なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほどなるほど。どんな病気なのかと思っていたけれど、見た目が
「あくまでも症状の一例として、ですがね。……そもそも髪が突然赤色になるとか、普通の病気としては到底説明が付きませんから」*1
無事に次善の策が引っ張り出されてしまったことに、思わず白目を剥きそうになりつつ。
再び不貞腐れてしまったパイセンを宥めながら、母に対してさらに詳細な説明を加えていく私なのであった。
曰く、今までのことは機密に抵触する内容であるため、その全てを明かすことはできず。
今貴女が気付いてしまった案件は、情報レベルとしては2──通常であれば話をごまかすことを推奨される内容だが、それでもなお気付かれてしまった場合には、説明をしてもよいとされるギリギリのラインである*2……みたいなことを口に出しながら、改めて二人について紹介していくことに。
その流れで、この病気に罹患した人は、何故か創作物のキャラクターのような容姿・言動を獲得していくのだ……ということも話していく。
無論、この辺りの話も全部、事前に打合せしておいた作り話なのだが……これ以上本当の事情について気付かれてしまうのは宜しくない、ということは言うまでもない。
特に『アニメキャラがやっていることなら、それら全部やれちゃいます』……みたいな、私達の能力面の部分については、作り話に合わせるのなら完全に
そこまで踏み込まれてしまうと、流石に
イヤダナー、ニンゲンガナニモナシニジバクナンテ、デキルワケナイジャナイデスカヤダナー。ハハハ。
そう、全ては現実、今目の前にある現実こそが優先される……!
とばかりに、ごりごりのゴリ押しである。そこにあるものこそが事実だからね、仕方ないね。
……突拍子がなくても実例があるならどうとでもなる、という論説がどこまで通用するか?……みたいな社会実験をさせるのは、切実にやめてほしい次第である。
「それで──ええと、もしかしてうちの息子も、似たような感じに?」
「ええ、まぁ。……これらがどういう病気なのか、なにを目的としているのか?……と言うところについては、目下調査中です。そんな状態で世間に情報が漏れてしまえば、創作物のキャラクターになりたいと言うような願望を持つ人達が、挙って感染したがるなどという、一種の
「そしてそのパンデミックの結果、予想外の変異を起こして致死率が高まっても困る*5……ということですか?」
「──御母堂様の理解が早いようで、こちらとしても大助かりでございます」
ともあれ、ようやく本題である。
この短期間で色々起こりすぎて、もはや記憶の彼方に行きかけていたが……そもそも今回の訪問の目的は、実家から送られてきたメールの真意を確かめる、というところにある。
その前段階で盛大に躓いていた、というところからようやく軌道修正が叶った、というのが今の状況になるわけなのだけれど……。
「それで、そろそろメールの方に話を移したいのですが……」
「ああ、御免なさい。そういえば息子からお願いされてこちらに窺った、みたいなことを仰られていましたね」
「ええ、そうですね。文面を見て、とても驚いていらっしゃいましたよ、彼」
その意図が読めない、という点でもな!
……という本音は口内で噛み殺しつつ、改めて母に尋ねてみる私。
歓迎の血だまりスケッチ*6に驚かされ、ペースを乱されはしたが……同時に、そういうことを素でやる人物か否かと問われれば、間違いなく『やる』人であることは、もはや一連の流れから疑いようもなく。
……わかってたんだからもっと上手く反応できたんじゃ、みたいな意見もあるだろうけど、その辺りはこっちに戻るのが久方ぶり過ぎて、あれこれと対応ミスったみたいな感じでですね?……思考が大分支離滅裂だけど、大丈夫か私?
