なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

412 / 1297
面影があるかないかは人次第

「帰るって簡単に言うけど、八雲さんとかにはなんて説明するつもり?」

「あー、うん。帰っても()だとは気付かれないだろうから……国の職員から連絡を、みたいな感じで様子を確かめてこようかなーって」

 

 

 さて、罠かなにかはわからないが、とりあえず向こうのメッセージに乗ってみることにした私。

 ……なのだけれど。確かにクリスの言う通り、この姿で帰ったところで、向こうに()()であると気付かれることは(恐らく)ないだろう。

 なので、それを活かして──私は国家公務員のキーアだと偽り、件のメールを受けた『俺』から依頼を受け、家族の様子を確認しに来た……みたいな感じでごまかしていこう、という次第と相成ったのであった。……え?作戦がガバガバ過ぎる?いやこれ以外にどうしろと?

 

 

「幾ら今現在キリア(母さん)が居ないとはいえ、よもや『俺』に変身するとか無謀にも程があるし……」

「……あら、どうしてダメなの?それが一番簡単そうだけど」

 

 

 ポツリと口に出した案に、エリちゃんがそれでいいんじゃ?みたいな疑問を呈してくるが……とんでもない。

 確かに、これまでの私と言えば、どこぞの緑色の恐竜(ヨッシー)みたいにヘリコプターに変身したりとか、はたまた液状化してみたりだとか、結構人であることを捨てたかのような変身をしていたが……ことそれが『自分自身』となれば、少しばかり事情が変わってくるのである。

 

 

「……と、言うと?」

「俺に戻ってそのまんま、って可能性が高い」

「……ふむ?」

 

 

 それは、中身と外見の一致による、状態の固化。

 言うなれば、私はここにいる『逆憑依』達の中でも一人だけ、安全かつ確実に元に戻る手段を持っている、ということ。

 

 私の使う【星の欠片】が、物質の最小構成要素である、という話は何度かしたことがあると思う。そしてそれゆえに、ある程度の無茶ができるのだとも。

 形態変化や他者への変身などもそれらに含まれるわけだが、それらは自身の要素……この場合は『虚無』を組み換えることで、それらのモノに変身しているという風に解釈することができる。

 

 それを踏まえて、俺──自分自身に変身すると言うことがどういうことなのか、と分析していくと。

 そもそもの話、現状の()自体が、()という存在の構成要素が変質した結果として成り立っている、という扱いになる。……わかりにくければ、外見は変化しているけれどもDNAは変質していない、とでも思えばよい。

 唯一の違いは『俺か私か』という部分だけであって、含まれている情報に関しては変わっていないのだ、とも。

 

 そんな状態だが、しかしそれを維持しているのは紛れもなく()の側の性質。……正確には()自身に力があるのではなく、『虚無』を捉える感覚があるか否か、というところに起点があるわけだが……まぁ、ややこしくなるので割愛。

 ここで言いたいのは一つだけ。()の側には『虚無』を視る目はないので、『俺に戻ると私に戻れなくなる』という一点だけである。

 

 

「まぁ例え目があったとしても、中身と外身が揃ってしまうから、その時点で戻れなくなる……というか()に戻るのが自然だとは思うけど。……それこそ、この事態を引き起こした人の手でもなければ、二度とキーア()には戻れなくなるんじゃないかな?」

 

 

 無論、戻った()が本当に以前の()なのか?……という疑問は付き纏うが*1。一度視たのだから、その辺りの感覚が開いてしまう……なんて可能性もあるわけだし。

 ただ、その場合であっても、キーアに戻ることはできないだろう。……そもそもの話、キーア()の存在自体がわりと奇跡的なのだから、例え()が『虚無』を見えるようになったとしても、成り得るのはキリア()の方。

 その場合は彼女の一部に取り込まれて文字通り虚無る羽目になるので、正直やりたくもないしやるつもりもない。*2

 

 

「あー……そういえばその辺りの話で、一悶着あったんだものね、実際」

「レプリカはオリジナルに統合される……みたいな話?」

「間違ってはないけど、平気でぽこぽこ増える人に言われるとなんか混乱するなぁ」

 

 

 いや、ここにいる私は増えてないでしょ?!……というエリちゃんの反論を聞き流しつつ、結論。

 

 今のキーア()から、元の俺への変身は可能と言えば可能。……ただし不可逆であり、そうなってしまえばこちらの事情に関わることが難しくなる。

 サーヴァントに戦いを挑む一般人、みたいなものなので完全にお荷物だし、それ以前にここへのアクセス権まで失いかねない。

 無論、何もかもが終わっても、元に戻る手段が見付からなかった……ということになれば、この方法で戻るのも吝かではないが……、その場合は私だけが元に戻る、という形になるので微妙。

 

 そして仮に、()に戻ったあとも奇跡的に『虚無』を使い続けられたとしても──使い続けると自身も浸食される初代の『黄昏の腕輪』や、使えば最大HPが減る『ダークチップ』のように*3、いずれ大いなる虚無に招かれることになるのは必至。

 ……本来キリアに会う、というのは発狂確定のSANチェックをさせられるようなモノなのだから、そりゃそうだろうとしか言い様のない末路が待っているわけなのだ。

 そういう意味でも、キーア()という存在は奇跡的なのである。

 

 

「な、なるほど……色々と便利な能力だと思っていましたが、予想以上に綱渡りなものだったのですね……」 

「正式な取得手段だと、()()()()()()()()()()()()()()だからね、【星の欠片】って」

「……なんか、サラッととんでもないこと言ってない?貴方」

 

 

 さてなんのことやら?

