馬とバイクによる、変則式のライディングデュエルだ。

 

 

「……以上、プレメ君の真似おしまーい!」*1

「なるほど、突然なにを言い始めたのかと思えば、確認のための台詞だったのか」

「……すごい真面目に受け取られたのだけれど、私はどうすれば……」

「キリアがおろおろしてる……」

「なるほど、遊星お兄さんはボケ殺しなんだねー」

「……?」

 

 

 よもや遊星君にボケ殺しされるとは思わなんだ、もはや自爆するしかねぇ(挨拶)*2

 

 ……ともあれ、いよいよデュエル開始直前である。

 バイクのないマシュちゃんに対し、タマモちゃんが冗談めかして「ウチが背負おうか?」と言ったことによって発生した今回の事象。

 言うなれば自業自得的な面もなくもないそれは、タマモちゃんの見た目がウマ娘のそれからリアル馬になった、というとてもシュールな状態を前提としたものである。ネズミは付きませ……はっ、このためのピカチュウ……!?*3

 

 一応、マシュちゃん自身が馬にも乗れたので、なんとか形になっているけれど……そうでなければ馬に変身損になるところだったね、よかったよかった。

 なおこの変身は一過性のモノであり、この先ずっと馬の姿のままである、なんてことはないと保証いたしますん。*4

 

 

「どっちやー!!ウチは元に戻れるんか!?戻れへんのか?!ただでさえユニヴァース案件も背負うとるのに、更にリアル馬までとか背負いきれへんのやけどー!?」

「おおっと気性が荒い。これは騎手も大変ですねー」

「誰のせいやー!!」

「ぴか、ぴーか」

「ぬぐぅ、正論を……」

(……なんか、ナチュラルに会話してるわね……)

 

 

 タマモちゃんはどうしてこんなに、なにかを背負う姿が似合うのか。それは恐らく、彼女がツッコミ気質だからなのだろう。……あれこれ無茶振りされるのが似合っている、ともいう。

 

 なんでやねん、とノリツッコミをする彼女の姿を横目に納めつつ、遊星君は最後の確認と言うように、デュエルディスクの調子を確かめている。……もうDホイールからは降りられないので、簡易的なモノだけではあるが。

 そんな感じに、各々が心の準備を終え。

 

 

「──さぁ、突然のエクストラデュエル!相対するのはライディング・デュエルのチャンピオン!不動遊星(ふどぉ──、ゆ─せ─)!!」

「……あのおっさんMCやったんかい」

 

 

 スタートの合図を待つだけとなったそのタイミングで、さっき現れたMCさんが声をあげる。……誰が呼んだのかはわからないけど、どうやらこのデュエルを実況してくれるようだ。

 その姿に馬のタマモちゃんがひひん、と呆れたような声をあげ。それを聞き流しながら、彼は選手二名の紹介を進めていく。

 

 

「対するチャレンジャーは、以前王者ジャック・アトラスにも挑んで見せた新星、円卓の騎士マシュ・キリエライトォ────!!!さぁてぇ、勝利の女神が微笑むのはどちらになるのかぁ!!」

 

 

 その実況の間に、どこからか現れた信号がカウントを進めていく。赤、赤……。

 

 

「さぁお待ちかね!!世紀のデュエルの、スタートだぁーっ!!!!」

「「ライディング・デュエル、アクセラレーションッッ!!!」」

 

 

 ──そうして灯火が緑に変わった瞬間、我先にと前へ飛び出していく両者。それを追いかけるドローンからの映像を見ながら、私達はスタート地点で待機するのであった。

 

 

「──先行は貰う!俺の、ターン!!」

 

 

 多分今、アニメ本編なら両者の顔とカードの枚数とかの情報が表示されたんだろうな……みたいな宣言と共に、先んじた遊星君が自身の先行を宣言しながら、一枚のカードを手に取って、デュエルディスクにセットする。

 

 

「俺は、手札から魔法カード『調律』を発動!デッキから『シンクロン』チューナー1体を手札に加え、デッキをシャッフルしたのちデッキトップを墓地に送る!」

「……あ、あれ!?使われるのはスピードスペルではないのですか?!」*5

「──ふ、最初に『スピード・ワールド』、発動しなかっただろう?」

「あ、そそそそういえば!?」

「ウチルールわからへんのやけどー!?」

「タマモさんはとりあえず走ってください!デュエルに関しては、お任せを!!」

「……よーわからんけどりょーかいー!!」

 

