なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ふむ。それで、まずは俺の元を訪ねてみた……と?」
「そうそう。流石に【顕象】相手に色々試すのはちょっと怖いけど、その点君相手ならまぁなんとかなるかなー、みたいな?」
「……貴様、俺が元のままの性格であったのなら、そのまま首を刎ね落としていたところだぞ?……まぁ、今の俺はそこまではせんし、する気もないがな」
「わーい!宿儺君太っ腹ー!」
「喧しい、大人しく座って待っていろ」
二人を連れて、まず始めにやって来たのは……知る人ぞ知る名店『
料理の提供スピード、その味。全てにおいてレベルの高いこの店は、世が世ならばミ◯ュラン*1で三ツ星とか貰っていてもおかしくないくらいの、とても美味しい料理を出す洋食屋である。
……まぁ皆さんお察しの通り、店主の見た目が見た目なので、そういうものとはトンと縁がないわけなのですが。
あと、『ねこや』の部分に該当する
ともあれ、彼の料理の腕がとても素晴らしいものである、ということは歴とした事実。
最近では
……今後の更なる飛躍に期待を込めて、今回は星四つを付けさせて頂く……といった感じだろうか?
因みに、この二人はよく『居る場所が逆じゃね?』みたいなことを言われたりしているのだが……それを言った人は、大体宿儺君に
「……いや、寧ろなんでそれで生きてるんだよアンタ」
「そう、これだよ上条君。これこそがギャグ時空の効果……というやつなのだよチミィ」
「騙されないでくださいね、上条さん。せんぱいのこれは、せんぱいが殊更におかしいというだけですのでっ」
「……あれれー?おかしいなー?何故か後輩からディスられているぞ私……?」
「その有り様で、何故マシュから擁護して貰えると思ったのだ貴様は……」
え?一体なにが陥没させられるのか、ですって?
……ふっふっふっ、首を引っ込めた亀みたいなことになっている私を見れば、それが一体なにを指すのかなんて、すぐにわかることでしょうよブラザー。
……え?ちゃんと反省しろ?キーアんなに言ってるかわかんなーい。
そんな冗談はともかく。
まぁ流石に?こんな明らかに胸にめり込むレベルで、頭蓋骨陥没させられるのは?そこまでやっても死にはしない……いやまぁ、正確にはそこら辺ややこしいのだけれど……ともかく、
ええいとにかく、宿儺君にここまでされるのは私くらいのもんだ、というわけで。
他の面々が同じ事をしても、精々『あ゛?』と睨み付けられるくらいで済むだろうとは思う。……え?あの顔で睨まれるのも、大概アレ?それはそう。
そんな感じにぐだぐだとしつつ、時間帯的にはまだ昼前なので、軽めの食事を頼んだ私達の前に提供されたのは。
シンプルなサンドイッチ──具材はいわゆるベーコンレタスと卵のマヨネーズ和え──が一組。それからブラックコーヒーであった。
「HEY宿儺、ミルクと砂糖プリーズ!」
「……阿呆か貴様は。そのまま飲め、というか俺を
「えー、いけずー。……むぅ、仕方ない。こうなったら
「は?自分で出
「おー、凄い。キーア、私にも私にも」
「へいへーい、お安いご用だぜアスナちゃん。上条君はミルクと砂糖、いる?」
「……い、いや。上条さんは、そのままのブラックコーヒーで構いませんのことよ?」
「いや、なにその変な口調?……一応言っておくけど、別に変なものとか入ってないわよ?」
なお、別にブラックコーヒーが苦手……というわけではないし、食事と一緒に飲むのなら、甘さのない普通のコーヒーの方が合うだろう……と思っている私だけれど。
今日は
……したのだけれど、宿儺君はこちらを一瞥したあと、そのまま何事も無かったかのように厨房に戻ってしまったのだった。
むぅ、サービスの悪い。……いやまぁ、そういうのはセルフサービス、ってことなのかもしれないけれど。
ともあれ戻ってしまったのは仕方ないので、自前で砂糖とミルクを用意して、ちょちょいと空間を開いて投入する私である。
その不思議な光景を見て、アスナちゃんも自分のカップにも入れて欲しい、と目を輝かせていたので、そのままアスナちゃんのカップにもミルクと砂糖を入れてあげていたのだけれど……なんだか上条君の様子がおかしい。
なんというか、『マジで?』と言いたげな顔をしているような?
