なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……む、また運動の時間か」
「で、どうしますのキーアさん。このままだと、またあの方と鉢合わせることになるかと思われますけど?」
「あ、そこは大丈夫。先んじて念話で鉢合わせないようにお願いしてるから」
「そういうところは手が早いですわね……」
はてさて、あれこれと勘案していくうちに、再び運動の時間になってしまったわけなのだけれど……。
黒子ちゃんの心配ももっともなので、そこに関しては既に対処している私なのであった。……それ以外?ハハッ(乾いた笑い)
ともあれ、決められたことである以上運動をサボることはできないので、二人を引き連れて再びスポーツ施設に向かう私である。
……途中でミラちゃんが、なにかを気にするように視線を周囲に巡らせていたので、「どうしたの?」と何食わぬ顔で尋ねると、「気のせいかのぅ……?」と首を捻りながら、再び歩き始める……などということが何度か起きたが、特に問題はない。ないったらない。
「壁越しにあの方がいらっしゃることを、わかっていらっしゃるということですわよね……?」
「そこまでできるんなら、尊死するの止めてほしいんだよなぁ……」
……まぁ本当に問題がない、なんてわけもなく。
どうにもミラちゃん、こちらとは別ルートでスポーツ施設に向かっているダンブルドア氏を、気配感知とかで無意識に捕捉しているみたいで。
そこまで感知できるんなら、そもそも尊死するなや!……的なツッコミを飲み込みつつ、どうにか施設にたどり着く私達なのであった。
「……?お主達、何故にそこまで疲れておるのじゃ?」
「ははははーなんでだろうねー」
「な、何故に怒っておるのじゃ……?!」
「はははは怒ってないっすよ、私を怒らせたら大したもんっすよ」
「小力とか今の子わかるのかのぅ……」*1
無論、そんな余計なことに気を使っていては、疲れるのも仕方のない話。……息が切れるなどの物理的な影響は出ていないものの、それと大差ないくらいに精神をガリガリ削られる羽目になる私と黒子ちゃんなのでありました。……正直に言って面倒臭いです(真顔)
「……まぁ、運動の方が本当に軽いもので良かった、と思う他ありませんわね。これでバスケだのテニスだのやらされていたら、それこそ暫く立ち直れなかったでしょうし」
「
「そこはかとなく失礼ではないかその言い種……?」
まぁ黒子ちゃんの言う通り、運動とは言ってもラジオ体操とかのような『体を解す』程度の軽いものばかりなのは、有り難いと言えば有り難い。
……大量の本を抱えて歩いている
そんな感じの話題で、適当に注意を逸らしつつ。
軽ーい運動を軽ーく終わらせた私達は、改めて定位置もとい読書スペースに戻ろうとしたのだが。
「……む、なにやら良い匂いが」
「あー、おやつの時間ってやつかな?もしくはティータイム?」
鼻腔を擽る香ばしい匂いに、ミラちゃんがふと立ち止まる。
……恐らくはパイとかクッキーとかその辺りの焼ける匂いだと思われるそれは、紅茶片手に本を読むのも良いよね!……的な提案があったことから生まれたとされる、本読み達のティータイム用の茶菓子だろう。
本読んでる時に食べ物?……と怪訝そうな顔を浮かべる人もいるだろうが、そこは本読み達の楽園。『食べているモノが読書を邪魔しない』という概念により、食べ滓は勝手にゴミ箱に吸い込まれていく仕組みとなっているので、特に問題はない。
「……いや、素直にティータイムはティータイム単体で楽しめば宜しいのでは?」
「文庫本片手に優雅なティータイム……って憧れない?」
「ん、んー……?」
……それでもまぁ、本来なら本に汚れが付きかねない行動なので、嫌がる人がいるのもわからないではない。
なので、これに関してはティータイムを楽しみたい人だけに提供されるものであって、朝・昼・夕食のそれとは違い強制ではなかったりする。
……いや寧ろ、放っておくと食事を摂らない人達に比べ、多少不純な動機でも食事を摂ってくれる分有り難いのかもしれない。……え、適当なこと言ってないかって?さぁてねぇ?()
「…………」(不審そうな眼差し)
「いやだって、これに関しては『優雅なティータイム』がしたい、って人が居たからできたメニューらしいし……」
