なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「いやー、さっきと比べると、行きの方も随分と楽になったものねぇ」
「え」
「いや『え』ってなによ?……言っておくけど、別に嘘を言っているわけじゃないわよ?そこいらに設置されてるのがカウンター罠だって予めわかってるから、最悪『ハリケーン』とか『大嵐』とか『ライスト』とか撃っとけばいいって話になってるんだし」
「いや、対処法全部雑ぅー!?」*1
嫌がる紫ちゃんを担ぎ上げるようにして、外へと飛び出した私達。
さっきの行きの時とは違い、帰りの時のやり方を参考にして、待ち構えている罠達を全て破壊していく……という手段を取った遊星君達デュエリスト組なわけだけど。
こちらに自身の言葉が通じていないのがわかったのか、代わりとばかりに指差しになったピカチュウちゃんの指示により、わざわざ引っ掛かりに行かずとも、罠の位置を確認できるようになった彼らは、それを活かし魔法・罠を破壊できるカードで片っ端から罠を全部破壊する、というストロングスタイルで森を踏破して行っている。
まぁ、罠とか魔法カードを破壊する効果を持つカードって
……これには紫ちゃんの『雑』という評価も、妥当オブ妥当と言わざるをえまい。
とはいえ、さっきまでの当たって砕けろ式罠踏破術はもうやりたくない……ということで、マシュちゃんの盾を盾にして(?)風をやり過ごすみんななのでしたとさ。
「盾を盾として使っているだけのはずなのに、疑問文になってしまうのは何故なのでしょうね……」
「マシュちゃんの場合の
なお、こうして疑問形になってしまった理由は、ここのマシュちゃんには原作みたいな先輩の盾役、という印象が薄いせいだったり。
それ以外の部分では、普通に盾持ちとしては普通に働いているはずだというのに、げに恐ろしきは
ともあれ、そうして罠を極力安全?に解除しながら進んで、ようやくやって来たのは、先ほどピカチュウちゃん達と別れた発電所の前。
ここで私達は、一行を二手にわけることになるのでした。
「ええと、私の方は他のピカチュウを探す……ってことでいいのよね?」
そんな風に声をあげるのは、紫ちゃんの方。
当初の予定通り、彼女はこっちに同行しているピカチュウちゃんと、その他のピカチュウちゃん達の間に、なにか差異がないかを調べる役である。
そんな彼女に付いていくのは、マシュちゃんとタマモちゃん、それからかようちゃんとピカチュウちゃんの三人と一匹。
メンバーの選考基準としては、ここがフィールド魔法の中……デュエリスト案件の真っ只中であることを考慮し、それに対処できる人員は一つの組に纏めず、わけた方がいい……というシャナちゃんの主張により、該当者二人──マシュちゃんと遊星君を別のグループにする、ということがすんなり決まり。
それから、あまり会話をしたことのない相手である
その他はまぁ、消去法みたいなものである。
ピカチュウちゃんは最初から同行が確定しているし、そんな彼女が懐いている相手の内の一人、タマモちゃんもそのまま同行が確定。
で、さっきの実験の流れから、そのままかようちゃんも一緒に行くことに……というのが、向こうのメンバーの決定理由。
反対にこちら側……琥珀ちゃんの方には、それらの選考から残った組であるシャナちゃんや遊星君、それから余り物の私というメンバーになったわけなのだけれど……。
「……え、もしかしてこれ、下手すると私がまとめ役しなきゃいけない感じなの……?」
「頑張ってくださいシャナさん!」
「頑張ってシャナちゃん!」
「ああ、頑張れシャナ」
「ちょっとぉ!?他二名はともかくとして、不動はまだまともな方なのに私に投げようとするの止めなさいよ!?」
「いやすまないなシャナ、この面々の中では俺は確実に若輩者だ。そんな相手の指示ではみんな不安になるだろうし、そもそも俺自身がみんなのことを理解しきれていない。それならば、最初からみんなのことを知っているお前に任せた方が確実なんだ」
「ぬぐっ、た、確かに……」
体よく
無論、そんなことをされたら、張り切って応援するのが私達。
なので、琥珀ちゃんと手を取り合って彼女を鼓舞してあげたのだけれど……彼女からは苦虫を噛み潰したような、凄まじく苦い表情を返されてしまった。解せぬ。
なお、その隣では何故か遊星君まで一緒になって、彼女を鼓舞していたのだけれど……シャナちゃんへの釈明の仕方から見るに、多分悪ノリですねこれ。
ともあれ、突然降ってわいたリーダー役の仕事に、シャナちゃんはなんとも言えない表情で頭を抱えている。
遊星君はともかくとして、問題児多めなのだからさもありなん。
「なんでそこで自信満々で居られるのよ?!もうちょっと自重とかして貰える!?」
「自重~?そんなもの、母上のお腹の中に置いてきた*3にきまってるじゃないですか!」
「私が自重するということは、世の中から熱がなくなるということ。
「……あーもう!!ああ言えばこう言うんじゃないわよ!」
なお私達からしてみると、そうして余裕のなくなっている状態が面白い()ので、彼女への弄りが加速する始末である。……雑に言うのなら「お前が落ち着け」というか?
