なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「貴方がこの度新しく加わった新人さん、ですね?私はアンリエッタ・ド・トリステイン。どうか気軽に、アルトリアとお呼びください」
「ん……、挨拶ありがとう。私はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。呼びにくいだろうから、アスナでいい」
……そんな感じの、世が世であれば……もとい作品が作品であれば、もっとお姫様していてもおかしくない両者の挨拶を横目にしつつ、歓迎会の準備をしている私達。
突然増えたメンバーに対し、アルトリアは最初目を白黒させて困惑していたが……すぐさま気を取り直して、さっきのように瀟洒な挨拶をしてみせたのだった。
流石はこの家に住まう居候の中でも、わりと古参に分類される方の人物。新人への対処はバッチリ、というわけである。
「……それは、褒めているつもりなのでしょうか?」
「別にアルトリアを貶してるつもりもないし、だったら褒めてるってことでいいんじゃないかなー?」
「消去法ではないですか!まったく貴方と来たら……」
私の発した言葉に対し、ぷんすか!と怒るアルトリア。
そんな彼女ににごめんねーと軽く謝罪を述べつつ、マシュの手伝いをしている私である。……すまんね、ちょっと浮き足立って*1て発言が適当でさ。
「……そういえば、なんだか楽しそうですねせんぱい?」
「んー?そだねぇ……久しぶりに普通の姿で、しかも思う存分好きに動けてるから、かなぁ?」
「あー、なるほど……」
そうして私が常にニコニコしていたため、マシュが小さく首を捻っていたが……こちらから理由を話せば、彼女は納得したように小さく頷いていたのだった。
……お察しの通り、現在この世界にキリアが居ないことにより、私はかなり久しぶりに
問題はまだまだ山積みだけれど、テンションが上向きになってしまうのは仕方のないこと、みたいな感じなのでしたとさ。
「……なるほど、また新しい子の歓迎会があったのね」
「そーそー。……で、これがその時作った料理。要するにマシュからのお裾分けってやつー」
「あらあら、それはどうも。……中身はおつまみ系*2が多い感じ、かしら?」
「まぁ、侑子と言えばお酒……ってイメージも強いから、ね?」
歓迎会のあった、その次の日。
これまた久しぶりに『Tri-qualia』へとログインを果たした私はといえば、物質変換装置を利用することでマシュの作った料理をお裾分けしに、侑子の家に出向いていたのだった。……祝い事はなるべく多くの人で、というやつである。
なお、メールとか電話とかで連絡自体は取り合っていたけれども、実際に顔を付き合わせるのは最早懐かしいレベルになるので、ちょっと心配していたのだが……侑子の方には、特にこれといった変化はなく。
ゆえに話をするのは、専ら私の方で起きた事件について。
前回の訪問からこれまでに起きたこと、それらの中から幾つか気になるようなものをピックアップして、彼女との話の肴にしている次第なのであった。
「……それにしても、
「あー、なんだかんだで既にⅣまで出会っちゃってる、ってことになるからねぇ……この分だと、最後までしっかり顕現してくる……ってことになるのかなぁ?」*3
その中で特に彼女が興味を示したのは、
始まりのⅠこそ、成立することなく負けを認めていたわけだけれど──それ以外のナンバリングの獣達に関しては、しっかりと姿を現してこちらに様々な損害を与えてきた、というのだからたまったものではない。
……いやまぁ、『ビーストⅢi』に分類される二人に関しては、他の獣達と比べてもなお特殊な面があったため、余計に心労を感じさせられることになっていたわけなのだけれども。
「ええと……ビーストⅢi/Rである『殺生院キアラ』の場合、原作のビーストⅢ/Rそのままの形──言うなれば本体の影・残滓とでも言うべきものが顕現した形だった……という点が特殊な感じよね。──他の擬獣達は、原作で現れたそれらとは別人であったのにも関わらず、彼女だけは
ビーストⅢiの
抱く人類愛が原作と同じ、という例ではビーストⅠなども該当するが、されどその場合の獣候補は『原罪のⅠ』とは別人である桃香さん……正確にはその成立前の【兆し】であったわけだし。
同じく『回帰』──彼女の場合のそれは『庇護』とでも呼ぶべきものであったビーストⅡiもまた、候補者はミクさんにあれこれと要素を詰め込んだもの……みたいな感じの存在であった。
それは続くビーストⅢi/LやビーストⅣに関しても同じ。
……彼女の『自己愛』に該当するモノが居なかったのだとしても、その特異性は思わず目についてしまうことだろう。
「それからビーストⅢi/Lである陽蜂の場合は──
「……そうだね。一応どうにかならないかって、色々と研究は続いているみたいだけど」
「その分だと、あんまり成果の方は芳しくない……ってところかしら?」
そして、ビーストⅢiの
他の獣達が起こした事件は、彼らの敗北と共に全て
厄災のあとに残るモノが──かようちゃんやイッスン君のような、後継とでも呼ぶべき者が残ることは確かにあるけれども、それとはまた別の話。
強制的に『逆憑依』を──【継ぎ接ぎ】を起こしたようなものなのだとしても、本来成立・定着しないはずの
「一般人への【継ぎ接ぎ】は、余程相性が良くなければそもそも発生せず、仮に発生してもそこまで強力なモノにはなり得ない……だったかしら?」
「琥珀さんの
琥珀さんが色々と凄いので忘れそうになるけど──本来であれば、
仮になにか影響を与えられたとしても、それは微かな影響が一時的に焼き付いているようなもの。
それが半永続的に効果を発揮するには、そもそもその
それのない──まったく繋がらない、性格的な類似点すらない二者間の【継ぎ接ぎ】は、例え一時的に効果を発揮しても、それっきり。
抑止かなにかに阻害でもされているかのように、影響は霞の如く消え果て影すら残さない……というのが、今までの常識であった。
そういう意味において、ビーストⅢi/Lが残したモノ、というのはとても大きい。
──それこそ、最近勢いを失っていた過激派達が、再び余計なことを考えるようになる程度には。
「だから、対象者は全て病棟に隔離……という形になっているのよね?」
「サンプルの一つも渡せないからねぇ。……向こうは小言を言ってるらしいけど、琥珀さんに突っぱねられちゃ手も出せないみたい」
そう言いながら、はぁとため息を吐く私と、そんな私を見て苦笑を浮かべる侑子。
ビースト達が起こす現象も、過激派達からしてみれば、宝の山のようにしか見えないようで。*6
……余計な手間を取らせないように、厳しく見ていく必要がある……なんてことを愚痴っていたどこかの
とはいえ最近は向こうも忙しいようで、互いに愚痴るタイミングもなく……結果として、侑子の前で管を巻く羽目になったわけなのだが。
……話を聞くところによれば侑子は、既にゆかりんからの愚痴りもとい相談も受けたあと、とのことで。
「まぁ、私は基本ここに居るだけだから。愚痴くらいなら何時でも言いに来なさいな」
「ゆ、侑子おかあちゃーん!」
「誰が母親よ、誰が」
友達同士の適当な会話で精神をリフレッシュしつつ、再び事件の話を見繕う私なのであった。
……あ、マシュからのお土産は、アグモンくんも美味しいと喜んでいた、とここに記しておきます。