なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ふーむ、あり得る話だとは思っていたけど、やっぱりかー」
小さくため息を吐きつつ、実験結果を改めて確認しなおす私。
手元の端末に記された数々の記録達は、私の予測がほぼ真実だと述べているわけだが……だとすると、話は思ったよりもややこしいことになっている、と言うことになるのかもしれない。
そんな風に唸る私の様子に首を傾げつつ、琥珀さんが声を掛けてくる。
「やっぱり……ということは、キーアさんはこの結果を予測されていたと?」
「まぁうん、そもそも彼がここに来れた理由を思えば、あり得ない話じゃないなーとは思っていたというか」
んんーと唸る私と、その横であらーと苦笑する琥珀さん。
雰囲気こそのほほんとしているが、内容としては物騒極まりない。
世界の真実を密やかに話すかのようなそれは、されど本人達にとっては些末ごとのようで……。
「黒幕ごっことかしてなくていいから。上条さんをいい加減解放して頂きたいのですがねー!?」
「おおっと、それは出来ない相談だ。何故なら君には話を聞く義務がある」
「だったらさっさと話せー!」
「なるほど、離せと話せのダブルミーニング*1。トーマは語彙力がすごい」
「……いや、別にオヤジギャグとかじゃないからね!?」
なお、上条君は変わらず縛られっぱなしなので、いい加減に解放してくれと騒いでいたのだった。もー、仕方ないなー当麻君はー。
「はてさて、上条君も解放したし、改めて話をしようかと思うんだけど……」
縛られていた上条君も、データを取り終わった今となっては用済み……って言うと語弊を招きそうだが、ともあれ縛っている必要が無くなったのも事実なので、アスナちゃんに頼んで解放して貰い(なおアスナちゃんに頼んだのは、単にやること無くて暇そうにしていたから)。
そうして自由になった彼を交え、改めてデータの検分というか、解説というかに移ったわけなのだけれど。
「──上条君達が
「ん?……あー、俺の不運は結局直っていない、みたいなやつだっけ?」
「……間違ってはいないけど、思い出し方ぁ」
改めて話題に出すのは『あの人』のこと。
上条君にとっては、自身の右腕にちょっと細工をした人、みたいなイメージのようだが……私にとっては違う。
彼女もまた、
「──ああなるほど、キリアさんが
「……?いや、勝手に納得されても困るんだが。一体どう言うことだってばよ?」
「なんでナルト……?」
この時点でなんとなくこちらの言いたいことを察した琥珀さんは、納得したように小さく頷いていたのだけれど。
対する上条君はまだよくわかっていないようで、何故かナルト君みたいな口調で首を傾げていた。……本人が居るって言ったら驚くのかな?……なんて、今の話とは関係の無いことを思わずつらつらと考えつつ、改めて口を開き直す私である。
「私にしろキリアにしろ、その能力の原理は小さいもの──科学における未知、観測できない世界の中にこそある。……それこそ、科学者がそこに
科学者はその優れた知識ゆえに、却って神を信奉しやすい……みたいな話をしたと思う。
どれほど知恵を得て、どれほどの計算をこなそうと、どうしても見えてこない不明領域。
なまじっか知恵があるからこそ、届かない場所があるということに納得の行く答えを求め──結果として、そこに神を見てしまうのだ、という話。
普通それは、計算しきれないほどに遠大にして広大なるモノに対して抱くような感想なのだが──同じく未知である極小の世界にも、
それこそ、スクナヒコナの話と似たようなもの。
いと小さき場所にある、知恵の宝庫。それこそが極小の世界に見いだされるべき神のあり方であり、全てを形作る微細存在の神格化としては、真っ当にしてベストなモノだとも言えるだろう。
なのでまぁ、
彼自身が神なので変な感じになっているが、言ってしまえば自身よりも立場が上の相手に、力を借りに来たというだけのことなのだから。
まぁ、そうなると
……話がずれたので元に戻すと。
私やキリアは極小世界を擬似的に異能として扱う者であるが、同時にそれは
あり方としては『とある』シリーズの超能力に近似している、と解釈することもできるわけだが、されども両者には決定的に違うと言える点が存在する。それは、
「私達の
上条君の世界の超能力とは、量子力学に端を発するモノであるのだという。
本来であればまず発生しないような──確率が一パーセントを切るような事象を、人間が観測することで手繰り寄せる。
つまりは波動関数の収縮だが、それを人為的に引き起こすがゆえにそれらは異能……すなわちおかしな現象として扱われている。
だからこそ『幻想殺し』はそれらを殺すし、許しはしないわけなのだが……そういう観点から私達の虚無を見る時、『幻想殺し』が私達を殺せない理由というのも見えてくる。
私達の言う『虚無』とは、すなわち『ありえない』を潰すもの。
本来であれば数値として出てくるはずのない『確率百パーセント』を、その数の力で押し通すものである。
言うなれば究極の力押し・物理の権化であるため、幻想でもなんでもないのだ。
……まぁ、観測できないミクロの世界を存在の論拠に置いているため、そっち方面から無効にされると痛いのだが。
普通キリアは顕現しない、というのも
ともあれ、これらの話は本題ではない。
私達が
何度か語られている『あの人』とは、キリアよりも更に小さい相手──いわゆる
「分子に対する原子みたいなもの。私達よりも小さいということは、彼女もまた科学の延長線上にあるものだってこと。……要するに、科学にまで無効化が発動している今の『幻想殺し』とは、すなわち彼女の代行者であることを示す、全く別の存在だったんだよ!」
「……はい?」
今、彼の右手に付いている『それ』は、『幻想殺し』でもなんでもないという事実なのであった。
「……いや、いやいやいや。ちょっと論理が飛躍しすぎなのではありませんのこと!?」
こちらの出した結論に、思わず困惑している上条君。
けれど、そう考えた方が幾つかの疑問に対して、納得の行く答えが出てくるのである。
「アスナちゃんはまぁ、無効化区分が魔法に限られているから、まだ言い訳はつく。……けど上条君の場合、『幻想殺し』が正常に働いているのなら、まず『逆憑依』の時点で弾かれるはず。だって『逆憑依』って現象、どう考えても
辛うじて、洗脳などは一応効いていたことからして、脳の中身をコピーする……くらいはできるかも知れないが、その場合は右手を再現することは不可能だろう。
だが、ここにいる上条君は事実として、『幻想殺し』
「
「なるほどー。キリアさんやキーアさんでは無理でも、それより更に能力の深度が増している相手であれば、それも可能になるという塩梅ですね~」
更に言うと、私達の『虚無』では無理でも、『あの人』の
なんにでも含まれている、という言葉に嘘偽りはないのだから、できない方が問題である。
ついでに、彼女は明確に
つまり、今ここにいる上条君は──精神などは確かに原作の彼を『逆憑依』したものだが、『幻想殺し』のみが『あの人』からの贈り物にすげ変わっているのである。
あとはまぁ、簡単な話。『幻想殺し』……だと本家本元と混ざるので、敢えて名前を変えるとすれば……『
まぁともかく、その『幻想騙し』が『あの人』製である以上、あれこれパラメーターを弄るのは容易も容易、結果としてかなり都合のいい無効化能力者と化してしまっているのであった。
「だからまぁ、もしかしたら『あの人』を敬い奉れば、上条君の不運も解消されるかも?だって今の君の
「……話はよくわからなかったけど、そっちは重要だ!」
なお、最終的な結論はこうなった。……頑張れ上条君。
口ではこう言ったけど、実際に祈りが届くかはわしにもわからんがな!