そんな構図を外から見ていた遊星君は、小さくため息を吐くと。とりあえず、興奮しきっているシャナちゃんを止めることに注力し始めるのでした。
「……やっぱり貴方がリーダーをした方がいいんじゃ」
「さっきのは外から見ていたから気付けただけだ。俺もお前の立場だったら、狼狽えているだけだっただろうさ」
「むぅ……」
──数分後。
柄にもなく熱くなっていたことに気が付いたシャナちゃんは、今現在は恥ずかしさにほんのり頬を染めた状態で、遊星君と話をしている。
彼女が落ち着いたのであれば、こちら側が騒ぎ立てる必要もなく。
さっきまで騒いでいた罰として自分から正座をしていた私達は、そんな二人の様子を見ながらニヨニヨしていたのでした。
「いやー、琥珀ちゃん。若いっていいわねー」
「そうですねぇ。表面に囚われて物事をキチンと把握できていない若者が、しっかりと前を向けるようになるのはいいことですねぇ」
「……殴っていいと思う?あの二人」
「止めておけ。そうして殴り掛かってくることすら、考慮に入れているはずだからな」
「……なんでいきなり昼行灯キャラと化してるのよこの二人……!」
リーダーとして求められるのは、基本的にいつでも動じない胆力である。
高々問題児二人抱えたくらいで慌てているようでは、この先生き残ることはできない……!
……的な理屈を盾に、シャナちゃんにパワハラを仕掛けていく私達なのであった。……いやまぁ、やりすぎるとスンバラリンされるので、程々にだけどね。
ともあれ、シャナちゃんの成長を喜ぶのはこれくらいにするとして。
よっこいしょ、と正座から立ち上がった私達は、改めて動作を止めている機械──モーメントと対峙する。
メンバーを二手にわけた理由……そのもう一つが、琥珀ちゃんにこのモーメントを調べて貰う、ということにある。
何故かと言うと、そもそもこのモーメント自体が
「……ふぅむ、とりあえず見たところ、普通のタワー型の機械……といった感じですねぇ」
「俺がスターダストを手に取った時点で、ほとんど動きを止めかけていたが……やはり、そういうことなのか?」
「ですねぇ。そうなると、これになんの意味があるのか、というのが一番の問題となりますが……」
モーメントにぺたぺたと触りながら、琥珀ちゃんは小さく唸り声をあげる。
特に調べるための機械を使っていないにも関わらず、既に問題の核心に気が付いているらしい。
そんな彼女の近くでは、遊星君が工具などを準備しながら、彼女と話をしているわけなのだけれど……。
「……本当に昼行灯だ、とか思ってる感じね?」
「…………いつもあんな風に、真面目にしていて欲しいのだけれど?」
「それは無理な相談ねぇ」
周囲の警戒、という体でわりと暇なシャナちゃんは、ぶすっとした表情でそれを眺めているのだった。……冷静にはなったけど、まだ拗ねているらしい。
ともあれそれを指摘するのもあれなので、華麗にスルーする私なのですが。
そんなこちらの様子に、彼女は深々とため息を吐いたのち、改めてこちらに声を掛けてくる。……その内容は、彼らの会話の意味についてだ。
「あの二人はなにを?」
「んー、あのモーメントが
「何処って……発電施設なんだから、このフロアに電力を供給してるんじゃ?」
「まぁねぇ。……ただ、だとすればやっばりおかしいことがあるのよねー」
「おかしいところ……?」
あの二人は現在、モーメントの構造やらなにやらを解析するための準備をしているわけだけど……そもそもの話、このフロアの電力施設とは
そんな私の言葉に、なにを当たり前のことを……というような表情を浮かべるシャナちゃんだけど。
考えても見て欲しい、例えこれがデュエリスト案件だとしても、電力供給もなしにソリッドビジョンシステムを動かし続けられるだろうか、と。
今現在、発電機であるモーメントは、完全に動きを止めている。かようちゃんに貸していた千里眼によれば、この場所が元々の発電施設であるのは確か。
それゆえ、このモーメントは
当のモーメントと言うと、私達の前に変わらぬ姿を見せている。……つまり、
「ええと……?」
「要するに、このモーメントは本当にここにあった発電施設なのか、ってこと。……元々の発電施設はもっと地下に埋没してるんじゃないかとか、色々疑わしいところがあるってわけ」
モーメントは確かに動きを止めている。
それはすなわち、このモーメントが電力供給源であるのならば、そしてこのモーメントの姿が、ソリッドビジョンシステムによって変化させられているものであるのならば、モーメントの停止と共に元の発電機に戻っていなければおかしい、ということ。
先ほどまでのメンバーでは、十分な装備がないので調べられなかったけれど。
こうして琥珀ちゃんを連れてきたことにより、それを調べるための準備は整った……ということである。
こちらの説明になるほど、と頷くシャナちゃんを横目に、改めてモーメントの方に視線を向ける私。
かの御柱は、何を喋るでもなく、ただそこに佇んでいるのであった……。