なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ああまったく……ミラのおかげで酷い目にあいました」
「それはわしの台詞ではないかのぅ……」
命からがら、スネイプ氏の魔の手から逃れた私達。
その結果髪の毛がぼわっと広がってしまったミラちゃんの様子に、小さく苦笑を返しつつ。改めて、自身が何処にたどり着いたのかを確認しておく。
隠し通路、などと言いながら通った道は、実際はテスクチャの裏側。システム保全のための緊急用通路であるそれを、適当なことを吹き込んでまっすぐに突き進んだ形となっている。
まぁそのおかげで?さっきまでの調子だと、間に合いそうもなかった授業には?こうして無事に到着することができたんですけどね?……速度の出しすぎで髪が爆発した?知らん、そんなことは私の管轄外だ。
はぁ、と胸を撫で下ろしながら周囲を見渡せば、そこには椅子に座る複数の生徒達の姿が。……原作キャラっぽいのも居るが、私達と同じようにこの世界で遊んでいるのだろうと思われる、
なので黒子ちゃんには、
なお当の彼女はと言えば、さっきまでのことはすっかり忘れてしまったようで。頻りに周囲を見渡しては、ニコニコと笑みを深めている。
憧れの人が居る世界、そこにこうして当事者として関われること──。無論、ダンブルドア氏本人に会うことと比べれば、それらに対する感動というものは比較的弱いものになるのだろうが。
それでも、彼女が目を輝かせるに足る、得難き経験であることに間違いはないだろう。
……まぁ勿論、あくまでも
とまれ、キラキラピカピカしている彼女を邪魔しては悪いと思いつつ、視線を彼女から外して改めて周囲を見回し。
「おおーい、キリア、ミラ、こっちこっち」
「おおぅ、そっかぁ……」
「……ぬ?どうしたキリア、なんぞ気の抜けた声なぞ出して」
「いいえ、なんでも。……それより、呼ばれているようですから席を移りますよ」
「む?」
ふと、こちらに手を振る
……あー、うん。
そりゃまぁ、奇しくも
そう苦笑しながら、私がまじまじと見つめる先。
そこには、あの
「優等生の君達にしては、今日はなんだか遅いじゃないか?」
「そういう言い方はないんじゃない、ロン?ほら、キリアもミラも。とりあえず座ったら?」
「う、うむ。では失礼して……」
「お言葉に甘えさせて頂きますね」
「……いやー、毎度毎度思うけど、なんていうかこう……気品が違うね、二人とも」
「なぁに?それってもしかして、私に喧嘩を売ってるのロン?」
「うわっと、冗談冗談!言葉の綾ってやつだから、勘弁しておくれよハーマイオニー」
近付いた結果、開口一番赤毛の彼──ロナルド・ビリウス・ウィーズリーことロンから飛んできたのは、こちらを揶揄するような言葉。
それを嗜めるように、栗色の髪の少女──ハーマイオニー・ジーン・グレンジャーが声をあげる。
この二人は、『ハリー・ポッター』シリーズにおける中心人物。
とかく重要な存在である二人だが……ここに居るのは、先程のスネイプ氏と同じく単なる
……あと、ハーマイオニーに関しては、
この辺りの話は、明確に作者の意思を曲げている……ということで、図書館内でも大きな問題になったらしい。
そうして議論が紛糾した結果、その時に遊んでいる人達による多数決で、どちらのハーマイオニーになるかが選択される………という形式になったみたいだ。
彼女についての話は、それくらいにしておくとして。
今回は時代設定が彼らが一年生の時であるため、賢者の石関連の話を楽しめるようになっているわけだが……その場合でも、そうじゃなかったとしても。
騒動の中心である、ポッター達と関わりがある方が体験としては面白いものになる……という考えは、決しておかしなモノではないだろう。
なので、彼らからの読者への好感度は、基本高めになっている……ということになるのだった。
なお、これが
ともかく。獅子寮所属なのであれば、ハリー達三人と仲良くなるのは半ば既定事項。そこに疑問を挟む余地は、本来であれば一欠片もないはずなのだけれど……。
「……ん、んんん?」
「えと、どうしたのミラ?僕の顔を見て、なんだか唸っているみたいだけど」
「いや、うん?……ええと、んんん?」
──今回に関して言えば、少しばかり話が別。
本来であれば、
その理由は、こうして目の前に鎮座している。
それは、野暮ったい丸眼鏡を掛けていて。
それは、額に稲妻模様のアザを持っていて。
それは、母親譲りの緑色の瞳を瞬かせていて。
それは、父親譲りの黒い髪を少し長めに切り揃えていて。
そしてそれは何故か、
その人物を見て、ミラちゃんが頻りに首を傾げているが……止めてくださいうちの子が夢見心地から覚めちゃうでしょォッ!!?