なお、このティータイムの成立理由が嘘だと思っているらしい黒子ちゃんから、凄い目で見つめられたりしたが……嘘は言ってないので信じてくれ、としか言い様がなかったり。
ともあれ、三食と比べると任意行為であることには間違いなく。
このまま席に戻って読書を続けても、誰にも文句は言われないと思うのだけれど……。
「…………」(おめめキラキラ)
まぁうん、甘いものに目がないミラちゃんが、ここから立ち去れるわけもなく。
こちらをチラチラ見てくる彼女の姿に、小さくため息を吐きつつ。仕方がないなぁと、彼女を連れだってティータイムコーナーに向かうのだった。
「………」<チーン
「なんでミラちゃんすぐ死んでしまうん……?」*4
「ふむ……いや、あい済まぬ。よもやここで鉢合わせるとは思わんでのぅ」
……で、大方の予想通り。
実は
「……綺麗な顔で死んでおるのぅ」
「ああはい、推しに会えたことで正しく成仏ってやつですねー」
「キーアさんの反応が、今までにないくらい投げやりなものに……」
物珍しいものを見るような顔をしながら、ミラちゃんの頬をつつくダンブルドア氏はお茶目だなぁ、なんて空笑いを浮かべているけれど、私は元気です(謎)。……この映像、スマホとかで撮っといてあとで見せたら、多分ミラちゃんが即死するアイテムになるんだろうなぁ……。
はぁ、ともう一度ため息を吐いて、テーブルの上のクッキーに手を伸ばす。
イチゴジャムが中心に固められたそのクッキーは、素朴ながら小麦の風味とイチゴの味が口内に広がる、控えめに言っても普通に美味しい出来のものだった。
紅茶の方は甘さが控えめなので、クッキーを食べる手もサクサク進む感じである。
「半ばやけ食いみたいになっていますわね……」
「どちらかと言えばハムスター、と言ったところかの?」
……まぁ、軽快に食べ進めていたためにやけ食い扱いされたのだが。……チガウヨー、ヤケグイジャナイヨー。
あとダンブルドア氏、流石にハムスター扱いは止めていただきたい。
ともあれ、四人が座って紅茶と茶菓子を摘まむティータイムは、さほど問題もなく続き……。
「……って違う!色々とおかしなことになってる!!」
「本も読んでおらんしの」
呑気に茶菓子に現を抜かしてる場合じゃねぇってんですよ!……とばかりに頭を抱える私である。
ダンブルドア氏の言う通り、茶を嗜みながら本を読む……っていうこのティータイムでの推奨形態も維持できてないし!
「いえ、そちらは別にどうでもよいのですが」
「どうでもよくねー!一応この椅子に座るんなら本を読もう、っていうのが推奨されてるんだから、それをやってないってことは周囲から奇異の目で見られても仕方ねーんですよ!」
「そんなバカな」
なお、図書館内ではお静かに。……というのはここでも同じなので、周囲からは『なんだこいつ』的な視線を向けられているのだった。……視線に気付いた黒子ちゃんがビクッ、てしていたけど、そりゃそうだとしか言えない。
それらのやり取りを見てほっほ、と笑みを浮かべるダンブルドア氏のマイペースさに助けられつつ、改めて気を取り直す私。
思わず流れで同席してしまったが、この状況ではミラちゃんは即死→蘇生→即死のループ状態から抜け出せない。……話を進めるどころの話ではないので、どうにかしてこれを解消する必要があるのだが……。
「……うーむ、いっそダンブルドア先生には若い姿に変身して貰うとかするべき……?」
「それ、一時的には良いでしょうけど、結局ミラさんに詰め寄られることになるのでは?」
「うむ、老齢の儂に憧れておる、ということじゃったしの。一時的に安定はするじゃろうが、そのあと責められるのは見えておるの」
「……お二人とも、現状把握がお得意なようで……」
即席の対処手段として、ダンブルドア氏には若い姿に変身して貰う、という方法を思い付いたが……確かに彼女の不毛なループは解消できるだろうけど、代わりに
容赦なく二人からツッコミを受けた私は、思わず苦笑を漏らすことになるのだった。……どないせいと?
「……ふむ。では、仕方ありませんわね」
「……?黒子ちゃん、なにか良いアイデアでも?」
「良いか悪いかはわかりませんが、一つ思い付きはしましたわね」
再び頭を抱えた私に、天から降ってくるのは黒子ちゃんのため息。
視線を上に向ければ、彼女は微妙な笑みを浮かべつつ、こちらに声を掛けてくるのだった。
「とりあえず、変身して頂けますか?
「……はい?」