なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「時間が足りぬ……」
「自身を加速させたとしても、流石に一日やそこらで読めるような規模じゃないからねー」
数時間の読書のあとは、適度に体を動かしましょう──。
そんな感じの館内放送を聞いた私達は、館内のスポーツ施設に足を運んでいた。
長時間同じ姿勢でいると血行が滞り、最悪の場合は死に至ることもあることから、それを注意するための放送だったが……実は単なる放送というわけではなく。
「なるほど、そのための複製品……という面もありますのね」
「主な理由は、やっぱり盗難防止だけどね。……でもまぁ、ほっとくと一日中本を読み続けているような人ばっかりだから、無理矢理にでも運動させてやる……っていう意地とかもあるのは確かだと思うよ」*1
貸出される本は、全て複製品。
そしてそれゆえに、施設側の権限で閲覧を禁止することも容易なのである。……具体的に言うと、放送に従わない場合は本にロックが掛かって読めなくなります。
わざわざ本の形にしてあるけれど、その性質はほぼ電子機械と同じようなもの。……読ませてやっている、というのが正解なので、その閲覧権限も好きに弄れるというか。
なお、その辺りを見越して自前の本を持ってきている人もいるようだが……そっちはそっちで、館内健康管理システムにより読書時間の厳正な管理がなされているので、隠れて本を読んでても治安部隊……もとい図書隊の人達に首根っこを捕まれて連行されてくる羽目になったりもする。
ミラちゃんも似たようなことをして、首根っこを捕まれて運ばれてきたクチである。……まぁ、彼女の場合は不正コピー*2に近いこともやってたんだけど。
「失礼な!わしは単に内容を全部転写(※手書きで)して、そこからじっくり読もうとしていただけでじゃな!?」
「スペックゴリ押しの不正ですわね……」
「まぁ、写真に撮ったとかじゃなく、一言一句漏らさないように書き写したってだけなら、咎め辛いのは確かだよねー」
頭の回るミラちゃんは、ここの書物が館外に持ち出しができないこと・一部のモノを除き書き写すことは咎められていない*3ことなどを、予め規約を読み込むことで確認し、その穴となりうるモノ──丸写しすれば特に問題はない、という事実にたどり着き、それを実行していたのであった。
なお、この『書き写すことは咎められていない』という部分、ミラちゃんみたいに丸写しする人間が現れること自体は、普通に想定してあるものだったりする。
そりゃそうだ。図書館に来て調べモノをして、必要な部分を書き写す……というのは、なんらおかしなところのない普通の利用法なのだから。
無論、一言一句同じものを作り上げるのは、複製防止の観点からすれば宜しくはない行為だが……普通はそこから自分なりの言葉に書き換えるのが筋。なにかしらの不手際で資料にした文章がそのまま出てきても、
なので、ここでは書き写すことそのものには、お咎めはない。
そして、お咎めがない以上──自身のスペックに任せて、本来ならできないようなことをやり遂げるモノが居る、という可能性は普通に考慮している。
それが、『館内で使用できる筆記用具の制限』である。
「ふ、ふふ。道理で書き写しておる時に皆の視線が生暖かいと思うたわ……。よもや『
「機能するのは図書館圏内だけだけどねー」
仄暗い笑みを浮かべているミラちゃんはとりあえず放置するとして、この図書館には『終わりのクロニクル』に登場する『1st-G』、その根幹を為すとされる母体概念『文字は力を持つ』を再現したような特殊な法則が敷かれているのである。*4……まぁ再現と言うように、母体概念そのものというわけではないようだが。
この概念、
そして、貸出用の筆記用具には『コピーライトが文末に付与されます』と刻まれている。
コピーライト、すなわち著作権。*5
要するに、許可されたコピーですよ、と自動的に記載してくれるわけなのだが……これにより、書き写した方の文章にも、この図書館の制限が適用されるのである。
あとはまぁ、単純な話。