ミラちゃんが困惑する理由。私が内心で大いに慌てている理由。それは、
「……お主、女の子よな?……ハリー、なのか?」
「──わかった。まだ寝ぼけてるんだね、ミラ」
「ぬぅ、そうかやはりこれは夢……」
「僕が女の子だって?見ればわかるじゃないか、そんなの」
「いやこれどっちじゃ?夢か現かまったくわからんのじゃが?」
「落ち着いてミラ。胡蝶の夢なんて、この辺りの人にはわからないわ」
主人公であるハリーだけが、私達と同じく
先程のスネイプ氏とのエンカウント時、ちょっと話題に上っていたモノ。
いわゆる女体化ハリーとでも呼ぶべき存在。それが、今ここに居る彼女の正体である。
個人的には、どこぞの地霊使い*5を彷彿とさせるその容姿に、なんとも言えない敗北感を感じないでもないのだが……流石に口にはしない。今ここに居るキリアちゃんのイメージ的にもあれだし、そこから芋づる式にミラちゃんが夢から醒めかねないので、あくまで内心で歯軋りをするに留める。
「……気のせいかな、僕時々キリアに攻撃呪文とか飛ばされるんじゃないかな、って思う時があるんだ」
「気のせいではありませんか?誰も
「誰もそこまでは言ってないんじゃないかしら……」
……まぁ、漏れ出る瘴気的なものは、全然ごまかせていないんですけどね?ガバガバかよお前の隠蔽工作。
とまれ、こうして他愛のない会話ができている辺り、私達の友好関係はそれなりに深いもの、ということで間違いはないようだ。
ただまぁ、
「……ロンの将来はすけこまし、ですかね」
「?……キリア、なんだいその……
「しっかりモノという意味の、日の本の言葉ですよ」
「へー、流石はマホウトコロからの留学生ね」*7
現在の彼の状況を見る限り、どう足掻いても最低のハーレム野郎でしかない。*8
本人にそのつもりがないのがあれだし、そもそも再現体である彼にその辺りの細かい対応を求めるのもあれだが……世が世なら刺されているでしょ、この子。もしくはスネイプ氏に目の敵にされる。
私達二人がおらずとも、美少女二人を侍らせているのは間違いないのだから、罷り間違って逆憑依とかじゃなくて良かったね、なんて思いまで沸いてくる始末である。
で、話は変わるが。
先ほど、私が『すけこまし』と述べた時に、彼らの反応がおかしかったことに気付いただろうか?
それもそのはず、先ほどの『すけこまし』の発音は、わざわざ日本語に直したモノとして判定されている(実際に私達の耳に届いているのは全部日本語)。
これがなにを意味するのかと言うと……私の母国語が、日本語に設定されているということである。
そう、『キリア』なんて名前をしてはいるが、ここに居るキリアちゃんは正真正銘日本人扱いなのだ!……ハーフ扱いなので、見た目は普通に外国人だが。
なんでこんなことになっているのかと言うと……それは偏にミラちゃんのせい。彼女、構成要素と
そして、これがいわゆる『描写の欠け』ということになるのだが……原作において中国にあるはずの魔法学校は、その名前と実在を含めて明言されたことがない。魔法省があるのだから、確実にあるはずなのにも関わらず……だ。*9
その結果、中国系の魔法使いであるミラちゃんは、何故か日本の魔法学校である『マホウトコロ』からの留学生、という設定になってしまっているのである。なんて雑な扱い!
とはいえ、これは仕方のないこと。
原作を基準に作り上げられた世界である以上、そこに記載されていないものは──キャラの動きはともかく、設定面に関しては踏み込めないのは道理。
どこぞのVODサービスサイトの映画が、許諾を取れていない作品があるせいで、その作品にしか載っていない設定をどうにかして回避するために、あれこれと試行錯誤をする羽目になった*10……なんて話があるが、こっちは無理にオリジナルにはしなかった、ということになるのだろう。
まぁともかく。
私達二人が、日本の魔法学校である『マホウトコロ』からの留学生である、ということに間違いはなく。
「……むぅ、マホウトコロ……?」
(ひぃーっ!!)
その微妙な立ち位置的に、ミラちゃんが現状に疑問を持ち始めることこそ、今の私にとっての一番の恐怖なのは、言うまでもないだろう。……どうなる私!どうなるミラちゃん!(ヒント:爆死する)