まぁともかく、これからはもうペースを乱されることはないぞ、と真剣な表情を浮かべ直した私は。
「なるほどなるほど。……うちの息子とそんなに親密ということは──実は貴女、うちの息子の
「………………(突然の爆弾発言に虚無になった顔)」
「ぶふぅっ!!?」
「お姉さん、汚い」
その彼女から飛び出した言葉に、いやはや母親には勝てねぇなぁ……と、儚げな笑みを浮かべる羽目になるのでした。
その質問は想定してねぇですわ(真顔)。
「ええと、もしかして変なこと聞いちゃったかしらね……?」
「ああいえ、お気になさらず。息子様とはあくまでも業務上の関係ですので。御母堂様の思うような関係には、とてもではありませんが百歩どころか千歩以上足りないと申しますか」
(……む、ピンと来た)
突然ぶっ込まれた『貴女、実はうちの息子の
……結局ペースを乱されっぱなしなのは、もう無視・もとい諦めの境地である。
それ気付けてねーから、気のせいだから。霞を幽霊と見間違えているようなもんだから。可能性微塵もねーから。……自分同士のカプは良いものだ?うるせー
ともあれ、気管に茶が入ったのか、盛大に噎せているパイセンの背を擦るアスカちゃんを横目にしつつ、引き攣った笑みを浮かべながら軌道修正を図る私。
なにが悲しくて自分同士でカップリングされねばならんのか……などとは口にせず、強引に話を戻していく次第である。
その甲斐あってか、謎のニヨニヨ笑いを浮かべていた母はと言えば、なにかを思い出すように天井に視線を向けながら、ぽつりぽつりとこちらの質問に答え始めるのだった。
「そうねぇ……お父さんが危篤、というのは別に間違いでもなんでもないのよねぇ」
「……!それは一体どういう……?」
「それがねぇ、お父さんったら軒先に蜂の巣ができたからって、それを自分で処理しようとしちゃってねぇ……」
「まさか、それで刺されて重体に……?!」
そうして語られ始めた内容は、父が軒先にできたスズメバチの巣を、どうにか処理しようとしていたというもの。
それを聞いたアスカちゃんはと言うと、まさか刺されたんじゃないのか、と声を挙げたのだけれど……うん、ちゃうんやアスカちゃん。
「いえ、それに関しては
「……私の耳がおかしくなったのかも知れないから、改めて確認させて欲しいんだけど。……ハチをどうしたって?」
「いえね、全部叩き落としたんですよ、外で飛んでいたのは。まぁ、ラケットがあれば意外とイケる、みたいな感じでですね?」
「あー、虫相手にラケットって、結構オーバーキルですよねー……」*8
「でしょう?的確に叩き落とすのは……まぁちょっとコツがいるかもだけれど」
「……えっとこれって、私がおかしいって扱いなわけ?」
「さぁ、どうだろねー……?」
私もとい俺なら(ハチ嫌いなので)いざ知らず、うちの親父殿に限ってハチに刺されて重篤、なんてことはあり得ない。
ラケットを使っている分、昔に比べれば身体能力が衰えてしまっている、ということは窺えるものの……。
それでも刺されるだなんて以てのほか、そんなことになれば末代までの恥だのなんだの言いながら、大立ち回りを見せたに違いない……というのは、なんとなく想像することができる。
なのでまぁ、ハチそのものについての心配はしていない。……ここで心配するべきなのはもう一つ。
「それももしかして、うちの子から?」
「まぁ、確かに御両親方はお若いみたいですけれど……それでも子供の方からしてみれば、それなりに歳を取っていると認識していてもおかしくない、というわけでして」
「なるほど。……うーん、お父さんが知ったら、怒鳴り込んで来そう」
それは、父の年齢によるもの。……寄る年波には勝てぬと申す通り、加齢による影響というものは、どうしても無視しきれないもの。
例え我が父が、子供が大学生だけと四十代……なんて若さを誇っていたとして、急激な運動を行えば──、
「え、ぎっくり腰?」*9
「まぁ、そうなりますねぇ。アレだけラケットを振り回していれば、次の日筋肉痛からの腰をヤる、なんていうのはもはや既定事項のようなもの……と、どうされましたか芥さん?」
「……若い若いとは思っていたけれど、若すぎるでしょアンタ達……!?」
その流れで、体を痛めてしまうのは自明の理。
危篤も強ち間違いではないとは、すなわち腰を痛めて起き上がれないということ。
それにより、寝床から病床に緊急搬送されたのだと母が告げるのを聞いて……いや、正確には父と母、その双方の年齢を聞いたことによって、信じられないとばかりに話の流れを切るパイセンなのでありましたとさ。……いや、驚くところかなそこ……って、はっ!?
「なるほどなるほど、そちら様は知らなかったけれど、貴女は知ってる……ってことでいいのよね、これ?」*10
「……黙秘させて頂きます」
再び復活した母のニヤニヤ笑いに、思わず冷や汗を掻きつつ。
これ、もう一度軌道修正するの無理なのでは?……と投了したくなってきた私なのでありましたとさ。
……この場にマシュが居なくて良かったなぁ、なんて感想しか浮かばないんですがそれは。