なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
わちゃわちゃと土産物屋を見て回ったあと、旅館に戻ってきた私達。
ここから歩いて浜辺まで行けるようなので、各々着替えて集合、という形になるようだ。
「まさかこの歳になって、ラップタオル*1を使うことになるとは……」
「ジムとかだと、割りと大人でも使ってたりするみたいよ?」
「なんだと?!……あ、でもそりゃそうか。更衣室って言っても、一人で着替えられることなんてほとんど無いもんね」
「学生時代なら、それでも良いのかも知れませんが……」
「大人になるとちょっと、って事か」
現性別が女性組が、ラップタオルを使って室内で着替えをしている。
……いや、男性組も(内面性別とか色々な事情から)多分ラップタオルを使ってるとは思うけど。
でもなんと言うか、小学生時代でも使わなかった*2ものを今こうして使っているのは、なんかちょっと不思議にも思えたり。
まぁ、エチケット的には男女関係なく着替えは隠すべき、なのだろう。
「だから
「むぅ、さっきからそなたはなんなのだ!余の玉体は正に至宝!故に何も恥じることなど無いのだから、どういう着替え方をしても構わないのではないのかっ!?」
「んなわけあるかっ、恥じらいを持てぃ!」
「ぬわっ、な、何をするだァーッ!」*3
「いや、なんで田舎貴族みたいな叫びなのよ……」
なのでスパーンッと脱いで、スパーッと着ようとしているネロちゃまには、
別に興奮とかしないけど!
それでもそういうのダメって最初に言ったでしょうが!
うだうだとネロちゃまが文句を垂れているが、そんなものは考慮に値しない。
今日の私は風紀委員!すなわち、
「禁制禁制!御禁制ですよ!」*4
「なんかアンタのそれ、凄い綺麗なフォームでアンダースロー決めそうな台詞ね」
「インドラになった覚えはないかな!さぁさぁみんなもさっさと着替える着替える!」
「ホントにちょっと仕切り屋さんなのね……」
そうして他の女性陣を急かしつつ、自分もパッと着替えるのでしたとさ。
「地上最高の水着を見たいか────ッ!!!」*5
赤き皇帝の言葉に、渚に集った観衆達が歓声をあげる。
突如現れた彼女の言葉は、不思議と民衆に響き渡り、その熱量を天井知らずに上げていく。
そう、民は今歓喜に湧いているのだ、今この時この瞬間に立ち会えたという奇跡に。
そうして返ってきた聴衆の昂ぶる声に、赤き皇帝は満面の笑みと、眦に微かな涙を浮かべながら答える。
「余もじゃ、余もじゃみんな!!」
「
彼女の宣言とともに、砂浜への入り口から人影達が徐々に進み行ってくる。
そう、これから始まるのは、浜の視線を一人でも集めきってしまう者達の、
「鬼殺しは既に呑んでいた!!更なる銘酒を求めこの幼女が帰ってきた!!!なりきり郷の管理者、八雲紫だァ────!!!」
「神便鬼毒酒*6もいつか呑んでみたいわねぇ」
初陣を切るのは金の髪の眩しい少女。
しかし驚くなかれ、少女は見た目通りの少女に非ず。
ゆえに大人の女性が着るような、プランジング*7仕様の薄紫の水着さえ、どこか優雅に着こなしてしまうのだ。……言ってる内容に関しては気にしないように。
「水着にマッチョ?そんなものは俺が既に完成している!!デュエルキング、ジャック・アトラスだァ────!!!」
「デュエルをするのであれば、肉体にも気を掛けることだ」
ついで現れるのは、筋骨隆々の上半身と、それに見合う引き締まった下半身を晒す美丈夫。
真紅のブーメランパンツというある種衝撃スタイルだが、不思議と彼によく似合っていた。
「謎の紐は浜辺でも健在!?魅惑のトランジスタ・グラマー、竈の神ヘスティア様だァッ!!!」
「謎の紐って言うなって言ってるだろぉ!!?」
身長は低いがメリハリのあるボディをしている少女は、普段の服装をワンピース型の水着にしたようなモノを着ている。
噂の紐も変わらずそこにある辺り、彼女のアイデンティティの一つでもあったりするのだろうか?
「お前は水着なのかッ!?いやよく見ろ、ボードも構えて準備万端だッ!!電気タイプポケモンのピカチュウッ!!!」
「ぴっか、ぴかちゅー」*8
頭にグラサンを掛けた黄色く可愛らしいネズミはボードを片手に黄昏れている。
……いや、これは波を見極めているのだ、コイツできる……!!
