なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

379 / 1297
幕間・事態は突然直下する

「──そういえば」

「……ん?なにかしらシャナちゃん?」

 

 

 琥珀ちゃん達が、モーメントの本格的な調査に着手してから数分ほど。

 手持ち無沙汰そうにそれを眺めていたシャナちゃんが、ふと思い出したようにこちらに声を掛けてくる。……なにに気付いたのだろう、と私が首を捻っていると。

 

 

「貴方、マシュと一緒じゃなくてもよかったの?確か、キーアにそう頼まれたって聞いたけど」

「あー、それ?……んっとね、確かにキーアちゃんにはマシュちゃんを見てて、って頼まれたけど──」

 

 次いで彼女の口から飛び出したのは、私がマシュちゃんと一緒に行動していないのはいいのか、ということについて。

 

 確かに、先ほどまでは金魚のフン*1のように、彼女に付いて回っていた私である。であるならば、それをいきなり止めたのだから気にもなる……というのは変な話でもない。

 ただまぁ、そこには少し思い違い、とでも言うべきものがあるのだが。

 

 

「私はあくまでも()()()()()()()()、ですもの。もっと重要視するべきものがあるのであれば、後回しにすることだってありえますわ」

「……なるほど。懇願ではあっても強制ではないから、その指示から外れることもある、ってわけね。……いやちょっと待って?今貴方()()って言わなかった?」

 

 

 おっと耳聡い。

 私の言葉の中にほんのりと混ぜられた事実を、敏感に気付いて見せたシャナちゃんに、思わずにんまりとしてしまう私。

 ……まぁ、その時の笑顔が怖かったのかびくっ、ってなっていた彼女の姿には、思わずこちらも反省を促されてしまったわけだけれど。

 

 ともあれ、彼女の言う通り。

 この状況下において、重要なのはこちらの方。……ピカチュウちゃん達の特異性はまぁ、この事態の核心を掴む手掛かりにはなるだろうけれど──()()()()()()()()()()()()()こちらの方が、優先度は遥かに高いのである。

 

 

「え、は、ちょ、なに、なにが来るのこっち!?」

「モーメントは、人の心を写すもの。……んー多分だけど、()()()としては単に()()()()()()()()、ってやつを辿って、()()()()()()()()()()()()()だったんだと思うんだよねー」

「なんの話ぃ?!」

「え、この事件の()()黒幕の話」

「はぁ?!」

 

 

 混乱するシャナちゃんの前では、琥珀ちゃん達がモーメントの分解に取り掛かろうとしている。……解析した結果、このモーメントは()()()()()にも繋がっている、ということが明らかになったからだ。

 それが元々の発電施設だけに繋がっているものではない、とわかった以上、経路を辿ろうとするのは当然のこと。

 現状では、それがこの事件を起こしたものに繋がる、唯一の道であることは確かだからなおのことだ。

 

 ──けれどご用心。

 この世界の繋がりというものは、とてもあやふやでいい加減なもの。

 名前繋がり、所属繋がり、カップ焼きそば現象、外の人繋がり*2……か細く小さな繋がりでさえ、()()()()()()()()()()()辿れてしまうのがこの世の縁。

 

 はて、この状況。……繋がるものはなんなりや?

 

 

「ふぉう」

 

 

 そんな、小さな獣の声と共に、それはこの世界に顕現するのであった。

 

 

 

 

 

 

「しゃ、シャドフォ君?」

「ええと、確かキーアさんのところにいつからか加わった追加メンバー、でしたっけ?」

 

 

 モーメントを分解しようという、まさにその時。

 その上に降り立ったのは、黒いフォウ(シャドフォ)君。……とある一件から、キーアちゃんが連れている小さな獣である。

 そんな相手の突然の出現に、先ほどまで混乱しきっていたシャナちゃんは、また別方向に混乱し始めているけれど……なに、難しく考える必要はない。

 

 

「──話の途中だったわよね、シャナちゃん」

「は、はい?」

「黒幕云々の話。──()は、こちらに来た時から密かに暗躍を続けていた。望む答え、望む世界、望む未来──それを実現するために、必要な措置を打ってきた」

「必要な措置、ですか?」

「そ。……小さな獣は災いをもたらすもの。その姿を持つ以上、ちょっと周囲の思考を攻撃的なモノにする……なんて、まさにお茶の子さいさい*3ってやつよね」

 

