なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・胡蝶の夢、どちらが良いかは人次第

 引き続き、再現ホグワーツからお届け致します。

 

 さて、この再現ホグワーツ。単にその世界の中で生活できるというだけではなく、幾つかゲームのようなモノが設定されている。

 といっても、別に大掛かりな仕掛けが用意されているというわけではなく。単に作中イベントに因んだ、起こってもおかしくないようなイベントが複数用意されている……というだけの話なのだが。

 

 

「……そこのグリフィンドール生の諸君、止まりたまえ」

「ぬ」

(ゲェー!!?)

 

 

 そして今回遭遇したのは、『廊下で走ってはいけませんよ』ゲーム。……いや別にゲームではないのだけれど。*1

 

 話は至って単純、廊下を急ぐように進んでいると、一定の確率で先生方に呼び止められるイベントが入るので、それをうまく掻い潜れ……というもの。

 無事に寮の点数を減らされなければクリア、減らされてしまえば失敗……という、とても単純なシステムである。……いやまぁ、ミスったからと言ってゲームオーバーになる、とかいうわけでもないのだが。

 

 ともあれ、マクゴナガル先生*2などの一部を除けば、遭遇してもそこまで難しいイベントではないのも確かな話。……仮に件の女史に捕まった場合、『そもそも急ぐような時間になる前に移動しなさい』と、とてもごもっともな注意を言われてしまうため、大体失敗す(減点され)ることになるのだが。

 

 が、今回の相手はそれとは別の意味で難敵である。なにせ相手は──、

 

 

「もうすぐ授業の時間になるわけだが。そんなに急いで、何処に行こうと言うのかね?」

「……あー、スネイプ先生。私達はこれから、教室に向かおうとしていた次第でして……」

「教師の話を遮るモノではない。グリフィンドール、十点減点」

(うへぇ、うぜぇー……)

 

 

 今明らかにこっちに会話のバトン渡したやんけ、とこめかみをひくひくさせつつ、笑顔を維持する私。……嫌な顔とかしたら余計に減点されるのは目に見えているので、わりと必死である。

 

 このやりとりからわかる通り、私達に話し掛けてきたのはセブルス・スネイプ。*3コウモリのような印象を相手に与える彼は、ハリー・ポッターシリーズ屈指の人気キャラであり、同時に仮にハリポタ世界に入り込めるのであれば、あまりお近付きにはなりたくないタイプの人物である。

 

 色々と理由はあるとはいえ、所属寮がグリフィンドールであるだけで些細なことで減点を課してくる彼は、少なくともかの獅子寮(グリフィンドール)に所属している限りは目を付けられたくない相手であるし。

 そもそもにハリポタ世界で起きる事件、その中心人物の一人でもあるので、迂闊に近寄ればいつの間にか周囲が地雷源だった、なんてことにもなりかねない。……いやまぁ、そっちの意味でならハリーの近くの方がヤバいだろうけど。

 

 そして、それらの原作的な特徴により──彼はこのゲームにおいても、まさしく『ハズレ』としか言い様のない存在になっている。

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

 このハリポタ再現ワールドにおいて、一番人気なのはやはりグリフィンドールである。*4必然、このイベントにおいて『彼と出会う』というのは、避けられない減点イベントになるのだ。

 このイベントで彼にあった時の要点は、如何にして彼の減点を低い数値に抑え込むか?……というところにあると語られるほどに、減点をゼロに抑えるのは不可能だとされているのだから、その理不尽さは言うに及ばず、というわけだ。

 

 ……下手な御機嫌取りは逆効果だし、無論抗弁なんて以てのほか。

 まるで嵐が過ぎ去るのを待つように、黙って下を向いているのも宜しくない……というのだから、このイベントを無事切り抜けられるとすれば、それは彼の想い人たるリリーに瓜二つな人物くらいのもの……なんて冗談が出るくらいの難易度。

 ゆえに私達にできることと言えば、精々相手を刺激しないように当たり障りのない会話を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()くらいのものなわけで。

 ……コミュニケーション能力カンストでもないとそんなの無理なので、結局は相手が満足するまで減点させるのが正攻法、とまで言われてしまうのだった。……ハリー君ってば、これよりもっと敵視されてたって本当なんです……?*5

 

 なお、これは風の噂だが……TSハリーちゃんは無傷でクリアした、なんて話もあったりする。スネイプェ……。*6

 

 話を戻して。

 会話の出だしから既にマイナス十点を受けてしまったが、これはとても宜しくないパターンである。

 先程『スネイプ先生の満足するまで減点させる』のが正攻法と語ったが、この『最初から減点される』パターンを引いた場合、その減点数は下手をすると百の大台に乗るのだ。

 寮対抗においては、大体三桁の点数で競いあっている……ということを加味すれば、百点の減点がどれほど大きいかはよく分かることだろう。*7

 

 いやでもこれって単なるゲームでしょ?……というツッコミが入ってきそうな話だが。

 確かに、最初に述べた通りに別に減点──イベントを失敗しても、それがイコールゲームオーバーというわけではない。

 だがしかし、この点数制とはすなわち、生徒の優秀さや優等生であることを端的に示すものでもある。……減点が多かったり続いたりするということは、すなわちその人物が悪い生徒である、と示しているという風にも捉えられるわけで。

 そうなるとどうなるのか?……原作のハリー達みたいに、行動が制限されるのです()

 

 この体験ワールドは、基本的に時間制限のない遊び場であるが……一度退出しない限り、その中での学校からの評価、というものはリセットされない。

 この世界の再現自体を取り止めることでも、同じようにリセットできるが……ともあれ、遊び続けている限りは減点はなかったことにはならない、というのは確かな話。

 ……要するに、例え好きな作品の中とはいえ、針のむしろみたいな状況に陥ってまで遊んでいられるか?ということ。減点続きのできの悪い生徒と見られ続けるのは、結構な苦痛だと言うことである。

