なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁそんなわけで、一路私の故郷に向かうことになった私達なのだけれど……」
雑居ビルから出て暫くのこと。
街を歩く私達に向けられる視線は疎らで、そこまで注目されているような様子はない。
無論、時折ちょっとした視線は向けられるものの……「綺麗な人だなー」程度の感想で終わっているのか、その視線が長く続くことはない。
……いやまぁ、実際にはその感想のあとに「でも関わりたくはないかなー」的な言葉が続いている可能性が、大いにあるわけなのだけれど。
ちらりと背後を覗き見るも、
それを確認した私は視線を前に戻し、『どうしてこうなった』と小さくため息を吐くことになるのだった──。
「はい?行けなくなった?」
「ごめん!どうしても抜けられない用事が入っちゃって……」
その報せが届いたのは出掛ける日の朝、家から出ようと玄関の扉に手を掛けた、まさにその時のことであった。
顔の前で手を合わせ、そのままごめんと頭を下げるクリスの姿に、思わず呆気に取られる私。
なんでも、お偉いさんとの打ち合わせ的なモノがあることを、琥珀さんがすっかり伝え忘れていたとかで。……寝耳に水気味に起きてすぐその報せを受けたクリスはというと、これから琥珀さんのラボに直行して、色々と準備をしなければいけないらしい。
こちらとしては、別に一人であちらに向かうこと、それ自体に問題はなく……強いて言うのであれば、人手が足りなくなることによって、親への説明の際にちょっとしたボロが出る可能性が上がった……という点が問題かなーとは思うものの、それが彼女を引き留めるに足る理由かと問われれば、ちょっと首を捻らざるをえず。
「まぁ、うん。こっちの用事はあくまでも私にとっての用事だし、そっちの方が大切だろうから、そっちを優先してくれればいいよ」
「ごめん、どこかで埋め合わせはするから!……ほんっとあの
なので、クリスにはお仕事頑張ってと伝え、去っていくその背に手を振ることになるのだった。
そうして彼女の姿が、曲がり角に消えていくのを一通り見送って……はてどうしたものか、と一つ息を吐く私。
特段
だからといって、一応は『父が危篤だから帰ってこい』という火急*2の連絡を受けての帰郷なのだから、予定を後ろにずらすにしても限度というものがある。
……と、なれば最初の予定通り、一人でも向かうのが筋ということになるわけなのだが……。
「……うむぅ、
「キーアは物騒。アスナ覚えた」
「うひゃぁっ!?びびびビックリした……って、アスナちゃん?」
思わず溢れた本音に、よもや返事が来るとは思っていなかった私はというと、小さく飛び上がって声の主を確認する羽目に。
……そうして視線を向けた先には、こちらの背後にひょっこりと陣取って首を傾げていた、アスナちゃんの姿があったのだった。
「前回忘れられていたので。顔見せ」
「い、いやその、別に忘れていたってわけじゃなくってね……?」
私怒ってます、というようなジト目を向けてくるアスナちゃんに、思わずたじたじになる私。……どうにも先日、同行者としては
とはいえ、彼女が例に挙がらなかったのは、仕方のないことなのだ。
アスナちゃんはこちらに来てから日が浅いうえ、そもそもその容姿がとても目立つ。……これほどまでに綺麗な真っ赤な髪とか、日常生活で見掛けることなんてほとんど無いだろう。……っていうか自然な髪の色としては違和感バリバリである。*3
それに人格面にしてみても、どちらかと言われれば幼さが残る、と判断されるアスナちゃんである。……国の職員と言い張るには、ちょっとどころか結構無理がある、と言えてしまうだろう。
なので、最初から考慮に値しないということで、わざわざ口に出さなかっただけで。別にアスナちゃんのことを忘れていたわけではないんだよー、と説明をする私。
「そこに関しては大丈夫」
「ええ?私にはなんにも大丈夫には見えないんだけど……」
「
「ぶふぅーっ!!?」
……なのだが。彼女はそこらへんの話については、最早問題視しておらず。
意外な……と言うよりも鬼畜極まる手段で、こちらに同行しようと画策していたのだった。……『大丈夫じゃない』の意味が変わるぅ!!*4
「だ、誰から教えてもらったの『手込め』とかなんとか!?」
「ジャ◯プは子供の教科書。アスナ覚えた」
「
彼女の口から飛び出した言葉に、思わず絶叫する私である。
……◯ガジンキャラにジャ◯プ読ませてんじゃねーよあの天パぁっ!!