文字自体が収蔵物と同じ扱いになるため、図書館側の制御が効くようになり。
図書館側が定めた方法以外での利用をしようとすると、最悪書き写したノートごと燃える、などの対処が取られるようになっているのだ。
まぁ、ミラちゃんの場合は単純に館内健康管理システムによる、読書時間超過の方に引っ掛かっただけなのだが。……自分で書き写した言葉が全て『error!』になった時の恐怖は、恐らく味わった者にしかわかるまい。
「マジで怖かったんじゃけど!?ページびっしりに『error!』って出てくるんじゃぞ!?」
「はいはい。……あと、自分で書き写したモノを外に持ってって更に書き写そうとすると、その時点で燃えるから注意してね」
「なにその恐ろしいほどのセキュリティシステム!?」
まぁ、地デジのダビング制限みたいなもの、と覚えておく方がいいんじゃないかな。*6
そんな会話を交わしつつ、軽ーい運動をこなしていく私達である。
その最中、
「──むぅ、その顔はもしや、キーア嬢ではないかな?」
「む、そういう貴方はその声からして──ミスタ・ダンブルドアでは?」
顔見知りに会った、みたいな軽い口調で声を掛けてくる人物が一人。その声に聞き覚えのあった私は、当年の名前を呼び掛けながら振り返る。
そこには案の定、人好きのする笑顔を浮かべた老人──アルバス・ダンブルドアの姿があるのだった。
「え、ちょ、キーアさん?!お知り合いですの!?」
「ん?……あー、そういえば黒子ちゃんには言ったこと無かったっけ。こちら、オールド・オスマン……もとい、ミスタ・ダンブルドア」
「ほっほっ。オスマンでもダンブルドアでも、好きな方で呼ぶと宜しい」
「……?????」
突然のダンブルドア氏の登場に、黒子ちゃんが驚いたような顔でこちらに詰め寄ってくる。
そりゃそうか。ダンブルドア氏と言えば、その知名度はかなりのもの。知らない、という人の方が珍しいくらいなのだから、その驚きも
……まぁ、そのあとの私の紹介と彼の名乗りに、案の定宇宙猫状態になっていたわけなのだが。詳しい事情を知らないと混乱するよね、仕方ないね。
で、ここにはもう一人、彼のことを私から聞かされている人物が居るわけで……。
ちらり、と視線を向けた先の彼女は、微動だにしていない。
歓喜に打ち震えているのか、はたまた感極まって言葉にならないのか。
どっちかわからないけど、多分凄いことになっているんだろうなぁ……なんて風にため息を吐いた私は、
「こほんこほん。……ミラちゃーん、感動しているところ悪いんだけど、いい加減戻ってき、」
「…………」(白目)
「……死んでる!?嬉しさの余り幽体離脱してる!?」
彼女の方に振り返り──その体から、今正に魂が抜け落ちようとしていることを悟り、慌ててその頬を左右にビシバシ叩くことになるのだった。……尊死しかけてるじゃねーか!!?*7
「しっかりするんだミラちゃん!そのままだと帰ってこれなくなるぞ!!」
「あばばびばばばびばばば」
「ほっほっほっ。愉快なお友達、というやつじゃの」
あんまりやり過ぎると、叩いたことによってあの世に行きそうな気もするのでほどほどに。
あと、あとで痕になってもアレなので、クレD的な『殴りながら治す』で気付けを続行する私だが……ダメだ、推しが近くにいすぎて戻ってくる気配がねぇ!?
仕方がないので、ダンブルドア氏には暫く離れていて貰うように要請し、彼がにこやかに笑みを浮かべながら去っていく姿を見送って、暫く待機。
……もう大丈夫だよな?とミラちゃんの肩を改めて揺すれば、彼女はハッとしたような表情を浮かべたのち、周囲を確認するように首を左右に振っていたのだった。
「ぬ、ぬぅ……?おかしいのぅ、なにやらわしの最推しの一人が見えたような気がしたんじゃが……」
「ははははは」
「……なんじゃキーア、笑い方が気持ち悪いぞ?」
「ははははは(怒り)」
人の気も知らないで……。
前後不覚、さっきまでなにをしていたのか忘れてしまったミラちゃんをジト目で眺めつつ、はてさてどうやって引き合わせたものかと悩む羽目になる私なのであった。
「……?????」
なお、黒子ちゃんはずっと宇宙を漂っていた。……君も君で大丈夫?