なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さぁ、以前の報酬を徴収しに参りましたわよ!」
「……あー、
「そんな取り決め、私小耳にすら挟んだことがございませんけども?」
「つ、つい先日取り決めとして決定したばかりでして……」
「適当なことを仰るのはお止めなさいな!さぁ
突然ババーン、と現れた闖入者──黒子ちゃんの姿に、思わず咥えていた煎餅を取り落としそうになる私。
慌てたマシュがキャッチしてくれたお陰で、そっちの方はどうにかなったけど……もう一方の問題に関しては(当たり前だけど)対処して貰えず、内心バックバクな私なのであった。
……いやまぁ、こっちはマシュには対処しようのない話だから、仕方ないと言えば仕方ないんだけども。
ふふん、と笑う黒子ちゃんは威風堂々としていて、語る内容に目を瞑れば、まさに天下無敵の美少女といった様相。
作中での活躍の仕方的に、格好いい系もやれることはあるだけの、まさにパーフェクトソルジャー!……テンパってるだろうって?うん(即答)。
いやねぇ、そりゃもう寝耳に水ってなもんで。
事前のアポもなく・電話もなく突然やって来るとか、これっぽっちも一切全然思ってなかったというか。慌てふためくのも宜なるかな、というやつなのです。
……とはいえ、こうなってしまったのならば仕方ない。私も腹を括り、彼女の願いを叶えてやらねば!
「そうそう、隠し立てなんてしても、なんにもいいことなんてありませんのよ?」
「……ええと、話がよく見えないのですが……、黒子さんは何故、突然に
「それは勿論、以前からの約束を果たしに来た……というのが大部分ですの」
「約束……?」
なんて風にこちらが気を高め……もとい、気を新たにしている最中、微妙に部外者になってしまっているマシュが、現状確認のために黒子ちゃんに声を掛けていた。
基本的には善人側に区分される二人、特にいがみ合うこともなく普通に会話をしているわけなのだけれど……。
「……ふむ。風紀委員なマシュか。……ありだな」
「……風紀委員は風紀を守るものですわよ?」
「君がそれを言うの?」*2
まぁともかく、マシュはなにやらせても似合うなぁ……などという現実逃避を投げ付けつつ、改めて黒子ちゃんの『お願い』を叶えるため始動する私なのであった。
「ふ、風紀委員……!?ごごごご、ご禁制です!」
(……恐らくは薄い本みたいなことを考えていらっしゃいますわね、この人)
なお、当のマシュは頬に手を当て首を左右に振りながらいやんいやんとしていたので、そのまま放置である。……釣った魚に餌をやれ?*4なんのことやら。
「それで?キーアさん、御姉様はどちらに?」
「まぁまぁ。
「お、御姉様が私を迎えるために準備を……っ!?つ、ついに長年の黒子の思いが実を結びましたのね!こうしてはいられませんの、今すぐ愛の誓いを……っ!」
「人の話を聞けですの」
「
部屋の外に出た私は、直ぐ様黒子ちゃんに詰め寄られていたわけなのだが……何事にも順序というものがある、と諭すと彼女は何故か興奮レベルがマックスと化して、暴走機関車に進化したのだった。どんだけー。*5
ともあれ、そのままだとめんどくさ……周囲の迷惑になるので、後頭部に斜めからチョップを食らわせ、正気に戻しておく。
古典的なギャグのように星が飛んでいった*6のを眺めつつ、恨みがましい視線をこちらに向けてくる黒子ちゃんに、改めて淑女のなんたるかをくどくど言い連ねていく私なのであった。
「いいですか黒子さん。愛を語るも愛に狂うも、それは貴方の勝手ですが。その愛が周囲に迷惑を掛けるものなのであれば、それは愛ではなくただの執着です。──己の愛を、己で貶めるのはお止めなさい」
「な、なんでいきなりキリアさんモードなんですの……?」
「こちらの方が、ちゃんと話を聞こうという気になるでしょう?……それから、露骨に話を逸らすのは止めなさい。更に説法が必要ですか?」
「わ、わわわかりました!大人しくしていますから、このような公衆の面前での御説教は勘弁してくださいまし!」
「ええ、わかれば宜しいのです。わかれば」
なお、そうして説教する時は
……まぁ、あくまでも雰囲気だけであって、本当に姿が変わっているわけではないけども。
ともあれ、こうして黒子ちゃんが落ち着いたので、改めて暇潰しの時間である。
「……まぁ、乙女の仕度にはとかく時間が掛かるもの。それが私のことを思ってのモノであるのならば、幾らでも待つ気が溢れてくるというものですわね」
「はっはっはっ。……まぁそんなわけだから、あれだったらこっちの案内とかするけど、どこか行きたいところとかある?」
「ふむ……」
そういうわけなので、黒子ちゃんにどこか行きたいところ・見たいところはないかと尋ねてみたわけなのだけれど。
彼女はそのまま腕組みをして、むむっと唸り始めてしまう。
……向こうに所属するまでの彼女の足跡、というものを私は知らないが。それでも、向こうで生まれ育ったとか、そんなレベルの人物ではないことは確かである。
なので、未知の施設ならば多少興味が沸くような場所があってもおかしくないだろう、と思っての言葉だったのだが……これはあれかな、遠慮している……?
