なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「──そういえば」
「……ん?なにかしらシャナちゃん?」
琥珀ちゃん達が、モーメントの本格的な調査に着手してから数分ほど。
手持ち無沙汰そうにそれを眺めていたシャナちゃんが、ふと思い出したようにこちらに声を掛けてくる。……なにに気付いたのだろう、と私が首を捻っていると。
「貴方、マシュと一緒じゃなくてもよかったの?確か、キーアにそう頼まれたって聞いたけど」
「あー、それ?……んっとね、確かにキーアちゃんにはマシュちゃんを見てて、って頼まれたけど──」
次いで彼女の口から飛び出したのは、私がマシュちゃんと一緒に行動していないのはいいのか、ということについて。
確かに、先ほどまでは金魚のフン*1のように、彼女に付いて回っていた私である。であるならば、それをいきなり止めたのだから気にもなる……というのは変な話でもない。
ただまぁ、そこには少し思い違い、とでも言うべきものがあるのだが。
「私はあくまでも
「……なるほど。懇願ではあっても強制ではないから、その指示から外れることもある、ってわけね。……いやちょっと待って?今貴方
おっと耳聡い。
私の言葉の中にほんのりと混ぜられた事実を、敏感に気付いて見せたシャナちゃんに、思わずにんまりとしてしまう私。
……まぁ、その時の笑顔が怖かったのかびくっ、ってなっていた彼女の姿には、思わずこちらも反省を促されてしまったわけだけれど。
ともあれ、彼女の言う通り。
この状況下において、重要なのはこちらの方。……ピカチュウちゃん達の特異性はまぁ、この事態の核心を掴む手掛かりにはなるだろうけれど──
「え、は、ちょ、なに、なにが来るのこっち!?」
「モーメントは、人の心を写すもの。……んー多分だけど、
「なんの話ぃ?!」
「え、この事件の
「はぁ?!」
混乱するシャナちゃんの前では、琥珀ちゃん達がモーメントの分解に取り掛かろうとしている。……解析した結果、このモーメントは
それが元々の発電施設だけに繋がっているものではない、とわかった以上、経路を辿ろうとするのは当然のこと。
現状では、それがこの事件を起こしたものに繋がる、唯一の道であることは確かだからなおのことだ。
──けれどご用心。
この世界の繋がりというものは、とてもあやふやでいい加減なもの。
名前繋がり、所属繋がり、カップ焼きそば現象、外の人繋がり*2……か細く小さな繋がりでさえ、
はて、この状況。……繋がるものはなんなりや?
「ふぉう」
そんな、小さな獣の声と共に、それはこの世界に顕現するのであった。
「しゃ、シャドフォ君?」
「ええと、確かキーアさんのところにいつからか加わった追加メンバー、でしたっけ?」
モーメントを分解しようという、まさにその時。
その上に降り立ったのは、
そんな相手の突然の出現に、先ほどまで混乱しきっていたシャナちゃんは、また別方向に混乱し始めているけれど……なに、難しく考える必要はない。
「──話の途中だったわよね、シャナちゃん」
「は、はい?」
「黒幕云々の話。──
「必要な措置、ですか?」
「そ。……小さな獣は災いをもたらすもの。その姿を持つ以上、ちょっと周囲の思考を攻撃的なモノにする……なんて、まさにお茶の子さいさい*3ってやつよね」
思い起こすのは、
それは、彼女の成長を思ってのこと……
彼は最初から彼女に期待しておらず、それらの行為は全て別の意味を持つものである。すなわち──、
「いい加減焦れてきた、ってことなのかしら?それとも、彼女が
「──やっぱり、君の方が適任だろうね」
「え、喋った!?」
こちらからの問い掛けに、身を震わせ歓喜に染まったような声をあげるシャドフォ君。……けれどその声は、その姿から本来出るはずの声──アルトリアちゃんと同じ、少女の声のようなものではなく。代わりに飛び出したのは、軽やかな少年の声。
喋った、という事実に周囲が困惑する中、彼──影のフォウ君は、くつくつと笑い声をあげている。
「いやね、僕にも準備ってものがあったんだ。──この姿は確かに便利だけど、僕本来のモノではない。何の因果か渡された
「も、元の姿……?」