「まな板ッ!?てめぇはまな板の凄さをなんにもわかってねぇッ!!*9歌もできるボイスロイド、結月ゆかりだ!!!」
「えっと、これは貶されている?それとも褒められているのでしょうか……?」
次の女性は飾り気のない白いワンピースだったが、背中側が大きく開いているなどしている。*10
隠れた部分に大胆な本性を隠したりしているのだろうか?
「体は子供でも中身は大人ッ!!迷宮なしの名探偵、令和のシャーロック・ホームズ、江戸川コナンッ!!!」
「バーロー、俺にはそこまでのセンスはねーよ」
「傍らの愛しき者に何を思う?空手部期待のエース、毛利蘭が後を追うように姿を見せたァッ!!!」
「ちょっ、ネロさん違いますからっ!!そういうんじゃないんですって!!」
お次は一緒に現れた少年と女性の二人組。
少年は普通のトランクスタイプ、女性は普通のトライアングル・ビキニ。*11
どちらも色は黒で、そこまで気取った感じではないのが、逆に彼等の空気によく似合っていた。
「ホントは海よりデュエルがしたいッ!!だがそれはKAN-SENの名に泥を塗る!故に目指すはどちらも天辺!!軽空母ハーミーズッ!!!」
「今回は雄々しくも美しく輝く二色の眼*12をモチーフにしてみた。すなわち──お楽しみは、これからだ!!」
お次の少女はツイスト・バンドゥ・ビキニ*13を華麗に着こなしている。
その台詞にある二色の通り、ブラ部分は右が赤、左が緑色になっていた。
「一航戦の誇りに掛けて、戦いであるならばなんであれ負けられない!!正規空母赤城が大胆なハイレグ*14水着で現れた────ッ!!!」
「ちょ、ちょっと恥ずかしい、ですね……」
そんな彼女と一緒に現れたのは、赤いハイレグ水着を着た大和撫子然とした女性。
清楚な空気と大胆な服装のギャップが、その魅力を大きく引き出しているようだ。
「浮き輪が付いてちょっとうきうきアップ!!鎧にはサビ防止用の処理をしたが果たして大丈夫なのかッ!?鎧の錬金術師、アルフォンス・エルリックッ!!!」
「流石に泳ぐのは無理だから、しんちゃんと砂のお城を作る予定だよー」
「この幼稚園児、只者ではないッ!!嵐を呼ぶ幼児、野原しんのすけの登場だ!!!」
「ほっほーい。ネロちゃんも楽しんでるぅ?」
「うむ、余はとても楽しい!!」
次いで現れたのは、大きな浮き輪を抱えた鎧と、その足元を走り回る幼児。
……なんだこれ?と思っていたら、彼等はそのまま近くの砂を掻き出して、何かを建造し始めてしまった。
「ふんどしを渡されたが流石に拒否した!!ちょっと見たかったぞ坂田銀時ッ!!」
「いや無理だろーがどう考えてもっ!!流石の俺も空気くらい読むわっ!!!」
「むぅ、余は見たかったぞ、そんな逃げの一手の海パンよりよっぽど、な!!」
「ドヤ顔で何言ってんのこの女ァァァァッ!!?」
「余は余!!……だからなっ!!」
「わけわかんねーんですけどォ!!?」
その次は銀髪の男性。
……最初はふんどしを渡されたらしいが、流石に現代でふんどしはちょっと……みたいな感じになったようで、今の水着は普通にゆったりとした大きさの海パンだった。
「ここに来て正統派ッ!!本家の二種とも違う白いビキニを引っ提げてマシュ・キリエライトが来てくれた───!!!」
「が、がんばりましたっ」
次の少女は、パレオと白いビキニのオーソドックススタイル。
そもそものスタイルが良いのも相まって、とても良く似合っている。
「俺は海に入る気はない、だが病人くらいは見てやる!ビーチパラソルの影に間黒男が待っているッ!!!」
「水分補給は俺かサンジに言え」
「その隣で早速冷たいものやら甘いものやら用意しているのは、こっちも今の所泳ぐ気のないサンジだッ!!!」
「あいよー、焼きそばとかカレーもあるんでよろしく」
その次の二人は水着ではなく、スーツから上着を取ったような格好でパラソルの下に陣取っていた。
最近は日射が強いため、端から救護班として動く心積もりなのだろう。
「典型的なもやしっ子か?いや意外と鍛えているッ!!死の恐怖、三崎亮!!!」
「おいバカふざけんなっ、リアルネームの方に死の恐怖とかくっつけてんじゃねぇ!!?」
お次の彼は、普通の海パン。
流石にトップ勢と比べると見劣りするものの、それでもしっかり鍛えられたよい肉体をしていた。
「反逆の翼と共に、黒咲隼も来てくれたッ!!!」
「ハーミーズ……お前も瑠璃かッ!!」
「違うと言っているだろうが!?」
「そうか……ならばデュエルだ!!」
「え?」
「望むところだ!!」
「え?」
その次は、ダイビングスーツを着た男性。
……いや、確かにそれは水着でもあるけど、なんでそれ?
