なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
色々壊れたとかなんとか
「……はぁ?帰る?」
──夏も中頃を過ぎた頃。
意外と深刻なものだった事件を解決した私達は、久方ぶりの日常を享受していたわけなのだけれど。
お昼のそうめんを啜っていた私達を襲ったのは、『ちょっと帰ってくるわ』という、キリアからの衝撃の一言なのであった。
「ええとその、キリアさん?帰るとは一体どちらに……?」
「んー、里帰りみたいなもの……なのかしらね。──『あの人』から『たまには顔を見せなさい』って連絡が来てるみたいでねー」
「マジかよ……」
「ぬおっ!?大丈夫かキーア?!そうめんが鼻から出て来ておるぞ!?」
「ゆるされよ ゆるされよ 鼻からそうめん許されよ」
「おおっと、これは失礼」
マシュは『帰ると言っても、どこに?』みたいな感じでその言葉を聞いていたけれど……私としては、寝耳に水*1と言ってもいいところ。
ここに集まっている面々の中では、唯一『あの人』のことを知っている私としては、なんというかもう『マジかー』としか言葉が出てこなくてですね?
「……ええとその、もしかしてですがですね、キリアお母様?」
「なぁにキーアちゃん?……というか、すっかり扱いが母子になっちゃったわね、私達」
「
「おい大丈夫かキーア、先ほどから冷や汗が滝のように流れておるが」
「冷や汗云々の前に滅茶苦茶震えてるんだが。口調も無茶苦茶だし」
思わず震える声で訪ねるのは、その里帰り、私も同行しなくちゃいけないのですか?……という疑問。
他の面々──
「キリアお姉さんが里帰り、ってことはー……その『あの人』っていうのは、お姉さん達にとってはお婆ちゃんみたいなもの、ってことになるのかな?」
「つまりはお盆なん。ウチ達も、たまには帰らなきゃいけないん」
「おぼん?それって、一体どんなものなのかしら?」
「そうですね……基本的には先祖供養のために行うモノですが、それに
「へぇー、それは楽しげだねぇ」
テーブルの反対側では、かようちゃんやれんげちゃん、エー君にアルトリアが、わりととんでもない結論に行き着いたのち、話の華を咲かせている姿が見える。
……いや、お婆ちゃんて。その論理で行くと『
「ふむ、家族は大切にせねばならぬぞ。世の中には他の親族と不仲な者も多いと聞くが……特に理由がないのであれば、敬っておく方かよい。孝行できる内にしておくのが、一番であるからな」
「……イッスンってば、見た目は小さいのに言うことおっさん臭いってばよ」
「はっは。それはまぁ、年の功と言うやつよ」
「それはちょっと、話がずれてるんじゃないかい?」
「きゅー」
さらにその隣では、
ついでに『僕もいるよ』みたいに声を上げるカブト君が、その足下に控えていたりもするけど……見た目的なメンバーの節操の無さは、もしかしたら随一かもしれない。
ともあれ、大所帯で大人数・まさに密集地。
これだけの人数が集まれば、各々の反応を書き出すだけで描写が埋もれてしまいそうである。
……場合によっては、余所から顔見せに来る人も増えると言うのだから、なんというか色々あったなぁ……と、感慨深くもなるといいますか。
「……って、違う違う。ここでしみじみと頷いている場合じゃないんだった」
「私が言うのもなんだけど、キーアちゃんってわりとマイペースよね」
「
まぁ、当初のマシュと二人だけの生活、というのを思い出してしみじみしている場合じゃない、とすぐに頭を振ることとなったのだけれど。
……食事の必要がないのでこの場に居ない、
とにかく、である。
現状問題なのは、キリアの言う『里帰り』に私が同行する必要があるのか?ということについて。
みんなは『単なる里帰りでしょ?なにを大袈裟な……』みたいな感じに流しているけれど。
思い出していただきたい。つい最近、『あの人』絡みのとんでも案件が勃発したばっかりだ、ということを。
「……ぬ?」
「あー、そういえばイッスン君がこんなことなったのって、その例の
「確か……大雑把に言うと『偽造免許を持って、素知らぬ顔で更新に行ったけど、偽造であることに気付かないどころか、寧ろもっと高度な感じの免許に(善意から)変更するよう薦められて、そのせいでとてもじゃないけど合格なんてできないような、そんな試験を受けさせられた』……みたいな感じだったかしら?」
「なるほど……つまりはもし、自分もキリアに付いていくことになるのだとしら、そこのイッスン君と同じような目に遭うのではないか?……と危惧しているということですね?」
「はいその通りですアルトリア!どう考えても今の私の立場、不法滞在とか
流石にここまで言えば、私がなにを主張していたのかわかってくれたのか。他の面々が次々と正解を述べてくれたため、現在の私の心境がここに明らかとなる。
……そう、先の『スクナヒコナ→一寸法師』の変化を見る限り、迂闊に
それこそ、本当にキリアの娘になって戻ってくる可能性もあるし、それどころか戻ってきたら『私』という個はどこにも存在しなくなっていた……なんてことにもなりかねない。
だって私、単なる
誰だよこんな変な設定思い付いたやつ!……私だったわ!