「ええまぁ、はい。……今でこそ、両組織は友好な関係を築いていらっしゃるようですが。それでも私が、ここの人々から見て外様の存在、ということに違いはないでしょう。……興味がないと言えば嘘になりますが、機密に触れるようなところを触るのは流石に気が咎めるというかですね?」
「なるほど。かまへんかまへん」
「軽っ」
話を聞けば案の定、彼女は遠慮をしていたのだった。
まぁ、元々特定の人物が絡まなければ、普通に『正義の人』って感じの人物なのが黒子ちゃんである。
四角四面とまでは言わないが、余計なトラブルを引き起こしそうなモノには触れない……くらいの良識はあるわけで。……いやまぁ、それが非道な実験とかが絡むようなモノであれば、持ち前の正義感から首を突っ込んでくることはあるだろうけども。
まぁ、うちに知られて困るようなものなんて、そんなに存在しないので問題はないのだが。
……というようなことを軽ーく告げれば、彼女は驚いたように目を
「……なるほど?それで、このケーキ屋に入ってきたと」
「私としては、向こうの人間である貴方が何故、こちらで堂々とケーキを食べているのか……ということの方が気になるのですけど?」
それじゃあまず、人々の暮らしから……。
みたいな感じで、美味しいケーキ屋を紹介して欲しいと頼まれた私は、近くのケーキ屋に足を運んでいたわけなのだけれど。
適当にケーキを選んできた私の前では、呆れたような視線を向ける黒子ちゃんの対面の席で、色々なケーキに舌鼓を打つミラちゃんの姿があったのだった。
ケーキを口に運ぶ彼女は、とても幸せそうに笑顔を浮かべていて。……周囲の人々は思わずほっこりしているのであった。
その結果、客足が多くなっているのはいいのか悪いのか。……別に売り上げを意識しているわけではないだろうし、その辺りは店の経営方針的なものというやつか。
なんてことをぼやきつつ、選んできたケーキを黒子ちゃんの手前のテーブルに並べていく私である。
「とりあえず、どれが好きかとか知らないから、適当に選んできたけど……食べられないやつとかはない?」
「いいえ、特には。……ケーキ相手であれば、好き嫌いなぞ以て
の他ですわね。そういうキーアさんは、食べられないモノなどは?」
「ケーキに関しては特にないかなー。基本的に甘いもの大好きだし」
などと適当な会話を並べ立てつつ、持ってきたケーキを一つ取る。
……甘いものであれば、特に好き嫌いはない私だが。好きにケーキを選べと言われれば、必ず選ぶものは一つ存在している。
「むぅ、チーズケーキか。わしも食べたいのぅ」
「……いや、自分で取ってきなさいよ。なんでわざわざ私が食べてるのを欲しそうにしてるのよ」
「人が食べているものは美味しそうにみえる、というやつじゃな」
「やかましい、一口たりとてやらんぞ私は」
「ぬぅ、ケチ臭いのぅお主……」
しぶしぶ、と言った様子で席を立つミラちゃんを威嚇しつつ、改めてチーズケーキを楽しむ私である。
……いやね、フルーツケーキとかショートケーキとか、美味しいケーキは幾らでも存在するわけだけれど。ことチーズケーキに関しては、私の好物の一つなわけでして。
ムースもいいし、スフレも美味しい。レアやベイクドも最高。
そんな感じでチーズケーキを大量入荷した私は、黒子ちゃんには若干引かれることとなったのだった。……なしてや!
「……いえ、一品二品ならいざ知らず、流石にその量は胸焼けがすると言いましょうか……」
「美味しいものは別腹なんだよ!」
みんなでわーぎゃー言いながら、束の間のケーキタイムを楽しむ私達なのでしたとさ。