 

 思い起こすのは、()()()()を使わざるを得なかった、幾つかの状況について。その事件の影には、()()()()()()がどこからか響いていた。

 それは、彼女の成長を思ってのこと……()()()()

 彼は最初から彼女に期待しておらず、それらの行為は全て別の意味を持つものである。すなわち──、

 

 

「いい加減焦れてきた、ってことなのかしら?それとも、彼女がここ(なりきり郷)にいない時を見計らったのかしら?……なんにせよ、お望み通り話を()()()()()()いいわよ、星の獣さん?……いいえ、その()姿()よ」

「──やっぱり、君の方が適任だろうね」

「え、喋った!?」

 

 

 こちらからの問い掛けに、身を震わせ歓喜に染まったような声をあげるシャドフォ君。……けれどその声は、その姿から本来出るはずの声──アルトリアちゃんと同じ、少女の声のようなものではなく。代わりに飛び出したのは、軽やかな少年の声。

 喋った、という事実に周囲が困惑する中、彼──影のフォウ君は、くつくつと笑い声をあげている。

 

 

「いやね、僕にも準備ってものがあったんだ。──この姿は確かに便利だけど、僕本来のモノではない。何の因果か渡されたもの()、それによって写し取ったもの(姿)でしかない。……元の僕の姿を見せるには、少々準備が必要でね」

「も、元の姿……?」

 

 

 影のフォウ君の言葉に、困惑したような声をあげるシャナちゃんの前に、彼女を庇うようにして前に出る人が一人。──遊星君である。

 

 

「な、と、突然なにを……」

「──気を付けろ、シャナ。……今のアイツからは、()()()()と同じ気配が立ち昇っている」

「アイツら……?」

 

 

 シャナちゃんを背中に庇う遊星君の表情は険しく、まるで睨み付けるかのように影のフォウ君を、油断なく見つめ続けている。

 それもそのはず。姿を写し取った、と彼自身が述べたように、あのフォウ君の姿はそもそも彼本来の姿ではない。……いやまぁ、その影自体も、本当は彼の体ではないのだけれど。

 

 そんな私の言葉を聞いて、なにかに気付いた琥珀ちゃんが、慌てたように懐から一つの機械を取り出している。

 見た目的にはスマホのようなそれを、影のフォウ君に翳した彼女は、その画面を見つめながら驚愕したように声を漏らした。

 

 

「……じゃ、『邪神アバター』!?」*4

「じゃ、邪神?」

「やはり……」

 

 

 その言葉に困惑を強めるシャナちゃんとは裏腹に、遊星君は警戒を強めて呻く。

 

 恐らく、彼の言う()()()()とは『地縛神』のことだろう。モーメントが見せた人の心の闇、遥か昔から赤き竜と対立する者達。*5

 方向性としては『悪』となる彼らの気配は、確かに『邪神』のそれと似通ったものだと言えるはずだ。

 

 すなわち、今私達の目の前にいるのは、黒いフォウ君などではなく。邪神アバターがその力によって、彼を写し取ったモノ……()()()()

 

 

「……は?」

「いやはやその通り。……その見識、その力。正しく僕達が──僕が求めた理想のそれだ」

「い、いやちょっと待ちなさい!勝手にそっちだけで納得しないで!!」

 

 

 こちらの指摘に、感極まったような声をあげる黒いフォウ君。……見た目的には『フォウ君大興奮』でしかないので、ちょっと気が抜けなくもないが……挙げられているモノがモノだけに、周囲に漂う緊張感は並のものではない。

 

 そもそもの話、フォウ君自体が星の獣──ビーストになりうる個体の一つであるし、邪神アバターもまた、三幻神に対抗する存在として産み出されたモノであるがゆえに、その脅威というものは計り知れない。

 

 だというのにも関わらず、それらは目の前の彼の本性ではない、のだという。

 そうなれば、状況を理解できていないシャナちゃんが、困惑するのも無理はなく。

 けれど、相手はこちらの混乱などを気にはしない。──いいや、正確にはここに居る()()()()を除いて、そもそも眼中にない。

 

 

「そういえば、この姿の元である獣は、別の世界では誰かに付き従うモノ、だったか。……なるほど、ある意味では僕に近い、とも言えるのかもね」

「──この場所に、貴方の顕現のために必要な要素を集めた。それは()()()()()()()()、ってことでいいのよね?」

「……は?」

 