 

 最初に使われたのは『調律』。出た、遊星さんのマジックコンボだ!!*6

 ……冗談はさておき、ライディングデュエルなのに普通の魔法を使ってもいいのか、というマシュちゃんからの疑問には、確かに形式こそバイクや馬に乗ったものであるが、実際には『スピード・ワールド』も『スピードスペル』も現物がないので、本当のライディングデュエルのようにはいかない……という、至極もっともな答えが返ってくる。

 

 ……そりゃそうだ。『スピード・ワールド』回りはカウンターの管理とか『スピードスペル』の処理とか、色々と独自のシステムが多いのだから普通に遊ぶ分には再現は投げるもの、というのはある意味()()()()()()である。*7

 え?だったら『ARC-V』の方の『スピード・ワールド-ネオ』*8とかでも発動しておけばよかったんじゃないか、ですって?……『ARC-V』時空に遊星君が居るかどうかわかんないから仕方ないね!!

 

 

「気を取り直して、行くぞ!手札から、『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

「……これは、もしや!」

「え、なになになんなん?!なにを超速理解したんやマシュ?!」

 

 

 そうこうしているうちに、遊星君が手札からモンスターを召喚。

 フィールドに飛び出して来たのは、オレンジ色の小さなモンスター。『ジャンク・シンクロン』と呼ばれるそのモンスターは、遊星君のフェイバリットモンスターの一体として、とても有名なカードである。

 そこゆえに、彼が次になにをするつもりなのか、ということに気が付いてしまったマシュちゃんは驚愕し。対してルールとかよくわからない(またしてもなにも知らない)タマモちゃんは、なんやなんやと声をあげていた。*9

 

 

「『ジャンク・シンクロン』の効果!墓地に存在するレベル2以下のモンスターを1体、効果を無効にして俺のフィールドに特殊召喚する!来い、『スピード・ウォリアー』!!」

「やはり……っ!!」

「なんなん?!うちに説明せんまま話を進めるん止めへん!?」

「レベル2『スピード・ウォリアー』に、レベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!」

「せやから、チューニングとかなんやねんマジでー!!」

 

 

 ……タマモちゃん、少し黙らない?

 やることなすことにツッコミを入れてしまうのは、今の彼女の余裕の無さの現れなのか。

 ともあれ、実況のMCさんが声をあげる暇もないくらい、矢継ぎ早にツッコミを入れているタマモちゃんは、なんというかちょっと落ち着きなさいという感想が思い浮かぶ有り様というか。

 

 ともあれ、今起きていることはほぼいつもの(ソリティア)、というやつ。

 遊星君と言えばこれ、みたいなやり取りであるがゆえに、マシュちゃんは思わずとばかりに固唾を飲み、ここからの怒涛の展開を警戒していたわけで。

 

 

「集いし絆が、新たな地平の扉を開く。光差す道となれ!シンクロ召喚!!抜き去れ、『ジャンク・スピーダー』!!」

「……あっ」

「ん?……あ゛」

 

 

 そうして現れたのは、マフラーを棚引かせる白い機械の兵士。……壊れ効果で有名なカード、『ジャンク・スピーダー』なのであった。*10

 わぁ、容赦なーい(白目)

 

 なんとも言えない微妙な空気に包まれる私達と、遊戯王をよく知らない組との温度差を感じつつ。……その淀んだ空気(流れ)を変えるように遊星君が咳払いをして、そのままモンスターの効果を発動していく。

 

 

「『ジャンク・スピーダー』のモンスター効果!(シンクロ)召喚成功時、レベルの違う『シンクロン』チューナーを、可能な限りデッキから守備表示で特殊召喚する!俺が特殊召喚するのは、『ジェット』『サテライト』『スチーム』『スターダスト』『クイック』のシンクロン五体!更に、特殊召喚に成功した『スターダスト・シンクロン』の効果を発動!デッキから『スターダスト・ドラゴン』の名前が記された魔法・罠カードを一枚手札に加える!俺が選ぶのは『スターダスト・イルミネイト』!更に、レベル5『ジャンク・スピーダー』に、レベル3『スチーム・シンクロン』をチューニング!」

「……なんや、一人であれこれやっとるで」

「静かにして下さいタマモさん、この流れはまだまだ続きますよ」

「……集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ!

