なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……えーとつまり?これはアレだね、ゼロとゼロが交わる時、物語が始まる*1……みたいなやつ、ってことだね?」
「……いやまぁ、最近無効化能力者増えてるなー感は、確かにあるけれども」
とりあえず、いつまでも厨房で尋問してても埒が明かない……というのも確かなので、しょんぼりしている琥珀さんと上条君を連れてフロアに出た私達なのだけれど。
そこでこちらを出待ちしていたシャナとアスナ……ちゃん?に、思わず白目を剥く羽目になったりもしていたのでした。
ともあれ、問題の人物二人を席に座らせ、改めて向かい合った私達。……なのですが。
「……美味しい。もっと欲しい」
「あー、そういえばお昼がまだでしたね。マスター、麻婆カレー二つー」
「突然の注文もなに、気にすることはない」
……敢えて黄昏の姫御子としての名前で呼ばれていたことからもわかる通り、今この場に居る『アスナ』はいわゆる神楽坂明日菜本人とは、微妙にパーソナリティーが違うようで。*2
まるで無口系ヒロイン、みたいな表情でご飯を食べている彼女は、なんというかこちらのペースを乱して仕方がないのでした。いやまぁ、ペースを乱してくるのは、なにも彼女だけじゃあないんだけども。
……でもやっぱり、お饅頭を頬張ってパァッ、と顔を輝かせている『アスナ』は、普通の神楽坂明日菜とは別人過ぎて違和感しかない、としか言いようがない。*3……見た目もツインテじゃなくて、普通のストレートだし。
「話は窺いました、なりきり郷は滅亡します!」
「話がややこしくなるから帰ってー」
「おや手厳しい。ですがこちらも手ぶらでは帰れないのです!」
そんな中、さらに現れる闖入者。
それはこのなりきり郷随一の預言者(?)桃香さん。
そんな彼女は、またもやババーンって感じに扉を開けて、つかつかと店内に入ってきたのです。……流行ってるんですかね、その扉の開き方。
まぁともかく、あんまりこの場に居て欲しくない人物の登場に、少なからず顔を顰めることになってしまう私と。
目の前の相手が誰なのかわからず、困惑したようにこちらと彼女に視線を交互させる上条君。……と、やって来た麻婆カレーに目を輝かせるアスナちゃん。
そんなカオスな空間を見渡した桃香さんは、一つ深呼吸をしたのちに、再びその言葉を口にするのだった。
「では改めて警句をば。──つまり、なりきり郷は滅亡するんだよ!」
「な、なんだってー↓」
「わぁ低いテンション。滅亡とかなんとか言っても、もはやいつも通り過ぎてもはやツッコむ気力もない……みたいな感じなんでしょうか?」
「……よくわかんねーけど、これだけは言える。──不幸だぁーっ!!?」
「はい掴みはバッチリ、というわけで。改めて、今回の予言についてお話しさせて頂きますね?」
突然の滅亡宣言(通算N回目)に、店内の面々のほとんどがまたかよ、みたいな空気に包まれる中。
そんな空気なぞ知らぬとばかりに、桃香さんはマイペースに話を進め始めるのだった。……流石は推定ビーストⅠiだった人物、余りにも傍若無人である。
「実感はありませんけどね。そもそも『兆し』だった時の話ですし」
「今の桃香さんとして成立している時点で
「……あのー、お二方だけで話を進めるのは、やめて貰えないでせうか?」
「でた!上条さんの『せう』だ!」
「とりあえず入れておくと、台詞の上条さん度が上がるんですよね」*5
「いやなんだこの二人の一転攻勢……」
わいのわいのと騒ぎつつ、私達のテーブルにやって来る桃香さん。
そのまま着席して、ウッドロウさんに注文を始めてしまったわけだが……ふぅむ、つまりはお昼を食べていない……?
「……あー、もしかして今回の
「そうですね。……というか、私も予め
「ええっ?!」
「あー……」
そこから予想されるのは、彼女が私達を探して郷の中を駆けずり回ったという可能性。……彼女の
そうなると、ちょっと申し訳なさを感じるのも確かな話。なので、ちょっと遠慮がちに、彼女に子細を窺ってみたのだけれど……ああうん、心当たりがスッゴいある。
そんな私とは対照的に、驚きの表情を見せるゆかりん。……さもありなん、桃香さんの言葉は、ともすれば
「あ、ちょっと勘違いさせているようですので訂正を。……そもそもの話、全てのモノは
「……はい?」
「まぁ同時に、明日や明後日、一年や十年後の滅びを否定しているわけでもないのですけど」
「……?????」
けれど、実際にはそうではない。……いやまぁ、彼女の言う通り、全てのモノには必ず終わりがあるわけなので、それを否定するつもりもないわけなのだけれど。
……わかり辛いと思うので言い換えれば、
「はぁ……?」
「どこかの国が戦争を始めたり、はたまたどこかの国が核ミサイルを作ったり。……そういう、滅びの要因が増えた時に、終末時計はその針を進めるわけだけど。あれはあくまでも予測や予想の結果であって、それそのものが終末のラッパってわけではない……って話ね。仮にこの星が滅ぶ時、あの針を零にする人間なんて
「……あー、つまりはいつも通り、ってこと?」
「そこに関してはさっき言ってたでしょ。
ここまで聞けば、ゆかりんも流石に気付いたのか。
今回の内容が、あくまでも
「……そういえば、さっき貴方、『あー』って言ってなかった?」
「ぎくり。……いや睨まんで頂戴。別に報告してないことがある、ってわけじゃないから」
その後、さっきの私の発言を思い出した彼女が、こちらに詰め寄ってくる。……しまったいつもの『口は災いの元』!
とはいえ、別に隠し事をしていたわけでもない私は、あっさりとそれを肯定。その潔さに、一瞬彼女は訝しげな表情を見せていたけど……。
「……あー、もしかして?」
「はい今ゆかりんが思ったこと大正解。……そもそもの話、真っ当に
つい最近、私達が対面したトラブルを思い出し、まさか
その存在の顕現自体が、世界の崩壊を示唆するモノである大魔王──キリア。
そんな彼女が敬い、自身よりも尊きものであるとする『あの人』が──単なる神のような存在、なんてはずがない。
自発的に動かないからこそ、被害は基本発生しないけれど──誰かから呼ばれたのであれば、指先を動かすことくらいはするだろう。
……ただまぁ、文字通り『あの人』のそれは、スケールが違う。
「
「……なにその、どこぞのダイソンスフィアみたいなの」*9
「いやー、上から押し潰すんじゃなくて、下から盛り上がってくるって感じだけどね、実際は」
今まで現れなかった
それは恐らく、『あの人』に見つめられ、世界が変容したからなのだと。
私はそう、結論付けるのであった。