 

 その相手とは、私。

 キーアではなく、キリア。

 彼が求めたのは、似姿(キーア)ではなく大本(キリア)

 その発言に、更に困惑するシャナちゃん。……当然だろう。私の存在というのは、あくまでも彼──キーアちゃんの中の人が観測(創造)したからこそここにあるものである。

 それを求めてやって来た、というのは大概おかしいにもほどがある。……それはまるで、私がどういう存在なのかを()()()()()()()()()かのような──。

 

 

()ていた、という方が正しいのだけれどね。特に君は何処にでもあるものだ。──僕達の視界なら、寧ろ見えない方がおかしいと言えるだろう」

「……それは、千里眼でも持ってる、ってこと?」

「まぁ、似たようなモノだよ、焔の娘。──僕達はかつてそれを求めた。それを作るため、それを為すために、あらゆる垣根を越えて集ったりもした……けれどまぁ、その辺りは今は重要じゃない」

 

 

 シャナちゃんの疑問に答えた彼は、今やフォウ君の姿ですらなくなっている。

 黒い太陽──邪神アバターのそれへと姿を変えた彼は、更にそこから姿を変えようとしている。

 

 必要な要素は四つ。

 一つ、()()を立てること。()()を数える際の助数詞からわかるように、柱とはすなわち彼らと同義である。

 二つ、似姿を探すこと。彼が述べた通り、フォウ君のとある世界での姿は、確かに彼のそれに近いもの、だという風にこじつけられなくもない。

 三つ、要素を満たすこと。彼はやんごとなき存在であり、それを呼び寄せるには相応の──それこそ()()()のような、神聖な生き物を道標とする必要がある。

 

 そして四つ目──モーメントが繋がる先、その世界。

 とある数字を殊更に大切にするその世界は、その似姿の力を高めるには丁度いい。

 あとは、与えられていた土塊の体(邪神アバター)に備わっていた力で、幾つかのごまかしを起こしてやればいい。

 

 はてさて、ここまで語ればもうわかるだろう。

 比較の獣の似姿、それを語る以上。──それがなににカテゴライズされるのかなんて、最早確かめるまでもない。

 

 

「それでは改めてご挨拶を。──星の獣なぞ偽りの姿。其は道行きを示し、賢しらに諭し、多くを見せる小人の神。……我が名は『少彦名命(すくなひこなのみこと)』。哀れな人類達を導く、救世の神である」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1/1

 

   

 

*1
比喩表現の一つ。金魚のフンは長く連なり、かつなかなか離れないことから、特定の人物に多くの人々が付いていく様、もしくは偉い人などに付き従う相手を揶揄する言葉として使われる

*2
後者二つは見た目の類似性に言及したもの。『外の人繋がり』はそのまま見た目がよく似通っていることを指すが、『カップ焼きそば現象』の方は、見た目は似ていても本質などに差異が見える間柄のことを指す。言うなれば『外の人繋がり』というカテゴリの中に『カップ焼きそば現象』が存在する、という形になるか

*3
とても簡単なこと。朝飯前。『お茶の子』とはお茶と一緒に出される菓子のこと、『さいさい』とは囃子詞である『のんこさいさい』を縮めたもの。言うなれば『お茶菓子なんてすぐ食べられちゃうよ、ほらほら』みたいな感じの言葉である

*4
『三邪神』と呼ばれる『遊戯王OCG』のカードの一枚。必ず相手よりも攻撃力が上になる、という効果を持ち、戦闘では無類の強さを誇る。……のだが、このモンスターの特徴はそこではなく、カードの見た目が『真っ黒な球体』である、というところにある。このモンスターは相手とそっくりになる、という性質を持っており、更には神としての格が『ラーの翼神竜』と同じ最高位である為、大半のモンスターに強気に出ることができる。因みに、召喚成功時に()()()()()()()()()2ターンの間、魔法・罠カードの発動を封じるという地味に厄介な効果も持ち合わせていたり

*5
『遊戯王OCG』のカテゴリの一つ。『ナスカの地上絵』をモチーフとしたモンスター達であり、フィールド魔法が存在しない場合に自壊する代わりに、相手への直接攻撃や様々な効果を与えられている。ダークシグナーと呼ばれる、遊星達シグナーの敵対者達が使用した

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。