影のフォウ君の言葉に、困惑したような声をあげるシャナちゃんの前に、彼女を庇うようにして前に出る人が一人。──遊星君である。
「な、と、突然なにを……」
「──気を付けろ、シャナ。……今のアイツからは、
「アイツら……?」
シャナちゃんを背中に庇う遊星君の表情は険しく、まるで睨み付けるかのように影のフォウ君を、油断なく見つめ続けている。
それもそのはず。姿を写し取った、と彼自身が述べたように、あのフォウ君の姿はそもそも彼本来の姿ではない。……いやまぁ、その影自体も、本当は彼の体ではないのだけれど。
そんな私の言葉を聞いて、なにかに気付いた琥珀ちゃんが、慌てたように懐から一つの機械を取り出している。
見た目的にはスマホのようなそれを、影のフォウ君に翳した彼女は、その画面を見つめながら驚愕したように声を漏らした。
「……じゃ、『邪神アバター』!?」*4
「じゃ、邪神?」
「やはり……」
その言葉に困惑を強めるシャナちゃんとは裏腹に、遊星君は警戒を強めて呻く。
恐らく、彼の言う
方向性としては『悪』となる彼らの気配は、確かに『邪神』のそれと似通ったものだと言えるはずだ。
すなわち、今私達の目の前にいるのは、黒いフォウ君などではなく。邪神アバターがその力によって、彼を写し取ったモノ……
「……は?」
「いやはやその通り。……その見識、その力。正しく僕達が──僕が求めた理想のそれだ」
「い、いやちょっと待ちなさい!勝手にそっちだけで納得しないで!!」
こちらの指摘に、感極まったような声をあげる黒いフォウ君。……見た目的には『フォウ君大興奮』でしかないので、ちょっと気が抜けなくもないが……挙げられているモノがモノだけに、周囲に漂う緊張感は並のものではない。
そもそもの話、フォウ君自体が星の獣──ビーストになりうる個体の一つであるし、邪神アバターもまた、三幻神に対抗する存在として産み出されたモノであるがゆえに、その脅威というものは計り知れない。
だというのにも関わらず、それらは目の前の彼の本性ではない、のだという。
そうなれば、状況を理解できていないシャナちゃんが、困惑するのも無理はなく。
けれど、相手はこちらの混乱などを気にはしない。──いいや、正確にはここに居る
「そういえば、この姿の元である獣は、別の世界では誰かに付き従うモノ、だったか。……なるほど、ある意味では僕に近い、とも言えるのかもね」
「──この場所に、貴方の顕現のために必要な要素を集めた。それは
「……は?」
その相手とは、私。
キーアではなく、キリア。
彼が求めたのは、
その発言に、更に困惑するシャナちゃん。……当然だろう。私の存在というのは、あくまでも彼──キーアちゃんの中の人が
それを求めてやって来た、というのは大概おかしいにもほどがある。……それはまるで、私がどういう存在なのかを
「
「……それは、千里眼でも持ってる、ってこと?」
「まぁ、似たようなモノだよ、焔の娘。──僕達はかつてそれを求めた。それを作るため、それを為すために、あらゆる垣根を越えて集ったりもした……けれどまぁ、その辺りは今は重要じゃない」
シャナちゃんの疑問に答えた彼は、今やフォウ君の姿ですらなくなっている。
黒い太陽──邪神アバターのそれへと姿を変えた彼は、更にそこから姿を変えようとしている。
必要な要素は四つ。
一つ、
二つ、似姿を探すこと。彼が述べた通り、フォウ君のとある世界での姿は、確かに彼のそれに近いもの、だという風にこじつけられなくもない。
三つ、要素を満たすこと。彼はやんごとなき存在であり、それを呼び寄せるには相応の──それこそ
そして四つ目──モーメントが繋がる先、その世界。
とある数字を殊更に大切にするその世界は、その似姿の力を高めるには丁度いい。
あとは、与えられていた
はてさて、ここまで語ればもうわかるだろう。
比較の獣の似姿、それを語る以上。──それがなににカテゴライズされるのかなんて、最早確かめるまでもない。
「それでは改めてご挨拶を。──星の獣なぞ偽りの姿。其は道行きを示し、賢しらに諭し、多くを見せる小人の神。……我が名は『
A D V E N T B E A ST
人類悪 変貌
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