なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……地球は青かったですわ」*1
「いや、どこまで行ってたのさ黒子ちゃん」
正気を取り戻した黒子ちゃんが、いの一番に発した言葉にツッコミを入れつつ。
はてさて、ミラちゃんとダンブルドア氏、どうやって引き合わせたモノかと悩む私である。
いやね?別にこのまま合わなかったことに……って解散するのもまぁ、手の一つだとは思うんだけど。……それをしたあとのミラちゃんの反応を考えると、どうにも選択できない話だというか。
いやだって、そんなことしたら絶対詰め寄られて『何故わしに一言確認をとらなかったぁ!!』とかなんとかキレられるヤツじゃないですか。
でも迂闊に引き合わせると、どこぞのアグネスデジタル*2みたいに虹色に光りながら『
まぁともかく、なんの対処もなしに引き合わせられないのは確実で、かといってこのままスルーもあとでキレられるので論外。
……となると、どうにかして二人のマッチングをセッティングしなきゃあならない、ってことになるんだけど……。
「うーむ、どうしたらいいと思う黒子ちゃん?」
「何故私に振るのですか?……いやそもそも、このお方の推しなんですの?その、ダンブルドア氏は」
「そうだけど……なんで小声?」
「いえ、先ほどの様子ですと、名前を聞いただけでも狂乱しそうな気がいたしまして……」
「ああうん、ソウダネ……」
どうにも行き詰まってしまっているため、ここで黒子ちゃんにどうしたら良いか聞いてみたわけなのです。……結果はご覧の通り、困惑とジト目が返ってきただけなんですけどね!
なお、ミラちゃんのプロフィールに関してはあんまり詳しくなかったのか、彼女の疑問は『そもそもそこからか』みたいなものであったことも並記しておきます。……まぁ、他所様の作品の名前が平然と出てくる、ってのも変な話だしね。*5
「……うーむ、わしはなにか大切なことを忘れておるような気がするんじゃが……」
「まぁまぁメガネどうぞ」
「それは流石に脈絡が無さすぎではないか……?」
「読書時の眼精疲労を抑える特製メガネだよ?」
「……そういうことなら有り難く」
推しに出会えたことがあまりにも衝撃的だったのか、前後の記憶が吹っ飛んでいるらしいミラちゃんの様子に、ほっと胸を撫で下ろしつつ。
束の間の運動を終え、改めて読書時間に戻る私達である。
……え?用事の方は良いのかって?ノンノン、この図書館は『本読み達が集まって作った』って言ったでしょう?
「むぅ、よもや『精神と時の部屋』のような状態になっておるとはな……」*6
「寝食を忘れてしまうくらい夢中になるのを避けられないのなら、いっそのこと時間の方を増やしてしまえ……ってやつだね。力業過ぎてびっくりするけど」
ぼやくミラちゃんの言葉通り、この図書館の内部の時間の流れは、外のそれとは隔絶されている。……これもまぁ、概念の応用というか?
実際、本読み達が一番悩まされるのは時間が有限である、ということ。ならば、それを解決する手段があるのであれば、それを実現するために協力するのも吝かではない……ということなのだろう。
その他にも、本読み達が望んで止まないような機能満載の郷立図書館、ご利用は住民票を提示の上、図書カードをお作りになってからお願いします。
「……誰に向かって喋っておるのじゃお主?」
「まーまー、気にしない気にしない。……ともかく、時間はあるんだから無理に書き写そうとしたりせずに、普通に読めば良いんじゃない?」
「ふむ、そうするかのぅ。時間的余裕があるのであれば、急いで読み耽ることもないじゃろうしのぅ」
で、ミラちゃんが仙法まで使って本を書き写そうとしていたのは、結局それくらいしないと時間が足りないから、というところが大きく。……その時間の問題が片付くのであれば、ゆっくり読む方が良いと説得するのも容易。
ゆえに後頭部を一掻きした彼女は、そのまま新しい本を求めて書架に向かうのでありました。……セーフ。
「……よくもまぁ、あれこれと口が回るモノですわね」
「これができないと、火種が燃え広がること間違いなしだからネ!」
「別に褒めてはいないのですけど……それで、結局どうするのですか?時間稼ぎは、うまくいったみたいですけれど」
そんなに私の様子を、呆れたような目で見つめてくるのは、さっきとは違いこちらに付いてきた黒子ちゃん。
彼女の方は既に見たいものに関しては読み終えたのか、こちらの対処に付き合ってくれるようで。……とてもありがたいので、骨の髄までしゃぶり尽くす所存であります。
さて、黒子ちゃんの言う通り、その場しのぎの時間稼ぎはうまくいったわけだけど。……肝心の問題である、彼女とダンブルドア氏の邂逅についての準備は、なに一つ進んではいない。
とはいえ、そっちに関してはそこまで焦ってはいない。なにせ、