 

 ぶっちゃけると『二度とやらんわこんなクソゲー』*8と放り出しやすいってこと。……言い方的にそのうち戻ってくることまで含めて、だ。

 なので、ハリーにできうる限り同行するのを目指す、とかでもない限りは、減点はできる限り避けるべきなのだけれど……まぁうん、目の前に居ますね、大量減点要()が。

 

 まぁ最悪私達に関しては、ミラちゃんがダンブルドア氏の授業を受けたらそのままリセット、という形で逃げても良いのだけれど……さてここで問題です。

 ミラちゃんは、今現在ここをどういうものだと思っていて。それから私は、それをどうしなきゃいけなかったのでしょうか?

 

 ……正解はこちら、『ミラちゃんは今この世界を夢だと思っているため、そちらの思い通りにならなければこれが夢ではないと気付いてしまう。なので、私はそれをどうにかして回避しなければならない』でした。なんで気付かせちゃダメなのか、っていうのは『(ハリポタ世界に居ることに気付いて)また尊死するから』だってのはもうわかるよね!(泣)

 

 そして間の悪いことに、隣のミラちゃんは胡乱な顔付きだったのから一転して、悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべ、スネイプ氏に見えないように杖を振ろうとしている。……ヤベーぞ実力行使するつもりだ!!

 もしそれを許してしまえば、スネイプ先生からは下手すると千点級の減点が飛んでくるし、更には自分の思い通りにならなかったことから違和感を覚え、ミラちゃんがここが何処なのかに気付いてまた尊死してしまう!……ピタゴラスイッチかなにか?最終的な着地点が『死』だから、どっちかと言うとファイナル・デッドシリーズ系?

 

 とまれ、そんなことになってしまえば、今までの苦労が水の泡になる。こうなりゃ一か八か、バグ技で抜けるしかねぇ!!

 

 

「……あ、ポッター!」

「なに……!?」

「ぬぉ!?ひひひ引っ張るでないわ!急に!」

 

 

 それは、このシステム内での減点は、あくまで『互いが認識している状況でしか行われない』というもの。

 例え相手に減点の意思があれども、それを()()()()()()()()()()のなら、システム的に反映されない……というものである。

 

 この辺り、原作での点数システムが結構いい加減なところがある、ということを示しているのかもしれないが……こちらとしては好都合。

 スネイプ先生はハリーに対してヘイトが高い、という特徴を活かしての、多用はできない裏技(ハリーの幻影を遠くに投射)により、彼の言葉が届く範囲からさっさと脱出する!

 

 ついでに、それで走ってたらまた捕まりかねないので、バグでショートカットだ!

 

 

「ぬぉ?!なんじゃこの道!?」

「ホグワーツには隠し通路がありますからね!さっさと抜けますよ!」

「ままま待て!とりあえず離さぬか!!」

 

 

 ごちゃごちゃ言っているミラちゃんを引きずるようにして、私は命からがらスネイプ先生の魔の手から逃げおおせるのだった……。

 

 

*1
廊下で走るのって本当に危ないのか、という人にはこのひしゃげた眼鏡を見て頂きたい(真顔)。車の運転と同じで、死角から飛び出してくる人は幾らでもいる。そもそも(勢いよく走ってる)お前がそうだ、という話

*2
ミネルバ・マクゴナガル。『ハリー・ポッター』シリーズの女性教員の一人であり、グリフィンドールの寮監でもある。基本的には自他に厳しい鉄の女、という感じの人だが、唯一クィディッチ関連の話だけは判断が甘めになる

*3
『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物の一人。原作描写だと多分映画のようなイケメンではない(少なくとも歯揃いは悪い)。ハリーを目の敵にする教師として登場したが、その本心は……?ハリーが女の子、かつ母親似だったら多分凄いことになってた、とも言われる人。コウモリみたいという描写が度々存在する

*4
実際に『ハリー・ポッター』の世界に入り込むのであれば、グリフィンドールかスリザリンに入ってみたい、という人がほとんどだろう。他二寮は若干影が薄い感がある。逆に言えば、そこに想像の余地があるとも言えるのだが

*5
ハリーに厳しい理由の一つに、その外見が彼にとっての怨敵・ジェームズに似ているから、というものがある。なお瞳の色だけは母であるリリーに似ている為、死の間際のスネイプはハリーに『こっちを(リリーによく似たその目で)見ろ』なんて風に述べたりしている

*6
『○○ェ……』は、NARUTOの香燐の台詞『た……たまんない……サスケェ……』が元だとされるもので、感嘆や落胆などの言葉にならない感情が『ェ……』に込められているとされる。なおこの用法が広まったのはどこぞの掲示板からな模様。直前の言葉が『え行』で終わってなくても、お構い無しに使われるのも特徴

*7
参考までに、一巻での各寮の点数は350~480点付近

*8
『ポプテピピック』にて登場した台詞。負けてコントローラーを投げながら『ハイクソー』、その後『二度とやらんわこんなクソゲー』と扱き下ろしつつ、暫くしてまた再トライ……という、ゲーマーあるある。なお、これを宛にしてゲーム作りをすると『二度とやらんわこんなクソゲー』のあとに戻ってこない、なんてことにもなりかねないので注意が必要。クソゲーといいつつも遊ぶのは、何処かに光明があるからこそ。光明の見えないモノはクソゲーではなく、ゲームの形をした何かでしかないのだ

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