え?子供の教育に悪いのは、圧倒的に◯ガジンの方?ホントに~?(単行本ではっちゃける一部のラブコメとかを見ながら)*5
ともかく、世間体が悪すぎるので手込め云々はやめて欲しい。せめて友達になったとかにして頂けませんかね……?いやそっちもそっちで、世間体が悪いことに代わりはないんだけど。……年下の子は、男女問わず地雷なんやで……?*6
「ああ、そうそう。それが言いたかった(フンス」
「なんでドヤ顔なのよぅ……」
そんな感じのこちらからの注意はというと、彼女には軽ーく受け流されて有り様なのであった。……私の手には負えないんですけど、これどうすればいいんで……?
「話は聞かせて貰ったわ!なりきり郷は破滅する!」<スパーン
「パイセン?!」
「パイセン言うなっ」
なんて風に困惑していた私の前に、更に現れるは混乱の元。
突然現れた襖をスパーンっと開けて出てきたのは、なにを隠そう我らが
その襖どこから持ってきたんです?……というツッコミも出ないままに、話は更なる混沌へ転がり落ちていくのだった……。
「……で、パイセンは何故ここに?」
「紫からの要請よ。お前の帰郷にそいつを連れて付いていけ、ってね」
「ゆかりんからの……?」
目立つ奴×2、という状況では流石に落ち着けないので、近くの喫茶店に雪崩れ込んだ私達。
……え?お前の
「カラブリだっけ?3Pカラー?」*7
「なんで悉くずれてるのよ……それを言うんならカラバリだし、2Pカラーでしょ」
「ああ、そうそう。そうともいう」
「なんでしんちゃん風……?」
アスナちゃんの交遊関係について、色々と気にしておいた方が良いのかも知れない……なんて気持ちを抱きつつ、彼女の言葉を訂正する私である。
……なんだろう、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!魔滅の巫女』みたいなの始まってるんです?私には付いていけないので放置で良いですかね?
「まぁ、劇場版ヒロインとしては都合が良さげではあるわね、こいつ」
「ですよねー。……で、いい加減聞きたいんだけど……ゆかりんの指示ってのは……?」
まぁ、そんな与太噺は置いといて。
パイセンの言うところによれば、アスナちゃんがここにいるのは、私に付いてくるため。で、パイセンもそれの同行者、ということになるらしいのだけれど……正直に言わせて貰いましょう。なんで?(困惑)(どう考えてもトラブルの香り)(そもそもごまかしきれねぇ)(ちくわ大明神)
「ちくわパンー」*8
「……まぁその辺りは置いといて。まぁ、
「
……というこちらの疑問は、どこからか取り出したちくわパンをもぐもぐしているアスナちゃん……ではなく、それをスルーしたパイセンの口から、その答えが返ってくる。
曰く、
……具体的に言うと、今回の私の帰郷には、今ここにいる二名を連れていくように、みたいなお告げがあったのだとか。
「誰ですかそんな意☆味☆不☆明な予言をしたやつは。シバき回しちゃる」
「落ち着きなさいよ……私達だって、そういうの無かったらわざわざ付いて行こうだなんて思わなかったわよ、まったく」
「私はトランクに詰まってでもついてく。ついてくついてく*9」
「……若干ホラーチックなの止めない?」
嫌ですよ、トランクに
まぁともかく、どうやら今回の帰郷、一筋縄ではいかないことに間違いはなく。
「お前のやることなすこと、一筋縄で行くようなものだった試しがないんじゃないの?」
「
「目を逸らすくらいなら反省しなさいよ、まったく」
「そうだそうだー。わたしをほうちしたことにたいして、ばいしょうとしてこっぺぱんをようきゅうするー」
「……いや、なんで相良君……?」*11
この愉快な仲間二人との旅路が、ここに確約されてしまうことになるのだった。……見た目が痴女な先輩と、何故かたれぱんだ染みて溶けている新人という、問題児以外の何者でもない二人との旅路が、な!
「……実は私を心労で殺そうとしていません……?」
「アンパンマンパンー」
「キャラものだから、名前だけ聞くとワケわかんないことになってるわよね、それ」
なんか延々とパン食ってるアスナちゃんと、そんな彼女の奇行に頷くパイセン、という姿を見た貴方はSANチェックです。……一時的発狂かな!?