なんて思っていたら彼は突然二色ビキニの少女とデュエルを始めてしまった。
……思わず間抜けな声を上げてしまった、恥ずかしい。
「私はXXではない!!その半歩前!!なのでまだ未来は輝かしい!!謎のヒロインXッ!!!」
「まぁツインミニアド使えるんですけどね。あ、流石に威力は低いですよ念の為。サンジ君カレーおかわり下さい」
そのお次の彼女は──カレーを食べている。
何も気にせず、カレーを食べている。
赤いハイレグの女性が、ちょっとだけ羨ましそうに彼女を見詰めていた。
「フレイムヘイズにも休暇は必要!!
「……そういえば、アラストールは居ないのよね。でも炎も自在式も使える……どうなっているのかしら?」
「そういう小難しい話は、明日の自分にポイッだ!!」
お次の彼女は可愛らしい赤のフリンジビキニ*15を着た少女。
自身の胸元のアクセサリーを指で弾きながら、何事かを考えているようだった。
「項羽様も居ないのに水着を着る必要性ある?そもそも自身の水着イベがそうだった!!水着の虞美人が来てくれたッ!!!」
「はぁ……そうなのよね、項羽様がいらっしゃらないのよね……」
次なる彼女は愛しき人が居ないからなのか、布面積の少ないビキニをローライズで履いているという、ちょっとヤバ気な衣装だった。
コートもないので、ちょっとどころかかなり怒られそうである。
「本家より早い水着化に
「うふふ、ゼウスさまも喜んで下さるかしらー」
かの女性はあまりにファビュラス、あまりにセクシー!
一人ゴージャス姉妹と言い換えてもいいその姿は、金に輝くホルターネック・ビキニ*16によって美しく彩られている。
「主君の命により、全力で夏を満喫する!!オレンジ掲げてジェレミア・ゴットバルトが参戦だッ!!!」
「Yes,Your Majesty.オレンジの名に恥じぬ遊びをお見せ致しましょう」
緑の髪が目立つ彼もまた、自身の鍛え上げられた肉体を惜しげもなく披露している。
そんなこと、なかなかできることじゃないよ……。*17
なにせ普通は羞恥が湧いてくる。
それが無いということは、彼は自身の肉体になんの恥ずべき場所もないと主張しているに等しいのだから。
「子供と思って甘く見てたら痛い目を見るぞ?エルメロイの才媛、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテッ!!!」
「やぁやぁ、せいぜい甘く見てもらえるように見た目相応の水着にしてみたんだけど……どうかな?」
少女が身に纏うのはフリルの付いた青いワンピース。
本人が言う通り、幼さを全面に押し出したコーディネートだと言える。
「ここは真面目に決めてきた!でもハーフスパッツはちょっと目立つぞ、五条悟ッ!!!」
「いやー、わりと泳ぐ気で来たからねー」
目隠し無しで浜辺に立つ彼は、既に周囲の視線を引き寄せつつあった。
……まさにイケメンはお得、と言うことか。
「意外と自身の体に自信があるのか?大胆な水着と共に保登心愛が登場だァ────!!!」
「えへへ……ちょっと張り切って見ました……」
お次の少女は黒いクロス・ホルター・ビキニ*18と黒いパレオで、幼気に見えて意外と自身のスタイルに一定の自信を持っていることが窺える。
「そしてラストを飾るのはこの人!!ボーイレッグ*19で活発さも表現した我らがキルフィッシュ・アーティレイヤーだッ!!!」
「いや一般人私のことなんて知らんて……の前に、何故にバキ?」
「やらねばなるまい、余が余であるがゆえにっ!!」
「ええ……?」
最期は金の髪をポニーテールにした少女。
彼女がずっと他の人を解説していたドレスのような水着を着た女性と会話することで、長かった紹介も終わりを告げるのだった。