「……はい?いえまぁ、確かに三億にも及ぶ蔵書数、そう簡単には読み終わらないでしょうが……それでも、先ほどのように運動を強制されることもありますし、時間が無限であるのならいつかは結末にたどり着く……とは、いつも貴方が仰っていることではありませんこと?」
「秒間千」
「……は?いや、いきなりなにを……」
「今この瞬間、一分一秒の間にも、この図書館の蔵書数は増え続けている。……この意味がわかるかな?」
「なん……ですって……?!」
首を傾げる彼女に、私は『この図書館の蔵書数が増える速度』を例としてあげる。……この図書館において、蔵書とはほぼ自動で収集されているものである。
一冊の完品さえあれば、それを複製することで貸出することができる。
貸出品は全て複製なので、誰かが借りていて読むことができないということがない。
言語も翻訳できるし、訳文に不満があるのであれば原語版に切り換えて、自分で翻訳することもできる……。
本読みのために最適化されたこの図書館において、本とは最早空気に等しい存在。そしてそれゆえに、その供給速度すらも空気のそれに等しいのである。
どういうことかって?……この図書館にはドラゴンレーダーもといブックレーダー的なものがあってね?この世界に未収蔵の書物が現れた時、それを即時把握・即時購入してくれるのです(白目)
その即時購入もネット配達じゃ遅いってんで、直接図書隊の一員が直接書店とかに転移して買いに行ってるとかなんとか。……いやまぁ、流石にバレないように服装とかは変えてるらしいけど、よくよく考えなくても混乱の元じゃないここの人々?下手すると、世界中にほぼ同時に出現とかしてない?
まぁともかく。本に関しての情熱が上限突破しているこの図書館、その貪欲な収集欲は日に日に加速し、今となっては秒間千冊越える速度で蔵書が集まっているのだそうで。
……要するに、読んでも読んでも蔵書が増えるので、読むものが無くなるってことが物理的にありえないのである。流石の無限の読書時間も、蔵書も最早無限なら意味がないというか。
そんな、行き着く先は地球の本棚*7かアカシックレコードか、みたいなこの図書館。
本読み達を捉えるクモの巣みたいなもの、という感想も理解できるのではないだろうか?
「……ああなるほど、わざわざ館内放送まで使って運動を強制している理由、心から理解できた気がいたしますわ……」
「下手すると死ぬまで出てこないかもしれないしね。……いやまぁ、寝食部分も注意してくれるから、わりと真面目にここから出てくる必要ないんじゃないかと思うけど」
本読み達が考えたさいきょうのとしょかん。
……そんなところに本読み達を放り込めば、最早廃人となんら変わりなく。
結果、ゆかりんに『ダメです』とダメ出しをされ、彼女との話し合いの結果折衷案として成立したのが館内健康管理システムだった、というわけなのだった。
……まぁ要するに、少なくともミラちゃんがダンブルドア氏のことを思い出さない限り、時間に関しては幾らでも捻出できるというわけなのである。……以前の
「……以前の事件とは?」
「ビーストⅡiの話。……精神と時の部屋を再現って簡単に言うけど、参考にするものがなければ再現も難しいからね。そういう意味で、色々パラメーターを得られたあの事件は、この図書館にとっても渡りに船だったみたい」
「……貪欲すぎるのではありませんこと?」
で、ここで言う『あの事件』とは、時の止まったあの世界のこと。……内部情報を不確定にして外に漏らさないようにすれば、時間経過に関してはごまかせる……とかいう、わりと色んなモノに喧嘩を売っている理論である。
無論、理論だけわかっていても再現のしようがないモノだったので、正に机上の空論でしかなかったのだが……そこで出てくるのが、『1st-G』の母体概念『文字は力を持つ』。
単なる再現でありながら、本物に迫る性能になっているのは、偏にこの本読み達の楽園を実現化するため。
その半ば暴走じみた情熱により『1st-G』の再現度は飛躍的に上昇し、本来ならば鼻で笑われるような理論を現実のものとし、そうしてこの図書館は真なる完成を見た、というわけである。……その情熱、どこか別のところに使わない?
因みに、この施設の完成の裏には、どこぞのコハッキーの影があったとかなんとか。……この図書館の完成自体も結構最近なんだな、とちょっと遠い目になってしまう私である。
「……で、ここの図書館の凄さ、というものは十分に理解できましたけれど。……結局、あの方のことはどうするおつもりなので?」
「……時間が解決してくれるかなー、って」
「要するになんの案もない、ということですわね……」
なお、時間稼ぎが幾らでもできるのが確かだとしても、それがミラちゃんとダンブルドア氏の邂逅になにか役に立つか?……と言われると、視線を横に逸らしてしまう私なのでもあった。