そんな感じで絶賛混乱中の私ですが、こちらの様子を見ながらキリアはふっ、と笑みを浮かべて。
「おあいにくさまだけど、今回の呼び出しは私に対してだけ、よ。……わりと真面目に、久しぶりに
「…………よ、よかったぁ~……」
こちらに対し『
「……なんかとっても久しぶりに、ちゃんとした姿になっているような気がする……」
「私も、久しぶりにせんぱいのご無事な姿を見たような気がします……具体的には三ヶ月ぶりくらい、というか」
ちゅるりとそうめんを食べ終えたキリアが、『暫くしたら、お土産持って帰ってくるわね~』とかなんとか言いながら、何処へともなく消えてから暫く。
今まで体に掛かっていた、重圧的なモノが消えたのを察知した私はというと、随分と久しぶりに普通の大きさ・かつただの『キーア』としての姿へと戻ることに成功していたのだった。
……つまりは今この瞬間、世界のどこにもキリアはいない……ということになるわけだけど。これはつまりアレだな、私に対するお盆休み、というやつだな?
「いや、それはちゃうやろ」
「キミは……タマモクロス」(純粋な少女のような瞳で)
「なんでどこぞの、親指なめなめ男みたいな扱いやねん!」*5
なお、現在地はラットハウス。
こちらもお盆休みになるとのことで、店内清掃のお手伝いにやって来た次第だったり。……飲食店は色々と湧きやすいからね、仕方ないね。*6
実際問題、このなりきり郷ではバル○ンが使えない(主に非殺傷設定のせいで)ため、
……今のところは見たことないけど、もしかしたら彼らの中に『逆憑依』した人が混じっていることがあるかもしれないので、余計にやり辛いらしいというか。
まぁ、もし仮に彼らの中に『逆憑依』が居たのなら、人類は彼らとのコミュニケーションの手段を得ることにもなるので、今までのように突然家の中で彼らと対峙して、恐怖を震えることもなくなったりするのかも知れなかったりするのだけれど。
そもそも彼らのほとんどって、森の中で分解者やってるようなのだからね。*7
「一つの分解者として雇うことになるかも、みたいな話かい?」
「もし仮に話ができたなら、だけどね。……どっかの両さんがやってたこと、みたいな?」*8
彼ら自体は綺麗好きであるので、ウイルスを媒介しないように注意を払えば、あとはわりと共存できるかもしれない。*9
……見た目の不快さは残るので、やっぱり特定の場所から出てこないようにお願いする必要はあるかもしれないけれど……食べられないモノなんて無いと言われるほどの彼らの食性*10は、上手く活かせれば多大な福音をもたらすことになるかも……とかなんとか、よくわからない擁護?的なモノを考えつつ。
厨房の隅に仕掛けられた罠から、中身を出さずにそのまま外に転移させる……という、私がゆかりんくらいにしかできなさそうな対処を行っていく。
なお、一応その時に彼らに話し掛けたりしてみているけれど、今のところ残念ながら(?)『逆憑依』らしきモノには出会えていない。
「いやそれにしても、随分と大変そうだったみたいだねぇ」
「おおっと、ライネスも聞いてたの?」
そんな感じに作業をこなす中、ライネスがこちらに声を掛けてくる。内容は、先日のビースト云々について。……キャラの出身としては、獣の話は気になるものらしい。
なので、その辺りの話をしてあげようかな、と一瞬彼らから視線を逸らしたのだけれど。
「あ」
「あ、ってなに……んん?!」
ライネスが私の背後──さっきまで私が見ていた方を指差して、唖然とした声をあげ。
それに何事か、と振り返ろうとした私が首を動かすよりも先に、胸元に触れる何かの感触を感じ。
「………ど、どうも」
「……………痴漢でーす!!この人痴漢でーす!!!」
「ぬぉわあっ!?ちちちち違う違うこれは事故でですねぇ!!?……ふ、
なんぞ、と振り返った私と視線が合ったのは、さっきまでそこに居なかったはずの
その