なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「おーい、母さーん。手伝いにき……ってわぁ!?誰この美人さん達?!」
「あ、お帰りみっちゃん。この人達はね、お兄ちゃんのお願いでうちまで来てくれたお役人さん達よ」
「お、おう……こんな美人さんが役人さんなのか……都会はスゲーね……」
このくらいの大きさの畑だったら、今からやると夕方くらいまで時間が掛かるかなぁ……。
なんてことを思っていた私は、背後から聞こえてきた少女の声に、思わず背を震わせることとなるのだった。
なんでかって?それは……。
「……あー、アイツの妹?」
「そうですね、うちの子の妹の一人です。この子は次女の方、ですね」
「あ、どうも。兄がお世話になってます」
隣のパイセンが、母に問い掛ければ、返ってくるのは想像通りの言葉。……最近は長いこと顔を見ることもなかったが、流石にその声を聞き間違えるはずもない。
振り返ればそこにいた、俺の妹──
「うーむ、兄ちゃんの好きそうな見た目……実は病院じゃなくて、怪しいお店に捕まってるとか……?」
「違います。……というか、怪しいお店ってなんですか、怪しいお店って」
「国がキナ臭いのは、いつの世も同じよねぇ」
「国がやべぇ?」
「茶化さないでくれますか二人とも?」*1
改めて妹に(嘘の)挨拶をした私達は、そのまま農作業に精を出すこととなったのだけれど……さっきから妹の視線が私に突き刺さっているのが、背中越しにも感じられてしまうために、微妙にやりにくい感じになっているのだった。
さっきは母も似たようなことを言っていたけど……いや、そんなに分かりやすい?俺の好み。一応対外的には黒髪ロング好き、って感じで通してたはずなんだけど。
まぁ、今の俺は
ともあれ、そうやって視線を向けられていると仕事がやり辛い、というのは確かな話。
なので、彼女の興味を一旦断ち切らねばと声を掛けようとしたところ、先んじて返ってきたのがさっきの彼女の言葉なのだった。
いや、怪しいお店て。お兄ちゃんそんな知識を付けること、許した覚えありませんよ!……はい?一般的に男子に比べて女子の方が、知識の面では早熟なもの?それとこれとは話が別なんだよなぁ……。*2
まぁお察しの通り、我が家は家族みんながサブカル好きなので、恐らくは少女漫画とかでその知識を仕入れたりしているのだろうけど。
……世の中の少年諸君、騙されたと思って適当な少女漫画を読んでみなさい。自分達がコ○コ○コミックで爆笑している間に、女子達は二学年三学年先で話すような内容に触れている、ということを思い知るだろうから。*3
時折
……ああでも、アンソロジー系の本はしっかりゾーニングして欲しいかも。時折絵の綺麗さに惹かれて、腐の道に足を踏み入れる子もいるわけなのだし。*4
まぁおかげさまで?
閑話休題。
妹の些細な言葉に、思わず反論してしまった私だが……何故か横の二人に茶々を入れられる羽目に。お前らどっちの味方やねん。
その流れで、母と同じく妹までもがアスカちゃんと意気投合していたし……なるほど、ここが地獄か。
はぁ、と小さくため息を吐いて、野菜の側に生えていた雑草達を抜きに掛かる私。……現実逃避言うなっ。
「ああそうそう、そろそろみんな帰ってくる頃だから、人手が増えて作業も楽になりますよ~」
「そうなる前に終えたかったですね……」
「あら、どうして?」
「絡まれるのが目に見えてますからね……」
「あらあら」
そんな中、母から告げられたのは絶望の一言。……そりゃそうだ、さっきおやつ時だったのだから、学生組はそろそろ戻ってきてもおかしくはない。
無論、部活やらバイトやらでまだ戻ってこない面々もいるだろうが……少なくとも、三男に関してはそろそろ戻ってくるはず。
そうなればうちの家族のこと、さっきの妹みたいに興味津々でこちらに突撃してくるに違いない。
ただでさえ別人としての演技をしているのだから、余計な心労など背負いたくもないのである。……だからさっさと終わらせたかったんだけどなぁ。
とはいえ、愚痴っていても仕方ない。
こうなればせめて長女と次男が帰ってくる前に、母の手伝いの全てを終えてしまわなければ……!
