なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ふむふむ、上条さんの右手の無効化範囲が、本来のそれとは微妙に食い違っている……ということは、前回調べた時にある程度把握してはいましたが。それだけではなく、彼に対して通用する異能の種類や条件にも、ある程度の差がある……と?」
「恐らくは。だからちゃんと調べとかないと、危なっかしくて外に出せない……って感じの話になってるんだよね」
こちらの話す内容を聞いて、ふむふむと頷いている琥珀さん。
話題の中心は、先述した通り上条君。
彼の持つ『幻想殺し』が、文字通りの『幻想殺し』ではなくなっているかも知れない……というのはまぁ、前回初対面の時にしていた簡易検査で、ある程度確認はしていたみたいだけれど。
今回はそれとはちょっと違う部分、彼本人を対象とした異能の
……まぁ要するに、ここに来る前にあれこれ話してたやつですね、はい。
「……そいつは別にいいんだけどさ。なーんで上条さんは、ぐるぐる巻きにふん縛られてるんでせうか……?」
「おっと、迂闊に触れちゃダメだぜい上やん。そいつは上やんにいい影響を与えるものってわけじゃないから、もしかしたら触るといつも通りに壊れちまうかもしれないからにゃー」
「いや、なんで土御門みたいな喋り方……?」*1
なお、当の上条君は現在ぐるぐる巻き状態。
……とは言っても、別に意地悪で縛り付けているというわけではなく、彼に対して発動した異能が
彼の『幻想殺し』が弱体化している……ということは、つまり場合によっては異能を中途半端に
そうして変化してしまった異能を、迂闊にも外に放出しないようにするための措置なので、罷り間違って壊されてしまうと、また彼を縛り直すことになってしまうのです。
……流石に、何度も青少年を縛り付けるような趣味はお持ちではないので、終わるまでじっとしていて欲しいキーアさんなのでありました。……口調が土御門君みたいになってる理由?それは単なる気分。
まぁそんな感じで、半ばぐだぐだとした空気の中で『幻想殺し性能試験』が始まったわけなのですが。
「とりあえず、現状一番ヤバイと思われる『
「土御門だった理由それかよ!?*3っていうか初手も初手から上条さんは、汗やら動悸やら震えやらが止まりませんのことよー!?!?」
「くすくす、トーマ面白い」
「別にコントとかギャグとかじゃないんですけどぉ!?」
最初に試すことにしたのは、回復系技能。
先述した通り、自身にプラスになるようなものは、須らく受け入れるようになっている可能性がある、今の上条君。
そんな彼にとって今一番脅威となるのは、恐らく
回復系技能と一口に言っても、その原理には幾つか種類がある。
外からエネルギーを注ぎ込むタイプは、言うなれば失われたモノを補うもの。水分補給とか塩分補給とかのようなものと、考え方としては近しいと言えなくもない。
人が生きるだけで失うものや、敵の攻撃で失ったもの。
それらの──いわゆる
自然治癒力を高めるタイプは、いわば早送りのようなもの。
被術者本人の身体機能を活性化させて治す、いわば
扱いとしては一種の強化になるので、『幻想殺し』的には普通に無効化してしまう部類のものである、とも言えるだろう。
傷を受ける前に戻すタイプは、いわば早戻しのようなもの。
時間や肉体などに干渉し、
とある能力の場合だと、
──『幻想殺し』的には、真っ先に無効化してしまうタイプのものだと言えるだろう。
これらの回復系技能を素通しする時に、一番問題がありそうに見えるのは『早戻し』タイプだが……実際に一番問題となるのは恐らく『早送り』、もしくは『補給』タイプの方だろう。
両者ともに、能力の方向性としては常にプラス方向……
……ゆえに、異能を全て遮断するわけではない、という状況下においては、それらのプラスが
過ぎたるはなお及ばざるが如し、薬も過ぎれば毒となる……個人の治癒力を強化するタイプの場合、その原理が『個人の細胞の分裂回数を消費している』、ということがある。*5
本人の自然治癒力を高めているのだから、ある意味では当たり前のことなのだが……これは言い換えれば
……このタイプの回復系技能の過剰使用が、ろくなことにならないというのはなんとなく理解できるだろう。
ではもう一つの方である補給タイプは、というと……許容量以上は
それどころか、場合によっては過剰に注ぎ込まれたエネルギーにより、暴走……なんてパターンも起こりうるだろう。
こちらはこちらで、注ぎ込まれたエネルギーを自身のモノとして掌握する手間もあり、弱っている時には逆効果になることもある。*6
……とまぁ、できれば私ではなく、どこぞの回復術師の人に講義やらなにやらお願いしたいような話だったわけなんだけど……生憎と彼はいないので、ここらで適当に流すことにするキーアさんであった。
……え、聞いてる人?上条君がもがもが言いながら聞いてましたね。
「で、検証結果だけど……一応、毒になるタイミングで無効化はしてるみたいだね」
「ですねぇ」
で、とりあえずこっちで用意できる回復系技能、それからブラックジャック先生に協力をお願いして、滋養強壮剤とかビタミン剤とかを処方したりして貰ったわけなのだけれど。
そうして検証した結果、異能による回復は
なので、細胞の過剰回復で急速老化とか、はたまたエネルギーの過剰供給でのダウンとかは、そうなる前にストップが掛かるということになるらしい。……便利になったものだね、ホント。
なお、普通の医薬品に関しては、元の上条君と同じように素通し……というわけではなく。
こちらもまた、毒になるレベルまで過剰供給されると、薬効を一時的に無効化するのが確認できたのだった。……要するに、
「……ふむ、これは私の投薬が異能扱いされているのか、はたまた本当に毒になった薬を無効にしているのか。……一見しただけでは判別しきれないな」
「すいませーん、中身がビタミン剤なのはわかってるんですが、注射持ったままぶつぶつ言うのは止めて貰えないでせうか……?」
「む、これは失礼」
何故か、科学にまで『幻想殺し』が作用している──。
奇妙なその実験結果に、思わず興味深いとばかりに声をあげるブラックジャック先生だが……彼の顔を至近距離で眺めている上条君には、その手にある注射器の方が危険物に見えたようで。
思わず謝罪を述べながら下がる彼の姿に思わず苦笑しつつ、はてこれはどうしたものかと頭を掻く私なのであった。