シンクロ召喚!!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

 

 わぁ、手札が減ってないのにフィールドが埋まったりしている。怖いねー(他人事)*11

 まぁともかく、今回の主役である『スターダスト・ドラゴン』、早速のお出ましである。

 無論、これで展開が終わりというわけではないが……どことなく誇らしげに見えるのは、やはり遊星君に使って貰うのが嬉しいから、とかなのだろうか?

 

 

「手札から『スターダスト・イルミネイト』*12を発動!デッキから『スターダスト・ヴルム』を墓地に送る代わりに特殊召喚する!レベル1『スターダスト・ヴルム』に、レベル4『スターダスト・シンクロン』をチューニング!集いし願いが、更なる速度の地平を開く!光差す道となれ!シンクロ召喚!希望の力・シンクロチューナー、『アクセル・シンクロン』!!」

「……これ、いつまで続くんや?」

「これが不動性ソリティア理論ですよ、タマモさん」

「暗に終わらへんって言うとるやないかい!!」

 

 

 なお、この展開は最終的に1ターン目から『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』が並ぶところまで続きましたとさ。*13……本気出しすぎじゃないですかねぇ!?

 

 

*1
『遊☆戯☆王VRAINS』の主人公である藤木遊作(Playmaker)の口癖のようなものが、物事に三つの根拠を提示する……というもの。また、『仮面ライダーオーズ』においては、『前回までのあらすじ』として三つの出来事を挙げる……という演出がある為、そちらと関連付けられることもあるようだ

*2
『ポプテピピック』のネタの一つ。『は?』と返すのがお約束。ちなみに『しゃっくりを百回出すと死んでしまう』という迷信に対しての対処法であり、しゃっくりで死にたくないから自爆する、というなんとも本末転倒なことになっている話でもある

*3
ここでは馬の方のタマモクロスの要素も持ち合わせている『みどりのマキバオー』の主人公、マキバオーとその親分であるネズミのチュウ兵衛をイメージしている

*4
古典ギャグの一つ。『ます』『ません』の複合型であり、肯定なのか否定なのかわからない……というもの。昭和の頃から使われているらしく、はっきりとした由来は不明だったり

*5
『遊☆戯☆王5D's』を象徴する物の一つ。『ライディング・デュエル』は例外なく『スピード・ワールド』並びにその関連カードが最初から発動している。そのうち、『スピード・ワールド』と『スピード・ワールド2』は普通の魔法カードを使うと2000ダメージを受ける、という制約があるため、それらのカードに対応した『Sp(スピードスペル)』と呼ばれる専用魔法が必須となっている。なおこの『スピードスペル』、言ってしまえば魔法カードのデフレ化の為のものである為、OCG化はされておらず、そういう面では不評だったり(原作再現用のカードが別物になる、などの弊害があった)

*6
『遊☆戯☆王ZEXAL』より、単に魔法カードを使っただけなのに大仰にコンボと呼ばれる、という半ばギャグめいたシーン。よもやそれを言われていた方が、人気キャラになるとは思いもしなかったわけだが……

*7
たまに自作して遊んでいる人もいる。流石にバイクには乗らない()

*8
『遊☆戯☆王ARC-V』における『スピード・ワールド』の派生カードの一つ。作品的に魔法カードが使えないととても困るからか、魔法カードの制限などは存在しない。OCGとの連動的には喜ばれた

*9
『水曜どうでしょう』のネタ、『またしても何も知らない大泉 洋さん(23)』から。いわゆるテロップ芸

*10
S召喚成功時に、可能な限りデッキから『シンクロン』チューナーを特殊召喚する効果を持つ。ここまでやっても環境トップにはなれない辺り、インフレし過ぎな遊戯王である。なお、普通の遊星ならここで召喚するのは『ジャンク・ウォリアー』の方

*11
ここまでで、最初の『ジャンク・シンクロン』以外手札が減っていない。そもそもナチュラルに『調律』の効果でデッキトップから『スピード・ウォリアー』を墓地に落としている始末

*12
本来であれば『スターダスト』モンスターをデッキから墓地に送る効果。自分フィールド上に『スターダスト・ドラゴン』ないしその名前の記されたSモンスターが存在する場合、墓地送りの代わりに特殊召喚できる。なお、『スターダスト・ドラゴン』の方は単なる名称指定なので、名前を変更すればSモンスター以外でも条件を満たせたり

*13
『遊☆戯☆王5D's』において、とある場所で名前だけが出ていたモンスター。そもそも本当に書いてあるだけだった為、カード化した際は『ここを拾うのか』とデュエリスト達に大層驚かれた


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。