なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「帰るって簡単に言うけど、八雲さんとかにはなんて説明するつもり?」
「あー、うん。帰っても
さて、罠かなにかはわからないが、とりあえず向こうのメッセージに乗ってみることにした私。
……なのだけれど。確かにクリスの言う通り、この姿で帰ったところで、向こうに
なので、それを活かして──私は国家公務員のキーアだと偽り、件のメールを受けた『俺』から依頼を受け、家族の様子を確認しに来た……みたいな感じでごまかしていこう、という次第と相成ったのであった。……え?作戦がガバガバ過ぎる?いやこれ以外にどうしろと?
「幾ら今現在
「……あら、どうしてダメなの?それが一番簡単そうだけど」
ポツリと口に出した案に、エリちゃんがそれでいいんじゃ?みたいな疑問を呈してくるが……とんでもない。
確かに、これまでの私と言えば、どこぞの
「……と、言うと?」
「俺に戻ってそのまんま、って可能性が高い」
「……ふむ?」
それは、中身と外見の一致による、状態の固化。
言うなれば、私はここにいる『逆憑依』達の中でも一人だけ、安全かつ確実に元に戻る手段を持っている、ということ。
私の使う【星の欠片】が、物質の最小構成要素である、という話は何度かしたことがあると思う。そしてそれゆえに、ある程度の無茶ができるのだとも。
形態変化や他者への変身などもそれらに含まれるわけだが、それらは自身の要素……この場合は『虚無』を組み換えることで、それらのモノに変身しているという風に解釈することができる。
それを踏まえて、俺──自分自身に変身すると言うことがどういうことなのか、と分析していくと。
そもそもの話、現状の
唯一の違いは『俺か私か』という部分だけであって、含まれている情報に関しては変わっていないのだ、とも。
そんな状態だが、しかしそれを維持しているのは紛れもなく
ここで言いたいのは一つだけ。
「まぁ例え目があったとしても、中身と外身が揃ってしまうから、その時点で戻れなくなる……というか
無論、戻った
ただ、その場合であっても、キーアに戻ることはできないだろう。……そもそもの話、
その場合は彼女の一部に取り込まれて文字通り虚無る羽目になるので、正直やりたくもないしやるつもりもない。*2
「あー……そういえばその辺りの話で、一悶着あったんだものね、実際」
「レプリカはオリジナルに統合される……みたいな話?」
「間違ってはないけど、平気でぽこぽこ増える人に言われるとなんか混乱するなぁ」
いや、ここにいる私は増えてないでしょ?!……というエリちゃんの反論を聞き流しつつ、結論。
今の
サーヴァントに戦いを挑む一般人、みたいなものなので完全にお荷物だし、それ以前にここへのアクセス権まで失いかねない。
無論、何もかもが終わっても、元に戻る手段が見付からなかった……ということになれば、この方法で戻るのも吝かではないが……、その場合は私だけが元に戻る、という形になるので微妙。
そして仮に、
……本来キリアに会う、というのは発狂確定のSANチェックをさせられるようなモノなのだから、そりゃそうだろうとしか言い様のない末路が待っているわけなのだ。
そういう意味でも、
「な、なるほど……色々と便利な能力だと思っていましたが、予想以上に綱渡りなものだったのですね……」
「正式な取得手段だと、
「……なんか、サラッととんでもないこと言ってない?貴方」
さてなんのことやら?
