なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・やれると思ったのならやれる

「……よもや再びこの姿になることになろうとは」

「ふぅむ、これが噂に聞いておった『マジカル聖裁キリアちゃん』とやらか……」

「いやなんでダンブルドア先生まで知ってるんです!?」

「ほっほっ。小耳に挟んで*1、の」

 

 

 黒子ちゃんからの要請により、何故かキリアの姿に変身することになってしまった私。

 なんでも、これから行う対処法の前準備として、私がキリアの姿になっている必要がある、とのことだったのだが……わりと真面目に、なにをする気なのかわからんのですが???

 

 ともあれ、話が煮詰まってしまっていたのも確かな話。

 こちらに有効な案がない以上、彼女の案に飛び付くしかない私なのであった。

 ……まぁ流石に、ダンブルドア氏がこっちの姿について知っていたことには、目ん玉をひん剥く*2ことになったんだけどね!……お の れ ゆ か り ん!

 

 十中八九下手人な管理人(八雲紫)の笑みを脳裏に描きつつ、改めて居住まいを正す私である。……キリアは聖女だからね、仕方ないね。

 

 

「しかし……何故この姿に?よもや有り難い説法でも言い聞かせて、彼女の煩悩を打ち払おうと思っていらっしゃるのですか?」

「なにを仰っていますのキリアさん。貴方には特別な力がお有りではありませんか」

「特別な力……?」

 

 

 ともあれ、改めて黒子ちゃんになにをするつもりなのか尋ねた私は、しかして彼女の得意気な笑みに首を捻る羽目になったのだった。

 

 ……特別な力?はて、わざわざキリアになる必要性があるようなものが、はたして存在していただろうか?

 まぁ確かに、キリアモードだと効果が上昇するものも幾つかは存在しているが、今この場で役に立ちそうなものはなかったような……?

 

 なんて風に、脳裏に疑問符を大量生成する私の姿を見て、黒子ちゃんは怪訝そうな表情を浮かべながら、こちらに声を掛けてくる。

 

 

「……いやあの、この間のように能力増強を行って頂ければ、それで宜しいのですけど。ほら、アニメみたいに」

「……あー」

 

 

 その内容は、私にブースターになって欲しい……というもの。

 なにをするつもりなのかはわからないが、黒子ちゃんの能力を強化して欲しいということになるらしい。

 なるほど、確かにそれは『マジカル聖裁キリアちゃん』のお決まりのヤツである。……確かにそうなのだが……。

 

 

「……わざわざこちらの姿でなくとも、別にキーア(魔王)の方でもできますよ、能力ブースト」

「……はい?」

「そもそもの話、こちらの姿自体が、あれこれと煩わしい問題をごまかすための方便のようなもの。……こちらでできることが、あちらでできない道理はないのです。いえまぁ、TRPG的な成功率補正くらいは貰えるかも知れませんが」

「……ひ、久しぶりにキリアさんの姿が見たかった、ということで……」

「変身損と言うことですね。この借りは付けて置きます」

「あああああああああ」

 

 

 どうやら彼女の思い違いだったらしいそれに、私はジト目で彼女を見つめることになるのだった。仕方がなくはないかな!

 

 

 

 

 

 

 気を取り直した黒子ちゃんから伝えられた作戦はこうである。

 

 以前、彼女に対して能力ブーストを行った際、彼女は本来(原作)の自分ですらできるかどうか不明な、液体に溶け込んだ個体の移動、という現象を起こして見せた。

 それから、私達【星の欠片】達の基本原理。……あまねく全てに対して『負ける(小さい)』それは、形の無いものにすら共通する。

 

 その二つを組み合わせ、ミラちゃんの中から『推しに興奮して尊死する』レベルの感情を、一時的に切り離してしまおう……という作戦だ。

 無論、一時的に切り離すだけなので、戻した時に結局死ぬことは変わらないが……普通に会話をした、という事実は残るので問題はない、という寸法である。

 

 

「……この状況の原因となっておる儂が言うのもなんじゃが……ちと、乱暴な解法じゃの?そもそもできるのか、という疑問もなくはないが」

「考え方としては、『心理掌握(食蜂さん)』のそれと似たようなもの。……キリアさんを通すことで私の能力の強化と、それから動かすべきものをはっきりさせることができるので、成功率は高い方だと思われますの」

 

 

 アゴヒゲを撫でるように触りながら、ダンブルドア氏が疑問の声をあげる。……確かに、説明だけ聞くとなにがなにやら、というのはわからないでもない。

 しかし、ここに居るのは科学の進みすぎた街、学園都市所属の生徒の一人である。その彼女ができるはず、というのだから、恐らくはできるのだろう。

 

 実際、『とある』シリーズの作中においては、脳内分泌物などの操作によって相手の意識や感情を操る『食蜂操祈』という人物が存在する。

 ……それらの分泌物よりも遥かに小さく、そして必ず『ある』と明言できる【星の欠片】を彼女が移動させられるのであれば、記憶の操作ができてもおかしくはない。

 

 ……まぁ、説明からわかる通り、仮にできたとしても黒子ちゃんに対しての負担が半端無さすぎる、という問題点があるのだが。だってこれ、言うなれば二人で魔王(母の方のキリア)になろう、みたいなものだからね。

 

 キリアなら一人でできることを、二人分の労力を使って再現しようとしているわけだから、負担も彼女のそれと同じ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という【星の欠片】の共通原理に踏み込むことになるので、私はともかく黒子ちゃんの心配をしてしまうのは仕方のない話なのである。