「おーい、兄ちゃんの嫁さんが来たってホントー?」
「」
「……がんばるぞい、したままフリーズしたわね」
「わっ、わっ、本当に固まる人っているんだ……!」
「あとお前は興奮するところ間違ってない?」
そんな私の決意は、またもや背後から聞こえてきた声により、容易く瓦解することになるのでありました。……神は死んだ!*6
「どうも、次男の
「……?声が渋くない。見た目も渋くない。なんで?」*7
「ねぇ母さん?なんで俺は初対面の子にいきなりディスられてるの?」
「ごめんね譲二、私がお前を渋く産んでやれなかったばっかりに……」
「うーん、そこは別に気にするところじゃないかなー」
目の前で繰り広げられている即興コントに、思わず苦笑を浮かべつつ。……どうしてこうなった、と頭を抱えたくなる私である。
さっきの声は三男の『
案の定作業は滞り、突然の自己紹介祭りが開催される運びとなったのだった。……これが山の中でなければ即死だった……!
「人目に触れる的な意味で?」
「そうですね。ただでさえ、私の髪の色は目立ちますし」
すすす、と寄ってきた妹が、こそこそとこちらに耳打ちしてくる。……なんで耳打ち?とは思うものの、内容については間違いでもないので首肯する私である。
現在、アス
対して私はと言えば、田舎では目立つ金色の髪なので、この畑がもっと住宅地に近いものだった場合、嫁だなんだの騒動はあっという間に街全体に広がり、二度とこの地の土を踏むことが叶わなくなっているところだった。
……え?だったら髪の色をちゃんと黒にしとけばよかっただろうって?……キーアが黒髪?……っていう違和感に耐えきれなかった、という面がなくはない。
今現在の
……え?最初この街に来た時、お前さん黒髪だったろうって?それに髪の色も
前者に関しては、実態のない謎の旅行者として振る舞うモノだから、すぐに戻せるってこともあってそこまでストレスでもなかったし。
後者に関しては、真っ赤な髪のアスカちゃんが目立つって言ってるのに、ピンク髪に分類される私がそのまんまの髪色で田舎を歩けるわけないじゃん、というか。
まぁともかく、今の私の姿は譲歩した部分が多分にあるということ。
それでもなお、田舎に居れば目立つ容姿であることに違いはないわけで。……うん、山にあるんじゃなきゃ畑の手入れに関しては断ってたっての。
「うーん、そういえばキーアさんって外国の人なの?」
「いいえ?半分異国の血が流れてはいますけど、国籍は普通に日本人ですよ?」
で、『目立つ容姿』ってところに引っ掛かりを覚えたらしい妹から、私の出身に関しての質問が。
ここだよ、とは言えるわけもないので、いつも通りに偽造身分証を提示する私である。……大きい時と小さい時で別の身分証を持ってると、時々混乱するよね。まぁ今回はちゃんと、大きい時用のやつ持ってきてるけど。
「ふむふむ。……わっ、意外と年齢が高い……!」
「おイぃ?私のことなんだと思ってたの君は?」
「若いのにエリートかーすごいなーあこがれちゃうなー。……みたいな?」
「……お、おぅ」
そうして私の身分証を見た妹の感想は──それ、私の中身が俺じゃなかったら、相手を不機嫌にさせてもおかしくないやつだからね?……と、ツッコミを入れたくなるようなものだった。
貴女は若作りですね、なんて言われて喜ぶ人はそう多くないだろう。本人にそのつもりがなくても、だ。
我が妹ながら、迂闊なやつよ……的な思いで発した言葉はと言えば、うっかり出ていた謙虚なナイトにカウンターを合わせられ哀れにも地に伏せる金髪の雑魚がいた!……いやブ○ント語なんてどこで覚えたんですかねこの子。
思わず唖然とする私に、妹はニッコリと笑ったかと思えば。
「そろそろ向こうの自己紹介も済んだみたいですし、いい加減作業に戻りましょう?」
「ああうん、そうね。人手が増えたと言っても、悠長にしてると日が落ちちゃうでしょうし」
こちらの背を押しながら、早く行こうと急かしてくる。
実際、弟二人と妹一人が帰って来たことにより、人手は二倍近くになったものの。
逆に言えば、学生である彼らが戻ってきたということは、日没まで時間がそんなに残っていない、ということを示しているとも言える。
流石に夜中の山にろくな灯りもなく滞在する、というのは色んな意味で自殺行為でしかないので、妹の言葉には特におかしなところはないはず、なのだが……。
「……」
「どうしました?」
「……いえ、なんでも。早く終わらせてしまいましょう」
「はーい」
なんだか妙な違和感があることに、小さく首を捻りつつ。
兄ちゃんハーレム野郎だった!……などと意☆味☆不☆明な言葉を述べていた上の方の弟に、