まぁともかく、今の私が俺を装うのには、色々と無理があるということはわかって貰えたと思う。
そうなると、一番最初に言っていた作戦が一番確実、というのも宜なるかな、という気になってくるはず。……ガバガバではないのです、多分。
「ふぅむ……そうなると貴方、一人で行くつもりなの?」
「え!?」
「いやなんでマシュが驚くのよ……まぁうん、二人も三人も、見知らぬ人がぞろぞろ出向くのはちょっとなー、というか」
で、そうなってくると何人で出掛けるのか、ということになるのだが……冷静に考えて見知らぬ政府の役人が、何人もぞろぞろと押し掛けてくる……というのは、あまり気分の良い話ではないだろう。
私の実家はそれなりに田舎な方だし、こんな目立つ容姿の人間が何人も行けば、確実に噂になる*4。……それで向こうに変な弊害を被らせることになる、というのは私としても本意ではない。
ついでに言うと、政府の役人って言っているのにも関わらず、見た目幼女とか髪の色が赤とか青とか紫とかピンクとか、そういう黒・茶色以外の人間が向かうというのも、風評が良くないだろう。
容姿の奇抜さはある程度ごまかしが効くとは言っても、それにも限度はある。
ならば、道具などに頼らずある程度ごまかせる範囲──一人か、多くて二人で行くのがベスト、ということになるのは仕方のない話なのであった。
それゆえ、まず真っ先にマシュはNG。
髪の色にそのプロポーション……更には美少女。田舎に向かえば噂になる要素満載なうえ、そもそも中身が
特にうちの
なのでマシュはダメ、と言えば彼女は「そんなぁ」と項垂れているのだった。……ああうん、お土産買ってくるから我慢して下さい、マジで。
さて、マシュを除いて付いて来れそうな人、というと……。
「……んー、クリスとか?髪の色も奇抜じゃないし、服装も変じゃない。格好から『牧瀬紅莉栖』を連想される可能性はあるけど……まぁ、流石に本物だとは思われないだろうし」
「まぁ、そうね。エリザベートは論外、かようちゃんとれんげちゃんは政府からの役人と言い張るには小さすぎる……となれば、消去法で私にお鉢が回ってくるのは道理……か」
一番適正があるのはクリス、ということになるのだろうか?
ビワやハクさん、エーくんやイッスン君などは明らかに無理だし、CP君やカブト君も同じく無理だろう。
人の姿をしている、ということであればアルトリアも居るが……彼女は彼女で目立ちすぎる。私の外見が外国人である以上、もう片方も外国人風だと田舎での奇異の視線はごまかせまい。
……互助会の方から例のバッジを借りられるなら、どうにかなるかも知れないが……あれは数が少ないので無理だろう。
その場合、こっちでできるごまかし手段と言えば、基本的にはBBちゃんの手によるもの、ということになるのだが……。
「『申し訳ありませんが、暫く忙しくなるのでお手伝いできませーん!心苦しくはあるのですが、ご自分で頑張ってくださいね、せ・ん・ぱ・い?』……ねぇ」
「BBはいっつもタイミングが悪いわよね。まぁ、有能だから引く手数多、ってことなんでしょうけど」
うん、生憎とBBちゃんは別件でいないんだよなぁ!
……なので、アルトリアも今回は待機である。
なお、今うちに居ない人──具体的にはよその子であるシャナちゃんとか、はたまた銀ちゃんとかも候補に上がらないでは無かったが……。
「いやよ。悪いけど、今私ちょっと取り込み中なの」
「あー、俺も悪ぃんだけど、別件で忙しくってだな……?」
とのことで、こちらの誘いは断られることになるのだった。……あんまり期待していなかったのでダメージはないが、なんというかなんというか、みたいな感じである。
「どんな感じよ、まったく。……まぁいいわ。結局貴方達二人で行く、ってことでユカリには報告しておけばいいのね?」
「あー、うん。そういうことにしておこうかね。……ところでエリちゃん、なんで報告に行ってくれる、みたいな感じになってるの?」
「それは勿論、貴方の署名を貰って私のライブ許可の申請を……」
「マシュー、おねがーい」
「了解です、せんぱい。……お土産、楽しみにしていますね?」
「あっちょっ、待ちなさいマシュ!私のライブー!!」
出ていく時の背中が、ちょっと煤けていたマシュに再度手を合わせつつ、私は久々の遠出のための準備をするため、部屋に戻ることにするのだった。……あとエリちゃんは止めておいた。