なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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寡黙な人は大体うちになにかを秘めている

「ええと、なんでわかったので……?」

「なんでもなにも、自身の子供を見間違える親なんているはずがあるまい。──いや、随分と綺麗になったとは思ったが、な」

「ナチュラルに超人なとこ見せてくるのやめて貰えません?(真顔)」

 

 

 父に事情を説明しに病室に来たはずが、寧ろ一目見られただけで全てを看破された件。

 いやまぁ、正確には説明しに向かったんじゃなくて、あれこれとごまかすために向かった、というのが正解なんだけども。……結局バレてしまっているので、どっちでも似たようなもんである。

 

 そんな感じで父のいるベッドの横へと、壁際に置いてあった丸椅子を持ってきて座った私はと言えば、朗らかに笑う父になんとも言えない表情を向けることになっていたのだった。

 昔から色々と訳のわからない人であったが、暫く見てなくても結局訳のわからない人のままである。……なんだろう、魂の形でも見て判別してる*1、とかなんだろうか?

 

 

「うむ?いや、そう小難しいことではない。視線の動き、細やかな癖、呼吸の仕方……本人と照合できるものがそれだけ揃っていたからこそ、お前だと判別できただけのこと。その証拠に、最初の言葉はちょっとだけ半信半疑だっただろう?」*2

「普通は全部『疑』で埋め尽くされるものなんですよねぇ……」

 

 

 などというこちらの予想は、あっさりと否定されたのだが。……いや、そっちの方が怖くない?どんだけ細かいところ見てるのさ。そもそも性別変わってるんですけど?

 

 ともあれ、こうなってしまうと当初の予定は全て白紙となり、やれることと言えば普通に近況報告、ということになってしまう。

 ……いやまぁ、守秘義務もあることだし、あんまり詳しいことについては言えないけども。なので、語っても特に問題無さそうな話をチョイスして、会話に花を咲かせることとなる。

 

 

「……ふむ、それはまた、随分と大掛かりなことになっているのだな」

「全部纏めて病気って扱いになるのも、なんというか仕方のない話っていうか。原因もまだよくわからってないから、ある日突然巻き込まれる……なんてことになってもおかしくないし」

「それは確かに……ちょっと恐ろしいな」

 

 

 ところで、基本的に父は相手の話を聞く側の人である。

 さっきの異様なまでの洞察力は、一連の会話の中で相手がなにを一番主張したいのか?……みたいなところを察するのに使われているため、結果としてこちらは()()()()()()()()()()()()()()()、という形になることが多いのだが……。

 

 

「なるほど。ではこうすれば良いのではないか?」

「え、もうなにか思い付いたの?……うわ、相変わらず話してないところまで網羅してる……」

 

 

 その『好き勝手語っている』情報の中から、必要な部分をピックアップし、それに対しての勘案を行う……なんてこともさらっとやって来るということを、差し出されたメモを見て改めて思い知らされることとなるのだった。

 一を言えば十で返ってくる*3というか、こちらの会話の起こりの時点で既に着地点を見据えているというか……とにかく、話が早いのが聞き手となった時の父の特徴だ。

 

 仕事でも補佐役が多いとか聞いたことがあるけれど、そりゃそうなるよね、みたいな。……っていうか、下手な創作より創作めいたスペックをしていらっしゃいますよね父上殿?

 ……みたいなこちらのツッコミには、大抵不敵な笑みを返されることとなるのでした。

 なんやこのイケオジ、とてもじゃないがゆかりんには見せられねぇな!(おじ様趣味的な意味で)

 

 

「……む、今誰かがくしゃみをしたような……?」

「空間遮断っ!!」

「ぬ?突然大声を出してどうした?」

「ちょっと知り合いの揶揄を閉め出しましたっ!」

「ふむ?……よく分からないが、普段大人しいお前がそれだけの大声を出したのだ、まぁ必要なことだったのだろうな」

(普段は大人しい……?こいつが……?)

「……なんですかパイセン、その疑わしげな眼差しは」

 

 

 なお、父が『どこからか見られているような気配を感じる』とかなんとか言っていたことにより、思わず能力を使ってしまう事態になってしまったわけだが……しゃーない、相手がゆかりんなら必要経費(趣味はあくまで自身の従者に向けて貰う)、ということで……。

 私の目の保養がー!……的な声が聞こえた気がしたが、華麗にスルーする私なのであった。……監視に託つけて趣味を完遂しようとするんじゃありません。

 

 あとパイセン、そこで疑わしげにこっちを見るんじゃありません。

 一応言っときますが、素の俺は物静かな文学青年なんですよ?……ホントですよ?

 

 なお、原作だとゆかりんと同じくおじ様趣味のあるアス()ちゃんはと言えば、この姿ではそういうのに興味はないということなのか、普通に父に遊んで貰ってキャッキャと喜んでいたのだった。*4

 ……珍しく普通の子供みたいな行動!