 

 まぁともかく、今の私が俺を装うのには、色々と無理があるということはわかって貰えたと思う。

 そうなると、一番最初に言っていた作戦が一番確実、というのも宜なるかな、という気になってくるはず。……ガバガバではないのです、多分。

 

 

「ふぅむ……そうなると貴方、一人で行くつもりなの?」

「え!?」

「いやなんでマシュが驚くのよ……まぁうん、二人も三人も、見知らぬ人がぞろぞろ出向くのはちょっとなー、というか」

 

 

 で、そうなってくると何人で出掛けるのか、ということになるのだが……冷静に考えて見知らぬ政府の役人が、何人もぞろぞろと押し掛けてくる……というのは、あまり気分の良い話ではないだろう。

 私の実家はそれなりに田舎な方だし、こんな目立つ容姿の人間が何人も行けば、確実に噂になる*4。……それで向こうに変な弊害を被らせることになる、というのは私としても本意ではない。

 

 ついでに言うと、政府の役人って言っているのにも関わらず、見た目幼女とか髪の色が赤とか青とか紫とかピンクとか、そういう黒・茶色以外の人間が向かうというのも、風評が良くないだろう。

 容姿の奇抜さはある程度ごまかしが効くとは言っても、それにも限度はある。

 ならば、道具などに頼らずある程度ごまかせる範囲──一人か、多くて二人で行くのがベスト、ということになるのは仕方のない話なのであった。

 

 それゆえ、まず真っ先にマシュはNG。

 髪の色にそのプロポーション……更には美少女。田舎に向かえば噂になる要素満載なうえ、そもそも中身が()の後輩であるため、ともすれば会話の流れでボロがでかねない。

 特にうちの母親(キリアじゃない方)*5は勘が鋭いので、マシュの中身が楯であることに気付いてしまうかもしれない。……そもそもゲームする人なので、マシュをちゃんとマシュ(ゲームのキャラクター)として認識する可能性も高いし。

 なのでマシュはダメ、と言えば彼女は「そんなぁ」と項垂れているのだった。……ああうん、お土産買ってくるから我慢して下さい、マジで。

 

 さて、マシュを除いて付いて来れそうな人、というと……。

 

 

「……んー、クリスとか?髪の色も奇抜じゃないし、服装も変じゃない。格好から『牧瀬紅莉栖』を連想される可能性はあるけど……まぁ、流石に本物だとは思われないだろうし」

「まぁ、そうね。エリザベートは論外、かようちゃんとれんげちゃんは政府からの役人と言い張るには小さすぎる……となれば、消去法で私にお鉢が回ってくるのは道理……か」

 

 

 一番適正があるのはクリス、ということになるのだろうか?

 ビワやハクさん、エーくんやイッスン君などは明らかに無理だし、CP君やカブト君も同じく無理だろう。

 人の姿をしている、ということであればアルトリアも居るが……彼女は彼女で目立ちすぎる。私の外見が外国人である以上、もう片方も外国人風だと田舎での奇異の視線はごまかせまい。

 ……互助会の方から例のバッジを借りられるなら、どうにかなるかも知れないが……あれは数が少ないので無理だろう。

 その場合、こっちでできるごまかし手段と言えば、基本的にはBBちゃんの手によるもの、ということになるのだが……。

 

 

「『申し訳ありませんが、暫く忙しくなるのでお手伝いできませーん!心苦しくはあるのですが、ご自分で頑張ってくださいね、せ・ん・ぱ・い?』……ねぇ」

「BBはいっつもタイミングが悪いわよね。まぁ、有能だから引く手数多、ってことなんでしょうけど」

 

 

 うん、生憎とBBちゃんは別件でいないんだよなぁ!

 ……なので、アルトリアも今回は待機である。

 

 なお、今うちに居ない人──具体的にはよその子であるシャナちゃんとか、はたまた銀ちゃんとかも候補に上がらないでは無かったが……。

 

 

「いやよ。悪いけど、今私ちょっと取り込み中なの」

「あー、俺も悪ぃんだけど、別件で忙しくってだな……?」

 

 

 とのことで、こちらの誘いは断られることになるのだった。……あんまり期待していなかったのでダメージはないが、なんというかなんというか、みたいな感じである。

 

 

「どんな感じよ、まったく。……まぁいいわ。結局貴方達二人で行く、ってことでユカリには報告しておけばいいのね?」

「あー、うん。そういうことにしておこうかね。……ところでエリちゃん、なんで報告に行ってくれる、みたいな感じになってるの?」

「それは勿論、貴方の署名を貰って私のライブ許可の申請を……」

「マシュー、おねがーい」

「了解です、せんぱい。……お土産、楽しみにしていますね?」

「あっちょっ、待ちなさいマシュ!私のライブー!!」

 

 

 出ていく時の背中が、ちょっと煤けていたマシュに再度手を合わせつつ、私は久々の遠出のための準備をするため、部屋に戻ることにするのだった。……あとエリちゃんは止めておいた。

 

 

*1
事態を解決して戻るのではなく、裏技を使って戻っている為。正規の手段ではない以上、『キーアが俺の姿になっているだけ』と言われても否定はできない

*2
今でこそ両立しているが、本来はキーアとキリアは択一である。『俺』に戻ると言うことは、すなわち『(キーア)』を捨てることなので、そこから改めて戻ろうとしても、繋がるのはキリアの方である

*3
前者は初代『.hack//』シリーズ、後者は『ロックマンエグゼ』シリーズから。両者とも、使用しすぎると過大なデメリットを使用者に課してくる

*4
田舎でのコミュニティの狭さから来るもの。隠そうとしてもどこからか漏れてくる

*5
いつの間にかナチュラルに母扱いのキリアである

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。