……よもや、このミルクと砂糖がいわゆる『エリート塩』*2的なモノだと勘違いしているのではなかろうな?……みたいな思いを込めて見つめてみると。
「
「いや図星かい」
こちらの使っている能力──『虚無』が、あらゆる万物に含まれ、それらを構成している微細存在であるという説明を予め聞いていたからなのか、それを使って砂糖とミルクを
……いや、そういうのも別にできなくはないけども。
リアルでやるのと違って、匂いとか菌とか一切付着させずに作ったりできるから、健康被害とかも無いように配慮はできるけども。
それ、心理的に嫌じゃん。もしくは薄い本じゃん。
流石にやらんわっていうか、なにが悲しくて自分の
……みたいなことを言えば、彼は『それもそうか』と納得していたのであった。なんか知らんけど、いつの間にか私の扱いが雑になってなぁい?……え、自業自得?それはそう。
「……せ、せんぱいの……み、み……!?」
「マシュ、流石に止めよう。それはよくない、とてもよくない」
なお、それらのやり取りを聞いていたマシュが、一時的に機能不全を起こしてしまったため、後頭部をべしんべしんと叩いて正気に戻す必要が出てきてしまったりしたが……まぁ、戻ったので問題はないだろう、たぶん。
それはそれとして、あとで上条君にはお説教である。『なんで!?不幸だ?!』とか彼は宣っていたけれど……
甘んじて受けやがれなのです、がじがじ。*3
「……話が随分と脱線していたようだが、もういいのか?」
「ああうん、なんとなーくは確かめられたからもういいかなーって」
「……え、なにかやってたのか今?俺達、結局サンドイッチ食ってコーヒー飲んでただけだけど」
遅めの朝食を終えた私達。
そうして暫くは談笑を交わしていたのだけれど……ここで確かめられることは大体確かめたので、そろそろお暇しようとしたところ、上条君から疑問の声があがることとなった。
なるほど確かに、私達がこの店に来てしたことと言えば、朝食を食べて話をすることだけ。なにかを確認する素振りも、それを誘導する気配すらも無かったように思える。
……が、それはここが
「ここは言うなれば、俺の領域。……客共に課すことなぞ、精々
「……あ、あー。詳しくは知らねぇけど……もしかして、ここってわりと危ないところだったりしたんでせうか……?」
「くくっ、
「……最初に言ってくれよキーア……」
呪術師達の言うところの、領域。それが、この店には仕掛けられている。
まぁ、効能としては『店の中での荒事禁止』とか、そんな感じの些細なモノではあるだろうが……それでも、異能に準じるモノが予め設置されている、ということに違いはない。
これが普通の上条君なら──入っただけで領域を破壊する、なんてこともあり得るかもしれない。
どっこい、今ここにいる彼はと言えば、こうしてこちらから知らせるまで、この店になにかがあるということには気が付いていなかった。
それはつまり、明確に異常であるモノも、ここにいる上条君は
本来勝手に打ち壊すはずのモノでも、彼の場合は無闇矢鱈に壊したりしない、ということである。
まぁ、随分と利便性が上がったモノだなぁ、と思わなくもないが……その判定基準がどこにあるのか、というのを確かめた方がいい、というのも確かな話だろう。
「……上条さんには、なにを言っているのかわかりませんのことよ?」
「問答無用じゃない・害意がなければ無効化しない……ってことは、ともすれば本来の上条君は受けないようなモノを受けてしまう可能性がある、ってこと。それを確かめないと危なっかしいってことよ」
こちらの言葉に首を捻る上条君に、一つ苦笑を返しつつ、そのまま席を立って店の外へと向かう私達。
次に行くべき場所は決まったなと内心で呟きながら、宿儺君に手を振れば。
「お粗末様。また顔を見せるがいい」
と言って、彼はニヤリと笑みを見せるのだった。