 

 

 

 

 

 

 はてさて、長話をするのにも次第に話題が減ってきたため、そろそろお暇しようかと言う話になったわけなのだが。

 

 

「そういえば、いつ頃退院なの父さん?見た感じ、腰をやったって言う割にはわりと元気そうだけど」

「無論、見たままだ。腰をやったと言っても、所詮は軽く捻った程度。大事を見て休養を取ったというだけで、退院自体はもうすぐのことだろう」

「なるほど……?」

 

 

 アスカちゃんがすっかり懐いてしまっているが、その仮定で思いっきり高い高い(天井近くまで放る、などのわりと負担の掛かりそうな行動多数)とかしていたので大丈夫なのか?……みたいな感想が出てくるのは仕方のない話でありまして。

 

 なのでその辺りのことを尋ねて見たわけなのだけれど、どうにも危篤云々の話は、こちらに帰ってこいと告げるための口実以外の何物でもなかった……ということを改めて聞かされる形になるのだった。

 ……まぁ、傍目には元気そうに見えるけど、父がそれなりの年齢であるということは間違いないし。

 今までは大丈夫だった動きで腰を痛めてしまった、という事実を重く見て入院を選択する……というのも、別におかしな話ではあるまい。

 ……ただ、一つ言わせて貰えるとすれば。

 

 

「便りがないのは良い便り*5、みたいなことしてた私が言うのもなんだけど……心配させないでくれよ、父さん」

「……うむ、その辺りはお相子様、ということだな」

 

 

 一切心配をしなかったのか、と言われればノー。

 仲が良くなかったというのも、元を辿れば俺の方が父に気後れしていた、というところの方が大きい。……本当の意味で家族仲が拗れている楯とかに比べれば、随分と恵まれている環境だというのは間違いではないだろう。

 ゆえに──こうして半ば騙すような形でこちらに連絡を入れてきたということに対して、両親に少々怒りが沸いている部分、というのも無くはないのだ。

 

 ……まぁ、その点に関しては今父が言った通り、お相子様なところもなくはないのだけれど。

 実家を出てからは家に連絡を入れるなんてこと、ほとんどしてこなかった人間なので、私。

 

 ……というようなことを白状したところ、パイセンからはジト目を向けられることとなったわけなのだが……。

 

 

「この姿になって、ちょっと冷静に自分を見れるようになったというか。……親へのコンプレックスなんて、俺のそれはちっぽけなものだったというか……」

「……まぁ、私が口を挟むのも筋違いだし、特に追求するつもりもないけど」

 

 

 今こうして冷静に語っていられるのも、今の私が昔の俺よりも冷静に物事を見ていられるから、というところが大きい。

 

 昔の俺のままだったら、父とここまで静かに語り合う、なんてことはできなかっただろう。……わりと反抗期のままだったし。

 ……と言った感じの心情を吐露することにより、一定の理解を得られることとなるのだった。

 

 

「……そうだな。まぁ、言うべきことは色々あるのだろうが……とりあえずはすまん、からか」

「……そうだね。こっちも、ごめん」

 

 

 時間が解決するもの、というものもある。

 この場合は、単純な時間経過というわけではないけれど……それでも、こうして和解できたのであれば、それはそれで喜ばしいことだろう。

 苦笑いと共に、互いに謝罪を送りあって。

 

 

「おおい、(きょう)。見舞いに来てや……どちら様?」

「…………」

 

 

 さてどうしようか、とここからどうするかを考えようとして。

 病室の入り口からひょっこりと顔を覗かせた男性の姿に、思わず顔色を消すことになる私と父なのであった。

 

 パイセンとアス()ちゃんは、よく分からないとばかりに首を傾げているが……亜希だけは、彼が誰なのかを知っているために愛想笑いを浮かべている。

 

 

「……お邪魔しております。私はこういうものでして」

「ふーん?……なるほどなるほど、またやけに綺麗な子だなぁ。……あっ、もしかして京のやつも息子がどうとか言ってたから、そっち関係で?」

「まぁ、はい。息子さんにご連絡を頂きましたので、確認のために」

 

 

 とりあえず礼儀として挨拶をしたものの……持っていた名刺が偽装用のモノであったこともあり、そこに書かれた肩書きからなんとなく事情を察せられた様子。

 ……なんでどいつもこいつも洞察力高いのだろう。

 若干の苦味を隠しつつ、私もまた愛想笑いを浮かべながら、相手との会話を続けていく。

 

 突然現れた、この人物。……彼こそが、楯の父親であるということは──わざわざ口に出さずとも、わかる人にはわかるかもしれない。

 

 

「うちの()にも連絡とかしたら、同じように説明に来てくれるのかな?」

「そこまではなんとも。担当が違いますので」

「そっかー。……まぁ、元気で暮らしていてくれるんならいいんだけどねぇ」

 

 

 普通に会話する私達に対し、パイセンからの視線が『どういうことなのか』とでも聞きたげなものになっているが……どうか今は、それに触れずに待っていて貰いたい。

 微妙に胃の痛くなるような会話を続けながら、思わず天を仰ぎたくなってくる私なのであった……。

 

 

*1
数々の作品でよく言われるもの。例え姿形が変わろうとも、魂が変わっていなければ判別することができる……などという論調が罷り通っている。現実に魂を観測できた例はない為、基本的にはオカルト系の話

*2
『三つ子の魂百まで』というように、本人の気付かない癖というものは意外と多い、ということ。また、『全ての不可能を消去した結果、最後に残ったものが如何に奇妙なものであっても、それは真実である』というシャーロック・ホームズの言葉があるように、事実を照合した結果得られた解は、それがどれだけ荒唐無稽であっても一定の信憑性を持つモノである、ということも合わせて述べている形となる

*3
『一を聞いて十を知る』のもじり。とても察しの良いことを指す言葉で、この場合は相手の話を理解する能力が高い、ということでもある

*4
神楽坂明日菜は最初からおじ様趣味、というわけではなかったという話。記憶の封印などによって身近な保護者(タカミチ)に傾倒して行った、みたいな感じか

*5
人は平穏無事な時にはわざわざ手紙を書くことはしないだろう……ということから、連絡がないのであれば、相手は元気でやっているのだろう、とする例え話の一つ。無論、手紙を出すような余裕のない状況、という場合もある為絶対に無事、という保証にはならない




次からは幕間に移ります。
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