 

 

「なにを仰っていますの?そちらの解消方法も、貴方はお持ちのはずですけど?」

「……もしかして、【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】のことを仰ってます?」

 

 

 が、彼女はこちらの心配もなんのその。特に心配した様子もなく、こちらに声を掛けてくる。

 それもそのはず、過大な負担に対しては、それを無視できるものがある……と彼女は知っていたのである。

 それが【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】。強力なバフ効果を持つこの魔法は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことができる。

 

 

「ふむ、あらゆるとな?」

「ええ、あらゆる負担を、です。……使ったら死ぬとか、大量の生け贄を必要とするとか。そういう負担も含めて全て、この魔法の効果を受けている間であれば、全て無視することができるのです」

 

 

 こちらの説明を聞いて、興味深そうにこちらを見つめてくるダンブルドア氏。

 この魔法(【誂えよ、凱旋の外套を】)の効果を受けている間という制限こそあれ、その効果時間中であれば『原型保護』が働き、対象が()()()()()()()()()()()()()()ような、ありとあらゆる負債を肩代わりしてくれるという優れもの。……優れもの過ぎて、迂闊に使えないタイプの魔法である。

 

 この魔法の効果時間中であるならば、Dボウイ(相羽タカヤ)は幾らでもブレードに変身できるし、リナ=インバースは完全版の『重破斬(ギガ・スレイブ)』を暴走を気にせず撃ちまくれるし、緋村剣心も肉体への負担を気にせず飛天御剣流の奥義を使い続けられる*3……と言えば、その台無しさ加減もなんとなくわかることだろう。

 まぁそもそもの話、この魔法の効果中は最悪『わざわざブレードに変身しなくても、ラダムぐらいなら殴り倒せるようになる』し、『普通の火炎球(ファイアー・ボール)でそこらの魔族くらいなら一撃死させられるようになる』し、『普通に殴っただけで大体の相手を昏倒させられるようになる』くらいのバフ効果を得られるので、その辺りの危ない橋を渡る必要性もないのだが。

 ……作劇的には山も谷もなくなるやつなので、積極的には使いたくない魔法でもある。()()()()()()()()使()()()()を思えば、その扱いも仕方のない話なのだが。

 

 ともあれ、その辺りのことは別の話。

 今ここで重要なのは、黒子ちゃんの語る手段が実現可能なモノなのか否か、ということだろう。

 ──そしてそれは、【過剰黎明(アストラライズ・エヴォケーション)】と【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】を併用することを許すのであれば、普通に達成可能な手段だと自身を持って言うことができる。

 だってこれ、感覚的には【星の欠片】のそれ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのを、普通の人にも使えるようにするもの以外の何物でもないからね!

 

 

「……子細をよく知らずに提案していましたが、そういう原理だったんですの?それ」

「上限無しの時間経過で指数関数的に強化値が増えていく……っていうのが【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】ですからね。普通の人が無限に近い出力を得られ、その上でその力によって自滅もしないのですから。そりゃあもう、大抵の問題は踏み潰していけちゃいますよ」

 

 

 私達の物事の再現方法とは、結局のところ数の力にものを言わせて無理矢理押し通る、というもの。

 本質は違えどこの魔法とはやっていることが似ているため、そういう意味では()()()()()()()()()()()()()()()というのと変わりはない。

 

 わりと無茶苦茶な魔法であることを理解したダンブルドア氏は、どこか期待するような目でこちらを見つめていたが……。

 

 

「説明からなんとなくわかるかも知れませんが、そもそもこの魔法を使えるのが【星の欠片】だけですので……」

「ふむ、儂には覚えられぬと。残念じゃのぅ、それくらいできれば、ある程度気を抜けるかと思ったのじゃが」

 

 

 以前も話した通り、この魔法は()()専用のもの。

 習得条件に【星の欠片】であることを含み、そもそもこの魔法の起動条件にもそれを含むため、他の人には覚えられないのである。

 ……いやまぁ、【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】の効果時間中なら、もしかしたら一部の人は覚えられるかもしれないけれど。でも効果切れと共に忘れてしまうこと必至なので、正直そこまでする意味がないというか。

 

 

「まぁともかく、やってみるだけやってみましょう。ダメだったら他の手段を考えなくてはいけませんし」

「ですわね。ではこれより『ミラさんの性癖封印作戦』を決行致しますですの!」

「酷い名前じゃの」

 

 

 ともあれ、前説明はこれくらいにして。

 ミラちゃんのため?に、私達は行動を始めるのだった。

 

 

*1
意図せず情報を得ること。『ちょっと』を意味する接頭語の『小』と、『聞く』という意味の『耳に挟む』という言葉が組み合わさったもの。また、『耳に挟む』自体が『意図せずに聞いた』の意味を持つのだとか。なので、正確には『ちょっと風の噂に聞いたのだけど』くらいのものとなる

*2
怒りや驚きなどの感情から、大きく目を見開くこと。『目を剥く』をより大袈裟にした表現で、意味としては同じだがちょっと乱暴な感じになる

*3
それぞれ『宇宙の騎士テッカマンブレード』『スレイヤーズ』『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の主人公達。話題にあげられているのは、使うのに代償があるタイプの技能達で、それぞれ『変身ごとに記憶を失う』『制御に失敗すると、とある存在に体を乗っ取られる』『技を使うのに向いていない体なので、使い続けると身体機能にダメージを受ける』という代償がある

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